相棒~杉下右京の幻想怪奇録~   作:初代シロネコアイルー

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第47話 緋色の規定

 話し合いの末、役職は《里人》《易者》《狩人》《妖怪信者》《人食い妖怪》《妖怪賢者》で、夜の行動は昼間に投票で予め、決めておく事となった。

 全員が意見を出し合い、まとめた人妖ゲームの流れは以下の通りである。

 

 

 ゲーム開始前、参加者は囲むように用意された一人用のテーブルに着く。

 それぞれのテーブルにはアルファベットで記号が記されており、その記号は投票や能力選択に使用される。

 その後、進行役がランダムにカードを配り、全ての参加者が役職を確認したのち、それを手元へ置く。

 進行役が確認を取った後、時間を止め、全員のカードを手に取り、全てのカードに付箋を付けてテーブルに戻す。

 その際、易者にはランダムな里人陣営の里人の名前、妖怪陣営の妖怪には仲間の名前を書いた付箋を貼っておく。

 そして、参加者は再び、カードを確認。内容を記憶する。

 もう一度、カードを伏せさせ、進行役が時間を停止して回収。不要な付箋は剥がしておく。

 

 ここからゲームが開始される。

 

 最初の夜。参加者以外の里人が死亡し、妖怪がいると知った里人たちは議論を始める。

 このタイミングで里人は役職を公表したり、騙ったりできる。

 議論の時間は一度につき最大二十分まで。参加者全員の同意があれば短縮可能。

 カウントは進行役が行い、時間が経過すると進行役がそれを報せ、強制的に投票へ移らせる。

 

 投票は紙に書いて進行役に提出する形を取り、進行役はすみやかに紙とペンを参加者へ渡す。

 

 投票用紙はメモ帳程度の大きさで、真ん中に漢字五文字が入る程度のスペースの横線が二か所用意されており、参加者は自身の名前をメモの上に書いた後、投票先、特殊役職用の記入欄に選んだ記号を書き込む。

 

 回数限定の能力を使用する場合、名前の右端に進行役がわかる程度の大きさで《○》を書く。

 

 特殊役職用の記入欄は公平を期すため、全員が記入することになっており、二回記入忘れで失格というペナルティーが科せられる。

 

 記入が終わった者は紙を裏向きにしてテーブルへ置き、そのまま待機。

 全員の記入が終わったところで進行役が紙を回収。集計し、吊る者を発表。

 該当する参加者は離脱となる。

 吊られた参加者は別室へ移動し、待機する。

 

 そして、夜へと移行する。

 

 夜になると進行役の指示に従い、里人は全員がテーブルに伏せる。

 その間、進行役が投票用紙を参加者に見えないように確認。

 妖怪の襲撃対象を決定する。

 なお、対象の選択先が割れた場合、進行役がその中からランダムに選ぶ。

 集計後、夜のフェイズは終了する。

 

 次の日の朝を迎え、妖怪の襲撃結果を参加者全員に伝え、該当者がいれば、その該当者を別室へ移動させる。

 その後、時を止めた進行役が全員のカードを手に取り、易者が生存しているならば、投票に記載されていた特殊役職用の記号を参考に進行役が里人か妖怪かと書かれた付箋を付ける。

 妖怪賢者が生存しているならば、襲撃に成功した際は対象となった者の役職を付箋に書いて付ける。

 

 以上の作業後、カードを対象のテーブルへ置く。

 

 参加者全てが自身のカードを確認し、もう一度、伏せさせて初日と同じ要領で進行役がカードを回収する。

 これを妖怪がいなくなるまで、もしくは里人の数が妖怪の数と等しくなるまで繰り返し、前者なら里人の、後者なら妖怪の勝利となる。

 なお、妖怪信者は妖怪の勝利時に勝利となり、里人が勝利した場合、敗北となる。

 

 役職説明

 

《里人陣営》

 

【里人】

 

 能力を持たない役職

 

【易者】

 

 毎晩、里人一人を選んで占い、対象となった人物の陣営を知れる役職

 初日は進行役が里人陣営の里人をランダムに選ぶ

 

【狩人】

 

 毎晩、自分以外里人一人を選んで護衛できる役職

 護衛対象となった人物は妖怪に襲撃されても死亡しないが

 連続で同じ里人を護衛できない

 

