すみません、ちょっとこの小説での自動人形の黄金律についての設定の変更です。
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↓ ↓ ↓
後
実質ナーフですが、こっちの方が小説の見せ方的に書いていて面白いなと感じたので、このように変更しました。
「うーん……」
フェイスレスはヨークシンにある医師としての待機場所に置いてある社長が座るような回転椅子に座り、足でぐるぐると回転させながら唸っていた。
「猫に牡丹、平和が一番なんだけどねぇ……」
その呟きと共にフェイスレスは椅子を回すのを止め、デスクに向き合うと溜め息を吐く。
「フェイスレス様。どうかなさいましたか?」
するとそんなフェイスレスの様子を案じたのか、一体の
その自動人形はフェイスレスが一応、自身の護衛として外出中に護衛に付けている自動人形の一体である。
フェイスレスは自動人形を死蔵しているような状態であるが、実際には微妙に異なる。というのも昔から助手として一部の自動人形が時折起動されることはあり、最近では最も顕著になったのはふらん及びヴェロニカとヴェロニカの先代に当たる存在が造られてからであろう。
彼女らはフェイスレスが基本的に護衛など必要ない戦闘力を持っているにも関わらず、博士に何かがあったら人類の損失やら、突然フラりと出歩いたまま消えないで欲しいやらと、彼のためを思って言ってくるのだ。そのため、ヴェロニカが実質ふらんの護衛になった今では、彼が外出するときあるいは外出先で一人になる場合には、必ず一体は自動人形を持ち込んで護衛に付けているのである。
「いやー、さっきヴェロニカくんから電話が来てさ。なんでも
「…………………………はあ?」
自動人形は聞いたことが若干理解出来ないといった様子で呟きつつ首を傾げる。死地に嬉々として自ら向かっているのだからその反応も当然だろう。
「普通に考えて、仮に
「では、ふらん様にフェイスレス様が止めるように言えばいいのではありませんか?」
「んー、彼女ほら……善意だけで行動してるから僕としても止めにくいんだよねぇ。ああ見えて、何かの拍子で人間を手術しないで見殺しにしたりすると後で無茶苦茶悔やむような優しい娘だしなぁ……」
「そうですか」
要は娘の意思を尊重してやりたいという親バカな意識なのだが、そこそこ筋は通っているため、自動人形がそれに大して大きく言えることは特にはなかった。
「では、"わたし"におまかせを。必ずやふらん様の障害を全てを打ち崩しましょう」
「え、ホント? じゃあ、任せるね」
フェイスレスはそんな軽いノリで今回のヨークシンで自身の護衛をしている一体の自動人形を差し向けたのである。
◆◇◆◇◆◇
「
ヨークシン郊外のゴーストタウン化して随分時間の経ったビル群の一角。その場所で幻影旅団団長のクロロは13人の団員全員を目の前にそう宣言した。
それを聞いた中でも特にウボォーギンが感銘の声を上げる。
「あはははは! そりゃいいね! なんだい団長。慈善事業でも始めたのかい?」
そんな中で、カウガールの衣服を纏う金髪の自動人形――ワイルド・ウエスト・ジェーンはどこか小馬鹿にしたようにそう呟いた。
彼女を入れて数を数え直すと、幻影旅団は13人と1体がいることになる。それは単純に彼女が自己申告で幻影旅団が所有する物として扱われているためであり、彼女は腕の一本に蜘蛛の刺青――というより塗装がしてあるが、番号が刻まれていないのはそのためである。
「ジェーン……何か文句あるか?」
「いやいや、滅相もないさね。寧ろ好都合だよ。この街にいるマフィアどもを全員蜂の巣にしたっていいんだろう?」
ジェーンの癪に触る物言いをフェイタンは咎めるが、依然として楽しみで仕方ないといった様子でジェーンは笑い、なに食わぬ顔をしている。
まあ、幻影旅団の共通の認識として、それはいつものことなのでそれ以上言われることもない。そして、ジェーンは小さく笑うとまた口を開いた。
