名簿順に、主人公まで入れて並べるとこうなりますね。
安西(3番) → 岩傘調 → 風祭豪 → 柏木渚 → 四条眞妃(12番?) → 白銀御行(13番) → 田沼翼 → 豊崎三郎 → 藤原千花(23番)。
そして「30話 負けられない」で学年人数が、2年は192人、1年は199人と判明していますね。
「恋愛戦術」P75には1年F組の田中君が紹介されています。
1クラス32人が6クラスだと、丁度192人になります。
2年生もこんな感じなのでしょう。つまり2年A組からF組まであり、合同授業がAとB、CとD、EとFで行われるという感じです。
54話 岩傘調は飾りたい
秀知院では、主要五科目以外の教育も充実している。
例えば、家庭科。外食や飽食が多い学生らの為、かなりしっかりとした指導が行われている。
本当に『台所に立ったこともありません』という生徒はかなり珍しいにせよ、居るには居る(四宮家とかね……)ため、基礎から応用まで非常にしっかり教育される。
模試や学内試験での対象でこそないが、通知表にはしっかり記載されるのである。
『生きている魚をそのまま捌くことが出来ない!』
これは我らが生徒会長(前期・次期)の言葉である。
なんと家庭科、魚を活〆するところから始めるのだ。頭に一発、包丁でドカンとするアレだ。
どうしたかって? しょうがないので、千花と僕がつきっきりで指導した。
僕が応援する中、千花は躊躇なく魚の眉間に刃をぶすり。そのまま三枚におろしてしまった。
花嫁修業の成果である。僕は幸せだ。
慣れた手で懇切丁寧に指導される白金は、宛ら手のかかる息子。何時だったか音楽の指導をした際に感じた『僕と千花が夫婦で白銀が息子』イメージが再び頭に浮かんだくらいである。
……まあ白銀以外にも、活〆がダメだった生徒は多かったらしく、切り身からの調理になってしまったのだがね。
さて、主要科目以外で、家庭科以外の話。
国語・数学Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ/ABC・理科(物理/地学/科学/生物)・社会(日本史/世界史/地理)・英語。
これ以外には、保健体育、家庭科、選択授業がある(希望者は第二外国語等も受けられる)。
選択授業は「美術」「情報」「書道」「音楽」の四科目。1教科につき2回まで選択可能。
当然、僕は千花と常に同じ授業だ。1年生の時は千花と同じ「書道」。
2年生の前半は「音楽」。
なんか結果的に四宮さんや早坂とも一緒だったが、これは偶然だ。
で、2年生の後半……現在は「美術」を選んでる。
これに関して、生徒会の解散前に……面倒くさい――もとい既に日常風景となった、相変わらずの恋愛(ポンコツ)頭脳戦が繰り広げられたのだが、結果として白銀と四宮さんは同じ授業を選択出来た。
つまり「美術」の時間、2年生の生徒会メンバーは勢揃いすることになったのだ。
そして現在は――第1回目の授業が終わった、直後である。
「ぐぬぬぬぬ、技量が! 足らない!」
イーゼル台の上に置かれた画用紙を前に、僕は嘆く。
周囲で片付けしていた皆が『お、おう、そうか』という顔をしている。
今日の授業は、名簿が近い面々での互いの似顔絵描きだった。
僕の相手は顔馴染み(だが会話は殆どしたことがない)なA組の男子。彼との授業は何の問題もなく終わらせた。今やっているのは、言うなれば自習もとい自主練である。
授業が6限目だったのも幸いした。
眼鏡の女性美術教師は『好きにして良いよ』と許可をくれた。
そこで僕は千花を誘ったのである。
だってさ、考えても見て欲しい。
白銀と四宮さんは仲良く向かい合って授業。
千花は早坂愛と仲良く―― 仲良く、か? あれは? 早坂は笑顔で嫌がってたが ――向かい合って授業。
そんな中、僕は一人、殆ど見知らぬと言って良い男子と向かい合っての授業である。
フラストレーションが溜まるじゃん! 色々と我慢した物を発散したくなるじゃん!
