幼馴染で隣人で許嫁な彼女と惚気たい   作:金枝篇

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岩傘調は備えたい

 「当日のテーブルやインテリアの配置図です。かぐやさんからです」

 「はいはい。仕様書に入れておく」

 

 「メッセージカードと祝辞は私の方で手配しました。レイアウトもしました。後は刷るだけになってます」

 「それは明日印刷室に持ってく形だね。メッセージカードは念のため幾つか試作して、そっから選ぼう。紙質とかもあるし。……ああ、フランス語が出来る教員の人に内容を確認して貰って。千花の語学なら心配ないと思うけど確認は大事だ」

 

 「了解です。えーと……ノンアルコールドリンクや軽食は、当日に配達されます。式の開始が17時からなので、大体16時過ぎに届くように手配を済ませました。こっちは会長からチェック貰ってます」

 「石上へレシートとか領収書を渡すの、忘れないようにね。……あ、そうだ。倉庫の中の備品どうだった? テーブルクロスや額縁なんかが使えるのは確認してある」

 

 「グラスとかも大丈夫そうですよ。こっちは最悪、明日の設営後に追加しても間に合います。えと……明日の人員に関して、後輩は約10人来てくれそうです。天気にもよりますけど」

 「こっちも20人くらいは手配した。連絡したのが金曜日だったけど、生徒会から生徒に一括で連絡できるのは助かるね。……メンバーは大体が月曜日に参加してくれる人だ。参加が有志な分、皆やる気があって有難い。明日の天気にもよるけど」

 

 「……外、酷い大雨ですねえ」

 「各地で浸水被害、列車のダイヤは大幅に乱れて、不要な外出は控えるように、だってさ。今晩には大雨も落ち着くという話だけど、それまでは降りっぱなしらしい」

 

 「ネコミミ付いたままですねえ」

 「そうだよ。約束通りね。今日は土曜日だけど」

 「騙されましたぁっ!!」

 

 バンバンバン! と机を叩いて悔しがる千花だ。

 

 「歓迎会と猫耳のインパクトで、曜日を忘れて約束した千花が悪い」

 「ぐぬぬぬぅ……。良いですもん、どうせ月曜日には全員が猫耳ですもん!」

 「そうだね。御行氏もかぐや嬢も猫耳には賛成してくれたからね。最初はすっげえ目付きで喧嘩腰だったけど、一日経過する頃には慣れたらしいし」

 

 嘘である!

 あの二人が互いの猫耳を見て慣れるなんてことは存在しない!

 

 猫耳を付けたその時も『写真を撮りましょう』と提案がなされていた。

 しかし『もっと笑顔で……』と千花が頼んでも、両者、表情筋が緩まないようにするのに必死で、微笑みなんてものは浮かばなかったのだ。

 

 結局、写真は撮れなかった。

 そこで僕はさも自然さを装っておススメしておいた。

 

 フランスとの交流会時に付けておけば写真取れますね、と。

 ああ、そういえば集合写真なら待ち受けに出来ますね、と。

 

 自分でもナイスアシストだったと思う。二人は頷いた。そして歓迎会で使用することになった。

 そうしておけば、フランス姉妹校を出迎える時、僕と千花は再び揃いの猫耳を装着して行動することになる。とても良いと思う。

 

 最近自分はあの二人を後押ししているのではなく、千花と惚気る材料にしていないか? と不安であるが、……初心を忘れなければ大丈夫だ。きっと。

 

 「でも良く降りますねぇ……、庭突っ切るだけで一苦労でしたよ」

 「僕がそっちに顔を出そうか、とも思ったんだけどね」

 「萌葉ちゃんとか居ますから煩いです。それにこっちだと二人きりです」

 「そうだねぇ」

 

 外は大雨というか大嵐というか、天の底が抜けたような豪雨である。強風・波浪注意報まで発令されている。こういう日は外出せずに家の中でのんびりするのが一番だ。

 

 我が妹は『こういう時の方が良いから』と部活動で体力作りに勤しんでいるし、両親は(不運にも嵐が直撃してしまったが)二泊三日の温泉旅行で不在。居るのは憂さんだけだ。その彼女も『若い二人の邪魔をする気はありませんので』と自室に引っ込んでいる。

 

 かくして僕と千花は二人、岩傘家の食事の間にて、のんびりと歓迎会の準備をしていた。

 時刻は午前9時40分。まだ、朝は早い。

 

 ◆

 

 休日、僕はかなり遅くまで寝ている。というか休日の前日は、つい夜更かしをしてしまう。

 例え休日でも規則正しい生活を心がけなさい、と万穂さんから口酸っぱく言われている千花とは対照的だ。

 そして動き始めた時間、メールや電話をしても反応がない――僕が寝ているというのは、千花にとっては面白くない。だから休みの朝ともなれば僕を起こしに来る。

 当然の様に憂さんと妹にスルーされ、勝手に部屋の扉を静かに開け、そして。

 

 「起きて下さい! いーちゃん、朝ですよ!」

 

 と布団の上に座って呼びかけてくれるなんてイベントもある。

 意図的にやっているよね?