「それってとっても"人類の幸福"になるじゃないかい!」
それすなわち、自動人形は芸人あるいは道化師であるのと同様に全ての自動人形の存在意義であり、"
悪党と悪党の喰らい合い。それは最終的にどちらかが潰れ、どちらかが残る。あるいは互いに消耗し、喰らい合えなくなるまで続くだろう。そして、どちらが死のうが滅ぼうが、ゴミがゴミらしく消えるだけの話だ。つまりはどうなろうと世界が少しだけ綺麗になるのである。
ましてや、この世界で旅団が盗み出す程の宝を持つような相手は、基本的にカタギではなく、何らかの裏の顔を持つものがほとんどだ。
そして、更に言えばその数も理由に上げられる。
幻影旅団の数はたったの13人。ジェーンを含めても14人だ。また、彼らはただの盗賊。テロリストでもなければ、反政府軍でも、悪の秘密結社でもない。如何に彼らが優れた念能力者であろうと、その被害は累計したところでも高が知れている。
それに比べてマフィアの数は莫大であり、彼らがこれまで何れ程の人命を奪い、苦しめ、辱しめ続けてきたというのか。その被害は幻影旅団が殺してきた人間など比べ物にならないだろう。
故にジェーンの中の"
"幻影旅団に加勢して、ゴミを掃除するのが人類の幸福につながる"と。
大は小を兼ねる。人類の幸福という果てしなく、終わりもない目標の前に幻影旅団が気紛れで殺す無辜の人々など、微々たるモノだ。だからこそ彼らは所詮、A級首止まり。人類という大きな括りならば貧者の薔薇を抱えるテロリストの方が余程に恐ろしく、危険であろう。
ジェーンによれば、基本的にほぼ全ての自動人形がその黄金律のために似たような選択を取るらしく、また彼女はとても意欲的に幻影旅団の仕事の集まりにほぼ全て出席しているため、創造主のフェイスレスという男の歪みっぷりが幻影旅団でもよくわかり、二度と本気で相手をしたくないと考えるのも妥当と言える。
何はともあれいつも通り、幻影旅団の仕事が始まるのであった。
◆◇◆◇◆◇
作戦はこうだ。数人で地下競売を襲い、お宝をかっさらったところでマフィアにもわかるように小型気球で逃げ、広い場所に誘導して追って来たマフィアを一網打尽にする。馬鹿らしい程、非常にわかりやすい戦争である。
ちなみにジェーンは小型気球の積載重量の関係で乗れるか怪しかったため、最初から気球の到着予定地点で待っている手筈になっている。
「始まりましたよー」
《ああ》
《あいよ》
ジェーンと通信を繋いでおり、役割の少ない襲撃班のひとり――シズク=ムラサキから間延びした声と共にフランクリンの
ちなみにこの通信は襲撃班のシズク、襲撃班でも既に気球での移動地点にいるジェーン、待機班の団長との三者でなされている。最近の携帯端末の通信機能は便利なものだ。
《ん……? ダブルマシンガンの音質が変わったね。断続的になったよ》
「そうですか?」
《一応、確認してみてくれ》
ダブルマシンガンの音に若干の違和感を覚えたジェーンはそう呟き、団長の指示でオークション会場の唯一の出入り口の外に立つシズクは扉を開けた。
その直後、中の光景――というよりある一点に注目してシズクは声を上げる。
「………………うわぁ」
《どうした?》
「いや、マフィアは沢山死んでるんですけど、鎌や解体道具みたいな武器を両手に3~4本ずつ持った少女と、フェイタンさんと、フランクリンさんが戦ってます。後、マフィア達を…………手術? してるのかな、あれ。手術している少女がいます。何してるんですかあれ……」
《………………》
《………………》
それを聞かされたクロロとジェーンはそれぞれ思い当たる節があるのか沈黙する。
《シズク、戦ってる方は黒いコートを着て顔にバツ印の縫い跡、手術している方は金髪で口裂け女みたいな縫い跡がある奴じゃないかい……?》
「えーと、前者はそうだと思いますけど、後者は金髪ですけど私からは後ろ向いているので断定は――」