でも悲しいかな! 僕はその情熱を叩きつけられるだけの技量が無い!!
「そんなに悔しがらなくても良いじゃないですかー」
「いいや、悔しがるね! 白銀の絵とか凄く上手だっただろう!」
ということで少しだけ暇をしていた千花をモデルに、絵を描こうと思ったのだが!
腕が足らねえ。時間も足らない! くっそ歯痒い!
少しだけ椅子に座っていた花は、僕の降参ポーズに、立ち上がってやって来て、絵を確認。
「いや普通ですよ。ウチの学院で平均ちょっと上くらいですし、悪くないと思いますけど」
「……普通じゃ嫌だ!」
それじゃあ不満なのである。
千花は違うのだ。
この絵は外見の半分も表現できていない!
本物はもっとふわーっとしてほんのり甘くて、ぽわぽわっという感じがしている。
更に言えば内面が滲み出ていない。彼女は芯が強い。柔らかく、心は温かさを秘めている。
しかし同時に、アホさと天然さと計算高さと狡猾さと邪悪さとが絶妙に混ざった乙女心が同居しているのだ。
その複雑怪奇な心情を理解しているのは僕だというのに。
僕はそのビジョンを、絵で表現することが出来ない……っ!
「なんか岩傘さんの暴走を見るの久しぶりだなー」
嘆く僕を慰める声が一つ。
悪魔にして神:柏木渚さんである。
「今日のいーちゃんはちょっとハイなんですよ」
「ハイとか言うな千花。……柏木さん、僕は至極真剣! 真面目ですからね! それに今はこのパワーを発揮しないとダメなんだ」
「……その心は?」
「千花への目線が増えた!」
再び教室の中に溢れる『えぇ……』という声と、納得したようなしてないような柏木さん。
僕の言葉に、いやんいやんと頬を染めて首を振る千花。
『増えたか? 藤原さんへの視線』
『いや、フリーな時間が増えた分イチャイチャしてる』
『この前もランチ一緒にしてた……行きも返りも一緒だ……くっそ妬ましい、パルパルしぃ』
『俺らの怨みが込められた視線という意味では、睨む時間は増えてるぞ。怨みで釘が打てる』
『やっぱアイツ1回どっかで暗殺しとかないか? 神社に藁人形持ってさ……』
なんか周囲からの戯言が聞こえるが、僕は無視。
因みに四宮さんは既に片付けを済ませているが、千花が引き留めているので聞いている姿勢。
早坂愛は「うーわ」という顔をしている。
多分千花に描いて貰った絵に対しての感想で、僕への目線ではない。……ない筈だ!多分!
「まあ聞いて。生徒会が終わって、僕ら旧役員は前よりも時間が余っている」
「……そうですね?」
「同学年の皆は良い。でも露出が少なかった分、触れる機会が少なかった下級生や後輩の目線が強い!」
先輩ら3年生と、2年生の皆は、もう大体僕と千花のことを理解している。
だが下級生となるとそうはいかない。千花は人気がある。人気があるだけなら良いが。
「不埒な目線が増えるのが気に食わない? と」
「……不埒な目線で見るのは良いが、僕が居ることを知らないのは気に食わない」
「やだもー嫉妬深いんですからー」
柏木さんの合いの手に応える。
千花は美人だ。そして将来の嫁もとい恋人が美人で人気があることは、彼氏にとっては鼻が高い。
加えて浮気や離縁の可能性もない。男子が幾ら集っても、千花は僕の傍から消えないだろうと信頼をしている。……まあ何か理由があって少し遊びに付き合うくらいはあるかもしれないが、それだって僕に相談してからやるだろう。身持ちは物凄い固いと知っているし。
「人気があっても良いし、憧れるのも良い。でも僕が今居る場所に、他の男が座れると思わないで欲しい」
「なるほど、それでアピールしたいと……」
「分かってくれて有難う!」
思わず両手を握って感謝しそうになったが、思い止まる。
いけないいけない。翼君が怒る。
「でも絵を描いてアピールに、なる……?」
「なる。美術の授業で良い作品を残すと陳列されるからな!」
「今日の岩傘君は物凄く馬鹿になってるね」
「ん、何か言った?」
「いや、なにも。でもじゃあ絵画っていう方法以外を取るべきじゃないかな、写真とか……」
…………それもそうだな!
