FAIRY TAIL 〜Those called clowns〜   作:桜大好き野郎

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冥府の門ー⑥

 

 

 冥府の門、本部。

 

 岩肌からくり抜いたかのような四角形の大地は空中を飛び、高速で飛行する。誰にもその所在を知ることが出来なかった所以がこれだ。悪魔の心臓も同じように船を飛ばして移動してきたが、冥府の門はスケールが違う。何せ、面積ならば町一つ分の大地なのだ。それだけでギルドの力量と言うのが伺える。

 重力は中心に向かって働いているようで、側面にあるギルドの廊下には地上を横から見るという不思議な光景を目の当たりにしつつ、それを気にせずに歩く3つの影。

 

 

「まったく!ワシの家をめちゃくちゃにしおって‼︎」

 

「まぁ、落ち着いてください、クロフォードさん」

 

「こっちは議員年金をフイにしてまで作戦に参加しとるんじゃ‼︎」

 

「いや、しかし…………作戦成功後の富はおいくらかおいくらか」

 

 

 ひとつは魔法界を裏切り、冥府の門に協力するクロフォード。その隣には涼しい顔のクロア・バロン。そして2人の前を歩くのは丸々とした体型を持ち、顔に被る面具から覗くのは単眼の悪魔、フランマルス。

 

 彼等の言う作戦とは評議院が万が一の為に作り上げた最終兵器、フェイスを起動させること。これが起動すれば大陸中の魔力は消し去ることが可能なのである。そしてその後、クロフォードは冥府の門に捕まっていたと証言し、新たな王として君臨する野望を立てていたのだ。

 起動の鍵となるのは新旧問わずとした評議院の正体リンクであり、これは本人さえ知らずに登録されているのである。フェイスの場所、そして評議院の居場所を探るためにクロフォードの持つ超古文書(スーパーアーカイブ)の魔法が必要であり、ここまでスムーズに事が進んだのもそのお陰だ。

 

 

「エルザたちはどうした?」

 

「エルザ………?ああ、あの魔導士ですね。彼女はキョウカの拷問に。残る2人は検体としてラミーに渡しましたよ」

 

「必ず殺せ‼︎奴等を生かして返したらワシの関与が疑われる可能性がある‼︎」

 

「ご安心を。ついでに言うと、この場所は絶対に誰にも見つけられません」

 

 

 自身の立場、そして計画のために容易く切り捨てようとするクロフォード。その姿があまりにも醜く、隣を歩く男爵は呆れたように景色を眺めた。彼等と目的の違う男爵からすれば、計画なんてものどうだっていいのだ。今回参加したのだって単なる暇つぶし。いつになれば我が目的は達成されるのかと遠くを見つめる。

 

 

「ん?あれは………」

 

 

 地上を眺めていた男爵がいち早く気付き、残る2人も外に視線を向ける。遠くから近づいてくる鳥のような影。しかし、近づくにつれそれが鳥ではないことに気がつく。

 

 

「ふ、フランマルス君‼︎この場所は⁉︎」

 

「絶対に見つからないーーーー‼︎」

 

 

 慌てる2人を無視するかのように、影はそのスピードを落とす事なく突撃。クロフォードの首根っこを掴み声を上げた。

 

 

「見つけたゾォオオオオ‼︎‼︎」

 

 

 影の正体はナツであった。いち早く内通者の存在に気がついた彼はクロフォードの自宅に直撃。しかし、既に全員が撤退した後であり、周囲のハーブが匂いを邪魔していたのだ。にも関わらず匂いを探り当て、こうして居場所を特定したのだ。

 

 

「エルザとミラ、あとカイトはどこだ‼︎」

 

「さぁ?探してみては?」

 

「うおっ⁉︎なんだこれ⁉︎」

 

 

 男爵がステッキで地面を叩くと地面から溢れるようにして現れる骸骨たち。行手を阻むようにしてナツを取り囲むが、耐久性は低いようで拳の一発でいくつもの骸骨が霧散する。

 

 

「邪魔だァ‼︎」

 

「フランマルス。ここは私に任せてください。クロフォードさんを連れて行くのを忘れずに」

 

「え、ええ。お任せしましたよ、クロア・バロン様」

 

 

