ガンランスの話をしよう。 作:はせがわ
「買ぅてきたでぇーみんな! 月刊“狩りに生きる“9月号!」
集会場にチエの元気な声が響く。
席に着いて待っていたいつものメンバー達は、パタパタと駆けてくるチエをやんややんやと迎える。
「おー、ありがとよチエ! ご苦労さんっ」
「さぁこっちに座って♪ 早速みんなで一緒に見ましょうか♪」
チャアクと虫棍さんの間に座らせてもらい、いい子いい子としてもらうチエ。買ってきた雑誌を二人に手渡す。
「わぁっ、おねぇさんが表紙だよ! すごいっ」
「何やら、えらく引きつった顔をしておるようだが……、
腐れガンサーなどが表紙で本当に良かったのか?」
目を輝かせている男の子に、頭に疑問符を浮かべるミラちゃん。
そう。今みんなの前にある雑誌の表紙は、ソフィーが飾っているのだ。
まるでうっかり捕獲クエなのを忘れ、勢い余ってモンスを討伐してしまった時に浮かべるような……そんな引きつった笑顔。
冷や汗も凄いし、彼女が撮影時にもの凄くテンパっていたであろう事がアリアリと分かる。綺麗な顔も台無しだ。
そしてソフィーの横には、デカデカと大きく「盾持ち職の誇り。噂のガンランサーの素顔に迫る!」の文字。
今月の狩りに生きるは、なんとソフィーへの独占インタビューが掲載されているのだった。
「つか、やっぱアイツってすげぇんだな。
いつもバカ言ってる印象しかねぇから、忘れがちではあるけどよ」
「こうして見ると、改めて実感するわね……。
私たちの団長は、実質この国のエースと言えるハンターだものね♪」
関心したように声をあげ、表紙の写真を見つめる一同。
今回雑誌のインタビューが来たように、ぼくらのおねぇさんはとっても凄い人なんだ。男の子はすごく誇らしい気持ちになる。
「さっ! 表紙もえぇけど、そろそろソフィーさんの記事見ましょ♪
ウチもう楽しみで楽しみで!」
「きゃつが居ぬ間に読んでしまわねばな。
きゃつめ、恥ずかしがって我らに見せようとせなんだゆえ」
雑誌の取材を受けた事を、ソフィーはなんとか隠そうと必死だった。
もしかしたら恥ずかしかったのかもしれないけれど……、それでもみんなにとって、これは大変に喜ばしい事。大事な仲間の晴れ舞台なのだ。
ソフィーが所用で外しているこの隙を見計らい、みんなでこっそり読んじゃおうというのが今日の集まりの趣旨。
今のうちにこれを読み、後でソフィーに会った時に「雑誌読んだよ~!」とからかってやるのも面白いかもしれない。「イッシッシ♪」とほくそ笑む一同だ。
「それじゃあ読んでみよっか♪ え~と……おねぇさんの記事のページは……」
本を開く男の子の後ろから、一同が覗き込む。
みんな一様にワクワクと、期待に溢れた表情をして。
………………………………………………………………………………………………
【独占取材! 盾持ち職の誇り。噂のガンランサーの素顔に迫る!】
・記者:それではソフィーさん、本日はよろしくお願いします。
・ソフィー:ふ……ふひっ。
「おい、いきなりふひってんぞ」
「のっけから雲行きが怪しくなってきたわね……」
・記者:この度は取材をお受け頂き、誠にありがとうございます。どうぞ気負わず、楽になさって下さいね。
・ソフィー:もももももも……。
「喋れっ! 受け答えをせんかッ!」
「ファイトやでソフィーさん! ガンバやで!」
・記者:今日のソフィーさんの防具は、いわゆる“グギグギグ“と呼ばれる装備一式と白いドレスの合成防具ですね。素敵なお召し物ですが、作成にはさぞ苦労なさったのでは?
・ソフィー:はい。えっと、第二種大型免許で運転が出来る車両については……
「噛み合ってねぇッ! 話をきけソフィー! 防具だッ!!」
・記者:それに、なにやらブルファンゴの被り物をお召しですが、それも防具の一種なのですか?
「なにファンゴで行ってんのよ!! 脱ぎなさいよバカッ!!」
・ソフィー;はっ、はひっ! しゅ……しゅびません……ブタでしゅびません……。
・記者:いえいえ、素敵な防具かと思いますよ。ソフィーさんはファンゴがお好きでいらっしゃるのですか?
・ソフィー:あぁ、私はファンゴが大好きだ。愛していると言っても良い。このブルファンゴフェイクを被っている時だけは自分が自分らしくいられる気がしている。実はこのファンゴは男性用バージョンなのだが、私は特別な許可を得てこれを装備しているんだ。やはりブタを被るなら女性用では無く、このフルフェイスバージョンを被るべきだと思ってね。私が頑張ってG級でランク解放ハンターとなったのも、この為だと言っても過言では無い。みんなはファンゴの事をキライだとかウザイだとか悪く言うが、それは違うんだ。そもそもファンゴとは大変に愛らしい容姿であるばかりか、実はとても家族想いな動物でね? その素材も我々の生活に欠かす事が出来ないほどに様々な用途に使われていて
「どんだけ喋んねんソフィーさん!? ブタの話になった途端!!」
「好きな事だけは饒舌にッ!! 貴様らしいと言えばらしいっ!!」
・記者:そうですか、ありがとうございます。では早速ですが、ソフィーさんといえば、最近二つ名ディノバルドを単独で……
「この記者の野郎も動じねぇな。人間が出来てやがる」
「鋼の心を持っているのね……」
・記者:これは超特殊許可クエストと呼ばれる高難易度の物であるそうですが、ソフィーさんはいったいどのようにして、かの竜を倒されたのですか?