ちょっと落ち着くとしよう。
そういえば先日の応援演説依頼の時、紀にお礼をすると言ってまだやっていなかった。
マスメディア部に顔を出す口実もあるし、いっそそうしよう。
そうと決まれば居残りの自主練は止めだ。急いで片付けて向かうとしよう!
「今日はいーちゃんが暴走してるので私はお供しようと思います。それじゃまた明日―」
「そこで止めない辺りお似合いですよね、やっぱり」
◆
「全く岩傘さんにも困ったものですね」
藤原千花の手を引いて出ていった元広報を確認した四宮かぐやは、息を吐いた。
久しぶりにテンションが上がってアホになっているだなんて、同僚として友人として情けない。
「自由な時間が増えた分、露出が増えて、人気が上がる……。そんなことを心配するだなんて」
少し考えれば分かる話だ。
ちょっと情報が開示され、交流時間が増えた程度で揺らぐ感情なぞ、甘いと言わざるを得ないのではないだろうか?
――この数日後、白銀御行の目付きが改善されることは明言しておかねばなるまい
「そもそもその程度で揺らぐ気持ちではないでしょうに」
自分に当て嵌めて考える。
例えば少しだけ会長の雰囲気が変わって人気が出たとする。
それで自分のスタンスが揺らぐだろうか?
はん、そんなことはありえないわねと四宮かぐやは自信満々に己を肯定した。
――この数日後、目付きが改善されて人気が出た白銀御行に対して!
――反応が劇的に変わってしまうことを伝えておかねばなるまい!
◆
マスメディア部。
部活と名前こそ掲げているが、実際は秀知院での報道機関である。
この学院、狭くヒエラルキーが高い面々で構成される箱庭として、ゴシップは日常茶飯事だ。
あることないこと並べたてて噂になる事も、割とある。
まー本当に流れ続ける風聞なんてごく一部で(例えば石上の一件とかだ)、それにしたってある程度の良識と立場を持つ生徒は、己の目で真偽を判断するだけの芯を持っている。
噂を楽しむのは、その煙の被害に遭わない奴らなのだ。
そして、そんな噂を出来る限り濾過し駆逐するのが、報道機関の役目である。
え、報道官である生徒らに問題がある? 手綱握っておけばそんなに怖くないよ?
「お邪魔します。カメラ貸して」
「……また面倒な人が来たよ」
部室内には、眼鏡をかけた少女だけが居た。
マスメディア部の部長を務める彼女は、さる新聞社の局長を親に持っており、影響力も中々だ。
実は『血溜沼』にスカーフを落とし、それを拾った四宮さん&白銀の最初の出会いを作り出すというファインプレーを最初に起こした人物でもある。
とはいえ。
部員である紀&巨勢とは良く会話をするが、その部長である彼女との交流は其処まででもない。
『あ、私は暫く静かにしてまーす』と千花は静かになってくれた。嬉しい気遣いだ。
「嫌そうな顔をしないで欲しい。別に無理難題を言いに来たわけじゃない」
「……君のその言葉は当てにならない」
彼女は物凄く鬱陶しそうな顔をする。
無理もない。向こうは嫌でも身構えるだろう。
なにせ僕の親は、彼女の親の上司。親父経由で、彼女の父の評判も耳にしている。口にしたことは無いが。そりゃ僕と接しにくいに決まっている。
過去、僕がマスメディア部の部長へと推薦されたことも1回や2回ではない。
それでも断って来た理由は単純だ。
『マスメディア部を私物化したくない』という矜持に尽きる。
立場には相応の立ち振る舞いが求められる。マスメディア部の部長席に座るならば、僕はそれを私物化する報道は出来ないし、好き勝手な情報操作は出来ない。
(僕が部長になったら千花との関係を報道出来なくなるからな!)