 狙って跨っているよね?

 アピールしているよね……!?

 僕は構わないのだ。色々見えるし揺れる。眼福だ。とても良い。とてもとても良い!最高!

 

 だけど千花にとっては楽しいのだろうか?

 一度疑問に思って尋ねてみたら「結構楽しいです。子供の頃に戻ったみたいで」と言われた。

 ……幼等部の頃など、一緒の布団で昼寝をしていた間柄だ。懐かしいなら結構だと思う。

 

 「ええと、……このくらいですかねえ、あとは明日、実際に会場設営をして、足りない分を補う感じでしょうか。明日の集合時刻は?」

 「午前10時に学園の正門前。僕はその前に行って鍵とか開けるー。千花は来る?」

 「お付き合いしますよー」

 

 前述の通り、家に押し掛けた千花に、朝8時に起こされた僕だった。

 手早く朝食(憂さん製)を済ませ、9時からせっせと交流会の準備に勤しんだ。

 

 結果、仕事そのものは一時間もしないで終わってくれた。殆どは細々したことなのだ。

 司会進行の手配は千花が目の前で処理。石上とはPC上でのやり取りで十分だ。というかPC越しの方が彼との会話は弾んでいる気がする。

 唯一、かぐや嬢と僕の仕事の擦り合わせだけがちょっと面倒だが(しかも夜十時には寝る超健康優良児である)、金曜日までの簡単な打ち合わせで凡そが終わってしまっていた。やっぱあの人は仕事が早い。僕の倍くらい処理能力を持っている。素直に尊敬する。

 

 「でもこの雨、かぐやさん達には直撃ですねぇ……。お二人、買い出しの日だったんですけど」

 「そうだね。まあ流石にこの雨だ、中止していると思うよ」

 

 蜂蜜を緑茶に溶かし、飲みながら答えた。

 どことなく辛気臭い天気には、熱いお茶が美味しい。飲み干した器に、千花が「どうぞ」と次を注いでくれる。その手付きが優雅で、素敵だった。触りたくなった。

 

 明日の準備は大体終わったんだよな――と思う。

 計画表と仕様書を確認。記入漏れはない。であれば、ここで千花とイチャイチャするのは問題がないと判断。手を掴んでスリスリしようかなーと行動に移――。

 

 ――そうとしたところで着信があった。スマホが震えている。

 惜しい。ちょっと残念に思いながら電話の相手を見ると、少しばかり珍しい名前だった。

 千花に一言断って、廊下に出て通話をオンにする。

 

 「ちっ、良いところを邪魔しやがって。何か問題でも起きましたかハーサカさん。またお仕えしているお嬢様に面倒ごとでも? 相応の理由があるんですよね?」

 「誰が貴方に用事がないのに連絡を入れると……? ――気になるのはかぐや様ではない。その相手の方です。貴方に伝えておいた方が良いと思って連絡したんです」

 

 四宮かぐや嬢の忠実なる近侍(ヴァレット)。早坂愛。

 尚、連絡を入れ合うと、互いに恐ろしく口が悪くなる。

 

 ◆

 

 四宮かぐやに、早坂愛という忠実な近侍が居る。

 その事実を僕が知ったのは昨年だ。白銀御行が大立ち回りを演じ、会長に就任した後である。

 

 言われてから気付いた。思い返せば――初等部から中等部、高等部と、早坂愛は四宮かぐや嬢と常に同じクラスだった。エスカレーター式の秀知院学園。同じ学年の面々は幼馴染みたいな物で『今度は君と同じクラスか。よろしくな』は良くある。

 

 しかし初等部では三年から四年に上がる際、クラス替えがあるし、中等部、高等部の進学時にもクラス替えがある。更に言えば高等部では、進路や学部でも左右される。最低三回ものクラス替えをして、三回とも同じ……というのは中々、いやかなり珍しい。

