幼馴染で隣人で許嫁な彼女と惚気たい   作:金枝篇

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岩傘調は射貫きたい

 「それでもう、かぐやさんがずーっとゲラゲラ笑ってくれたんですよ! もう私は嬉しくて嬉しくて、人って変われば変わるんだなーと思いました!」

 「確かに楽しかったね」

 

 生徒会室で妙に大きな笑い声が聞こえてきたと思ったら、千花のち○ちん発言である。

 そりゃ驚いて御行氏も逃げ出すわ。

 何を会話しているんだと恐る恐る覗いたら、ペスの話から只管にかぐや嬢を言葉攻め(比喩表現)していた。適当に話を合わせてきたが、その際の、かぐや嬢の表情が忘れられない。

 

 『鮭と野菜を味噌で炒めた料理は?』

 『ちゃんちゃん焼き?』

 『あーはははははははははは、やめて!止めて!藤原さん!』

 

 バンバンと机を叩いて爆笑するかぐや嬢に対しての千花の顔は。

 好きな娘を虐める小学校低学年男子の如く。

 

 『雀の鳴き声は?』

 『ちゅんちゅん?』

 『艦娘が居る』

 『鎮守府(ちんじゅふ)

 『空心菜と』

 『青梗菜(チンゲンサイ)?』

 『Requiemを日本語で』

 『鎮魂歌(ちんこんか)

 『ゲーム【アンチャーテッド2】でキーアイテムとなる伝説の宝石は』

 『チンターマニ石……』

 

 と、この辺までポンポンやっていたら、遂にかぐや嬢が床に倒れこんだので、慌てて逃げてきた。まあ下ネタを気楽に連発できるってのは、性別の垣根を意識せずに距離を縮める良い特徴だと思っておこう。

 これでもうちょっと、かぐや嬢が年齢相応の性知識を有していると、えげつないレベルの会話になる(クラスの女子みたいにね)。僕のやり取りとて、一歩間違えればセクハラだ。千花と一緒だからこそ許される感じがある。後でごめんなさいと伝えておかねば。

 

 幸い、僕相手に話をしている時は連発しないし、その辺は、お年頃、という事か。

 大体そういう艶っぽい話をすると、洒落では終わらなそうだしな、僕と千花の場合。

 

 「昔は、氷のかぐやさんって感じそのままで、接するの大変でしたもんねー」

 「千花は全力で距離を詰めて行ったじゃん……。僕は中等部時代の彼女とか、遠目で伺うだけだったよ。真面目に関わったのは、一年生の、千花の家にかぐや嬢が来て以来だ。……人は変わるって良い証拠だな」

 「そうですよ。――いーちゃんも変わって良いと思いますよ?」

 

 変化球からストレートに変わってボールが飛んできた。

 参考書から顔を上げると、じーっとこっちを見ている千花と瞳が合う。

 

 「むっ、その顔は、今ここで!? という驚きですね!」

 

 ずばりと僕の内心を的中させて、彼女は続ける。

 

 「変わらない関係なんて無いんですから。勇気をもって踏み出してきてくれて、良いんです!」

 「……まあ、今の関係が居心地よくて壊せないというのは、ある」

 「それは永遠じゃないですからね? ずっとは無理です。生徒会だって、秋に解散じゃないですか。勇気を出して踏み込んでくれるのを、私は待てますけど、世間は待ってくれませんよー。お姉ちゃんとかお母さまから『進展した? 孫の名前を考えておいた方が良い?』って聞かれるんですからね私!」

 

 まあ……不純異性交遊をしても見逃してくれるのは、複雑だが喜んでいい、のだろう。

 両家の両親が関係進展に協力的なのは、悪いことじゃない。

 

 「むむむ。それは、まあ、僕の甲斐性無し、と言って良いか」

 「そうです! 甲斐性無しーって言ってやりますよ!?」

 

 ラブ探偵チカ、周囲へのアドバイスも強いが、僕への攻め方も上手い。

 貫禄がどんどん増してくる。適当な対処方じゃ押し切られる。ホント、成長したよね。

 僕が育てたと言い張れれば良いのだが、僕の為に育ってくれたと表現した方が正しいと思う。

 

 「この前、90点以上で、お金で買えない何かを要求して良い、って話してましたよね」

 「してたね」

 「私は『夏休みのいーちゃんの時間』を要求します! GW(ゴールデンウイーク)潰れちゃいましたから」

 「……分かった。良いよ」

 

