相棒~杉下右京の幻想怪奇録~   作:初代シロネコアイルー

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第147話 今宵、月の輝く楽園で

 日没直後の幻想郷。西の空に映った綺麗な黄昏が見る者の目を引く。

 それは私、藤原妹紅にとって好都合だった。

 永遠亭の月兎を真似て外套で身体を覆い、素早く人気のないところを通って目的の場所へと向かう。

 以前は路地に入ると狸の旦那の子分や天狗の手下どもが喧嘩し合う姿が散見されたのだが、今日はまるっきり見かけない。陣取り合戦は一時休戦となったのだろう。

 あれだけの騒ぎに発展すれば当然かもしれない。

 潜入開始から三分もすれば目的の場所が見えてくる。

 

「慧音、いるか?」

 

 訪ねたのは友人、上白沢慧音が住む民家だ。

 コンコンと何度か戸を叩くと、奥からゆっくりと足音が聞こえた。

 

「藤原さんですか?」

 

「ああ、そうだ。様子が気になってな」

 

 戸越しで私の声を確認した慧音はつっかえ棒を外し、私の前に姿を現した。

 思った通り、顔はやつれて疲れ切っていた。

 私が驚いていると、彼女は里の誰かに見られることを嫌がり小声で「どうぞ、お上がり下さい」と、室内へ招き入れる。

 ひとり用にしては広い民家だが、その半分以上のスペースが種類別に分類されて重ねられた書物で埋まっている。

 使わない資料もひもで縛り、崩れないようにしている辺り、几帳面な性格がよく出ていた。

 私とは真逆の性格だが、物腰が柔らかく、こんなはぐれ者相手にもまるで年長者のように敬ってくれるので感謝している。

 彼女に居間へ案内され、私は腰を下ろすのだが、慧音がお茶を入れようと台所へ行こうとした。

 気遣いはありがたいが、今はそうじゃない。

 

「そんな気遣いはいい。私は見舞いにきたんだ。茶が飲みたい訳じゃない」

 

「すみません、いつもの癖で……」

 

 彼女は賢者たちの後始末をさせられて精神を病んでしまい、寺子屋にも顔出せないのだ。

 無事、妖怪の山へ戻れた新聞天狗から話を聞かされたときは驚いたが、この真面目さだ。抱え込んでしまうのは仕方ない。

 慧音を席に戻し、畳に座った私は彼女を案じた。

 

「大丈夫か?」

 

「ええ、これでも調子はよくなりつつあります」

 

「私にはだいぶ、やつれて見えるのだが……」

 

「いえ、昨日まで起きるのもやっとでしたから」

 

 妖怪は身体の病気に強い耐性を持っている反面、心の病に弱い傾向がある。

 白沢の血を引く彼女もまた長命だ。人間が命を落とすような身体の病には滅多にかからない。

 そこから察するに今、彼女を蝕んでいる症状はほぼ間違いなく心の病――うつ病だと断言できる。

 

「辛かったら竹林の医者に診てもらうといい。私が呼んでこようか?」

 

「それでしたら稗田さんが手配して下さるそうなので」

 

「ならいいが……あの女も心配しているのか?」

 

「はい。本居さんと一緒にお見えになって、色々と気遣って頂きました。明日にでも八意先生をお呼びすると」

 

 稗田阿求。里の顔役で閻魔の部下。幻想郷の人里をまとめるべく派遣された頭の切れる人間だ。

 以前、話したことがある。言葉づかいこそ丁寧だが、その態度には若干の不遜さを感じた。

 鼻持ちならんヤツだと警戒していたが、意外と良心的らしい。

 

「ならよかった」

 