自分の中で、それをやれるだけの身勝手さを持てないのである。
親へ感謝だ。真摯な教育理念の賜物である(だからこそ広報の座で暗躍しているともいえる)。
こうして時々顔を出すだけだが、それでも部長さんは嫌そうな顔をする。
これで本当に部長に就任していたら彼女の表情はずっと沈んだままだろう。それは宜しくない。
「でカメラを何に使うの? 君の横で大人しくしている藤原千花の写真でも撮るの?」
「大正解」
「自分の使ってくれない? 君の家なら一眼レフくらいあるでしょうに」
ツッコミは想定の範囲内だった。
僕はここに来るまでの間に組み立てたプランを口に出す。
「ここは素直に報道部に情報を渡そうかと思ってね」
首を傾げる部長に、僕はまあ外を見なよ、と促した。
そこには生徒会選挙に向けて、ビラ配りをしている少女の姿が見えている。
9月30日の18時で選挙への申し込みも終わりだ。以後、投票日までは各自の活動期間に入る。
眼鏡の少女を伴った、一際に小柄な姿。伊井野ミコはマニフェストを書いたビラを手渡ししているのだ。
早速の活動開始、とても勤勉でよろしいと思う。
「……彼女がどうしたの?」
「彼女が何かをするとかした訳じゃない。大事なのはこれから白銀勢力が何をするかだ」
首を傾げた彼女に、僕は続ける。
「白銀の生徒会選挙への応援ポスターを僕が作る。その際に報道部のカメラを使わせて貰う」
そしてそのポスターに、僕と千花の仲が良い写真を掲載するのだ。
自分で言うのもなんだけど思いついた時は『天才じゃないか』と思ったね!
勿論ラブラブな写真を掲載するつもりはない。
もっと色々と考えているのだ。
「選挙において重要な要素は三つだ」
1:立候補者本人の情報
2:
3:
白銀御行と言う生徒がどんな人間で、どんな能力を持っているかという情報。
彼がこれから行う活動がどんな内容かという政策。
そして最後が、彼を誰が応援しているか、という事実だ。
「1番目は既に皆が知っている。2番目は千花がやるが、どうせマニフェストなんて選挙が終われば皆忘れる。――千花の言葉を借りるなら『黄金の看板より実利を取る』だ」
この3番目に、大きく干渉したい。
「白銀を応援している人物として、四宮さん、千花、僕を
まあ石上は自分の名前を載せて下さい、とは言ってこないタイプだろう。
僕ら三人以外で言えば、柏木さんとか四条眞妃とか龍珠桃あたりだろうか。
表立って応援出来ない生徒もいるだろうが、彼女らが付いて居ると暗に伝えられるだけでも十分過ぎる。
「この情報は、既に白銀を応援している人にはあまり効果が無い。効果があるのは、前回の投票に居なかった1年生だ」
ここで千花や僕の存在が鍵となる。
人間、知っている人間と知らない人間ならば知っている人間を選ぶ。
知っている人間同士なら、ネームバリューがある方を選ぶ。
同じ程度の知名度を持つならば、信頼されていて親しまれる方を選ぶのだ。
つまりだ。後輩にもやたら顔が広く人気がある千花の行方を追った1年生は、彼女が白銀を応援していることに辿り着く。そこまで行けばこっちのものだ。
千花の情報が載っている白銀の選挙ポスターを確認した生徒は、同時に彼女と僕の距離感も把握する。いや、させる。そういう風に作る。
そういう風に、自然と『あーこの二人実はこういう関係なんだな』と察せるようにポスターを用意する。
「伊井野ミコに対する戦い方としては完璧だろう?」
ビラ配りに対する戦い方だって十分分かっている。