 千花の目は本気だった。捕食者の目であった。なんとなく僕は背筋が寒くなる。

 いや、此処で退いたら男が廃るか。……受けて立つしかなさそうだ。

 

 千花の目に怯えて、勉強指導の熱が冷めるというのは愚の骨頂。彼女の挑戦状に対して、真正面からぶつかり、千花より良い点数を取って、彼女を追い込むような要求をする。それで対等だ。

 

 「じゃ、その為にも、続きをしよっか。……漢文は、もう一個の別の言語だと思って学習した方が早い。古典は――時間かけるしかないな。どうしても量が必要だ。コツはあるけど」

 「はーい」

 

 こうしてテスト前の日々は過ぎていったのである。

 

 ◆

 

 僕と御行氏の席が近いことは前にも話した。テスト前の彼の状態は(じっくり観察している訳ではないが)、落ち着いている。……嘘だ。落ち着いているように見えて、緊張しまくっている。

 公衆の面前で、それを尋ねたことは無い。

 ただこれでも一年生の頃からの付き合いだ。

 彼の気持ちが分かる、とは間違っても言えないが、慮っても良いかなくらいには思っている。

 

 『白銀さんは、何か一生懸命になることは無いんですか?』

 『……俺にはそんなものはないですよ、岩傘さん。この学園だって、親父が願書を出したら、偶然に補欠合格をしただけです。制度が整っていたから、来ただけで』

 

 去年、そんな会話をした。あの時の彼は、何処か捨て鉢だった。

 先代の生徒会長が、彼を生徒会に入れて、その後に大立ち回りがあって……。

 人は変わるか。その通りだな。

 

 『良かったな、無事に生徒会長だ。白銀会長。――いや、それだと固いな。御行氏?』

 『好きに呼べ。だが俺が生徒会長になった以上、岩傘。お前に拒否権は無い。入れ』

 『……分かった。微力ながら手伝わせてもらう』

 

 そんな彼が、今では生徒会長。そして学年一位だ。其処に並々ならぬ執着がある事は分かる。

 理由はきっと、かぐや嬢だ。

 

 白銀御行。生徒会長。学年一位。だが肩書を外せば、彼は普通の人間だ。白銀の家の場所は知っているし、我が妹経由で、圭ちゃんの話も知っている。

 言っちゃ悪いが情報収集に関しては(それこそ四宮家の力を借りねば分からない我が母レベルの情報でない限り)、大体の事は掴みとれる岩傘家だ。御行氏が、普通の等身大の男なことくらい、とっくの昔に知っている。

 

 僕も千花もかぐや嬢も、今の生徒会の肩書がなくなっても……別の肩書がある。御行氏は、そうではない。それが彼が、何よりも真摯に努力する理由だと思う。

 ……好きな相手の為に全力を尽くす。

 その点、僕と御行氏は、なるほど、どこか似ているのかもしれない。

 

 だけど絶対に違う点が一点。

 僕と千花は最初から距離が近かった。御行氏とかぐや嬢の距離は遥か遠くにあった。それが今ではあの距離で、あの態度だ。僕と千花が10年以上使って培った距離を、彼と彼女は一年で越えつつある。

 

 だから僕は御行氏とかぐや嬢を――白銀御行と、四宮かぐやを、尊敬している。

 

 恋愛的な意味でベテランの僕と千花だが。……二人の、成長性と、そしてなによりも見据えている未来の形はずっと遠い気がしている。それらへ向かうエネルギーの源は、本当に強く激しい感情だ。ある意味、僕らよりずっと情熱的だと思う。

 

 「……負けて、いらんないか」

 

 代わっていないように見えて、少しずつ周囲は変わっている。

 取り残されるのは嫌だ。全方位を見て、色んな人にぶつかって、成長しなければならない。幸い僕は広報。人脈と、凄い人には縁が深い。どうせ活用するなら出来るだけ、だ。

 

 今更慌てても点数は変わらない。だが45分間、休まず走るための集中力は大事だ。僕は無言で小瓶を取り出し、緑茶に溶かさずに舐めた。蜂蜜の味と共に、頭の中が冴えていく。

 違法薬物でもアルコールでもない、ただの甘味(効果強)だが、これを使う事を卑怯だとは思わない。……頭が良くなるのではなく、頭の栄養を補給するだけだしな。

 

 「――始めっ」

 

 試験官の号令を前に、僕は筆を執った。

 

 ◆

 

 『およそ全ての問題において、明確な「解答」がある。数学なら「正しい式と解」がそうだし、社会なら年代や単語・写真なんかがそうだ。それは国語でも変わらない。――良く勘違いされるが、国語が一番、明確なんだ、そういうの』

