全部さん(中身別人)、ハイスクールD×Dにて公務員してます   作:夢落ち ポカ

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***別作品に投稿していると気付きましたので、急遽突貫投稿させていただきました。
誠に申し訳ございません。***




見よ、冥界は赤く燃えている。
はい、お久しぶりです、ポカです。
専門学校の入学試験とか、相変わらずブラックワークの所為でメンタルダダ削りの作者です。
また仕事場で命の危機がありまして……首の骨折られるところでした。
最近はコロナで現場が悲鳴を上げているし上司は異動になるしで、ちょっと大変な作者の昨今です。
Twitterで少々イライラをぼやいていますが、お目汚しで申し訳ない。
4月から通信教育を1年半もしないといけない……久しぶりの学生気分を味わえたら……なんて恐らく無いでしょう、コロナ辛い。
皆様も健康にはお気を付けください。
さて、冥界焼却まで残すところあと2.5話程となりました。
ぼちぼち投稿していきますので、よろしくお願いします。





冥界滅亡《中》

 

 

 

 冥界は刻一刻と滅びの道を辿っていた。

 

 マクバーンの放つ焔は燎原の勢いで燃え広がり、その黒い焔は全てを滅却せんと燃え滾っている。

 

 野原を焼き、村を焼き、街を焼いていくその黒い焔は水系統の魔法で押し留めようとする防衛部隊の努力を嘲笑うかのように全てを飲み込んでいく。

 

 逃げ遅れた悪魔の住民も無慈悲なまでに平等に、容赦なく燃やし、後には燃えカスすらも、何も残らない。

 

 耕してきた田畑も、命溢れる山々も、流れる河川も、穏やかな日々を過ごしてきた村も、歴史を感じさせる街も、その中で生きてきた悪魔たちも、冥界にある全てを黒い焔は飲み込んだ。

 

「順調だな、侵食率はもうすぐ4割といったところか。

 

 抵抗らしい抵抗も防衛部隊の逐次戦力で肩透かし感が半端ねぇし、こりゃ住民の避難優先して奥地へ避難してるのかね?」

 

 マクバーンはその黒い焔で何かを燃やしているという感覚はあるのだが、それが悪魔なのか、それとも建築物なのかは遠方になればなるほどぼやけていた。

 

 感覚が鈍いという訳ではなく、単純に冥界の広さが想定よりも広かった所為だ。

 

 マクバーンは絶え間なく焔を放ち続け、途中妨害をしてくる防衛部隊を打ち払う。

 

 現状の感覚としては作業感が否めないが、時機にやってくるだろう魔王たちの来襲まで、マクバーンは最高効率で冥界の焼却を続けた。

 

 そして2時間後、冥界の領域の約5割を黒い焔で飲み込もうとしていた頃、冥界の最高戦力がやってきた。

 

零と雫の霧雪(セルシウス・クロス・トリガー)!!」

 

 黒い焔の一部が氷の魔力で塗り潰される。

 

 四大魔王が一柱、セラフォルー・レヴィアタンの放った魔法だ。

 

 以前の魔法少女然とした姿ではなく、戦装束と分かる全身を軽鎧を纏っていた。

 

 冥界の危機とかつての戦争で使っていた鎧を取り寄せていたセラフォルーは日本神話が誇る最強戦力、マクバーンと相対した。

 

「セラフォルー様っ、ファルビウム様の眷属である我らも援護しますぞ!!」

 

 更にマクバーンの頭上に転移してきた無数の悪魔が魔法の一斉掃射で視界を潰してきた。

 

 並の上級悪魔であれば爆発に巻き込まれただけで瞬殺だが、マクバーンの展開している障壁を超える一撃は一つとしてない。

 

 次の攻撃の布石だと瞬時に気付いたマクバーンは嘲笑するしかなかった。

 

「……確か、シトリー家出身の魔王だったか? 

