アニメ4話で藤原千花の猫耳姿がリアル猫娘風だったと残念に思ったそこの人。
原作2巻の17話後の余白に可愛い奴が書かれてます。必見。
今回のクトゥルフネタは「必要だと思った!」から入れました。
次話にでもネタ晴らしします。「LOVE」が大事なんです!この話は!
「実は是非とも来て欲しい、とチケットを貰ったんだ。二枚ある。僕が行こうとも思ったんだけど、仕事で行けそうもない。悪いんだけど代理で出てくれないか?」
「コンペンション? 技術について詳しい話は出来ないよ? 相手の解説を聞いて、面白いか面白くないかを判断してくるだけになるけど、それで良いなら」
「うん、それで良い。楽しんできてくれ」
そう言われ、親父から貰ったチケットを手に中に入った。
千花と来たかったが、今日、彼女は実家の用事があってお休みだ。
一応、妹も誘ったが『は? 一緒に出掛けるとかヤダ』と
であれば、護衛も兼ねて、憂さんを誘うのが道理という物だ。
会場は東京臨海にある逆三角形の建物。サブカルチャーのイベントで有名だが、コンペンション――つまり試作品を含めた各種製品の展覧会なんかも、しょっちゅう行われている。無論、入場には相応の金かコネが必要となる。
高校生ともなればスーツに袖を通すのは初めてではないし、格式高い社交界に顔を出すことも(あんまり好きじゃないけど)ある。身支度がちゃんと出来ているかを確認して、足を踏み入れると、そこには大小様々な
「確かにこれは楽しい……。男なら絶対楽しい……」
ロボットと言ってもファンタジーやらロボットアニメやら特撮やらに出てくる奴ではない。主に軍事品、民間品に使われる様々な新型機械だ。パワードスーツとか、超小型の人型アームリフトとか、ロボットのペット、掃除機、警報システムなんかもある。
中小企業が出展していたり、各種スポンサーが歩いていたり、技術者同士の交流が行われていたりと、中々見応えがある。並ぶ企業は百社を超える。これは……骨が折れるな?
「僕よりも詳しいですよね、憂さん。聞き取りはお願いします」
「お任せを。ところでこれはデートですか?」
「え“。……あ、そう取ります? 僕は千花一筋なので申し訳ない。違います」
「冗談です」
憂さんは、しれっと冗談を言う。そして冗談を言う時もくすりとも微笑まない。身内の僕らですら、最後に彼女の口元が緩んだのを見たのは……三か月くらい前である。
信頼信用できる人であることは確かだが、謎も多い。
琥珀色の目、アッシュブロンドの髪。寡黙さとミステリアスさ。これらの要素も合わさって人目を惹く。大学でも言い寄る男が多かったそうだ。化粧っけもあんまりないけど、僕より十歳年上な癖に全然そう見えないし。黒スーツ姿なのがまた似合っている。
「ではまず何処からが良いでしょうか憂さん」
「小さいブースから行きましょう。大きなブースは、どうせ長い時間やっています。持ち時間も長く、相談スペースも広いですから。小さい企業は、契約がある程度取れれば、あとは撤収するところも多いでしょう。B会場から行きましょう……。それと、出展名簿を見ておくと良いかと。4ページ目の三段目です」
「はい? …………秀知院学園、技術開発部……、マジか……」
うわあ、という声が漏れそうになるのを、僕は必死に押し殺した。
流石に公衆の面前でこんな顔をするわけにはいかない。例え相手が、アイツでも。
◆
学生たちは卒業後も、何かと大きな場で出会う事は多い、とは以前に話したと思う。別に卒業後でなくとも出会う事はある。『技術部行きたくねえなあ』とせめて顔を出すのと後にしようと提案した僕は、防犯・防火などのセンサー類を扱うコーナーに足を運んでいた。
