進研〇ミって凄い…!

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元ネタはお笑い芸人ハ〇コのネタから


箒「どうすれば成績が良くなるんだ…!」

「一体どうすれば…」

 

篠ノ之箒には悩みがあった、それは学生としては極平凡な、それでいて切実な悩みだった。

その悩みの正体は箒が今まさに手に持っている数枚の用紙にあった。その用紙には赤い文字で〇や×といった記号が書かれており、更にその用紙の上、一際目立つ所に『73』という赤い数字が書かれていた。箒がその手に持つ用紙全てにひとつも例外なくそういった〇と×の記号と70代の数字が書かれている。

箒の悩み種はその用紙に書かれた数字にあった、それは学生という身分を持つ少年少女たちにとって共通の悩み。そう、成績だ。

 

「このままでは…」

 

箒がその身を置く『IS学園』は国内でも有数のエリート校である、当然そこに在籍するからには生徒に求められる成績も高い点数だった。

箒の現在の平均点はこの学園においては赤点を辛うじて免れる程度の成績であり、お世辞にも高い成績とは呼べなかった。

元々箒は勉強が得意な少女ではなかった、どちらかというと頭より身体を動かす方が性にあっている。では何故箒がこのような高い成績を求められる学校に在学しているのか。

答えは簡単だ、彼女『篠ノ之箒』こそISの生みの親、かの天災『篠ノ之束』の妹だからだ。

その出自故に箒は過分な期待を寄せられたりと様々な苦労をしてきた。進学先だってそうだ。

国の証人保護プログラムにより名前も住む場所も転々とし、彼女が『篠ノ之箒』という名前を取り戻したのもこのI学園に入ることになった際のことだ。

 

「どうすれば…」

 

今はまだ良い、辛うじて赤点は免れる。しかしこの現状が続くとなれば箒はもう赤点を逃れる事は出来ないだろう。そうなれば問答無用で追試やそれに伴う勉強によって、この学園でようやく再開する事が出来た最愛の幼なじみとも共に居る時間が減るだろう。それだけは何としても避けたかった。

 

「なーに暗い顔してんのよ箒」

「な、鈴!?」

「何持ってんの?」

「あ、コラ勝手に…!」

 

そうして箒が思考の海に沈みかけていた時だった、2組のクラス代表であり中国代表候補生の凰鈴音が箒の手に持っていたテスト用紙を取り上げたのだ。

 

「これは…うーん…」

「くそっ…!お前のも見せろっ」

「アタシ?アタシわねー…」

「きゅ…90点代…保健体育に至っては96点だと…!?」

「ふふーんどうよ?」

「わ、笑いたければ笑え!」

 

見られたくない物を見られて不貞腐れる箒、しかし鈴はそのお世辞にもいい点数とは呼べないテスト用紙の数々を見て嗤うことはしなかった。

 

「成績が上がる裏ワザ方法、教えようか?」

「そんな都合良いものがあるのか…!?」

 

もう箒は藁をも掴む想いだった、誰でも良い、何でもいい。成績が良くなりたい。その一心だった。

 

「アタシだって最初は半信半疑だったわ、でもあるのよそんな魔法のような裏ワザが!アタシもこれで成績を伸ばして代表候補にまでなったんだから!」

「そ、それは…?」

 

鈴が箒に見せた教材、見る者に何処と無く知性を感じさせるその教材の名前は。

 

 

 

「進〇ゼミ…!?」

 

 

 

それは成績に悩む箒の前に現れた救世主だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数ヶ月後、次のテスト時だった。

 

無言の教室では生徒達が各々配られたテストを頭を捻りながら解答している。そんな中ひとり箒は驚愕の中にあった。

 

(凄い…!この問題〇研ゼミで出た所だ!!)

 

進〇ゼミって凄い、箒は己の選択が間違っていなかった事を確信した。そしてこれまで憂鬱だったテストの時間を何とも言い難い感動と快感を憶えながら終えた。

 

 

 

そして更に数日後。

 

 

 

 

 

 

「80点台…!凄い…成績が上がってる!」

 

担任である織斑千冬の手によってテスト用紙は箒を含む生徒全員に返却された。皆テスト用紙と睨めっこをしながらそれぞれ明るい顔や浮かない顔をしている。

そして箒は前者だった。主要科目の点数は軒並み上昇し、保健体育に至っては90点だ。進研〇ミって凄い。箒は確かな手応えを感じていた。

 

「箒!どうだった?」

「だいぶマシにはなったな…これもお前が紹介してくれた進〇ゼミのおかげだ!」

「ちょっと、紹介してあげたアタシにも何かないの~?」

「本当にありがとう鈴!お礼に昼飯酢豚奢るぞ!」

 