《頭に電極みたいのないかい?》
「ありますね」
《マジかぁ……"斑木ふらん"と"ヴェロニカ"じゃんか……》
《ワオ、ビンゴ!》
《アイツら死神みたいな奴らだからなぁ……たまに仕事先で出くわしては面倒なことばかり起きるんだ……》
《二人が死神ならフェイスレス様は?》
《ハデス》
《ははは、違いないねえ!》
ジェーンの楽しんでいるような反応と、クロロのやってしまったといった様子の反応に、幻影旅団としては日の浅いシズクは首を傾げながらも何かした方がいいのかと考える。
「加勢しますか?」
《いや、加勢はしなくていい。シズクではヴェロニカ相手にもって数秒だろう。保管庫を確認しに行った連中を待ってくれ》
「そうですね。わかりました」
フェイタンとフランクリンが交戦しているヴェロニカは、シズクから見てもかなり逸脱した戦闘能力を持っていた。最早、鉤爪でも構えているように見える両手の武器を振るい、その状態で全身のあらゆる場所から暗器を飛ばしつつ、炎まで吐き、その上でフェイタンの倍以上の速度で血塗れの会場を駆けている。
はっきり言ってヴェロニカは念能力者というよりも兵器のようであり、それに対応出来ているフェイタンとフランクリンが純粋に凄いとシズクは思った。
そんな時である。
「すまない、横を失礼する」
「あ、すいません」
扉の中央に立つシズクに対して、とてつもなく自然に声を掛けられたため、シズクは思わず邪魔になっていると普通に考えて返答しつつ場所を譲った。その人物は軽く会釈するとそのままあらゆる意味で戦場と化しているオークション会場へと入って行く。
「あ、譲っちゃった……」
《待て、今のは誰だ?》
《今の声はまさか……!》
珍しく酷く驚いた様子のジェーンの声がシズクの耳に残った。
◇◆◇◆◇◆
現在、ヴェロニカはとても焦っていた。
地下競売にわざわざ出向き、案の定と言うべきか幻影旅団に襲撃されるのはわかっていたが、それでも想像以上に幻影旅団が強かったのである。ヴェロニカひとりの場合なら寧ろ楽しんで戦えたものだが――。
「ウェヒヒヒヒヒヒ!」
時折、奇っ怪な声を上げながら自身の後ろでほとんどこちらの戦闘を気にせずに手術を続け、気色悪いほど目を輝かせている
また、ノストラード組のトチーノ、イワレンコフ、ヴェーゼと数人の他の組のマフィアは、ふらんとアドレアに当たるフランクリンのダブルマシンガンを全てヴェロニカが武器を回転させて防いだ時に、その後ろに偶々居たために今のところは全員生存している。
しかし、唯一の出入り口に携帯端末を耳に当てながら掃除機のような何かを持って立っている幻影旅団の団員が1名いるため、ふらんの回りに固まりながら出るに出れないでいた。
そして、立っているだけのマフィア達をふらんは使い、助手代わりに手術の道具の引き出しの手伝いや、まだ再生可能そうなマフィアと逆に脳が完全に吹き飛ばされて再生の難しい人体を集めさせている。
生き残ったマフィアにとっては、
言うまでもないと思うが、斑木研究所におけるヴェロニカの最大の特徴は、人造人間にも関わらず、斑木研究所にあるまじきレベルで極めて常識人なところである。
「お前も大変ね。お祓い勧めるよ」
「同情するなチクショウ!?」
ニヤリと歪められた目を向けて鼻で嗤いつつ傘に仕込まれた剣でヴェロニカと切り結ぶフェイタン。ヴェロニカは右手の武器でフェイタンと応戦しつつ、左手の武器でフランクリンのダブルマシンガンを防ぎつつ暗器を放って応戦していた。
ちなみにヴェロニカの指に多数の細菌兵器が仕込んであることは、ふらんとの出先で何度か交戦したり、ハンター専用サイトに載っていたりするため、既に幻影旅団からすると周知の事実である。故にヴェロニカに深入りせず、適度に攻撃と撤退を繰り返しているため、全く隙がない。その上、フェイタンは鈍っていた体が温まってきたようで徐々に加速しており、今ではヴェロニカの半分程の速度に達している。
(流石にキツい……!)