 やんわりと微笑んだ男爵にフランマルスは逆らわない。立場で言えば幹部であるフランマルスが上であるが、彼我の実力差はそれ以上にあるのだから。

 用意した骸骨が全て倒される頃にはフランマルスとクロフォードは姿を消し、山高帽を深く被り直す男爵だけ。

 

 

「お前!元議長のトコにいた奴だな‼︎」

 

「おや?なぜその事を………ああ、なるほど。滅竜魔導士でしたね」

 

 

 ならば匂いでバレても仕方がないか、と嘆息。さて、どう対処したものかと男爵は考える。威勢はいいが、どうにも隙だらけ。かと言って大人しく拘束される程の実力ではない。ならば、移動手段であろうハッピーを人質にするかと視線を向けた瞬間だった。

 

 

「火竜の鉄拳‼︎」

 

 

 思惑を読み取ったのだろう、ナツの大ぶりの拳が男爵を襲う。あくまで思考を乱す為の攻撃であり、当たることは考えておらず男爵も半身で躱すだけで済む攻撃。避けられることに動揺もなく、続け様に乱撃を繰り返すがそのどれもを男爵は紙一重で躱した。しかし、延々と続くような乱撃を躱した先にあったのは壁。それに気がついた時には既にナツの口内に炎がちらついていた。

 

 

「火竜のォ、咆哮ォ‼︎‼︎」

 

 

 至近距離からの特大火力。壁を消し飛ばし、爆煙が周囲を漂う。ハッピーがやったと声を上げるが、ナツは警戒体制を解かない。肌にまとわりつくような嫌な気配が消えていないのだ。

 

 

「思いの外、やりますね」

 

 

 煙が晴れた先、地上を真上から眺める景色の中にあるのは白骨の壁。まるで繭のように包まれていた男爵に傷ひとつなく、崩れた白骨がそのままナツに襲いかかる。

 

 

「なろォ‼︎」

 

「ナツ‼︎」

 

 

 先ほどの骸骨達とは違い、今度は標的が小さくバラけて動くために狙いがつけづらい。そうこうしている内に抵抗するナツの拳を掻い潜りひとつ、またひとつと白骨がナツに張り付く。次第に動きが鈍くなるナツは遂に白骨を全身に覆われて拘束されてしまった。

 

 

「さて、残りは………」

 

 

 万が一にでもこの場所を伝えられたら面倒極まりない。残るハッピーを拘束しようとした時だった。身体の芯から凍るような寒気が廊下を支配したのは。

 

 

「おいおい、なんだよ。もう終わっちまったのか?」

 

「シルバー、ですか」

 

 

 男爵の背後から現れたのは端正な顔立ちの中年男性。冥府の門の幹部、九鬼門の1人絶対零度のシルバーである。尚も拘束から逃れようとしていたナツを凍らせると、冷えた視線を男爵に向ける。

 

 

「いけねぇな。貴族様にこんな雑用させちまった」

 

「構いませんよ。好きでやったことですから」

 

 

 あっけらかんとした口調とは裏腹に、その視線は異名通りの絶対零度。対して男爵は気にしておらず、片手でそれに返答するとハッピーを捉えようと視線を戻す。

 しかし、既にハッピーの姿はどこにも見えず。案の定、壊れた壁から逃げ出したのだ。舌打ちを溢しそうになるがそれは貴族らしからないと自重し、代わりに重いため息を溢す。

 

 

「はぁ………貴方のせいですよ、シルバー」

 

「悪ィな。けど、場所が割れたって関係ねェだろ。ここまで来れる奴はそういねェ」

 

「だといいのですが」

 

 

 確かに侵入は難しいが、絶対ではない。現に1人の侵入を許してしまっているのだ。そも、難しいのは発見とその侵入方法だけであり、防衛には重きを置いていないのが現状。

 男爵自身、ギルドはどうなってもいいとは思っているが、だからと言って無闇に瓦解されるとそれはそれで困りもの。目的が遠のいてしまう。

 

 

「シルバー、侵入者の処理は任せましたよ。私はマルド・ギールの元へ行きます」

 

「へぇーへぇー、お貴族様の言う通りに」

 

 

 全く敬う気持ちもなくそう言葉にするシルバー。凍ったナツを担ぎ上げ運ぶ姿を見送ると、懐から葉巻を出して一服。後は酒があれば完璧なのだが、生憎と嗜好品を好む者はこのギルドにはいない。