廊下で鈴と共にテストの結果を喜ぶ箒、そこを通り過ぎる人影があった。

 

「あ、おいラウラ!」

「ん?あぁ箒か」

 

箒は同級生、ラウラ・ボーデヴィッヒを呼び止めた、テストの結果を聞き出す為にだ。

ラウラはいつも通りのクールな顔をしており、箒と鈴の二人はこの表情はきっと悪い点数を取ってしまったのだと仮定した、もし良い点数を取ったなら今頃喜びを露わにしてる筈だからだ。

 

「テストの結果はどうだった!?」

 

ニヤニヤとした顔でラウラに問う箒と鈴。別に笑いはしない、悪い点数だったらその時は成績に悩む我ら学生に唯一神ベ〇ッセが送りたもうた至高の教材『進〇ゼミ』を勧めるまでだ。

 

「ん?見たいのか?私のテストを」

 

ラウラは特に抵抗感のある様子も見せずに自分のテスト用紙を箒と鈴に見せた、そして二人の顔は見る見るうちに驚愕へと変わっていく。

 

「ぜ、全科目100点だと…?」

「あ、アンタどうしたのこの点数!?」

 

テスト用紙に刻まれた〇の乱舞、ラウラの点数はオール100だった。箒と鈴は目の前のこの銀髪の少女がまるで自身らの理解の及ばない未知の高次元生命体の様に見えた。

 

「…もしかしてラウラ!あんたも進研〇ミをやってるの!?」

 

鈴の声には何か縋るようなものが含まれていた、そうだ『進〇ゼミ』我ら成績に悩む哀れな子羊たちに神(ベネ〇セ)がお創りになられた救世主にこの銀髪の少女も教えを乞いたのだと鈴は考えた。

そうでなければこんな完璧な点数を取れるワケがないと鈴は確信していた。

 

「いや、何もやってないが…」

 

ラウラは鈴の問い掛けに無情な事実を突き付けた。箒と鈴の目にラウラが、この銀髪の高次元生命体がまるで我らの神(ベ〇ッセ)の手を払い除け悪魔の教えを授かった悪の手先のように映った。

 

「もう行っていいか?次の選択科目に遅れてしまう」

「あ、あぁ…」

 

銀髪を翻して箒と鈴の二人組と別れたラウラ、その背中を二人は何か恐ろしいものに見えて寒気を覚えた。

 

「大丈夫よ箒、進研〇ミを信じなさい」

「そ、そうだな…」

 

そうだ、進〇ゼミに間違いなんてない、進研〇ミは箒に成績の向上という確かな結果をもたらしてくれた。あの高次元生命体はきっと何か裏でヤっている。そうだ、そうに違いないと箒と鈴は自分に言い聞かせた。

 

 

 

 

 

それから数日後の昼休み、箒と鈴は校舎の中庭で学園の備品のボールでキャッチボールをしながら遊んでいた。

 

「箒、あんたウチのクラスの剣道部の子から聞いたんだけど主将から一本取ったんだっけ?」

 

IS学園剣道部は創立以来多くの大会で優勝してきた名門であり、そこの主将ともなれば国内でも有数の剣士と言っても良い。

箒とて中学生時代に個人の部で優勝を果たした腕前であるるが、ここ最近はメキメキとその実力を伸ばしている。

 

「あぁ、何だか最近調子が良いんだ。これも進〇ゼミのおかげかもな」

「確かにね、あんたの実力もあると思うけど、進研〇ミで効率のいい時間の使い方が身についたのがデカいと思うわ」

 

二人は進〇ゼミの効果を改めて確信しながらキャッチボールを続けた。

 

「あっ…とっ」

「力み過ぎだ、あ、すいませーんボール取ってもらえますかー」

 

鈴の投げたボールが明後日の方向に飛んでいく。箒はボールが落ちた方向に見えた人影に声をかけた。

それに応じた人影は足元に転がったボールを拾うとそれを勢いよく投げた。

 

「…っ!?」

 

凄まじい豪速球が箒目掛けて飛来する、箒は何とかそれをキャッチするが余りの速球に体勢を崩し倒れかけるも、駆け寄った鈴が箒の背中を押さえることで転倒を免れた。

 

「何…今の豪速球…」

「あれは…!」

 

こちらに向かってゆっくり歩いてくる人影、遠目ではわからなかったが二人はそれが自分たちがよく知る者だという事に気付いた。

 

「ラウラ…!」

 

そして二人は同時に確信した、この悪しき高次元生命体はやはり何か裏で何かやっているに違いないと。そうでなければ今のような豪速球を投げる事など出来はしないと。

二人はラウラ・ボーデヴィッヒという少女に対する疑念を強めた。

 