 

 それこそ僕と千花のように『許嫁なので一緒のクラスでお願いします』みたいな要望が、保護者側から無い限りは。

 

 「会長ですか? この雨では買い出しは中止になっている、と思っていましたが」

 「そうです。かぐや様にもそう伝えました」

 

 この早坂愛と言う女性、かなりの食わせ物だ。

 普段はギャルっぽい感じで制服を着崩し、口調もかなり軽い。しかし例えそんな状態でも、その眼は、どこか冷静に事象を捉え、かぐや嬢の脅威になるものは無いか、と観察している。

 

 口調や外見を巧みに変える変装(小細工)だけではない。優れた身体能力――少なくとも真夜中の秀知院学園に潜入し、そのセキュリティを掻い潜って生徒会室に侵入し、一切の痕跡なく学園外まで出てくる――を持ち、かぐや嬢からのあらゆる要望に応える技術を有している。

 

 勉学の成績はあまり良くないが、地頭が悪い筈もない。自分の時間が取れないのと、意図的に点数を落としているのと……幾つかの要素が組み合った結果だと思っている。

 

 「買い出しを中止したんですか。……そっちで品は手配できているんですね?」

 「言われるまでもなく、手配は済んでいます。昨晩、今日が大雨だと聞いた時から念の為に準備しておきましたとも。中身も、かぐや様に確認して貰ってあります」

 「それで、何が問題だと? 猫耳を生やした早坂さん」

 「黙ってくれます? 貴方のせいで、こっちは胃薬が手放せないので」

 

 僕が、かぐや嬢のサポートをしているのは、早坂も承知している。

 

 というか元々……『千花と御行氏をくっつかせないようにしよう同盟』を結んだ際、紹介されたのだ。それから僕が今まで、さりげなくかぐや嬢の背中を押したり、御行氏を応援したり、二人の関係を進展させるべく助力したり、千花と惚気るために全力なのは、ご承知の通り。

 

 最近は『これもう放置しておいても、かぐや嬢と御行氏、くっつくよね?』とか思っているが、それでもサポートを欠かす気は無い。生みの母の行方を探れるのは、四宮家の助力が在ってこその物だ。契約の途中破棄は信頼を損なう第一歩とも言う。

 

 「貴方はかぐや様に危害を加えない。知っている。応援しているのも知っている。だが貴方達二人の爆撃が、私に直撃するんです……! かぐや様のフォローをする序に、毎度毎回、惚気を見せられる、私には良い迷惑……! 対象Fの被害が拡大することもあるんですからね……!?」

 

 かぐや嬢のあるところ、早坂愛あり。

 僕がかぐや嬢の背中を押し、御行氏とのイベントのセッティングをすればする程に、従者:早坂愛の心労は加速する。おまけに僕は千花と惚気ている。時々暴走する。苛立つのも無理はない。

 誰にでも明るく接する2年A組の早坂愛。かぐや嬢の近侍:早坂愛。隠れ蓑を被ったハーサカ。色々な顔を持つ彼女だが、僕に対しての口調は一貫して、丁寧語の顔を被った毒舌だ。

 僕の方もその距離感が丁度良いので、特に修正を求めたりはしなかった。

 

 「こっちから動けない。貴方の方で連絡を取ってください」

 「確認します」

 

 近侍である早坂愛も、多少の権力は持っている。他の、かぐや嬢に仕える人々に対して、色々な指示を出せる立場だ。それをせず、僕に連絡が来たという事は――。

 これはちょっと緊急要件らしい。出来るだけ、かぐや嬢には内緒にしたい感じの。

 

 「二人の待ち合わせ場所は?」

 「渋谷駅ハチ公前」

 

 了解。ますます持って緊急らしい。外は大雨。であれば心配の予想が付く。

 分かったと返事をする前に、スマホの通話は切れていた。これも、何時もの事である。互いに余計な話をしない。さっぱりしている。気楽でいい。

 僕は二階に上がると憂さんに車の手配を頼む。そしてその足で、千花に今の要件を告げた。

 

 「ごめん千花。ちょっと用事できた。多分、御行氏が困ってる。助けてくる」

 「私も一緒に行った方が良いです?」

 「いや家の番をお願いすると思う。追って連絡するよ」

 

 返事を貰い、雨具とタオルを洗面所から抱えて運び、玄関前に横付けされた自動車に乗り込む。

 そして僕は行き先を注文した。

 