 

 『読書感想文』という課題がある。何か本を読んでそれに対する感想を書く、あれだ。

 あれに困った事は一度もない。苦戦する人も居るらしいが……、ま、それは良い。重要なのは『読書感想文』に「不正解は無い」ということだ。文章の上手い下手はある。表現や、漢字間違いや、解釈違いはあっても、AさんBさんが居たらどちらの解答も「正しい」訳だ。

 しかし試験でそれがあってはいけないのだ。国語の解答で「Aさんの答えもBさんの答えも、どっちも正しい」が成立してはならない。

 

 『だから国語は、むしろ他教科より非常に厳密に、論理的に、答えが決まっている。『誰が何を言おうと、この問題の答えはAです』という明白な根拠が存在するんだ。……だから、それを読み解く。そして国語は、一定の文章を読ませた上で、問いに答えさせるという形式を取る以上……、文章の中に絶対に答えがある』

 

 僕が千花に行ったのは、とにかく、問題文をしっかりと理解させる事だった。

 これは決して『何を問われているかを確認させる』に留まらない。問題文が指している文章Aは、課題文の中で何と言われているかとの摺り合わせだ。

 

 数学では、問Aを数式にし、それを定式に当て嵌め、計算し、解答を導く。この時、数式と答えは「(イコール)」で結ばれる。

 国語でも同じだ。問Aの文章は、論文中のどの単語と等しいのか、その表現と同じ意味なのかを把握させる事に努めた。

 

 これなら国語と合わせて、千花の日本語力の低さをフォローできる。間接的に他の教科を強化するのにも繋がるだろう。

 

 「(余分に時間を取って、出来る限りは教えた。……理科や社会なんかは、数字や番号、法則、年代や単語なんかの暗記部分が大きいから、教えるにも限界がある……。後は千花がどこまで食い下がれるか、だ。……僕も余裕がある訳じゃない)」

 

 試験時間はたった45分。たかが45分。されど45分だ。この45分×5教科に、学生生活の一端が濃縮される。決して疎かにしてはいけない。疎かにすると、必ず後悔する。

 30分程で国語は無事に解答をし終わった。見返しても、迷った部分は無い。きちんと答案用紙に名前も書いてあるし……見落としをしている場所もない。二度、三度と確認する。得意科目なんてこんなものだ。数学だと『時間が足りない……!』とか言いたくなるが……。

 これも相対性理論って奴だろうか。

 

 「(……試験に限らず、恋愛に正解があればいいんだけどね)」

 

 最も明白な答えを出すのが難しい課目は……家庭科とか保健体育辺りか。選択式なら兎も角、筆記だと個性が出る。しかし恋愛は、それに輪をかけて難易度が高い。

 90点以上一つで、何か一つ、金で買えないものを要求して良い。

 

 さて僕は何を選ぶべきだろうか。

 恋愛は戦だというが。この問題には、答えどころか勝敗も無いのである。

 

 ◆

 

 今回の後日譚。

 というかテストの成績結果。

 定期試験の結果が張り出されたのは、二日後だ。全員が目にする廊下のど真ん中に、順位が記載されている。

 

 一位:白銀御行。492点。

 二位:四宮かぐや。487点。

 

 5点差である。……1問の差ではないな。5点分の問題を1問間違えただけ、というのは二人のレベルではまず無い。あのレベルまで行くと、如何に「点を取るか」ではなく「減点されないか」が焦点になる。出された問題を全部解答するのは大前提……、そこから如何に出題者の意図に沿った満点の回答を叩き出せるかがポイントだ。

 

 実際、昨年、三学期期末に行われた試験では、御行氏は500点満点(ALL100点×5とか初めて見た)。かぐや嬢は497点。難易度的に、かぐや嬢も500点を取る目は十分にあった。それが取れなかったのは、出題者の意図を汲み取れたか否かの差だ。

 

 三位:四条眞妃(486点)も似たようなもんだろう。

 

 ちょっと下がって、六位:豊崎(474点)や七位:柏木さん(471点)まで行くと、明白に『あの問題が解けなかった』が出てくる。……まあ、この辺は良い。

 十位:津々美竜巻(467点)。アイツ社会が全般的に酷い割には他が高いんだよな。

 

 「……まあ、そうそう簡単じゃないか」

 

 そこまで名前を確認して、やはりなと思った。自己採点をして、凡その点数は分かっていた。合計点は450から460点と言ったところ。トップ10は入ろうと思って入れる場所ではない。テスト前に思い立って行動をして滑りこめるような場所ではない。