そして、予想外の顔と遭遇した。
「あ? お前も来てたのか岩傘。おう、そう構えるな。こいつは只の同級生だ。危険はねえ」
「こっちの台詞だな。なんで龍珠さんがこんな場所に?」
周囲を守る黒服に指示を出したのは、
珍しくも女子らしい(口に出すと殺されるが)服装で彷徨っている姿は、どこぞのお嬢様だ。契約を勝ち取る父親に強引に連れてこられた感が出ている。
周囲の黒服はいずれもサングラスを掛けた屈強な大男達で、統率が取れている。
憂さんも若干の臨戦態勢になっていたので、手で制止して「大丈夫です」と伝えた。彼女なら黒服数人を相手にするのは簡単だろうが……ここじゃ不味い。
「親がヤクザだからって早々殺さねえよ。分かんねえのか? ぶっ殺すぞ。……ウチだって全部が全部シマからの稼ぎじゃねえ。最近は取り締まりも厳しいからな。会社作って運営してるんだよ。勿論ちゃんと株式会社だ。非公開で上場はしてねーけど。で、そういう会社が、防犯系を運営してる。蛇の道は蛇。堅気じゃねえ奴らの動きや習性は詳しいからな」
「納得した。頑張ってくれ。それじゃ、また今度学園で」
「待て。ちょい付き合え」
ぐい、とスーツの首根っこを掴まれた。相変わらず眼力が剣呑で力が強い。
長ドス持って乗り込んできたら普通の生徒はビビって降参するぞ。
「慣れない女が歩いてると、カモだと思って営業が話しかけてクソだりぃ。ガン飛ばして追い払うのも面倒になってきた。技術部までで良いから一緒に来い」
「僕、技術部嫌いなんだけど」
「お前の事情は知るか。おら行くぞ」
目で黒服の皆さんに訴えかけたが、彼らは巌のように黙しているだけだった。
「分かった。分かったよ。だから手は放せ。スーツが皺になる」
「あ“? ……そうだな、そいつは悪かった。ところで天文学部の予算について融通を通して貰いたいんだが、スーツの代金は幾らだ?」
「買収じゃねえか」
天文部の奴ら、以前の予算申請時『新しい望遠鏡の購入費用と、オーロラ観測の為にカナダ行く旅行費出せ』とか言ってきたので、メンチの切り合いになった。何とか僕が勝ったが、あの時の出来事、未だに根に持っていたらしい。
幸いにも僕は
身嗜みを整え、緩んだネクタイを締めなおすと、僕は彼女に付き従う事にした。
おかしいな。僕はロボット展覧会を見に来たのであって、断じて同級生の女子達と遭遇しに来たわけじゃないんだが。
◆
「おー、岩傘さんじゃないデスか。今日はプライベートデスか?」
「仕事みたいなもんだよ。親父に此処の招待状が来たの。忙しいから代理で僕が来た」
「なるほど。龍珠さんはお待ちしていまシタ」
秀知院学園における研究開発というのは、あんまり有名ではない。
元々が貴族の子弟やエリートを育成する学園だ。実際に機械を動かす現場畑の人間は多くない。石上会計は玩具会社の次男坊だが、彼とて実際に工場で働くわけではない。目指すは経理とか話していた。つまり学園の大多数の人間にとって研究開発は『出資する相手』なのだ。
ただ逆に言えば、秀知院学園での研究開発は、スポンサーと人脈には事欠かない。
財閥令嬢:四宮かぐやを筆頭として――大小様々な企業の子息が通う場所だ。あらゆるジャンルの権力者を網羅している。龍珠桃みたいに、良い開発品は実家で買い取る、という立場の生徒も居るだろう。
故に大学部には、技術系の学部がある。そして技術開発部(クラブ活動)は、高等部中等部初等部を含め一括で同じ部活に所属する形を取っている。
