エルフの忌み子は鍛冶師   作:枝豆%

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少年1

 ○月✕日

 

 夢から覚めたような感覚だった。

 僕は多分この日の事を二度と忘れないだろう。悲鳴をあげて助けを求めるエルフ達の顔。

 あの人達の顔が頭から離れない。大量の血を浴び、鼓膜が破れる程の声を聞いた。

 気持ちよかったのか気持ち悪かったのかは分からない。ただ、胸に空いた穴が、また広がったような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 ○月☆日

 

 オラリオに向かおう。

 幸いエルフ達から金目のものは頂戴したので、当分困りそうにない。

 歩いて行こう。今日は無性に歩きたい気分だ。自由になったからか、楽になれたからか…その辺りは自分でも分からないが、今は歩きたい。そして、この森から今すぐにでも出ていきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇月*日

 

 僕自身オラリオに行きたいのではなく、森から離れたかっただけだと直ぐに理解できた。

 ただ知っている場所がなかったからオラリオなだけで、森から離れられればどこでもいい。そう思っている自分がいるのが分かる。

 

 今日はモンスターに襲われた。

 落ちていた石ころを魔剣に変えて投げつけたところ、小威力だけどモンスターに致命傷を与えることが出来た。当たりどころが良かったのかもしれない。

 

 今日はもう寝よう、何だかとても疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇月*日

 

 襲われている人を助けたら、何とオラリオへ向かっている商人の馬車に乗せてもらえることになった。

 僕がエルフだったこともあり、魔剣の力を魔法だと勝手に勘違いしてくれたみたいだ。確かに木の枝が魔剣になるなんて聞いたことは無い。その点でいえば幼くても僕は優秀なのかもしれない。

 確か商人のおじさんは、食料を運んできたらしい。朝に採った採れたての野菜をもらい齧り付いた。

 トマトが瑞々しくほんのり甘かった。僕も家庭菜園をしてみたい。

 

 商人のおじさんから色々オラリオについて教えて貰った。

 ファミリアやダンジョンについて教えて貰った。

 

 

 

 

 

 

 

 〇月♪日

 

 ハメられた。

 商人のおじさんはあれが魔剣だった事など直ぐにわかっていたそうだ。でも魔剣は僕の能力なのでどうすることも出来ないみたいだ。手足を拘束されて、魔剣について散々聞かれた。

 今更尋問も拷問も怖くはない、でも痛みはこのおじさんのほうが数倍強かった。

 巨大なペンチのようなものを指に挟んだりされて、指の骨が折れたりした。爪は6枚剥がされたし、歯は三本抜かれた。

 

 この点でいえばエルフは魔法だったので死にそうになり気を失ったりしたが、こちらは気絶する暇も与えて貰えないので拷問らしい。

 とりあえず教訓として、これから他人は信用しないようにしよう。

 

 信じられるのは自分だけ。

 これだけは忘れずに生きていこう。

 

 

 

 

 〇月$日

 

 拷問を受けている間に、尖った石を手に取り拘束を外しておじさんを殺した。

 少し拷問してみたけど、チマチマと面倒くさかったので氷の魔剣で下半身だけを凍らせて凍死させようとした

 何度も眠りそうになっていたので、親切に顔を蹴ったから顔が腫れ上がって原型を留めていなかった。

 

 人を殺すことに、そして人に殺されそうになることに、僕は全く何も思わなくなった。

 どうやら僕の頭のネジはいつの間にかぶっ飛んでいたみたいだ。

 

 途中、モンスターが現れたのでおじさんをあげた。

 死んだフリをしていたみたいなので、餌として上げることにした。途中悲鳴が聞こえたけど一日ぶりに食事を始めた。

 

 やっぱり野菜は美味しい。

 食べられている、おじさんを見ながら、またトマトを食べた。

 何だかおじさんもトマトみたいだな〜と呑気に思った。

 

 

 

 

 

 

 

 〇月°日

 

 

 馬車は問題なく乗れる。

 もしかしたら騎乗の才能があったのかもしれない、心做しかトマトの人が操っていた時より上手く動かせてる気がする。

 ウマゴン(命名)はかなりいい速度で移動してくれたおかげで、少し早めにオラリオの座標へと着いた。着いたら無くなってる、なんてベタな感じではないので普通にあった。

 

 さて、近場で馬車を降りて荷物を纏めた。

 商人でもないのに野菜を積んでる馬車に乗っているのはおかしいし、もしかしたらオラリオであのトマトの知り合いがいるかもしれない。

 

 やっぱりそう考えると途中からは歩いた方がいい。

 少量のトマトとキュウリを、あとはエルフから貰った宝石と木の枝を。

 

 

 

 

 思ったよりすんなりと入れた。

 あんなので良いのかと思うが、すごく簡単に入れた。

 皆、と言ってもレフィーヤとトマトだけだが、オラリオは噂通り活気が凄かった。自然の静かさやらなんやらを愛するエルフの森と比べれば真逆だ。あ、でも焼いた時とはいい勝負かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇月?日

 

 

 今度はエルフの金品欲しさに喧嘩を売られた。

 何やらよく分からないことを言っていたが、気にしないでいいだろう。ファミリアがどうのこうのって言ってたと思うけど、オラリオに来たのが最近なのでまだ勝手がわかってない。

 

 高い建物から気持ち悪い視線を感じたので振り返った。

 よく分からなかったし気持ち悪かったけど、トマトやエルフと同じで品定めされているような気持ち悪さだった。

 

 お金を使って宿を取ろう。野宿もいいけど、もう一度オラリオに入ったり出たりするのは面倒だ。

 自分に部屋があるなんて生まれて初めてだけど、不思議と抵抗はなかった。

 自分には何処にも居場所が無かったことを改めて実感出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇月々日

 

 凄いことになった。

 赤髪の人に話しかけられて、僕にとって武器とは何かと聞かれた。

 

 だから僕は答えた、凶器であり脆いものだと。

 すると鼻で笑われた。僕は武器を知らないと。

 

 こうも言われた、武器と凶器は違う。

 人を守れない鋼に価値はない、と。

 

 人を守る?僕には理解できない単語が出てきた。人を守るってなに?

 あれらは貶め、私利私欲を満たし、使えなくなればゴミのように捨てる存在だろ。そんなものを守ってなんになるの?

 

 悲しい子。そう言われた。

 心の穴が傷んだ。

 生まれてから痛みに慣れ、殆ど痛覚が麻痺しているのに痛いと感じた。

 

 

 

 そして僕は初めて武器を見た。

 どこまでも美しく、どこまでも透き通る。

 

 ナイフ、短剣、大剣、太刀、槍、斧、盾。

 部屋にはそういった武器が並んでいた。

 

 これは、誰が?

 

 僕は思ったまま赤髪の人に聞いた。

 すると私だと、いい誇らしげな顔になる。

 

 

 僕は人をもう信じない。

 自分以外は信じられない。

 人には頼らない。

 信じるのは僕という存在と能力だけ。

 

 でも、

 

 

 もし、

 

 

 

 答えてくれるなら。

 

 

 

 鋼だけは、信じてもいいんじゃないか。

 僕は多分、鋼の美しさに取り憑かれたのだと思う。

 あれ以上の物を作りたい。

 他でもない自分の手で。

 

 この手であれを超えたい。

 

 

 僕は神、ヘファイストスの神血を背負い。

 神の眷属となった。

 

 

 

 

 

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