 それから私は慧音に心を病んだ原因を詳しく訊ねた。

 最初は言い渋っていた彼女も折角、見舞いにやってきた相手に悪いと思ったのか、次第に理由を語り始めた。

 なんでも八雲紫は記憶の境界を曖昧にして擬似的に不都合な記憶を忘れさせただけで事実を改変した訳ではなかったらしく、里人の記憶に齟齬は生まれてしまったそうだ。

 このままでは近い内に再び混乱が訪れる。それを何とかすべく稗田阿求や慧音が隠ぺいを手助けしたのだ。慧音は「こんなことしたくなかった」と零した。

 私は「だったら、どうして手伝ったんだ?」と質問した。

 彼女は「それが最善の策だったからです。それに……結社の連中を勢いづかせてしまったのは私ですから」と俯いた。

 失態の責任を取る形で隠ぺいに加担したのか……。

 落ち込んでいる彼女になんと言葉をかけるべきなのか。

 こういうデリケートなことが苦手な私は目の前の数少ない理解者を励ませず、ただジッと眺めることしかできなかった。

 

 

 一時間半後、見舞いを済ませて里を出た私のところへ狸の旦那がやってきた。

 いつもより地味な変装していたので気がつくまで若干の時間を必要としたが、旦那で間違いない。

 

「白沢どののところか?」

 

「ああ、そうだよ」

 

 私が答えると旦那の表情が暗くなった。

 

「どうじゃった?」

 

「精神を病んでいたよ。明日、医者の診察を受けるそうだ」

 

「そう、か……」

 

 気まずさから視線を落とし、言葉が返ってこなくなった。

 旦那も責任を感じているのか。何とかしてやりたいが、私には喧嘩しかできない。賢者たちのやり方に納得がいかず私自身も決闘(スペルカード)を挑んだが結果は引き分け。

 何も変えられずに引き下がるしかなかった。

 もし仮に勝って記憶を元に戻しても里人たちが地獄を見るだけ。治安が乱れれば他の妖怪たちも黙ってはいない。幻想郷はまた荒れる。

 考えれば考えるほど幻想郷にダメージが少なくすむのは賢者たちの方法だった。

 私ですら心の中のどこかで納得してしまったのだから。

 怒りを表さないところを見るに旦那も私と同じ考えなのだろうか?

 気になって仕方がなかった。

 こうなったら直接、聞くしかない。

 

「もしよかったら今夜、一緒にどうだい?」

 

 酒を飲むポーズを取る。

 

「……里でか?」

 

 彼女は浮かない顔をした。さすがの私もそこまで無神経ではない。

 

「竹林だ。安酒と焼き鳥くらいしか用意できないけどさ」

 

「しかしのぅ……」

 

「いいから。頼むよ」

 

 渋る旦那の目をジッと見つめ続けた。

 旦那が観念したように頷く。

 

「……わかった。用事をすませたらお主の自宅へ向かう。待っていてくれ」

 

「待ってるよ」

 

 

 深夜零時。月夜に照らされ、独特の妖艶さを漂わせる竹林――その片隅で焚き木を囲いながら私と旦那は静かに酒を飲み交わす。

 大きな尻尾を肘かけ替わりにしながら夜空を見上げる旦那だが、相変わらず表情が暗い。

 私も同様で、空っぽの御猪口を片手していながらも酒を注ぐ気になれない。まるで反省会のようだった。

 唐突に旦那が呟く。

 

「儂がもう少し早くさとり妖怪を連れてきておればな……」

 

「もうすぎたことさ。狸の旦那」

 

 最初こそ他愛のない話で笑い合っていたが、酔いが回るにつれ旦那の口数が減っていき、出てくる言葉に後悔が含まれた。

 彼女は私に自分のミスで幻想郷が危険に晒されたこと、里で惨劇が起こったこと、住民の記憶が消され、贔屓にしている居酒屋の娘が好きだった男への想いを忘れてしまったことを悔やんでいると打ち明けた。

 

「私だって呑気に腹を壊して、加勢するのが遅れた。旦那たちだけじゃない。皆、悪かったんだよ」

 

「だとしても、これはないわい。記憶を奪い、不都合な物は全て隠ぺいするなど。はぁ……」

 

 マミは頭を横に振ってから、自身の太ももをパンっと叩いた。

 

「一生の不覚。もう舞花に顔向けできん」

 