 最近はストレスが溜まるばかりだと紫煙を吐き出し、幹部の1人であるマルド・ギールのもとへと足を進めるのであった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

 フィオーレ大陸、その荒野にて。

 人影も物陰もない、殺風景なそこでひとつの兵器の封印が解かれた。人の顔を模したそれは天を向きながら、ゆっくりと地響きを立てて地中より這い上がる。

 

 その兵器こそフェイス。大陸中の魔力を消滅させる、魔法界にとっての終末装置。稼働キーの所有権をジェラールから元議長に移し、別の人間へと移す前に元議長は殺された。それにより封印が解かれたのだ。

 

 幸いな事に遠隔操作は不可能であり、手動でしか起動しないこと。それにより時間は稼げてはいるが、それも時間の問題。誰か1人でもそこに辿り着けば全て終わりなのだ。

 

 

「ファッファッファッファッファッファッファッファッファッファッファッファッファッファッファッ。どうしましょ。今の振動で生まれちゃたらどうしましょ。な〜んて心配は、無用‼︎」

 

 

 そんな中、冥府の門のラボにて陽気な笑い声が響く。ラミーと呼ばれる、悪魔の1人だ。死んだ悪魔達の身体を再生させる機関の長というだけあり、その手腕は本物。現に彼女は既に仕事を終えていた。

 

 

「だって、もう再生してるんじゃないのん。ファッファッファッファッファッファッ」

 

 

 かつて自爆という形を取り、ラクサスや雷神衆を含めた街一つを壊滅させたテンペスター。そして、元評議員の暗殺をナツたちに邪魔されて死んだジャッカル。幹部に数えられる2名を復活させているのだ。

 そして、もう1人。直属の上司であるキョウカに頼まれた元人間の改造さえも。

 

 

「これが魔………力が漲っておる」

 

 

 キョウカの選抜を耐え抜き、悪魔へと改造されたのはミネルバ。元の形を残しつつも、ツノや爪が生えた姿は明らかに人外。イケメンであるジャッカルやテンペスターは兎も角、女には興味がないためにおざなりの改造ではあるが、その力は前よりも遥かに増している。

 

 

「興味ないついでに、こっちもそろそろ改造しちゃおうかなー」

 

 

 ラミーが見つめる先、人一人がすっぽり入る試験管の様な物の中にいるのはミラジェーンとカイト。培養液に満たされ意識を失っている2人に対し、あくどい笑みを浮かべるラミー。

 

 

「可愛い顔しやがって………アンタはこの世で1番醜いイモ虫に改造してやるよ」

 

「こいつは………‼︎ちょうどいい。おい、こやつを出せ。新たな妾の力の贄にしてやる」

 

「いきなりなに?命令しないでもらえる?」

 

 

 カイトの姿を確認したミネルバ。途端に脳裏に溢れ出すのは散々にコケにされた屈辱。その鬱憤を晴らさんとラミーに命令するが、聞く耳を持たない。埒が明かないと試験管に攻撃を仕掛けようとするが、それはジャッカルに止められた。

 

 

「なんや、突然。気ィ狂っとるんか?」

 

「ええい、離せ‼︎こやつは妾の手で殺さねばならん‼︎」

 

「アホくさ。オイ、テンペスター。こいつ外に運ぶぞ」

 

「うむ」

 

 

 この場は自身達の再生にも使われる場所。下手に暴れて破壊されてはたまったものではない。2人がかりで拘束されたミネルバを滑稽だと笑うラミー。その瞬間、冷たく鋭い視線が背中を撫でた。

 

 

「!?」

 

 

 振り返った先はカイトの入った試験管。なんの変化もない、目を瞑って培養液の中を漂うだけだ。禍々しいまでの殺気を感じたのは気のせいかと思い、ミラジェーンの改造を開始しようとした瞬間だった。

 

 

「ホッホッホウ‼︎進捗はいっかがですかねぃ?」

 

「うげ。アンタらか」

 

 

 どうも今日は客が多い。現れたのは球体のような道化と、手が異常に長い枝のように細い道化。主人である男爵ならまだしも、お世辞にも整ってるとは言えない顔立ちの2人にラミーのテンションは下がる。

 

 