 渋谷駅、ハチ公前まで。大至急! と。

 

 ◆

 

 『はあ!? 渋谷駅の前でずぶ濡れでかぐやさんを待ってたんですか!? 会長!』

 

 「そうだよ。今回収した。傘もとっくにボロボロ! 頭の上に雑誌乗せて辛うじて凌いでたんだよ! どっちもごみ箱に捨ててきた。――スマホを見て寂しそうに佇んでいた所になんとか間に合った! もうちょい早ければ良かったんだけどね。遅いと取り返しが付かなかったから、良しとしよう」

 

 もう少し遅れていたら、ずぶ濡れのまま、御行氏は一人寂しく帰路に付いていた。

 連絡は取れるが時間と手間が余計にかかったのは間違いない。間に合って良かった。

 

 『……律儀と言うか……なんというか……! 真面目な馬鹿ですか!?』

 

 「そうだよ。意外とそうなんだよ。今までは、そういう場面に出会う機会が無かっただけで、そうなんだよ。――そういう訳で悪いけど、風呂の確認を頼む。入れ方は分かるよな? で、まだ封を切ってない下着が上下、箪笥の中にあるから、それを出しておいてやってくれ」

 『分かりました! 待ってます!』

 

 「あ、あとかぐや嬢にこの事情伝えちゃダメだよ。自分のせいで、って気にするから」

 『え? ……なるほど。分かりました。じゃあ烏賊の画像でも送っておきます。昨日は蛸の画像送ったんで。暖かいお茶の準備もしておきます。急いで戻ってきてくださいね?』

 

 蛸ってなんだよ。

 通話が切れたのを確認して、僕は、大丈夫か? ともう一枚のタオルを差し出した。

 

 御行氏は濡れ鼠だった。頭から足まで、濡れていない場所は無い。純金飾諸すらもびしょびしょだ。仮に制服から外れて遺失でもしたならどうするんだ、全く。

 タオルで顔と髪を拭った御行氏は、大きく息を吐いて、こっちを見る。

 

 「すまん、助かった。座席も濡らしてしまったな」

 「そんなのは良いんだよ。それよりもっとちゃんと拭けよ、風邪引くぞ。学ランの上も脱げ。靴下も脱いどけ。取り合えずウチに向かってる。ウチで風呂入って温まっていけよ」

 「そこまで世話になるのは。……いや、そうだな。世話になる」

 

 僕の目が笑っていないのに気付いて、彼は素直に返事をしてくれた。

 

 何故、あの大雨の中で、待っていたのかは分かる。

 かぐや嬢を待っていたのだ。律儀に待っていたのだ。約束を違えず、遅刻せず、他人を気遣って自分が損をするのを厭わない。彼はそういう人間だ。

 それでも気になる事、確認したい事はある。

 

 「この大雨だ。中止の連絡を入れても良かったんじゃないか?」

 「……そうだな。岩傘の言っていることは、正しい。……ただ、したくなかった」

 「自分から中止にしたくなかった?」

 「そうだ。女々しいと思うか?」

 「いや。思わない。そういう理由で良かったと思う。分かる」

 

 気にすんなよ、と僕は慰めた。車の中が濡れたことなんか些細なことだ。

 中止にしたくなかった。好きな人と一緒に居たかった。その機会を捨てたくなかった。

 奇しくも早坂に毒を吐いた僕の気持ちとそっくりじゃないか。

 その答えを聞きたかったんだ。

 

 「買い物が出来なかった事を残念に思う気持ちも、白銀から中止のメールを打てなかった事も、間違いなんかじゃない。むしろそれで良いと思う」

 

 恋愛関係と言う部分では、彼より何歩か先に居る僕だ。

 揶揄う気持ちもなく、至極真面目に、僕は話す。慰めるなんて柄じゃないけど。

 

 「女の子や、周囲の環境に振り回されるのも、男の特権だ。そして、振り回されてもまだ前を向ける気持ち――その残念に思う気持ちや、女々しさってのが、そのまま白銀が持っている『好きだ』という気持ちの強さを表していると思うよ。無関係な人間との口約束が守られなくても、無関心で終わるだろう? 逆に辛いとか残念だとか、そういう風に感情が動くなら、その分だけ深い部分まで届いてるってことだ。胸を張って良いんじゃないか?」

 

 僕の言葉に、御行氏は、ちょっと驚いたような顔をした。

 何かおかしなことを言ったかな。

 