【妖怪信者】

 

 妖怪陣営の勝利が自らの勝利条件となる役職

 易者に占われても里人と判定される

 

《妖怪陣営》

 

【妖怪】

 

 毎晩、里人一人を選んで襲撃し、殺害出来る役職

 襲撃は一夜につき、一度までしか行えず襲撃対象は投票時に記号で用紙に書き込む

 妖怪が二匹以上いる状態で襲撃対象が割れた場合進行役が襲撃対象をランダムに選ぶ

 

【妖怪賢者】

 

 役職:《妖怪》の能力に加え、襲撃した里人の役職を知れる能力を持つ役職

 ゲーム中に一度だけ、投票用紙の名前の横に〝○〟を書くことで仲間に自身が知りうる里人の役職の情報を全て伝えることができる(直前に襲撃した里人の情報も含まれる)

        

 以上――

 

 

 ルールを決めた参加者たちはもう一度、練習を行い、一通りのやり方を覚えるに至った。

 この時、全ての参加者たちが()()()()()()()()()()()()()()()と、苦笑したのは内緒である。

 ちなみにゲームの使用上、夜に行動できる役職がないので、削ってもよいのでは? との提案があったが、レミリアが()()()()()()()()と、言うので形だけ残った。

 その際、レミリアが「折角、ここまでルールを考えたんだから、名前を付けたいわねぇ……。《レミリア・ジャッジメント》なんてどうかしら?」と、大胆な提案。

 霊夢、魔理沙から「好きにすれば……(しろ……)」と投げやりに言われ、周りからも特に異論がなかったこともあって、人妖ゲームを《レミリア・ジャッジメント》に変更した。

 

 レミリアは非常にご満悦であった。そんな彼女はお礼とあってか皆に「せっかくだし、勝利陣営に何か報酬を用意したいのだけれど、欲しい物とかある?」と伝えた。

 すると霊夢と魔理沙が頭を捻りながら小声で「「お金……?」」と回答。

 場の空気を呆れムード一色にした。

 レミリアは頭を抱えながら「直球過ぎるわね……」とため息を漏らす。

 阿求も「賭け事なら里の賭博場でやって下さい。そのために用意しているんですから」とチクリ。

 霊夢と魔理沙はすぐさま「冗談よ……(だぜ……)」と否定した。

 マミは言う。

 

「おぬしらよ。杉下どのと神戸どののことも考えんか。表は()()()()()されてとるんじゃからのう」

 

「そうなの(なのか)!?」

 

 右京は二人に「ええ、マミさんの言う通りです。もし、お金を賭けるという話になっていたら僕はゲームから抜けていたと思います。これでも……表の警察官ですから」と語る。

 飲酒の件は幻想郷の住民たちのルールなので、右京たちがここにいる未成年に酒を飲むなと言う権利もないが、今回の賭博は右京たちが貰う側である。

 ついこの間、違法カジノ店を摘発した右京からすれば、自身が賭博でお金を貰うことに強い抵抗があっても無理はない。もちろん、ここは幻想郷――日本語が通じる異国であり、右京が賭博を行っても罪にはならない。これは右京個人の意思と言える。

 尊もまた、右京と同じ行動を取るだろう。

 それを聞いた二人はなんだか、申し訳なさそうな態度を示しながら謝罪した。

 謝る二人に右京が「いえいえ、こちらの勝手な都合です。寧ろ、謝るのはこちらですよ」と返す。

 

 幻想郷は法律なき世界。住民に気を遣わせてしまった右京が謝るのが普通である。

 このやり取りの後、沈黙が周囲を包みそうになるが、機転を利かせたパチュリーがレミリアに「だったら、勝利陣営に明日の朝食、もしくは昼食が豪華になる特典でも付ければいいんじゃない?」と打診。

 右京もそれなら問題ないと同意した。

 レミリアは霊夢と魔理沙にそれでいいかと訊ねると二人は「「肉料理でお願いね(頼むぜ)」」とすでにやる気を出していたので、料理プランでいくことになった。

 

 気を取り直した咲夜はここに宣言する――

 

「これより、幻想郷版、人狼ゲームたる――人妖ゲー……いや、《レミリア・ジャッジメント》を始めます」

 

 幻想郷初、本格推理ゲーム《レミリア・ジャッジメント》が今、その幕を開ける。


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