権力を使って伊井野ミコを貶めるなど以ての外。そういう裏工作は表に出たら一気に信頼を失う(……やるなら四宮さんが勝手にやるだろう。僕は絶対に関与しない。そっちの方が彼女もやりやすいだろうし)
地道な活動に対して、派手な行動をとっても意味はない。
努力している人間を応援する人間も多い。
だから地道さに対して効果的で、且つ『勝ちすぎない』――つまり後から振り返ったら圧勝だったが、伊井野ミコにしてみれば「頑張った」と言える範囲で加減をして殴る――状況を用意して、選挙に持ち込む。
その為にも伊井野ミコと同じように、配布できるポスターやビラの作成は重要だ。
「そのおまけで、僕は千花との関係を1年生に徹底して伝えられる」
「私達マスメディア部は、その勝利までの一連の流れを、抑えられる、と」
「良い提案だろー?」
僕の言葉に、部長さんは『えげつない』という顔をした。
失礼な。僕の作戦は、伊井野ミコにとっては悪い作戦ではない。彼女には全力を尽くして貰うのだから。
ただ全力を尽くしても勝ち目がないと教えず、僕らは彼女の上を行くというだけで。
「普通に倒すよりよっぽど
「褒め言葉として受け取っておくよ」
僕の言葉に、眼鏡部長はへいへいという顔をした。
「選挙が終わるまでは報道の平等は徹底させるし、余計な忖度もしないわよ。良いわね?」
「勿論そうして。此処で不正を働いても意味はないからね。情報はきちんと開示する。偏向報道も無し。万が一にでも白銀が選挙で敗北したら、しれっと僕を強請るネタにでもすると良い」
許可が下りたので、遠慮なく倉庫のカメラを借り受ける。
実家にも一眼レフはあるが、あれは親父の中古品で、フィルム式なのだ。我が家の地下には現像用の暗室(フィルムを定着させる部屋だな)まである。どうやら思い出の品らしいので、気軽に使わせてとは言い難い。
「壊さないでよ」
「安心して。僕は物持ちが良いんだ」
「データに変なの残しておかないでよ」
言うまでもない話だ。
千花の恥ずかしい姿を見て良いのは死ぬまで僕だけである。
◆
さて気を取り直して!
「ということで写真を撮ります! 待っててくれて有難う!」
「どういたしまして! はいチーズ!」
カシャリ、という音と共にシャッターを切る。
そろそろ夕暮れ時。空が橙色に染まっていて、千花もそれに照らされている。
とても良い。シチュエーションは勿論良いが、被写体の良さが更に磨きをかけている。
風に長い髪がなびく一瞬。物憂げだったり喜んでいたりする一瞬。どの表情も魅力的だ。だから連続でシャッターを切る。カシャリ、カシャリ、カシャリ。
「……このままだと何だな! 僕ら
「らじゃりました! ……へーいそこの人、一緒に写真撮りませんか!」
ただ写真を撮って褒めて照れるだけ! それだけではただのバカップルでしかない。
大体そんな普通の日常なんて今更過ぎて誰も得しない。
間違えてはならない。
僕らは他人を巻き込むのが好きなのだ。二人だけで完結する世界は退屈なのだ。
僕と千花は集団を構成する最小要素であって、最大要素に制限はない。
「え、なんですいきなり! ……え、いえ、良い、です、けど」
ぐいっと一瞬で距離を詰めた千花は、通りすがりの1年生を捕まえて写真撮影に引っ張り込む。
千花の笑顔とコミュニケーションパワーに勝てる生徒は中々存在しない。
「あの、いきなり、何故?」
「フィーリングです!」
この千花の発言は素であると言っておこう。
勢いとノリと雰囲気と感性100%の発言で、裏が無い。
計画や企みがない善意と本音での行動だから、断り難いというわけだ。
「では写真!」「あいよカシャリ」
うん、そうそう。それでこそ!