色々変なのも作っているが、有用な奴も作っている。
そして広報と言う立場上、僕はそいつらも顔見知りであった。
「相変わらず取り留めのねーラインナップだ。これで成果出てなかったら他の家から制裁受けるぞ。私には関係がない話だがな」
「……まあ成果は出てるからな。失敗作も多いが、特許もちょこちょこ取っている」
僕の言葉に、恐らく最も面倒臭く、最も鬱陶しく、最も諸悪の根源と言える女が頷く。
ここは秀知院学園の開発発表エリア。この辺は、中小企業では近寄れない、要するに金持ちが揃っている場所だ。他のブースと違い、部屋ごと隔離されていて、然るべきチケットが無いと見学すら出来ない。当然、内にいる人間も、どことなく裕福そうで、大企業の幹部っぽい。護衛や従者を引き連れた人間も多く、よく見れば「あの人、新聞で見たな?」が結構な数だ。
人もかなり少ない。混雑してないのは助かる。
「その通リ。失敗は成功の母デスよ。加えて生徒からの要望に応えて色々制作しますカラね。謝礼を貰う以上、仕事はきちんとやりマス。お陰で無事存続できてマスねー」
白衣、黒髪ロング、度が強い瓶底眼鏡。カタコト。割とハイテンション。
こんな奴を相手にしなきゃいけない僕の苦労を考えて欲しい。……一年生の風紀委員で、大きく丸い眼鏡をした女子が居たが、彼女とは雲泥の差だ。
「そちらの美人サンは? 浮気? ――ごめんなさい冗談デス。目が怖いデスよ広報――何回か学園で見まシタ。岩傘さんチのお手伝いさんデスね。私は
津々美竜巻、と言う女は、変な奴である。
僕は文系と言う意味で大分変な奴、という評価を貰っているが、こいつは理系で変人……変人を通り越してクソ面倒臭い騒動を引き起こす元凶であり、諸悪の根源、大アホの頓珍漢だ。
一種のギフテッドで、同時に一種の災害だ。竜巻の名前は伊達じゃない。
因みにこの女の実家は、国家直属にある、さる研究機関の理事長だ。将来は研究所の運営に携わるのが目標。技術開発部に参加しながら、経済経営などを学んでいる。
「頼んでおいたもんは出来てるか? 新型のセンサー二つと、警報装置だ」
「無論。ご注文の通り水中設置式デス。池の内部に置いて、水面越しに探知できマスよ。動作確認は向こうでやってマスので、確かめるなら是非どうぞ」
「おう。ちょっと行ってくる」
ぞろぞろと黒服を連れて、龍珠桃は移動する。厄介ごとが一時的にでも減って安心だ。
同時に憂さんが微かに息を吐く。何か緊張でもしていたのだろうか?
「黒服達が中々鍛えていたのと……私の方を注意深く伺っている男が一人居たので。いざという時に全滅させるには如何すれば良いかな、と考えておりました。龍珠さんでしたか? 彼女も荒事慣れしているようです。何かあった時の為、やはり武器が必要だなと」
「憂さん、幾ら中東育ちだからと言って、此処でそういう危険な事は無いので……多分」
開発品を興味深く眺める憂さんに、すぐさま竜巻は営業を掛けた。
「いやー面白い人デスね。此方とかどうデス? スタンガンを改造したグローブです。触感は素手と変わらず、いざという時は拳で殴ると電撃が発射。これで変質者も蛇人間もチョー=チョー人も安心。これも広報から借りた、ハムリン博士の電池技術論文のお陰デスね」
「有効に使うのは良いけど兵器開発すんなよ。あと読み終わったら速やかに返せ。九郎さんから借りっぱなしなのも限度があるから。まず既存の奴を返却しないと新しいの借りれないんだ」
「ヤー誤解デスね、これは只の防犯グッズデスよ」
過剰防衛になるぞ。