 

 それに、グラシャボラス家出身の魔王の眷属か……はっ、視界を潰した程度で俺が攻撃を躊躇する訳ねぇだろうがっ!!」

 

 出力を上げる、マクバーンを中心とした熱風が視界を遮っていた砂埃を払う。

 

「———グルォオオオオンッッ!!」

 

 そして、目の前に現れマクバーンを轢き飛ばそうとしていた巨獣———レヴィアタン眷属、ベヒモスを焔で纏わせた拳で殴り飛ばした。

 

「そんなっ、あんなに体格差があるのに私の眷属が!?」

 

 殴り飛ばされたベヒモスは燃え盛る大地に飲み込まれそうになるが、セラフォルーが放った氷の魔法に衝突し、それほど吹き飛んではいないが黒い焔にその身を焼き尽くされようとしていた。

 

 上空にいる悪魔にも焔弾を放つが、悪魔たちは集団になって円錐型の結界を展開しマクバーンの焔は冥界に来て初めての抵抗を受けた。

 

 ベヒモスはともかくとして、上空にいる悪魔たちはこれまでの眷属とは多少『楽しめる』相手と分かると、作業をしていた頃よりも生き生きとした表情で、マクバーンは更にその身に宿った焔の出力を上げていく。

 

 既に冥界の大地はマクバーンの黒い焔に耐えられないのか、赤黒く変色しながら悲鳴のような音を上げていた。

 

「はははははっ、いいねぇいいねぇっ!! 

 やるじゃねぇか悪魔ども、もっとだ、もっと俺を熱くさせてみろおおおおっ!!」

 

 感情に呼応して焔の出力が天井知らずに上がっていく。

 

 マクバーンは背部に黒い焔で作った翼を展開させると、上空にいた悪魔たちの集団へ向かっていった。

 

「来るぞ、散開っ!! 

 包囲網を構築し障壁の突破を図る!!」

 

 接近に気付いた悪魔たちはすぐさま散開するとマクバーンを囲い込むように挟撃を開始する。

 

 連携の練度はこれまでやって来ていた防衛部隊のどの部隊よりも高く、その制圧力も流石は魔王の眷属というべきなのか、絶え間なくマクバーンの障壁を攻め立てた。

 

 マクバーンも包囲網の突破を図ろうと弾幕を張って試みるが悪魔たちは張り付いて離れずにいた。

 

 一瞬の隙をついて包囲網を突破しようとするが、誘い込まれてセラフォルー渾身の一撃を叩きつけられマクバーンは剣山のような氷の大地へと叩きつけられた。

 

「やったっ、これならっ…………!?」

「———セラフォルー様、回避をっ!!」

 

 会心の一撃と高揚したセラフォルーは快声を上げるが、冷気の霧に包まれていた氷の大地から黒い焔が放たれた。

 

 回避行動に移ろうとするセラフォルーだが、避けようにも黒い焔は逃すまいと広範囲に広がっていた。

 

 包囲網を解除して、ファルビウムの眷属たちも救援に向かうが間に合わない。

 

 この黒い焔に触れれば氷の大地で身動きもしていない自分の眷属同様の末路を辿ることは間違いない。

 

 生半可な魔法は黒い焔に対抗できない。

 

 それに、先ほど全力の一撃を放ったばかりで同等の威力をもう一度というのは無理だ。

 

「ソーナちゃん……ごめん、お姉ちゃん、ここまでみたい」

 

 愛する妹に後悔の混じった謝罪の言葉を呟いた。

 

 抵抗は無意味と脱力し、目を瞑ったセラフォルーだったが、一向にやってこない焔に恐る恐る目を開いてみると、そこには———、

 

「ファ、ファルビウムちゃん!? 

 今は反乱勢力の鎮圧に向かってるはずじゃ!?」

「いやぁ、本当はそうだったんだけど、そっちはアジュカが向かっていってね。

 暇を持て余した僕としては眷属に後を任せて……なんて気分になれなくてね、セラフォルー1人だと心配だったし、苦戦してるだろうと思って応援に駆け付けたってわけ。

 間一髪だったよ」

 

 オレンジ色の魔力を纏ったのんびりした口調をした青年がセラフォルーの前にいた。

 

 ファルビウム・アスモデウス、四大魔王の一柱で軍事を担当している魔王だ。

 

「さぁて、せっかくだし反撃の一撃をお見舞いしちゃおう……がっ!?」

「ファルビウムちゃんっ!?」

「ファルビウム様っ!?」

 

 障壁を展開していたファルビウムは受け止めていた黒い焔をお返しとばかりにカウンターの為の魔力に変換し一撃を放とうとするが、黒い焔を変換できずファルビウムの右腕が燃え上がった。

 

「はははははっ、おいおいまたか? 