「言われた通りに、男の方には呪力を入れてるわよん。なに?こいつも仲間にするわけ?イケメンなら歓迎だけどさ」

 

「ケケ。さぁ、私たちにはなんともかんとも」

 

「なにせ私たち、道化ですからねぃ。難しい話はどうにも」

 

 

 コミカルな動きでラミーの周りを回る2人。鬱陶しいと追い払おうとするがなんのその。ギリギリラミーの妨害が届かない範囲でくるくると回る。

 そうしてようやく無駄だと悟ったラミーは大きくため息を。せめて2人がイケメンだったらまだ許せたのだが。

 

 

「ぜぇ、ぜぇ………とにかく、アンタら黙って大人しくしてて‼︎邪魔すんじゃないのよ‼︎」

 

「ホッホッホウ。これはこれは意なことを。我々道化(アルルカン)に黙っていろとは」

 

「ケケ。そいつぁ太陽さんもびっくりして東から昇るってもんだ」

 

 

 つまりは黙る気も大人しくする気もないということか。視界をカラフルな服の2人がちらつくのを我慢して、ラミーはミラジェーンの改造へと手をかけるのであった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

 冥府の門、中心部。マスターであるENDの部屋であるのだが、当の本人は未だ復活を果たしていない。そのため、冥府の門はNo.2であるマルド・ギールがその立ち位置にいた。その手にはENDが封印されている魔導書。その復活のために冥府の門は今作戦を企てたのだ。

 大陸中の魔力を消し、ENDさて復活すれば自分たちの創造主であるゼレフの目的ーーーゼレフ本人の殺害が可能だと考えて。

 

 長い時を生きるゼレフが自殺のために作り出した存在がゼレフ書の悪魔。そして、冥府の門の構成員は例外なく悪魔である。思惑はどうあれ、ギルド全員の中にあるのは目的の達成。それ故に冥府の門の結束は強固であり、バラム同盟の一角を担うまでに成長したのだ。

 そして、玉座に座る彼は目の前の男を見据える。自身達とは違う目的の為に作られ、今日に至るまで王国の貴族として潜り込んでいた同類を。

 

 

「よく来たな、盟友」

 

「呼んだのは貴方でしょうに。それで何用ですか?」

 

 

 山高帽を目深に被り、葉巻を咥えた男爵が呆れたようにため息を溢す。外部協力者、という立場だがマルド・ギールを敬う素振りはなく、盟友と呼ばれるだけありあくまでも同等の立場として男爵は告げる。

 

 

「なに、少し気になったのだ。我らがギルド内で遊びが過ぎているのではないかと」

 

「ああ、その事ですか。別に、問題ないでしょう?」

 

「問題はない。しかし、不可解なのだ。何故このタイミングなのか」

 

「ちょうど良い検体が手に入った、それだけですよ」

 

 

 決して邪魔をするつもりはない、と言外に溢し紫炎を燻らせる。真偽の程はわからない。しかし、男爵のやろうとしていることは、下手をすればこの大陸を半壊させる事も可能なのだ。

 かといって、力づくで邪魔することは難しい。何せ、彼我の実力はそう変わらないのだから。例え抑えられたとしても、計画の遂行は不可能となるだろう。

 

 

「まぁ、よい。真意はどうあれ、マルド・ギールは納得する事とする。しかし、邪魔立てしたその時はーーー」

 

「わかっていますよ。貴方と私の目的は違う。しかし、無碍にできるものではないのですから。私も計画の達成を楽しみにしていますよ」

 

「ならよい」

 

 

 目的が違うとはいえ、男爵も同類。それ故にマルド・ギールたちの悲願の達成を心待ちにしているのだ。それに、男爵の目的も上手くいけば儲け物程度にしか考えていない。何せ既に数百年経ったのだ。その間の成功例は0。成果の出ない悲願に望みをかけなくなるには十分過ぎる時間だ。

 

 その時だった。ギルド内に非常事態を告げるアラームが鳴り響いたのは。

 

 

「侵入者か………」

 

「はぁ………シルバーのせいですね」

 

 

 ここまで来る事のできる者と言えば、既にその実績のあるフェアリーテイルしかいない。セイラの使う呪法命令(マクロ)でギルドの1人を操り、拠点諸共爆破して後顧の憂いを断つ手筈だったのだが、どうやら失敗したようだ。