……ハムリン・ヘイズ博士はミスカトニックに90年ほど前、1920年代に所属していた電気工学の専門家だ。極寒で利用できる蓄電池の開発を行った。……まあそれが
確かに、昔の技術を最新技術に転用し、使用可能にする、その手腕は凄いんだが……俺はいつか、この女がヤバイ禁忌を一歩踏み越えてトラブルを起こすんじゃないかと心配だよ。
「まーまー、他にも色々ありますヨ。そっちのゲーム筐体とかどうデス? オカ研の阿天坊先輩から頼まれた品デス」
「……本当に節操がないな」
会話をしているだけで疲れる。
あー千花が恋しい。千花の膝の上で寝たい。癒されたい。
そう思いつつ話を聞いてやった。
目を向けると、展示ブースの一角に、ででん、という感じで四角い箱が置かれている。
大きさとすると……ゲームセンターに置いてあるゲームの筐体くらい。2mちょっとくらいの立方体という感じだ。画面、アーム、キャスターが据え置きされ、中々立派である。一見すれば蹲ったロボットのようにも見える。色々と配線が繋がっていて……あちこちが点滅している。
配線やケーブルがかなり色取り取り。じっと見ていると何処となく植物の葉脈や、節足動物っぽくの関節に見えてくる。目がくらくらした。
「これは所謂『恋愛の波動』を感知しマス。恋愛の波動と言うと怪しいデスが、つまり周囲一帯をサーチし、その中で異性と一緒にいる者を選択。その人物の体温や心拍数をサーモグラフィーで計測。恋愛感情にあると思われる物に反応する作りデス。……理屈は嘘発見器デスね」
カラオケとかに、ミニゲームで愛称が良い者同士を選ぶ占い機能があったりする。ゲーセンとかにも恋人同士でやるゲームがあるな。失敗すると気まずくなるアレだ。
今の時代、ネットで恋愛相談や占いが出来る。であればそれをオカ研が欲しがるのは理解の範疇。阿天坊先輩、恋人同士を見るとセクハラをしてくることで有名だし、ノリノリで注文したんだろう。応えて作る方も作る方だけど。
「ちなみに名前も決まっていマスよ。恋人同士の刻を計ると言う意味で、チクタk――」
「! 危ない」
津々美が良い終わる前に、僕と彼女は、憂さんから足払いを受け、床に転がされていた。
そして一瞬遅れ、頭上を何かが通過する。
銀色に光る何かは、さっきまで頭のあった位置を通り過ぎ、占い筐体に突き刺さっていた。
ナイフであった。
◆
「はあ!?」
「避けろ岩傘!
一瞬遅れて、警報装置の試作をしていた龍珠桃が叫ぶ。
声に言われてそっちの方を見ると、先ほどまで彼女を囲んでいた黒服の一人が、こっちに向かって走ってきている。理解が追い付かないが、えーと、つまり、龍珠組に恨みがある男が忍び込んで、組長の娘を狙ったという事か。また七面倒なことを!
そういやさっき、憂さんが警戒していた男が居たな。さてはアイツか!
何とかに刃物。このエリアが、そういうヤバイ世界に耐性がある人々ばかりで助かった。
これが中小企業ブースだったら間違いなくパニックになっていただろう。
警備員がざわっと騒ぐが、殆どの人間が護衛や従者を盾に背後に隠れ安全を確保。恐らくこの騒動が表に出る事はあるまい。
件の黒服は、目を血走らせ、刃を片手に走り抜けていく。ほんの僅かに血が付着しているところを見るに、護衛の誰かが身を挺して庇ったか。龍珠に怪我は無さそうだし。
目的を達成できなかった男の行く先は決まっている。広域指定暴力団の娘を襲ったのだ。コンクリートの中を経由して東京湾が相場だ。
そして後がなくなった奴は、節操なく暴れる。
追い詰められた黒服は、僕らの方に向かってきていた。
……あんにゃろうめ、龍珠桃とこっちが親しい(?)からって巻き込みにきやがったな?