ちなみに会場のマフィアは武器と共に通信端末なども回収されているため、外のマフィアが気づいて乗り込んでくるまで、ヴェロニカはずっとこの状態だ。
それでも一切、後方の人間に被害が出ないようにした上で、幻影旅団の二人を抑え込んでいる辺りは、流石の性能と言える。
そんな折だった。
「助太刀するぞ。ヴェロニカ」
交戦しているヴェロニカとフェイタンの真横に、"全身をロングコートや帽子で覆った目深の自動人形"が突如として現れたのである。
「クソが……! 自動人形か!?」
自動人形は微妙に人間とオーラの質が異なる。それこそ卓越した念能力者が自動人形と共に長い期間を過ごしてようやく気がつくようなレベルだが、自動人形と過ごしている幻影旅団の多くは違いが理解出来た。
フェイタンは悪態を吐きながら距離を取るために後ろへ飛び退こうと動く。
しかし、既に間近まで迫っていた自動人形の方が先に行動し、獣の牙や顎のように構えられたオーラを纏う掌が襲い掛かった。
フェイタンは自動人形の手を剣を盾にして受け止めようと構えたが、自動人形の手は紙でも裂くようにフェイタンの周で強化された剣を両断し、そのままの勢いでフェイタンの首を通り過ぎる。
「が――!?」
結果、フェイタンの首が飛ぶ。先に体が糸を失ったからくり人形のように地面に叩き付けられ、遅れて頭部がマフィア達で血濡れの床に落ち、水音を立てた。
「ククッ、"
「フェ……フェイタァァァン!? てめぇ!?」
仲間を目の前で失ったフランクリンは慟哭と共に両腕を自動人形へと構え、ダブルマシンガンを掃射する。
その瞬間、自動人形の目が笑みを浮かべているように妖しく輝き、たった一歩の跳躍で、十数m先にいたフランクリンが視認出来ない速度で懐に潜り込んでいた。また、さっきとは異なる何かの武術の構えをしており、即座に何かが放たれるのは明白である。
「しまっ――!?」
ジェーンによって、黄金律の特性を知っていたにも関わらず、頭に血が登ったことで発を使用してしまったことを悔いるが、既に手遅れ。自動人形は攻撃の体勢に入っており、最早逃れる術はない。
「"止まりなさいブリゲッラ!" ブリゲッラ・カヴィッキオ・ダ・ヴァル・ブレンバーナさん!」
しかし、叫ぶように吐かれたふらんの言葉に攻撃体勢にあった自動人形――ブリゲッラの行動が止められたかのように静止する。ブリゲッラの目には驚きの感情が浮かんでいた。
そして、フランクリンも状況が呑み込めない中、ブリゲッラが動き出すと、そのままフランクリンを無視してふらんの目の前に立つ。
「ふらん様。なぜ、止めるのですか? わたしはあなたを守ろうと――」
「そう易々と人殺しをしないでください! あなたもヴェロニカと同じように博愛を学ぶべきですね。それはそうと、今殺した方、まだ繋がりますから早く持って来てください」
「――――えぇ……」
ブリゲッラは非常に困惑した様子で呟く。そして、渋々といった様子でフェイタンの体と頭を抱えると、ふらんの前に差し出す。
最早、生き残ったマフィアも、ヴェロニカも、フランクリンもその異様な光景を静観するしかなかった。
◆◇◆◇◆◇
「あー、やっぱりこうなっちまったかい……」
《何か理由があるのか……?》
一部始終を目撃しているシズクの説明により、オークション会場内の様子を知るクロロとジェーンは何とも言えない様子で会話を行っている。
「別に言わなかった訳じゃないさ。今まで言っても特に意味無かったから言わなかっただけさね」
クロロの問いにジェーンはそう釈明しつつ小さく溜め息を吐いてから呟く。
「ほら、自動人形って人類の幸福のために造られたろ? で、ふらん様は名実共に科学の発展と人類の幸福に
《なるほど……》
つまりは全ての自動人形は基本的に斑木ふらんの命令には逆らえないらしい。機械故であるが、難儀なものであろう。
「ふらん様にフェイタンを再生して貰ったらさっさとずらかりな。関わるだけアンタらには不利益だよ」
《そうしよう……シズク頼む》
《はい。あ、繋げ終えたみたいです。貰ってきますね》
再生し終えたフェイタンの回収に小走りで向かうシズクの足音を聞きながらジェーンはやや大袈裟に天を仰いだ。
ちなみにしっかりと治療費に3000万ジェニーを請求されたので、シズクはフェイタンにツケておいたとのことである。
ブリゲッラ・カヴィッキオ・ダ・ヴァル・ブレンバーナ
名前が長い自動人形。最後の四人のひとり。目元や髪型がとても中性的な容姿をしているが、一応は彼。様々な武術を極める変わり者の自動人形であり、その戦闘も武術によって行う戦闘狂。無論、実力も自動人形では最高クラスに当たる。
しかし、この小説では回りがアレ過ぎるため、相対的常識人である。