旅を続けるキュルルとサーバル、カラカル。その途中でキュルルは、謎の違和感に襲われる。やがて現れるジャパリバス。かれらの旅路はどこへ向かうのか!?

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A BAG

 キュルル。それが、かれに与えられた名前だ。

 

 かれは、サーバルやカラカルといった『フレンズ』とともに、自分の住処を探している。

 記憶を失ったキュルルに残されたヒントは、目覚めた場所にあったスケッチブックだけだ。そこに描かれた風景を辿っていけば、きっと自分の「家」に帰ることができると信じて――――

 

 

 キュルルたちはいま、鬱蒼とした森の中を進んでいた。キュルルの持つスケッチブックに描かれた次の目的地には、森や山、そして建造物が描かれている。

「ホントーにこの道であってるの?」

 旅の仲間のカラカルが声を上げる。しばらく歩いていて全員へとへとだ。キュルルは、

「この向こうに、きっと見えるはずだよ」

 と声をかけた。先ほど、森の中でフレンズに出会い、場所を教えてもらったので、その情報が正しければ間も無く見えてくるはずだ。その時。

 

 きゅるるるるるるるる。

 

 キュルルのお腹から、大きな音が鳴った。

「キュルルちゃん、お腹すいちゃったみたいだね!」

「う、うん…」

 サーバルに指摘され、キュルルは恥ずかしそうにうつむく。

「そうだ、ジャパリまんなくなっちゃってるんだ…」

 バッグの中には予備のジャパリまんは残っていなかった。

「大丈夫、きっとこの先に進めばジャパリまんも売ってるわよ」

 カラカルがそういい、ずんずん進んでいく。それをキュルルとサーバルも追いかける。

 

 

 やがて森を抜け、山のふもとにやってきた。すると、サーバルが異変に気付き大声をあげる。

「ああーーっ!!」

 キュルルとカラカルが驚きながらサーバルの指さしたところをみると、三体のセルリアンがいた。

「どうしよう」

「任せて!いくよーっ!!」

 焦るキュルル。サーバルがセルリアンを攻撃しに行く。

「私も行くわ!」

 カラカルも向かい、パンチで難なくセルリアンを倒した。

 

「みんな無事でよかった」

 そういってキュルルはセルリアンのいた場所をふと見る。

「ん?これって…」

「なになにー?」

 サーバルとカラカルものぞき込む。

 そこは、ジャパリまんのような食べ物を売っている施設だった。食べかけのジャパリまんがそこかしこに転がっている。

「もしかして、ここで食事をしていたフレンズが襲われちゃった…!?」

「それだったら、フレンズからもとの姿に戻って近くにいるはずよ」

 キュルルはいまのカラカルの話に耳を疑う。

「えっ!?それってどういうこと?もとの姿に戻る!?」

 カラカルが話すには、セルリアンに襲われたフレンズは、アニマルガールから動物へと姿が戻ってしまうらしい。

「そうなんだ…」

 

 

 フレンズを救えなかったことを悔やむキュルル。

「もう少し早くここにきていたら、助けられたのかな」

 そこに、サーバルが残念そうな顔でやってきた。

「キュルルちゃん、ジャパリまんのこってなかったよ…ぜんぶ地面に落ちちゃってた」

「そう…ありがとう」

 きゅるるるるるるるる。

 お腹が鳴る。

(あれ…?)

 ぞわっ。と何か違和感を感じ、キュルルは辺りを見渡す。

「なんだかとっても、おいしそうな匂いがする」

 それを聞いてカラカルとサーバルも嗅覚に意識を集中させるが、そのようなものは感じなかった。

「そんな匂いしないわよ」

「おかしいな…ん?」

 

 ふ、と視線を上げたキュルルは、山を大きな物体が下りてくるのに気付いた。

「なに、あれ?」

 かれらが途中まで乗ってきたモノレールにそれはよく似ていた。

 乗り物のようで、先頭で青いラッキービーストが操縦している。それがキュルルたちの前に停まった。

 サーバルがつぶやく。

 

「ボス…!?」

「サーバル、アイツのこと知ってるの?」

 カラカルがサーバルに声をかける。しかし、サーバルは思い出せない、と頭を抱える。

 

 そして、停まった乗り物から一人の女性が下りてきた。

 

「久しぶりだね、サーバルちゃん」

 

 帽子をかぶり、つやのある黒髪に赤いシャツ、白い半ズボン。

 

「知り合いなの?」

「どうなのよ、サーバル」

 

 さらに、背中には大きなかばん。

 

「あなたは…!」

 

 サーバルが目を見開く。なぜか、そこから涙があふれて止まらない。

 

「かばんちゃん…!!」

 

 

 

「どうして忘れていたんだろう…!!ずっと一緒に旅をしていたのに…!!」

 記憶を取り戻したサーバルが、かばんに駆け寄る。

 かばんとサーバルは抱き合い、再開を喜ぶ。その様子をキュルルとカラカルは見ていた。

「あれが、サーバルと旅していたヒトなのね…そうだ!キュルルの家も知ってるんじゃない?同じ人なんだから」

「そうだね!」

 

 キュルルはかばんに話しかける。

「あの…あなたはヒトですよね?」

 すると、かばんは冷たい目でキュルルをにらみつける。

「そうだけど」

「かばんちゃん、どうしたの?なんか怖いよ」

 サーバルはかばんの顔を不審がる。

「サーバルちゃん、気をつけて。この子は危険だよ」

「どういうこと?」

「この子はヒトじゃないんだ」

「えっ!?」

 

 そのとき、キュルルの頭のなかに今までの出来事が走馬灯のように流れ出した。

 

 