 「いや、……岩傘が、そこまで真っ当な慰め方をしてくるとは思わなかった」

 「酷いな。それじゃあ僕が毎日、惚気ているだけみたいじゃないか」

 「惚気ているだろうに。……それと言っておく。俺は別に、四宮とのデートを心待ちにしていた訳でもないし、好きな訳でもない。飽くまでも――」

 「飽くまでも、生徒会長として、月曜日の親睦会を完遂する為に、副会長と協力して事に当たらねばと思ったんだろう? 分かってる、分かってる。皆まで言うな!」

 

 互いに視線が交錯する。

 そしてほぼ同時に、噴き出していた。

 

 「ふふ、くく、そうか。そうだな! お前は何も知らないことになっていたな!」

 「そうそう。だから気にするな。何も言わない! 何も伝えない! 僕と千花の為にも、誰かと誰かには進展して欲しいと思っているが、それは君とは何も関係がない人だ!」

 「そうだったな。これからも何か相談に乗って貰うかもしれないが……」

 「いやいや。困った時の助言は石上に頼めば良い。アイツの助言はストレートだ。……僕は素知らぬ顔で切っ掛けを作っておくさ」

 

 僕は唐突に、雨の中に濡れる、渋谷のハチ公を見たくなって我儘を言ったのだ。

 そして偶然にも雨に濡れる生徒会長を保護した。そういう事にしておこう。

 

 本当、手のかかる友人達だと思う。だけどそこが良いところだ。

 それが僕が生徒会で頑張れる原動力だ。

 

 生徒会に入って間違いなく良かったと思う事がある。

 それは、白銀御行と四宮かぐやの素顔が見えるという事だ。

 

 普段は周囲から神聖視され、時に信者すらも存在する彼らは、しかしただの高校生なのだと実感できる。手が掛かる出来事がある毎に実感する。そんな皆をこの目で見るのが楽しい。

 

 千花と惚気るのは別格。

 だけど千花と惚気るためだけなら、生徒会なんか所属しないで良かった。

 僕があの場所に居るのは――皆を見ながら、あの場所で、時に勝負をし、時に協力し合い、騒がしくも過ごす時間を作るためだ。面倒な奴らだな! と思いながら応援したいからだ。

 これ以上なく貴重な時間。全力な姿は、きっと将来、尊い物になる。

 

 「ほれ、ウチ着いたぞ。ついでだ。昼飯くらい食べていけよ。……いや違うな。今丁度、僕と千花で月曜日の打ち合わせをしていたんだ。君は生徒会長として、それが正しく出来ているかを確認する義務がある。そして長引き()()昼食の時間になったから席に着いた。OK?」

 「ああ、そういう話ならしょうがない。付き合うさ。手間のかかる広報と書記だな?」

 

 雨に濡れながら走り、揃って玄関に飛び込む。

 僕と白銀が妙に仲良く笑っていた姿を見た千花は、呆れていた。

 

 「会長も結構な馬鹿だったんですねー。大雨の中待ち続けるとか、格好いい馬鹿ですけど」

 「新鮮な一面が見れたという事にしておけ、藤原書記。四宮には内緒で頼む」

 「僕からも頼んだ。こっちで適当に誤魔化しておくから、黙っててあげて」

 

 はいはい、と返事をする千花も『やっぱり男の子ですねー』と呆れてながら、笑っていた。

 

 ◆

 

 「ねえ、岩傘広報? なんで会長と藤原さんと貴方の三人で、土曜日に仲良く打ち合わせをして、食事をしていたのです? 私が居なかった理由をお聞きしても良いでしょうか?」

 「いや、石上も居ませんでしたけど……」

 「はい?」

 「……ナンデモナイデス」

 

 月曜日、かぐや嬢から、笑顔で詰問される僕が居たりしたのだが、これは些細なことだ。

 適当に誤魔化すと言った以上、本当の事は隠し通しておかねばなるまいて。

 それよりほら、フランス校を歓迎しようじゃないか。

 勿論、猫耳を忘れずに、な。




なんだかんだ仲が良い男子達(石上含む)。

「女子(かぐや)があんな風に反応する理由が分からない」と相談されるのが石上。
理由:岩傘は千花一直線で互いに惚気るので、女子の反応や理由に関して全然役に立たない。

「相談されないでも事情を知り、女子(かぐや)と仲直りできるシチュエーションを準備しよう」と手配するのが岩傘。
理由:この時期の石上は生徒会以外と打ち解けておらず、学年も違う為。
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