「だから里の酒場に行かないんだな」

 

「まあ、のぉ……」

 

「……それでいいのか?」

 

「どういう意味じゃ?」

 

「だから、さ……。記憶はなくなっても、決して元に戻せない訳じゃないと思うんだ……。その気になればさ――」

 

「そんなことしてよいものか!! アヤツらのことも――幻想郷のことも考えればな!!」

 

 あの温厚の旦那が珍しく声を荒げた。

 真意を問おうと思っていたが、その必要はなかった。

 初めからわかっていたことだった。

 

「すまぬ……。せっかく誘ってもらったのにな」

 

 私はここにきて気がついた。余計なことをしたのだと。

 励ます技術を持っていないのに辛い話をさせようなど、そもそもの間違いだった。

 

「いや、私が悪かった。今のことは忘れてくれ」

 

 こんなことしか言えない。今日という日ほど、自分の不器用さに腹が立ったことはなかった。

 無言の時間がしばらく続く。申し訳なく思ったのか旦那は「そろそろ、寝ようと思う。今日はありがとう。気が紛れたわい」と言って立ち上がった。

 

「おい、待ってくれ――」

 

 私が制止するが、旦那は背中越しで手を振ってから妖術を使ってこの場から姿を消した。

 

「私は何をやっているんだ」

 

 そのとき、頭上に輝いていた月が雲の中に姿を隠した。

 月光を遮られ、辺り一帯が暗くなる。同時にこの心にも黒い何かが這い寄るのを感じた。

 

 

 旦那が去った後、私は焚火を消し、後ろにあった木に持たれながら雲隠れした月を目で追っている。

 

「どうすればよかったんだ……」

 

 ときおり、瞳に映る景色の中に私の過去の映像が混じる。

 にっくき月の姫に八つ当たりしたい一心で帝の兵士の後をつけ、こっそりと富士山を登り、優しくしてくれた兵士たちが血の海に沈んで、不老不死の薬を奪うために恩人を――岩笠を突き落として殺害。力を手に入れて人間社会に戻れなくなり、腹いせから妖怪たちを叩きのめして憂さを晴らす。

 一つ一つの光景が浮かんでは消えていった。本当に腐って汚れた人生だった。こんなものばかり脳裏に蘇るからうかうか布団で眠れなくなった。

 自業自得。

 わかっている。しかし最近はこれらを見る機会が減った。慧音や旦那、里の子供たち、表の迷い人、賑やかな住民たちのおかげだろう。

 それが今はどうだ? 私の知り合いは皆、暗い顔をしている。明るいのは人間とのつき合いが浅く、彼らを小馬鹿にしている連中だけ。

 

「(気に入らない)」

 

 怒り。怒りだ。私の中に再び紅くて黒い炎が燃え盛る。

 

「こうなったらこの身体が砕けて髪の毛一本残らなくなるまで――」

 

 連中と戦ってやる――。そう決意したときだった。

 

 ――残らなくなるまで……? どうするつもり?

 

 女の声だ。竹林から聞こえてくる。

 しかも、聞き覚えがある。私と同時期を生きた嫌な女の声。

 そう――。

 

「いつから聞いていた。輝夜?」

 

 蓬莱山輝夜。我が宿敵()()()()だ。

 ヤツは私の声に反応するように近くの竹やぶの中から出てきた。

 

「狸さんが怒鳴った辺りかしら。……勘違いしないで。鈴仙がね、アンタらが宴会をやっているって言うから、火事になってないか、様子を見にきただけだから」

 

「チッ……盗み聞かれているとは――相変わらず、趣味が悪いな」

 

「アンタだって永遠亭の窓に聞き耳を立てて会話を盗み聞いているそうじゃない。てゐの兎たちが言ってたわよ」

 

「ハッ、そんな訳あるかよ!」

 

 見られていたとは。今度は兎にも気をつけないと。

 

「で、そんなことよりも――」

 

 少しだけ焦る私を尻目に輝夜は目の前まで歩み寄ってきた。

 