「なんのフレンズかわからないんだって」「あなたキュルルちゃんね!」「食べないでー!!」「この子も人なんじゃないの」「ぼくはケモノじゃないよ」「ぼくはヒト」「お腹すいてたんだね」「なんだかとっても、おいしそうな匂いがする」「そんな匂いしないわよ」「おかしいな…ん?」

 

 

「ううっ!!うあああっ!!」

 突然、キュルルは体の中が熱くなり、目の前のかばんに襲い掛かった。

 しかし、とっさに動いたサーバルとカラカルに抑えられる。

「どうしたの、キュルルちゃん!!」

 かばんはキュルルの首根っこを叩き、気絶させた。

 

「この子はね…セルリアンのフレンズなんだよ」

 

 

 

 キュルルを縄で縛り、かばんの乗ってきた乗り物・ジャパリバスの座席にサーバルとカラカルは座る。

「どういうことなの、かばんちゃん!わからないことだらけだよ!」

 かばんは順を追って説明した。

 

 五年前のサンドスター大放出。そこで誕生したかばんはサーバルとともに冒険をつづけ、ゴコクエリアへ向かった。しかし、その道中にセルリアンの攻撃にあい、離れ離れになってしまう。

 この時、サーバルは一度動物に戻ってしまい、再びフレンズ化したため、記憶を一部失ってしまう。

 

 一方、サーバルと離れてしまったかばんは長いあいだ、ひとりで旅を続行。人の痕跡の多く残るその場所で、フレンズ(アニマルガール)とセルリアンに関する多くの情報を得た。

「サンドスターが生き物にあたると、その生き物はフレンズになる。でも、このジャパリバスこのみたいに人が作ったモノにサンドスターが当たると…セルリアンになっちゃうんだ」

 かばんは話を進める。無機物であるモノにサンドスターが作用し、セルリアンとなって活動する。では、セルリアンとは生き物なのか?それとも、モノなのか?

 ちら、とかばんは気絶したままのキュルルを見る。

「あれはセルリアンにサンドスターが当たって生まれたフレンズ。セルリアンのフレンズだよ。それも、ぼくとサーバルが初めて出会った時のね」

 かばんとサーバルが協力し、初めて倒したセルリアン。大型で青いセルリアンだ。そのはじけた破片が、フレンズ化したそうだ。

 その青いセルリアンは、かばんの情報を大きな瞳で認識していた。それが、かばんとにた帽子や羽を付けている理由なのだという。

「それで、なんでキュルルちゃんは突然暴れ出したりしたの!?」

「それにはね、アマゾン細胞っていうのが関わっているんだ」

「「アマゾン細胞??」」

 かばんが見つけた資料によると、アマゾン細胞というのは、大昔に人が作り出したテクノロジーの一つで、人を強く、凶暴にする作用があるらしい。

 今は失われた過去の遺産だが、廃棄されたものがどこかの施設に残っているらしい。

「そういえば、キュルルちゃんが目覚めた場所はなんだか丸くて光ってて不思議な場所だったよ」

「やっぱり。そこにはアマゾン細胞がいっぱい入ってた。だから、キュルルちゃんはお腹を減らしてぼくに襲い掛かってきたんだ。アマゾン体になったヒトは、ヒトを食べたいと思うらしいからね」

 かばんの推測では、セルリアンからフレンズになったキュルルは、その後長い道程を経て、アマゾン細胞の眠る施設にたどり着いたという。そこで大量のアマゾン細胞に蝕まれたキュルルは記憶が焼かれ、そのすべてを失ってしまった。

「このスケッチブックは?」

 カラカルが、かばんにキュルルの絵を見せる。

「驚いたな…ここまで忠実にヒトの文化を再現するなんて…これは、もしかしたら進化かもしれない」

「進化?」

「ぼくみたいなヒトも、サーバルちゃんやカラカルさんも、もとは同じような生き物だった。でも、それぞれ得意なことを見つけて、それを頑張った。それで、今の姿がある。同じように、このセルリアンも、フレンズになって、自分の得意なことを見つけたってことだね」

 かばんは関心したように言う。初対面でのセルリアンに対する偏見はなくなったようだ。

「でも、かばんちゃん。これからどうするの?」

「この山の上に、ぼくが資料を見つけた施設がある。そこに行けばキュルルさんを治せるかもしれない」

「それって、セルリアンに戻っちゃうってこと?そんなのやだよ。キュルルちゃんも、私の大事なともだちだから」

 サーバルの訴えに、かばんは違うよ、とサーバルの肩をつかんで落ち着かせる。

「キュルルさんのヒトを食べたいって気持ちや凶暴さをなくせるかもしれないってこと。キュルルさんがお腹が減って暴れられない今のうちに、行こう」

 そう言って、かばんはボスに頂上まで行くように頼んだ。

「出発するヨ」

「よーし、キュルルちゃんを助けよー!!」

「行きましょ!」

「よし行こう、サーバルちゃん、カラカルさん!」

 かばん、サーバル、カラカルを乗せたバスが、山の頂上に向けて走り出した。

 

 

 

 数日後、仲良く旅をするヒトと三人のフレンズがいたとかいないとか…

 

 

 

 




NEXT HUNT

「一度セルリアンによって元の姿に戻って死んじゃった動物がいてね…」
「なんでそんなことしたのだ!!!フェネック!!」
「ぼくがセルリアンだったころに食べちゃったフレンズ…」
「アライさん、見てよ…オメガ体のフレンズの完成だよ」
「あの時、洞窟に住むことに決めたって言ってたよ!そこにいるはず!」
「アードウルフの死体をアマゾン体に…!?」
「やめて!!アードウルフ!!!」
「かばんさんはぼくが守る…アマゾン」

BAG LOST(大嘘)


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