 分かってはいたが、こうして数字を見ると少し……いや、大分、悔しいな。過去最高点ではあるが、それでも20位以内にすら入れていないのは、悔しさが勝る。

 

 「23位、か」

 

 数分後。僕は男子トイレの洗面台の前で、顔を洗っていた。

 

 ――少し、疲れた。

 

 眼鏡を外して、目元を抑えていると、背後の個室が開いた。

 

 顔を出したのは御行氏だ。……実は、さっきから聞こえてきていた。かぐや嬢に勝った喜びを、発散させていたのだ。基本的に聞こえないようにシャドーボクシングで済ませているが、ガッツポーズと喜悦の言葉は、例え個室の中に居ても耳に届く。

 

 「……流石だな、御行氏は」

 「岩傘も十分高いだろう。過去最高だ。……鏡越しに睨むな、お前は裸眼だと目力が強過ぎる」

 「睨んでいたか?」

 「ああ。悔しいと顔に出ている」

 

 御行氏は隣の蛇口を捻って、手を洗いながら、僕に諭すように言う。

 

 「なあ岩傘。お前、真面目にテストで上位を狙ったの、実は高等部に来て初めてじゃないか?」

 「僕は、何時も真面目だ」

 「じゃあ言い方を変えよう。()()()()()()()()()()()()は、初めてじゃないか?」

 「…………かもね」

 

 その通り、かもしれない。

 別に今までは手を抜いて居たわけではない。

 程々に勉強をして、程々の点数を取っていた。程々で、他人から余計な口出しをされない成績を維持できていた。親からも何かを言われたことは無い。

 けれども今回、本腰を入れた。

 

 「岩傘、お前はだから悔しいんだ。……悔しいというのは、その分だけ努力をしたと、自分で自覚をしている人間が持つ感情だ。違うか?」

 「…………そうか。そうだな」

 

 得る悔しさは、結果を得るまでに努力した分だけ、大きくなる。

 そして指摘は、正鵠を射ている程に、痛みとなる。……他人からの指摘を、受け入れられなくなったら人間は終わりだ。成長する機会を捨ててはいけない。

 

 ニャルラトホテプに勝てない事の悔しさとは、また別だ。

 あれは敵愾心がある。断固たる意志を持って対決できる。

 だが今回のこれに敵はいない。敵は――ベタな言い方をすれば、自分自身だ。

 

 ハンカチで顔の水滴を拭って、眼鏡をかけ直す。

 裸眼だと目力が強くて怖い、と言われて――確かにド近眼なのもあるが――千花に選んでもらって、掛けた代物だ。久しぶりに鏡で見る自分の瞳は、思っている以上に険しかった。

 

 「みゆ……、いや、白銀。……ありがとな。また色々、頼む」

 「テスト前は勘弁だぞ。俺も余裕が無い。お前の惚気話を聞くのも遠慮しておこう――だが、それ以外で良ければ、何時でも来い。な?」

 「ああ、そうさせて貰うさ……!」

 

 背中を叩かれて激励された。……お礼とばかりに叩き返す。

 鏡越しに視線を交錯させて、僕は顔を上げた。目の険しさが消えている。

 

 友情ってのは本当、嬉しい物だ。愛情とどっちが強いかを論じるのは無意味。此処で僕に色々と教えてくれて、自覚を促してくれた。得難い経験で、得難い絆だ。

 よし、元気になった。

 千花の点数を聞きに、行こう。

 

 元気になった僕が掲示板の元まで戻ると、千花はこっちを見つけて手を振ってきた。

 

 「名前! 名前ありましたよ! ギリギリ49位です……! 総合得点412点……。国語の大幅成績アップが、響きました!」

 「……やるじゃん!」

 

 思わず返す。

 地頭は良いし、学業への姿勢も真面目なのだ。ならばベース部分をきちんと整えてやれば、今まで不安定だった分野も安定する。土台の上に家が建つように、千花の成績は上がった。

 これで万穂さんからお小遣いを減らされることも無いだろう。

 同時に『また勉強をお願いね』と頼まれることになりそうだが、これはバッチコイだ。

 

 「でもー……90点以上は、一個もありませんでした……」

 「そっか。僕は、国語が無事に100点だ。……社会も92。二つ分、お願いが出来るね?」

 「はい。なんでも、どうぞです」

 

 しゅん、とした千花を見ていたら、自然と口から言葉が出ていた。

 可愛がりたいなと思ったが、そういう煩悩とは別の言葉が、出ていた。

 

 「僕のお願いが決まった」

 

 頭で意識した言葉じゃない。

 一番適切な言葉というのは、考えないでも出る台詞なのだろう。

 

 

 

 「()()()()()()()()()()!」

 「……ぇっ」

 

 

 

 どよどよっ!! と周囲が動いた。

 あれ? 今()()()()()()()と言って……言ってねえな!?

