エルフの忌み子は鍛冶師   作:枝豆%

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修正しました、すまぬ。
ちょっと知りたいんだけど、ダンまちって今安売りしてる?笑

ほぼアニメとココくらいしか知識貰えないんだけど。あとwiki


聖女の独白2

 私は恵まれていたのでしょう。

 比較的まともな両親の下に産まれ、何不自由のない生活をさせてもらいました。裕福、とはもちろん言えませんがそれでも幸せな家庭だったと思います。

 オラリオに出てからもお金に関しては一癖はありますが、まともで良識のある神に拾って貰えました。

 

 そう、私は運が良かったのでしょう。

 恵まれていたと気付けなくなるほど、更により良いものをと願っていた今までは。

 

 そして気付かされました…。

 笑えない、お世辞にも慰めることが出来ない。

 

 私は貴方の気持ちを分かってあげることは出来ません。

 分かるなんて、私はそんな無責任なことは出来ません。

 

 だから、少しでも貴方が幸せに近付いてくれることを心から祈ります。

 ロットさん、私は貴方に笑ってもらいたい。貴方の笑顔が見たい。貴方の幸せそうな顔を見たい。

 

 貴方の持つ呪いという【業】を、いつか祓うようなことがおきることを──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇月(日

 

 ロットさんは魔剣が打てるのですか?

 

 素朴な疑問を投げました。

 ダンジョンで奥へと潜るにつれて、彼は冒険者の奥の手とも言える魔剣を乱用していたからです。Lv2の冒険者の稼ぎでは、と言うよりも彼の貯金の仕方では魔剣を買うお金など貯まるはずもありません。

 ヘファイストスファミリアなのですから、凶狼のように意外にも親しくしている人から……たしかラキアからクロッゾが来ていると噂で耳にしたことがあります。物凄い魔剣が打てると、もしやその人から……。

 

 

 と思いましたが、地雷でした。

 ええ、なんというか…彼への質問はもう少し考えてからしなければいけないのでしょうか。

 

 エルフから差別的な扱いを受けていたのは、手に触れたものを魔剣に変えてしまうという能力があったからだそうです。

 ステイタスにして初めて名前が分かったそうです、名前は【騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)】ソレによって人生を狂わされた、そう言ってました。

 続けてこれが無かったとしても碌でもないと思うけど。とだけ付けていました。

 卑屈というのか、それだけの人生だったのか……。

 

 あまり人の事は言えませんが、ロットさんが笑ったとこを見たことがないです。少し気になったのは言うまでもないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇月|日

 

 あの依頼から約二年、私はやっと上級冒険者の仲間入りを果たしました。とった発展アビリティは『神秘』。ディアンケヒト様も大喜びされてました。

 このことを彼にいち早く伝えたくて、私は柄にもなくオラリオを駆けました。Lvが上がり少しだけ敏捷が上がったからかいつもより速く走ることが出来ました。

 目指す場所は彼の工房、入れて貰えたことはありませんでしたが今は早く知らせないと。とその想いが加速して私を急かせます。

 

 彼はどんな顔をしてくれるのでしょうか。

 笑って…はないでしょうね。軽いお世辞と、ご飯を食べに行こうと言うだけで、多分それ以外彼はいつも通りでしょう。

 でも、私は今すぐに彼に会いたい。

 

 扉を勢いよく開けました。

 「ロットさん!」

 

 今私はどんな顔をしているのでしょうか。

 彼の生気のない瞳を見て私は何を考えたのでしょう。私が幸福だからといって彼も幸福とは限らない。なんでそんな簡単なことに気付いてあげられなかったのか。

 そういうこともある、と何故想定しなかったのか…。それほど私は切羽詰まっていたのでしょう。

 

 「どうしたのですか…」

 

 私は笑みから一転、表情を消しました。

 それは仕事の顔のように鉄仮面に。

 

 

 「目的が…不壊属性(デュランダル)が出来てしまった」

 

 それは彼の唯一の望み。

 彼は呪い故に半身とも呼べる武器を長期に渡って持つことができません。ダンジョンに潜ればその日の内に壊れてしまいます。

 

 だから彼は、折れない曲がらない砕けない。それを実現できるデュランダルへと挑戦していたのです。

 

 それは本来なら喜ぶことでしょう。

 焦がれるほどの夢を見て、彼はこれを待ち望んだのですから、おめでとうございます。そう言えばいい。

 ですが何故でしょう……何故あなたはそんなに辛そうな顔をしているのですか…。

 

 「だからもう、僕に鉄を打つ理由が。槌を持つ理由が……なくなった」

 

 そうか……。あなたはそれほどまでに賭けていたのですね。

 それこそ人生の全てをかける覚悟で、しかし直ぐに完成してしまった。

 エルフの長寿から考えて、まだ人生の一割も終わってません。なのにもう……。

 

 

 

 ──ならば…と。

 

 

 「理由が無ければ鍛冶をしてはいけないことはありません。誰しもが目標を持って何かをしている訳ではありません。殆どの人の動機は何となくや楽しそうだから、という明確なものではないのです。何かを成すのに大層な望みや目的は必要ありません。必要なのはほんのちょっとの好奇心です。

 それでも理由が欲しいと言うなら私の為に剣を打ってください。あなたの呪いを解くような、よく切れるなんて次元ではない。『業』を絶つ……そんな剣を作ってください」

 

 私はなんでこんなことを言っているのでしょう。

 改ればこれは恥ずかしい、そう思えます。

 

 勇気を振り絞っても彼に私の想いは届いては貰えませんでした。

 私は何故こんなことをしているのでしょう、同じパーティで死線を何度も一緒に乗り越えてきたから?