やっぱ隣に誰か別の人が居てこそ千花の魅力は輝く。
僕との相性が一番であると譲るつもりはないが、魅力と輝きは人それぞれで良いのだ。
「ありがと! ええと……小野寺さんだね! 名前覚えました!」
後輩の1年生の名前を覚え、別れた後、次の生徒に声を掛ける。
別の子が隣に並ぶと、千花の表情と雰囲気が変わる。相手に合わせて自然に似合う空気を纏う。
そのままカシャリ。続いてカシャリ。ノリノリで写真を撮り続ける。
美術室に続いてなんか周囲の目があるけど気にしない!
『くっ……。腹立たしいけど、楽しそうだから許しそうになる!』
『楽しそうなんじゃない。あの場に入ってこい。ノリノリで一緒に写真撮られて飾られるぞ。楽しい。物凄く認めにくいけど楽しいんだ……畜生……!』
『あの様子は計算じゃねえんだよなぁ……! 計算じゃないからマジで怒れない……!』
「うん、面白いことをしているね」
続けていると、声を掛けられた。
「はい、……はい!?」
驚いたとしても、無理はないと思う。
だけど、まさか此処で会話することになるとは思っていなかった「先輩」だったのだ。
(……! 白銀へのバックに付いて欲しい人を……! この人を、忘れていた!)
「報道部のカメラ……。なるほど、伊井野ミコに対して、そう出るか」
僕ら生徒会メンバーや、VIP生徒よりも、もしかしたら影響力が強いだろう人。
忘れていたのは、間抜けとしか言いようがない。
いや、先輩が意図的に関わらない様に存在感を消していたのだろうか。
僕らは全員、この人の力を借りようと思っていなかった。
もしも、借りてはいけない、借りられない、と思っていたならば。
そう意識させられていたならば、その手腕は――。
「聞かせてくれるかな、67期生徒会の「広報」岩傘君。僕はきっと協力してあげられるよ」
「……此方こそ。こうしてお話が出来て、嬉しく思います――
微笑んでいたのは。
嘗て白銀を生徒会に引っ張り込んだ、華道部の優雅な生徒会長さんだったのだから。
◆
美術の時間から数日後。
白銀御行は、寝不足で痛むこめかみを指でグリグリと押しながら教科書を開いていた。
ここ数日、寝不足が解消された己を見る、
他の生徒は今まで以上に声を掛けてくれたというのに、だ。
不安に思い、ならばと選挙の計画を立ててわざと睡眠時間を減らした結果。
彼女の目線は以前と同じような反応。
言葉はまるきり正反対という状態で、混乱をすることになったが。
まあそれでも、彼女の反応が戻ったのは悪いことではない……ない筈だ。
(……選挙か。事前調査から判断するに、俺が勝つと思うが……)
支持率58%。過半数を超えて6割を自分一人で抑えている状態だ。
これがひっくり返されることは、早々無いだろう。
――しかし彼のその自信は、数秒の後に粉砕されることとなる。
「白銀! ヤバイぞ! ヤバすぎるニュースだ! 伊井野ミコについて!」
飛び込んできた岩傘調が言うには。
(尚、当然のように藤原千花と同伴していて、しかも今日は背負っていた。何があったのやら)
「
白銀の心は疎か、学院全体を震わせる爆弾を破裂させた。
四宮かぐや程ではないが、主人公も割と黒い。
向こうに『絶対に勝てない』と悟らせずに全力を尽くさせるのは悪の所業。
しかも勝てると知った上で徹底的な勝ちを突きつける慢心ゼロ/容赦のなさっぷり。
やはり生徒会は真っ黒! 悪の巣窟……! 全ての諸悪の根源……!
先代会長「君らの計画はちょっと残酷だからフォローするよ(悪い笑顔)」
→ 原作以上に蹂躙されないとは言ってない。頑張れ伊井野ミコ!
因みに先代会長は3年A組。
ギガ子や子安つばめと同じクラスです。原作での再登場に期待。