 でも意味は伝わるよな? 伝わってるよな!?

 

 「約束の通りだ。千花に拒否権は無い!」

 「……いーちゃん! それでこそですよーっ!」

 

 ぱくぱくと口を開けた後、千花はぱあっと花が咲いたように笑うと、僕の元に飛んできた。

 慌ててキャッチする。此処、公衆の面前なんだけどね! 周囲の視線が集まり、更に盛り上がった。ちょっと抱きかかえて、邪魔にならないように、そのまま壁際まで下がる。

 

 「言質取りましたからね!? 逃がしませんからねっ!?」

 「ああ、うん、そうだね?」

 

 ひょっとしたら地雷を踏んだのかなーとか思った。

 発言は計画的に! と理性が忠告したが。

 しかし冷静に考えれば、今までは千花の突拍子もない発言に攪乱されてきた訳で、此処は自然体で翻弄するというプランを考えても良いのかもしれない。

 

 「今の台詞ってアレよねきっと」

 「アレだよな『お前が欲しい!』的な」

 「そういえばテストの順位見て喜んでたし」

 「という事は遂に進展しちゃう……!?」

 「あの二人が遂に……神の領域に……!?」

 「誰か暗殺者(アサシン)呼んで来いよ……畜生……っ!」

 

 聞こえてるぞ外野! と言いたかったが、至近距離にあった千花の顔が、何を想像しているのか、にへにへーと緩々だったので、それを崩すこともないか、と自分に言い聞かせる。

 夏休みに何が起こるか、その時間で何をするのかは、決めた訳じゃない。ただ勇気をもってまず一歩踏み出しておいただけ。それだけだ。

 

 「一応聞くけど、嫌じゃないよな?」

 

 小声で、彼女の耳元で囁く。

 僕の言葉に、千花は――。

 

 『そういうのは聞いちゃダメですよっ!』

 

 と、言いたげな笑顔で、僕の唇に人差し指を当てて、塞いだのであった。




 各自の順位と得点内約

 藤原千花:49位(総合点412点)
 備考1:周囲からの足の引っ張り合いに巻き込まれる(これは岩傘がフォロー)。
 備考2:国語・英語の成績が悪い。マルチリンガル故の弊害。日本語の読解力に難があるのに加え、英文の中にスラングや、フランス語の単語がぽろっと混ざってしまったりする(こちらも岩傘がフォロー。ケアレスミスは防げないが、読解力を上げるのに尽力した結果、順位が大幅上昇)。

 白銀御行:1位(総合492点。ほぼ100点ALL。数学で若干減点)
 備考:会長のレベルまで来ると『解けない問題』は無い。最大のハードルは『時間』。
 頓智やナゾナゾに弱いのは明言されている。恐らく『正当な手順を踏むと誰でも10分15分で解けるが、閃けば中学生でも5分で解ける』タイプの問題に引っかかると、時間がギリギリになり、結果、説明不足で減点されるとかだろう。そういうのが無ければ100点を取れると思われる。
 英語も多分100点。図書館にはリスニング教材も大量にある(実際、交流会の後で態々フランス語講座を勉強している)ので、彼が努力を怠る事は無さそう。

 四宮かぐや:2位(総合487点。数学100点。他教科で13点分減点)
 備考:会長と同じく『解けない問題』は無い。会長と大きく違うのは勉強時間(かぐやは23時には寝ている)から来る、天才故の効率性ではないかと推測。
 例えば英語の問答で、出題者の意図を読み取って『敢えて固くないラフな返事をする』などの「雑さ」が無いため『正しいけど満点ではない』と採点されて減点とか。

 津々美竜巻:10位(総合467点。数学理科が100点)
 備考:人物や人名、国名、地名等に非常に弱い。年表を丸ごと頭に入れる事である程度は対応しているが、歴代総理大臣の名前と顔が一致しないとかザラ。日本史でこうなので、世界史は更に酷い。それでも10位というのは驚異的だが。

 岩傘調:23位(総合448点。国語100点)
 備考:数学は単純に計算速度が遅い。英語はリスニングが苦手。とは言え全ての問題に触れ解答し、難問相手にもしっかり部分点を稼いでこの順位。
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