 

 実際、計画自体は上手くいった。評議員の護衛に来たエルフマンとリサーナ。そのうちリサーナを人質に取り、エルフマンを操ってギルドを爆破させるまでは。

 しかし、寸前のところでカナが異常に気がつき、ギルドメンバー全員をカードに封印。機動力のあるハッピーたち3人にカードの束を運んでもらい、冥府の門の本拠地に降り立ったのだ。

 

 そんな事は露知らず。男爵は短くなった葉巻を懐の携帯灰皿に仕舞うと、踵を返して部屋を出る。

 

 

「面倒ですが、万が一があります。迎撃を愚者の軍団(アルルカン)達に通達しなければ」

 

「ああ、そうしてくれ。盟友ーーーいや、ゲーテよ」

 

 

 ひた隠しにしていた、久方ぶりの本名。しかし、その名を呼んで良いのはゼレフのみ。心底不愉快だとばかりに舌打ちをこぼした男爵。この怒りは侵入者達にぶつけさせてもらおうと脚を早めるのであった。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

「外行騒がしいなぁ………ねぇ、ちょっと。アンタら見てきてよ」

 

「ホッホッホウ。道化の使いが荒いですねぃ」

 

「ケケ。侵入者、侵入者‼︎ネズミが穴蔵に入り込んで来やがった‼︎」

 

「おやおや?こわ〜い化物の巣窟だというのに、滑稽ですねぃ」

 

 

 ゲラゲラと周囲を旋回しながら笑う道化師2人に従う気がないのだと悟ったラミーは思考を切り替える。どの道、キューブから内部への通路を閉ざして仕舞えば侵入は不可能。あとはいくらでもいる下っ端達や魔法生物たちに相手させておけば十分なのだから。

 

 

「それでそれでそれでぇ?ラミー様はどんな改造をするおつもりでぇ?」

 

「ケケ!ネズミを捕らえる猫にしよう!にゃーにゃーにゃーにゃー騒がしい猫にしよう!最後は軒下に括られて終わりさ!」

 

「あーもう、うるさいなぁ。とりあえずこのキレイな顔をぐちゃぐちゃにして…………ファッファッファッ‼︎」

 

 

 手元のパネルを操作して、ミラジェーンに繋がれた触手型の悪魔から悪魔因子が注入される。ミネルバに施した量ならば多少の変異で済むが、大量の悪魔因子を注入されたら最早人の形は保てない。さぁ、その顔をぐちゃぐちゃにと意気込んだその時。

 

 

「ファッ⁉︎」

 

「ホッホッホウ?」

 

「ケケ?」

 

 

 ミラジェーンの隣り、カイトが閉じ込められていた試験管が内部から爆発する。次いで3人に襲いかかるのは影犬の群れ。戦闘能力の低いラミーはすぐさま後退し、道化師2人が対象するが多勢に無勢。遠くへと弾き飛ばされてしまった。

 

 

「カッカッカ。目覚ましには最悪だねぇ」

 

 

 自身を拘束していた触手を口に運び、その内部液を吸い上げる。カラカラに干からびたそれを口から吐き捨て、腰を抜かすラミーを見据えるカイト。「ヒィイイイイイイ‼︎」と悲鳴をあげてカサカサと腹這いになりながら奥へと消えていくラミーを見送り、隣のミラジェーンへと視線を向けず腕の一振りで試験管を破壊する。

 

 

「おっと」

 

 

 倒れてくるミラジェーンを受け止めて呼吸を確認。どうやら無事のようだ。

 

 

「んん………あら、カイト」

 

「カッカッカ、お目覚めかな?」

 

 

 違いに裸の状態では気が引き締まらないと、影から取り出した服をミラジェーンに渡し、カイト自身も着替える。サイズ差で少しブカブカな服に四苦八苦しながらも着替えたミラジェーンは疑問をぶつけた。

 

 

「カイトも捕まっていたのよね?気絶してなかったの?」

 

「途中まではね。あの道化師2人組が出てきてからは意識がはっきりしていたよ。何か情報を漏らすかもと思って気絶した振りをしていただけさ」

 

 

 得た情報と言えばフェイスの存在、そしてギルドの仲間達がここに攻め込んできたという事。取り敢えずは合流を果たそうと話し合い、2人はラボの内部を進むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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