一歩、憂さんが前に出た。
「お借りします」
そう言った彼女の手には、スタンガン手袋が嵌められていた。
僕は無言で下がり、津々美も序に下げておく。此処は護衛にお任せしよう。
「――シッ」
憂さんは風のように動いた。迫る男の足を踏み、相手が痛みで怯んだ瞬間に懐に潜り込む。そのまま関節を捕らえ、空中に放り投げて、頭から逆さに落ちる男の胴体に拳を当てる。刹那、バシィっという鈍い音がして電撃が黒服に浸透。焦げ臭い匂いがして、奴は壁際に吹っ飛んでいく。……流石、元傭兵。容赦がない。
「大丈夫か!? ――大丈夫そうだな」
そして直ぐに、混乱は収まった。
気絶した男は、警備員に連行されていく。その際、桃が何か黒服に指示を出していた。恐らく引き取り手続きと、後始末の諸連絡だろう。この場所で騒動を起こした責任を取る必要もあるだろうし。……ヤクザ怖い。
若干、このエリアに混乱は残っているが――他エリアにまで伝わっていることは無さそうだ。そして中断されていた商談や契約が再開されていく。これが一部の人間にとって非日常じゃないのも、かなり怖い。
まあ、でも、だ。
ここで例を挙げるのはなんだが、御行氏や石上はさておき、かぐや嬢ならこの程度、笑顔で切り抜けると思う。内心でビビっていても素知らぬ顔で切り抜けるだろう。それだけの権力と立場がある。そもそもの危険に近付けないのが四宮家の方針であっても……
「悪いな。ウチが原因で迷惑かけた。後日、詫びに行く。――お前のところの護衛強いな?」
「お母さんが拾って来た人だよ。もう十年以上は家で働いてくれてて……大事な家族なんだ。勧誘しないでね」
「お母さん? ……あれ? お前何時も
「……今のは聞かなかったことにしておいて。色々あるんだよ僕の家も」
しまったな、口が滑った。
龍珠桃は『まあ、お家騒動くらいは良くあるか』と納得して、それ以上の追及を辞めてくれた。ありがたい。
いや本当、僕の生みの母親は、今どこにいるのやら。
親父も、継母も、実母の行方は調べている(尚、前妻と後妻の関係だが此処も仲は悪くない。むしろかなり良い)がさっぱり足取りが掴めない。
定期的に貰っている、四宮かぐや嬢からのファイルで、生きていることは分かっている。
むしろ四宮グループの力で、やっと生存の痕跡が判明していると言っても良い。
表向きは戦場カメラマン。本当の職業は言葉を借りれば『探索者』。
憂さんも、元々はと言えば、生みの母が――紛争地帯で幼くしてゲリラ的活動をしていた彼女を拾い上げたという経緯がある。そりゃ強いのも当然だ。
「まあ、……なんだ、色々あって大変そうだが、今回ので借りを作っちまったな。どっかで返す。何か言ってくれりゃ出来る範囲で協力するさ。どうする? 私はもう帰る、っていうか帰らないと不味くなったが、送ってくか?」
「覚えておくよ。――まだ時間はあるから、このブース以外にも色々回ってから帰ることにする。気遣いだけ受け取っておく。表向き、特に何も事件が無かった……ってするならそっちの方が良いでしょ」
「それもそうか。じゃ、また今度学園で。藤原によろしく」
龍珠桃は帰って行った。
ナイフが突き刺さった、占いゲーム筐体も被害は少なかった。幾つかの配線が切れ、基盤がちょっと傷付いたが、交換すれば支障は無いとのこと。
「ここの展示が終わったら学園に搬入するヨー。その時は確かめに来て欲しいナ?」
「余裕があったらな」
ちょっとばかり時間を使ってしまったが、まだコンペ終了まで時間はある。
頼まれた以上、招待状を受け取って中に入った以上、これは仕事だ。出来る限り完遂したい。
それにロボットを見たいんだ。出来るだけ沢山見たいんだ。
津々美にも適当に挨拶して、僕は憂さんと再び、会場を回る事にした。
それからはさしたる問題もなく、一日を終える事になったのだが――。
「……そういえば、あのゲーム機、なんて命名されたんだっけな」
あの占いゲーム筐体の名前を、津々美が言いかけていた。その後の乱闘騒ぎで聞きそびれてしまったが……。まあ、良いか。数日後には搬入されるというし、その時で。
スーツを着たから肩が凝った。脱いで、ネクタイを外し、白のワイシャツだけになって、僕は後部座席で大きく背筋を伸ばし、欠伸をした。……千花に電話して、癒されておこうっと。
◆
「良し、治ったネー。これで学園に搬入できるヨ。これで学園に蔓延しているラブの波動を感知するのデス。頼みマスよー『チクタクマン』」
ゲーム筐体は、まるで何かに動かされているかの様に、チカッチカッとセンサーを明滅させた。
元ネタは「竹取説話」に出てくる『叩かずとも鳴り響く
トラブルを引き起こし、竹取物語とクトゥルフを結ぶ、色んな意味で貴重もとい便利な女。
ラブコメだけで全部やってく原作は凄い。