〇月:日
〇月〆日
長かった。
エルフは長寿といえど、余りに濃い。
一年、大体ベートと出会い専属契約をして一年。その一年でやっと辿り着いた。
歓喜、祝福、達成感。
あらゆる物が押し寄せ、あらゆる人が賞賛してくれた。だがしかし、僕は何も感じなかった。
一つだけ確かなこと。
目的を失った。
〇月|日
何もすることがなくても武器を作ろうとしている自分がいる。
至った。いや、僕は至ってしまった。
空っぽの僕に初めてできた険しい夢。
そして僕はそれを達成してしまった。
故に僕はまた空の存在になった。
僕という無価値なエルフの全てを失った愚者は、何もかも魔剣へと変えてしまうその呪いは。解けることはなかった。そして、奇しくも握れるようになったのは
ベートが来て何やら言われたが、余り覚えていない。
しかし珍しく怒鳴らずに気を配っていたようにも憶えている。
ベートに心配されるくらいだったのか。僕はそんなに惨めだったのだろうか。
〇月=日
主神に呼ばれた。
「最近の武器の生産スピードが落ちているみたいだけど………何かあったの?」そう言われたので「なんでもない」と返した。
初めに言っておいて欲しい。神に嘘がつけないなら。
どうやら主神はそれを読み取り、僕を吊し上げて吐かせた。
最近この主神、僕に対して厳しくないか。
と、まぁ僕は隠すことでもないので答えた。
「目的を見失った」半身を象る、もう一人の僕を作りたかっただけで、作り終わってしまえば、僕に剣を作る理由はなくなる。
「僕が剣を打つ理由が無くなった」
〇月♪日
もう一度主神に呼び出された。
そして一言「思い上がるな」そう言われた。
不壊へと至ったからなんだ、ならばその上を目指せばいい。
お前はまだ未熟だ、偉そうに辿り着いたなんて威張るな。
魔剣を超えろ、宿命を超えろ、限界を超えろ。それでこそ
そして主神は一つの英雄譚を見せてきた。
「これを超えなさい」
そう言われ見せられたのは、黄金の聖剣。
僕は知らないが、誰もが一度は聞いたことあるのある童話らしい。
「魔剣を打てる鍛冶師は聞いたことがあるけど、聖剣を打てる鍛冶師なんて聞いたことがない」
だからよ。そう主神は呟く。そして続けるように言葉を重ねる。
「誰かを辿るのは簡単よ。道が造られているもの。でもね、本当に困難なのは道のない道を歩み、そして辿り着くことよ。あなたも私の子供なら伝説の一つや二つ超えてみなさい」
無茶を言う。
本当に無茶なことを言う
だがまぁ仕方ないだろ。
英雄譚だろうが神話だろうが、御伽噺の一つや二つ超えてやろうじゃないか。
誰かに埋めて貰われないと生きる目的すら定められない。
そんな僕が嫌になる。
〇月>日
お詫びも込めてベートと飯を食いに行った。
奢ってやると言えば、ガキが生意気なこと言ってんじゃねェ。とキレられたけど、そこに総意があった訳では無いとベートも理解しているので飯には普通に来た。
が、問題が発生した。
ベートを呼んだはずが、どうやらオマケで何人か付いてきてしまった。
そんなオプションがこいつにあったのか。しかも女か、いつの間に俺の直接契約者はハーレムを作っていたのだろう。
と、思ったが目当ては僕だったらしい。何でも【不壊属性】を打てる鍛冶師がいるとベートが口を滑らしたらしい。
そしたら付いてくると駄々をこねられ、撒いたと思ったが撒けきれていなかった様子。
武器は造らないけど、飯ならベートが奢ると言い落ち着かせた。
元々一人を除けばダメ元だったらしいので、そこまで気落ちはしていない様子。
金髪の、確かアイズという名前の少女は諦めていない様子だった。
見た感じベートがいつも話していたガキは彼女のことだろう。なるほど、ベートはあんな感じがタイプなのか。
……そうだな、僕は……いや止めよう。
アマゾネス達は僕から見てもよく食べていた。食べ過ぎなまである。
手持ちの
〇月ー日
僕は基本的に武器を売らない。
最初の方のこそ、出来損ないと呼べる安値の剣を売っていたが。今の僕が造る剣は一本で家を買えるくらいあるらしい。
だが、僕は売らない。身に余る金を貰っても意味は無いし、剣を預けるという行為をしたくない。だから僕は防具しか売っていない。
やはり剣というモノは僕にとって、他のものとは価値観が違うのだろう。
しかし、不壊が造れるようになり置き場所が無くなってきた。
不壊が造れる前は溶かすなどして、元に戻したりも出来たが不壊が付与されてからはどうすることも出来ない。
それなら売れば、譲ればいいでは無いのか?と思うかもしれない。
だが、それは出来ない。何故か?は僕にもわからない、けど出来ない。
だから持ち逃げしようとしている冒険者を殺しかけたことに関しても、僕は謝る気はない。
むしろ僕のモノを盗もうとしたことに対して、開き直っている冒険者を殺し損ねたとすら思っている。
〇月」日
金髪の奴が来た。
ベートに飯を奢った時にアマゾネス姉妹と一緒にいた女だ。
「折れない武器をください」
と言われた。勿論断る。
僕の剣は人に預けられるような、誰かを守るように作られていない。
常に理想と共にあり、そして溺死する。そんな物でしかない。
しかし、ベートの想い人でもあるわけだし無下には出来ない。
そこそこ冷たい態度をとるとベートは僕に殴り込みにすらくるだろう。
あいつは存外そういう奴だ。本人の前でヘタレなのは確認済みだが。
だから条件を付けた。
「Lv5になれば