エルフの忌み子は鍛冶師   作:枝豆%

5 / 14
少年3

 〇月|日

 

 目が覚めた。

 少し前までダンジョンに居たのに、今は少なくともダンジョンでは無いどこかで寝てた。

 起きた時には誰もおらず、とりあえずベッドから出た。

 

 折れたハズの足は思ったよりもちゃんと動く。

 あの重傷なら切断もやむを得ないと思っていたので、完治していたから儲けものだ。

 

 部屋を漁り、腹に溜まるものを口に入れた。味がある食べ物は美味しい。

 

 

 すると、銀髪の帽子をかぶっている少女がこちらに来た。

 

 どうやらここは診療所だったらしい。

 身体に異常はないみたいだが、主神の計らいで目覚めるまではここに置いておくことになったらしい。

 

 オラリオには親切な人が多い。

 実は僕はもう死んでいて天国にでもいるのかと何度も思ってしまう。呪われた僕が天国にいけるのかは怪しいけど。

 ベッドで寝ていたので、料金を払わないといけない。

 

 そう銀髪の少女、アミッドに聞くと既に主神が払っていたらしい。

 だから、また別の日に渡しにくるとだけ伝えた。

 

 アミッドは最後までいらない、既に貰ったと最後まで了承しなかったが、ならば恩返しがしたいと伝えると渋々クエストで勘弁してくれと逆にお願いされた。

 

 本当にここは……とても僕には眩しすぎて生き辛い。

 

 

 

 

 

 〇月・日

 

 

 昨日主神に顔を出したら(はた)かれた。

 

 心配させるな。

 自殺紛いなことをするな。

 勝手に行動するな。

 

 そう言いながら叩かれた。

 普段鉄を打っている主神のビンタは強烈だった。でも叩かれた頬よりも、胸が痛かったのは何故だろう。

 途中、怒っているのに泣きそうになっている主神を見て胸が締め付けられたのは何故だろう。

 

 ここに来て僕はとても胸がざわつく。

 僕に感情なんて残っていたのか?

 どうなっているのか分からない。

 

 何だか今日はとても鉄を打ちたい気分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇月々日

 

 

 主神にステイタスを与えた時みたいに服を脱げと言われた。

 僕はそれに従い服を脱いで背中を曝け出す。

 

 「ダンジョンで何をしてきたのか?」

 そう主神に聞かれた。

 とりあえずあったことをそのまま伝えた。到達階層から僕の唯一(・・)のスキル【騎士は徒手にて死せず】を本来の出力でミノタウロスを焼き払ったこと。

 

 最後まで言い終わったら一昨日とは違い、グーで殴られた。

 上半身裸のまま、極東の神である主神の神友であるタケミカヅチから聞いた『正座』という特殊な座り方で、この前の続きの説教を永遠と聞かされた。

 

 そして最後に主神は笑いながら──。

 

 

 「Lvアップおめでとう。もちろん昇華させるわね?」

 

 僕は迷わず頷いた。

 発展アビリティは最初から欲しがっていた『鍛冶』をとった。初アタックでLvアップなんて前代未聞だと主神に言われた。

 今まででの『世界最速姫』のもつ所要期間一年を大幅に更新する偉業となる。

 

 眷属となった日にギルドには登録していたので、期間は丁度2ヶ月。

 主神は「はぁ〜、次の『神会』が憂鬱よ」と言っていた。

 とりあえず主神に謝ったところ、何故か畏まられた。何故だ。

 

 主神から解放された後、椿に絡まれた。

 何なんだコイツら。

 

 何でもLvアップした事は、主神があまりに大声を出すから聞こえていたそうだ。

 

 背中をパンパンと叩かれる。「良くやった!」などと椿は言うがレベルの差があるから非常に痛い。

 揉みくちゃにされてやっと逃げられた。あいつはもう少しお淑やかという言葉を勉強した方がいいと思う。

 

 

 ところでだ。

 椿の言う通りダンジョンで試し斬り、基試し撃ちをした所僕には欠点があることに気付いた。

【騎士は徒手にて死せず】は確かに絶大だ。だが、それは今の僕にとっては切り札だ。そして僕の手札には、この一枚しかカードはない。つまり、ずっと切り札を使っている状態だ。

 確かに強いが、消費が激しすぎる。更に小さいモンスターや敏捷の高いモンスターだと、的が絞れない。

 今回のアタックで避けられることは無かったが、次もそうとは限らない。

 

 ということで、靴を作ろう。

 武器になる靴を。

 確か【騎士は徒手にて死せず】は手にした武器と認識できるものが、条件だったはず。なら靴にナイフを仕込もうが、棘を仕込もうが魔剣にはならない。

 

 それに主神にも言われた。

 魔剣は確かに強いけど街中では使えない。街の中で戦闘になると見越しておきなさい、と。

 意図は分からないが、いい人ばかりじゃないと伝えたかったんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇月€日

 

 靴の試作品が完成した。

 靴と言ってもブーツだが……とりあえずダンジョンに潜って集めた資金で貯めた金を全部使い、サラマンダーウールを買ってブーツにしてみた。

 外から見れば何の変哲もないブーツだが、色々と隠し機能がある。

 

 中には外向きに小型ナイフや針が鎖を伝って全方位に巡ってる。しかし、それではこちらの足も痛めてしまうので砂鉄などでクッションを作る。

 

 耐火であるサラマンダーウールに砂鉄もあるのでブーツの中がすごく暖かい。

 

 これらは所謂サブ武器。

 メインは足の裏に仕込ませてる、大きめのナイフ。と言っても足のサイズ一杯なので24cm程しかない。

 それでも人間なら心臓へは間違いなく届く。

 

 これくらいで脚の装備はいいだろう。

 

 やっとできる。

 

 

 

 絶対に折れない、曲がらない剣を作ることが。

 

 

 

 

 

 

 

 〇月☆日

 

 不壊属性の付与は未だに成功しない。

 2ヶ月近くダンジョンには行っていないが関係ない。僕の目的は不壊属性の武器を作る事。周りにインチキ野郎と言われても関係ない、僕は僕のしたいことをただするだけ。

 

 

 

 

 

 

 〇月÷日

 

 不壊属性を付与できなかった長剣やナイフを売り場に出した。

 ウチのヘファイストスのブランドを持つには足りないと思ったので断り、必要な金だけを提示した。

 所持金も少なくなってきたことだし、今日はダンジョンへ行こう。剣も持っていくが、何より重要なのは足技の方。

 

 

【騎士は徒手にて死せず】は魔力を使わないから無限に使える。本当に規格外なスキルだが、材料の方は有限である。

 色々と考慮した上で、小回りのきく近接戦闘がある方がいい。

 

 明日は試し斬りでも試し撃ちでもなく、試し蹴りをしてこよう。

 

 

 

 

 

 

 

 〇月*日

 

 失敗した。

 脛の辺りの針やナイフが上手く刺さりすぎて、モンスターがくっ付いてしまった。

 他に敵がいない時はそれでも良かったけど、囲まれてたらと考えると……。

 脛には鎖だけにしておこう……。反省。

 

 

 

 

 

 〇月○日

 

 主神がいい顔で工房に入ってきた。

 嬉しそうに「無難よ」と言い紙を渡された。

 

 そこには【正体不明(アンノウン)】と書いてある。

 

 これは何かと聞くとLv2から与えられる二つ名だそうだ。

 正体不明って……まぁあながち間違いでもないが。何となく釈然としない。

 

 

 




二つ名が見つからなかった……。カッコイイ二つ名が考えられなくてスマヌ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。