 

 

 

 

 

それから更に数日後の昼休み、箒は一人廊下を歩いていると数人のグループの前を横切った。リボンの色から同学年の生徒と思われるが箒はあまり知らない者達だった。

 

「ねぇあの人…」

「篠ノ之さんよ…」

 

そのグループは箒が近くに来ると何やらコソコソと話をし始めた。

またか、と箒は思った。箒はその出自故に言われのない事をアレこれ言われる事が多かった。今回もその類の話なんだろうと箒は無視して通り過ぎようとする。

しかし当人らの話し声は興奮しているのか箒の耳に嫌でも入ってしまう。

 

 

 

「…篠ノ之さんカッコイイよねっ」

「うんうんっ」

 

(…カッコイイ…?私が…?)

 

彼女らのヒソヒソ話の内容は箒に対する悪口ではなかった、むしろ箒を称賛し誉めそやすものだった。

箒は内心動揺しつつも顔には出さずその場を通り過ぎた、そのグループの話し声は箒が廊下の曲がり角を曲がるまで箒の耳に届いた。

 

「一体なんだというのだ…」

「よっ!色男!」

「鈴!?」

 

色男とは何だと言いながら箒は先程の事を絡んできた鈴に説明した、すると鈴はニヤニヤした顔で箒の疑問に答えた。

 

「ズバリ…進〇ゼミのおかげね!」

「進研〇ミのおかげ?」

 

箒本人は気づいてはいなかったが、今の箒は前回のテストでの成功体験によって確かな自信を勝ち得ており。自然と背筋が伸び、堂々とした姿をしていた。

今まで箒の中で漠然とした姉へのコンプレックスは既に過去の物となっていたのだ。成績の向上だけでなく悩める少女すら救ってみせる進〇ゼミってやっぱり凄い。

 

「今の箒がもし一夏に告白でもしたら…OK貰えるかもね」

「な!?」

 

顔を真っ赤に染める箒。そうやってしばらく談笑していると、ふと鈴は遠くから歩いてくる人影に気付いた。この学園に於いて唯一の男子生徒であり一年一組のクラス代表。そして箒や鈴を含めた多くの女子から想いを寄せられる爽やかイケメン、織斑一夏だった。

 

「ウワサをすれば…」

「い、一夏」

「ん?待って…隣にいるのは…?」

 

 

 

「悪いなラウラ、手伝ってもらっちゃって」

「気にするな、この資料を一人で持つには無理がある」

 

恐らく担任から授業で使う教材を運べと指示されたのだろう、そこに居合わせたラウラが一夏を手伝っていた。積み重ねた本の山を一夏とラウラの二人は手分けして運んでいた。

 

「…ラウラ…!」

「あんなに一夏に近付いて…!」

 

何故だ、何故あの高次元生命体はいつも我々の上を行くのか。我らは神(ベ〇ッセ)から進研〇ミの教えを授かっているはずなのに。

何故ヤツは勉強はおろか恋愛まで我々の上を行くのか。

 

「…進〇ゼミを信じるのよ、箒」

「そうだな…」

 

打倒ラウラ・ボーデヴィッヒ、二人はあの銀髪の高次元生命体を共通の敵と認識した。

 

 

 

 

 

 

そして更に数ヶ月後、期末テストの返却日。

 

 

 

「やった…全科目90点代…!」

 

保健体育に至っては98点、もう少しで100点だ。箒はこの喜びを箒はまず自分に進〇ゼミを薦めてくれた神(ベネ〇セ)の使いである鈴にこの結果を報告しようと彼女を探した。箒は教室から廊下に出ると直ぐに鈴を見つけることが出来た。

 

「やったぞ鈴!これも進研〇ミのおかげ…」

「ごめん、箒」

 

 

 

「アタシもう進〇ゼミやってないんだ」

 

鈴のその言葉に驚愕する箒。何故だ鈴、何故神(ベ〇ッセ)の使いたるお前が神の教えを拒もうというのか。あの高次元生命体に悪魔の教えを唆されたか。

 

「鈴!お前テストはどうし……っ」

「心配無用よ、箒。アタシはもうテストの結果なんかで一喜一憂なんてしない、これからのアタシは…」

 

 

 

鈴は自らのテスト用紙を箒の目の前に広げて見せた、その表情には何処か晴れやかだった。

 

「愛に生きるわ」

「…」

 

鈴のテスト用紙の上に踊る、以前より減った〇と以前より増えた×。そしてその上には69の文字が。

 

 

箒は進研〇ミを続ける事にした。

 

 

 





進〇ゼミって凄い…


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