「何するつもり?」

 

「お前に関係あるのか?」

 

「ないといえば、ない。けど……あるといえば、ある」

 

「は? ……得意の謎かけか? 今はそんな気分じゃない。兎たちのところへ帰んな」

 

 睨みを効かせたが輝夜には効果がなく、そのまま私の正面に立ちはだかった。

 

「……行くつもりなんでしょ? 賢者たちを倒すために」

 

「なんでそんなことを――」

 

 図星を突かれ、咄嗟に目を逸らした。

 すると輝夜は私を小馬鹿にするように言うのだ。

 

「ふーん、賢明じゃない。どうせまた負けるだけだものね」

 

「はぁ!? 今、なんて言った?」

 

()()()()()()()()()()。そう言ったのよ」

 

「んだと!?」

 

 腹を立てて、詰め寄ると彼女は一層、強い言葉をぶつけてきた。

 

「この前だって逃げ帰ってきたじゃない。引き分けって話だけど、何も変わらないんじゃ負けたも同然よ」

 

 カチンときた。

 

「へー、お前から喧嘩を売ってくるとはなぁ。私は今、虫の居所が悪い。いつもみたいに手加減できないぞ?」

 

 むしゃくしゃして力をセーブ出来る気がしない。昔のように暴れ回るつもりだったのだから。

 輝夜は臆することなく、

 

「そういうのは一度でも私に勝ってから言いなさいよ」

 

 スペルカードを出した。

 

「てめぇ――上等だ!!」

 

 私は鬱憤を晴らすかのように彼女へ襲いかかった。

 いつもなら序盤はアイツに合わせて遠距離攻撃を繰り出すのだが、今日ばかりは怒りが勝り、そのままの勢いで殴りかかった。拳や脚に妖術で作った紅蓮の炎を纏わせて殺傷力を向上させた上で殺すつもりで振り抜いた。

 攻撃が直撃して、輝夜の首から上が消し飛ぶのだが、不老不死の能力故、払った霧がすぐ元通りとなるように部位が再生。同時に反撃を受け、私の腹に大きな風穴が開いた。こちらも苦しいのは少しだけで後は元通り。数秒後には攻撃を再開させる。

 接近戦は私が優勢で遠距離戦は輝夜が優勢だ。

 互いに身体が欠損しようがお構いなしに攻撃し続ける。

 普段なら被弾を嫌がってある程度は避けるはずの輝夜だが、今日はかなり被弾が目立つ。それもそうだ。

 彼女は()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 私は輝夜が真っ向から潰しにきていると直感した。

 

「(ふざけるなよ、こんなときにさ!!)」

 

 この怒りは取っておくはずだったのに。こんなところで使わせられた。イライラが増してより強い殺意を拳に乗せて輝夜を貫く。

 拳を引いて戻すころには彼女の再生は終わっている。反撃を受けて吹き飛ばされるが、己の身体を再生させてまた襲いかかる。

 こんなやり取りが延々と繰り返され、私と輝夜の殺し合いは夜を徹して続けられた。

 ここまで激しい戦いは久しぶりで、途中から徐々に心の怒りが高揚感へ塗り替わっていく。

 もはや賢者たちなど、どうでもよかった。

 結局、記憶を戻せば皆、苦しむ。仮に勝てたとしても良心から記憶は戻せず、旦那のように受け入れるしかない。

 八つ当たりで賢者を襲撃するくらいなら、ただ目の前にいる宿敵と殺し合っているほうがずっとよい。

 輝夜はそんな私をどう思うのだろうか。聞いても答えてはくれないだろうが、ここまで長い時間、私と戦う彼女は初めてだ。

 数時間もすれば理由をつけて戦いを止める癖に……。トコトン殺し合う気だ。

 

「(そうか……。同じなのか、コイツも――)」

 

 賢者は正しいと理解していても納得できない。今更、異議を唱えても幻想郷を危険に晒すだけ。代案などない。里人救出作戦参加者の中であの結末を喜べる者など誰ひとりいなかった。