・ソフィー:えっ……? こうグイッてやってたら、ニョーンってなってくるから……。
「わからへん! ガンランサーの思考がわからへん!!」
「せめて図で解説をッ!! どこでニョーンとなるのだ!?」
・記者:なるほど、ありがとうございます。大変よくわかりました。
・ソフィー:あとどのくらいで終わりますか? 私そろそろ吐きそうになってて……。
「そーいう事を言うんじゃねーーよ!!
頑張れッ! ガンサーの看板背負ってんだろうが!!」
「アンタも素直に全部書いてんじゃないわよ!
ハショりなさいよこういう部分は!!」
・記者:現在の集会所にある全てを見回しても、これは屈指の難易度を誇るクエストだったと思われますが、ソフィーさんはこのクエストを達成後、どなたに一番最初にご報告をされましたか?
・ソフィー:…………。
・記者:話は変わるのですが、もしかしてそのブルファンゴフェイクは、G級の素材で?
・ソフィー:そうなんだ。どうせ合成防具の元として見た目だけの物ではあるのだが、やはりファンゴ好きとしては、ここはどうしてもこだわっておきたい部分だったんだ。下位素材で作るブルファンゴフェイクも確かに良いのだが、やはりG級素材で作るブルファンゴフェイクというのは、毛並みや光沢が全然違ってきて
「自分の好きなヤツだけッッ!!!! ……でもその調子やでぇソフィーさん!!」
「攻めろっ! 攻めろ記者の男よッ!! そやつの言葉を引き出せッ!!」
・記者:ソフィーさんは、お休みの日はどんな事をして過ごしてますか?
・ソフィー:…………。
「そっちじゃねぇッ!!!! ……あれだっ、モスとかメシの話とかあんだろがよ!!」
「アンタいい加減にしなさいよ!? ちゃんと喋りなさいよ馬鹿ガンサー!!」
・ソフィー:ノウマクサマンダー……、バサラダンカン……。ノウマクサマンダー……。
「何があったんやソフィーさんッ!?!? 何を言うとんねんいきなり!!」
・記者:なんみょ~ほーれんげーきょー。なんみょ~ほーれんげー。
「お前も何を言うとる!!!! お前はしっかりせぃよ馬鹿モンがぁぁーーッッ!!」
・記者:あっ、もしかしてそのガンス、ケチャワチャのヤツですか?
・ソフィー:わかります? 水属性のガンスとしてはぁ~、使いどころが難しいんですけどぉ~。
「もうなんなんだよいったい!!!! 眩暈がしてきたよ俺ぁ!!」
・記者:(キャッキャ☆)
・ソフィー:(キャッキャ☆)
「仲良くガンス談義してんじゃないわよ!!!!
……つかそれを文字に起こしなさいよッ!! そういう記事でしょうがッ!!!!」
………………………………………………
………………………………………………………………………………………………
「 やってられっか馬鹿野郎ッ!! あの女どこ行きやがった!! 」
「 引きずり回してくれようッ!! あの腐れガンサー! 生かしてはおかぬ!!!! 」
「 ハンターの面汚しよッ!! こんなのうちの猟団の恥よッッ!!!! 」
「 もー意味わからへんっっ!! どこおんのよぉソフィーさぁぁん!!!! 」
額に青筋を浮かせ、ソフィーを追いかけて駆け出して行く4人。
その姿を呆然と見送ってから……。
男の子はひとり、もう一度ソフィーの記事に視線を落としてみた。
・記者:――――最後に、ご自身が団長を務める猟団のメンバーの皆さんに、なにか一言あれば。
・ソフィー:あっ……えっと、そうだなぁ……。私はとてもリーダーなんていうガラじゃなくて、いつもみんなに……迷惑ばかりかけてしまっているのだけれど……。
・ソフィー:でも……感謝してる。みんなが一緒にいてくれるから、私は幸せでいられる。……今すごく毎日が楽しいんだ。こんな日が私に訪れるなんて、思ってもみなかった。
・ソフィー:プリティがいて、髭モジャや虫棍さんがいて、ミラとチエがいる。……みんなガンランサーの私なんかと一緒にいてくれるんだ。ダメな時は叱ってくれるし、悲しい時は「元気出せ」って励ましてくれる。凄く嬉しいんだ。
・ソフィー:なんと言ったら良いのかわからないけれど……感謝してる。ありがとう。
・ソフィー:愛してるよ、みんな――――ずっとずっと、一緒に狩りをしようね。