 これは義理なのでしょうか……。

 

 届かなかった想いというものはこれ程胸を締め付けられるものなのですね。

 私はあの(ヒト)が好きです。どんな人にも手を差し伸べ、自分のファミリアが零細ファミリアになってもその姿勢は変えません。

 そんな誰にでも優しいあの神に私は惹かれました。でもロットさんにもそれが通じる所が多々あります。

 彼も頼みを断らないのです、それは育った環境がそうしたのかは分かりません。彼自身も拒否権はなかったと言ってました。

 

 それが身に染み付いているから…なのかも知れません。私のエゴなのかも知れません。でも、彼は誰より優しい。

 自分が壊れてしまう程に、それまでして彼は他者の願いを叶える。彼自身そんなことは無いと言います。確かに鍛冶に関しては譲れないことがあるのかもしれません、人のことを考えることが出来ないのかもしれません。自分を信じることしか出来ないのかもしれません。ですが、絶望しそうな人を見た時に彼は必ず助けてしまう。ダンジョンにてそれはもう分かっている。

 そんなことない、そう否定しても事実助けてしまうのです。

 

 でも神と人では格が違う。

 前に助言しました「そのままでは身を滅ぼすことになる」と。

 しかし返答はありませんでした。つまり彼も分かっていることなのでしょう。でも今更生き方を変えられない。

 

 優しさとは上限を超えてしまうと、それは暴力に変わります。

 

 私にとって彼は治したい、から壊れて欲しくないに変わりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇月|日

 

 それは唐突でした。

 聖剣を目指すと豪語してから数ヶ月、たまに彼と私はパーティを組んでダンジョンに潜ります。

 彼は誰よりも早くLvを上げ、第一級冒険者と呼ばれる高みに手をかけました。

 Lv6。【大罪人(ハーレクイン)】巷で彼はそう呼ばれてます。理由としてはいくつもありますが、

 曰く善良な一般市民を殺した。

 曰く同族のエルフを拷問して惨たらしく殺した。

 曰く生まれながらにして咎を背負っている。

 曰く、

 曰く、

 ……。

 

 挙げればキリがありません。私が尋ねても「まぁ、嘘じゃない」としか言いません。オラリオにて筆頭の力があるのに、地位は最悪。

 誰もが嫌い、そして恐れ恐怖する。

 まともじゃないエルフ、それがロットという人です。

 

 

 

 そして本当に唐突に、なんと突拍子もなく彼はこう言いました。

 

 「オラリオを出る、視野を広めるために」

 「今まで世話になったな」

 

 彼は何も感じていないように、別れることを惜しまないように。すぐ立ち去ろうとします。彼は本当に歩き続けるのです、目標ができれば小さくても一歩一歩と歩みます。それは違う道を歩いていたとしても、遠回りをしていたとしても立ち止まりません。だから今回もそうなんだと思いました。

 

 でも、

 

 待って!

 置いて行かないで、連れて行って下さい。

 

 そんな言葉を発してしまいそうです。

 しかし私はその言葉を喉で押し止め、やっとの思いで飲み込みます。

 

 彼と一緒にいたいのは本心です。

 ですが、器を昇華させるためにディアンケヒト様と約束したので私がオラリオを離れる訳には行きません。

 何より治療院の彼等を見捨てることはできません。

 

 だから私は欲を押さえつけました。

 

 「……そう、ですか…」

 

 「出発はベートが帰ってきてからにする。言わないとアイツ拗ねるだろうし。まぁ何だ、馬が合わないのは知ってるが仲良くしてやってくれ」

 

 「……はい。」

 

 遠いな…。

 彼の背中は、手を伸ばしても全力で走っても届かない。

 彼が走る先には剣しかない、私の事なんて見えてないのかもしれない。

 それが私はたまらなく悔しい。

 

 「大丈夫かアミッド?」

 「何がですか?」

 

 「だって、泣いてるから」

 

 

 

 あれ?

 

 私はなんで……。なんで涙を流しているのですか?

 

 「ちょっ……と、まっ、てくださいね」

 

 嗚咽を飲む、ダメだ止めなきゃ。

 彼を心配させてはいけない。彼は目標に向かって進んでいるんだ。

 

 「ご心配お掛けしました」

 

 涙は自分でも驚くほど簡単に止まった。

 彼のことを考えると、今は(・・)泣いてはいけない。最後に見せる顔が泣き顔なんてダメだ。

 

 「これから大変だと思うけど、頑張れよ」

 

 少しだけ柔らかくなった彼の表情を見て、まだ涙の跡がある顔でできるだけ心配をかけないように私は笑った。

 

 私が彼を見たのはこれが最後だった。

 

 

 ──涙が止まって(・・・・)よかった。

 止まらなければ彼は心配してしまったから、弱った私はもしかしたら胸の内をさらけ出したかも知れない。そうすれば彼はここに留まるか、私を連れて行ってくれただろう。

 だって彼は優しいから。初めてあった時から、彼は自分のためでなく人の為でしか行動しない。例外は鍛冶だけだ。

 だから友人である私が願えば、必ず彼は叶えただろう。

 

 だから、

 

 

 ──涙が止まらなければ(・・・・・・・)よかった。

 

 

 

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