 その鬱憤を私との戦いで晴らそうとしているのだ。

 彼女の真意に気がついたとき、私は笑いながら叫んだ。

 

「本当に嫌なヤツだな、お前はさ!!」

 

「ふんっ、クヨクヨしたヤツに言われたくないわ!!」

 

 鼻を鳴らす輝夜も微笑しながら応じた。

 しかしながら、朝日が顔出す直前に差しかかると周囲が明るくなり、竹林の動物や妖怪たちが私たちに怯えている姿が目に入った。

 その瞬間、私は輝夜に向けた拳をピタリと止めていた。

 

「……どうしたの?」

 

 戸惑う輝夜に私は視線を竹林の住民たちへ向けながら「これ以上は……」と告げた。彼女も周囲をクルッと見渡してから我に返り、コクンと頷いて腕を下げた。

 輝夜が皮肉交じりにこう語る。

 

「アンタが戦いを中断するなんて……。初めてね」

 

「好きで中断したんじゃない。迷惑になる」

 

 長年、竹林で暮らしているとやはり情が移るようだ。

 腕を組んだ輝夜は昇ろうとする太陽を視界に収める。

 

「賢者たちを倒しても迷惑になるわ。竹林だけじゃない、幻想郷全体の」

 

 私は何も言えなくなった。

 

「わかっているんでしょ?」

 

「……」

 

「ここがなくなれば沢山の妖怪たちが困る。かという私も」

 

「……隠れる場所がなくなるってか?」

 

「住もうと思えばどこにでも住める。永琳の知恵を頼ればいいし、私の能力だってある」

 

「能力を使えば永遠に雲隠れできるからな。幻想郷がなくなってもお前らは存続可能、か」

 

「だけど」

 

「だけど?」

 

 間を空けてから輝夜のヤツはポツリと。

 

「地上の民として生きていくつもりだったから。……ここがなくなるのは寂しいわ」

 

 意外だった。天上人を気取る女だとばかり思っていたのに。いつの間にか輝夜にとって幻想郷は大切な場所になっていたのか。

 だから不満を抱いても賢者たちとやり合わないのか。この世界を想って。

 いくら鈍感な私でもばつの悪そうな彼女の表情から察した。

 なんて返したらよいのだろうか。慧音のときも、旦那のときも最後は言葉に詰まって、そのまま別れた。

 コイツともそうなるのか。唯一の宿敵……と。

 私は何を思ったのか。思考よりも早く言葉が出た。

 

「今から竹林のパトロールに向かう」

 

「え?」

 

「その、お前も……くるか?」

 

 自分でも意味がわからない。

 何か言わないといけない。その結果、パトロールという言葉が出た。

 すると輝夜は。

 

「っ――何よそれ、アハハハッーー」

 

「――ッ!?」

 

 ひとりで大笑いし出した。恥ずかしさが込み上げ、私は赤面する。

 

「何でもない。今のは忘れてくれ――」

 

「行くわ」

 

「は?」

 

 思わず耳を疑ったが、輝夜は当然のように繰り返す。

 

「だから、行くって言っているのよ。このまま帰っても盆栽の世話くらいしかやることないし」

 

「あの医者は心配しないのか?」

 

「『遅くなるかも』って言ってきたから。大丈夫よ、だぶん……」

 

「はっ、とんだ不良娘だな!」

 

「アンタには言われたくないわ」

 

 ジト目を向ける輝夜。私はどこか嬉しくなり、

 

「じゃ、行くか」

 

「ええ」

 

 幻想郷は強固で脆い。正直――いつまで持つのかと、不安が拭えない。

 今回の一件でより強い危機感を覚えるも、暴れるだけが取り柄の健康焼き鳥マニアが騒いだところで、どうにもならない。

 だったらやれることは一つ。竹林に迷い込んだ人間を救出するだけだ。

 

 

 

 その後、藤原妹紅は唯一の()()と共に竹林を回り、彼女を永遠亭に送り届けたのち、自宅でゆっくりと眠りに就くのであった。

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