 白龍皇の時もそうだったが、俺の焔を利用するだなんて神々でも早々にできねぇ芸当だ、高々()()()()()()()風情が出来る筈がねぇだろうが!!」

 

 マクバーンの嘲笑が氷の大地から上空へと向けられた。

 

 ついでとばかりに黒い焔の弾幕がファルビウムに守ろうと駆け付けようとした眷属の接近を阻んだ。

 

 ファルビウムは黒い焔を消そうと魔力を集中させるが、ロクな抵抗も出来ず肘まで黒い焔が燃え上がるとセラフォルーに腕を切断するように伝える。

 

「うぅ、やるよ……ごめんねっ!!」

 

 切り落とされた右腕は大地に落ちるまでに燃え上がり消滅し、最早繋ぎ合わせる事も不可能となる。

 

 マクバーンはセラフォルーがファルビウムの腕を切り落とし、戦力が確実に落ちたと判断したところで再び空へ飛びあがった。

 

「はっ、ボケっとした面が少しはマシになったか? 

 目は冷めたか怠惰の魔王?」

「お陰様で、残りの一生を寝て過ごしたくなるくらいの苦痛だったよ。

 ……それより君、今さっきおかしなことを言っていたね? 

 僕たちが『聖書の神の玩具』だって?」

「それって、どういう意味なの……? 

 こ、混乱させて隙を突こうたってそうはいかないんだからねっ!!」

 

 滝のように汗を流すファルビウムはマクバーンの言葉に対して訝しんだ。

 

 セラフォルーは言葉の意味を理解したくないのか、悲鳴のような絶叫を上げマクバーンに極大の氷塊を浴びせた。

 

 だが、その氷塊にマクバーンは無造作に腕を振るい、蒸発させる。

 

 戦闘当初よりも温度が上昇している所為か、眩暈を起こし始めている眷属もいて継戦が困難になり始めていたが、おかしそうに笑いながらマクバーンは口を開いた。

 

「はっ、言葉通りの意味だぜ悪魔ども。

 聖書の神が己を信仰させるために生み出したマッチポンプ、それがお前たち天使と悪魔、それに堕天使の連中だ。

 そもそもソロモン72柱っていうのは他神話における神々を貶めるために生み出された存在だ。

 で、貶められて生まれたのがお前たちなのに、参考にされた神々はピンピンして生きている、これってどういうことだと思う? 

 二重存在なんていう矛盾が生じるが、そんな難しい問題じゃねぇ。

 お前たちの存在が出来の良い『造り物』だった。

 それだけで矛盾が解消されちまうんだよ」

 

 天使は善なる存在、悪魔は悪なる存在。

 

 人を良き道へと導く天使、人を悪しき道へ誘う悪魔。

 

 堕天使は中間に位置し最も人間に近しく見えるのもマッチポンプをより良く循環させる為の機構であり、その果てに現在の勢力が生まれた。

 

 だが、ここで誤算が起きた。

 

 天使と悪魔、堕天使間での戦争中に現れた二天龍の存在の所為で結果として被造物である魔王が造物主である聖書の神を弑逆する結果を生み出してしまったのである。

 

 本来であれば聖書の神が死した段階で被造物である天使、悪魔、堕天使が消滅するはずだったが、神器を生み出す為のシステムが遺ったことにより被造物である彼らは存在を継続することとなってしまったのだ。

 

「そ、そんなはず……ウソ、嘘よそんなの!!」

「セラフォルー、敵の言葉に耳を貸しちゃダメだよ。

 火焔魔人はそう言っているけど、被造物である僕ら悪魔でも出生率は低いけど子供が生まれている、堕天使なんて猶更だ」

「システムにおけるバグか何かだろうさ、出来の良い玩具だから頑張れば増えもするだろうよ。

 悪魔の駒なんて迷惑極まりないガラクタ生み出してくれたのは本当に制作者を焼き尽くしたくなったがな」

 

 ファルビウムはマクバーンの言葉に反発するが、根拠としては頼りなく、一笑されてしまう。

 

「今頃討魔の奴がシステムを破壊しようと躍起になっているだろうからな、俺も俺で仕事を熟さなきゃならねぇ。

 ノルマがある訳じゃねぇが、仕事だからな。

 こちとら公務員でな、お国の為に必死こいて働かなきゃならんのよ。

 という訳で、さようならだ悪魔ども」

 

 マクバーンを中心に巨大な焔が生まれ、そして弾ける。

 

 冥界の地平線にまで響き渡る衝撃音が広がり、マクバーンはその暴威を振るい続けた。

 

 

 ***

 

 

 ルシファードにて、ディハウザー・ベリアルは都市部を破壊しながら議場を目指していた。

 

 護衛をしていた家臣たちは周囲を警戒しながら飛翔しており、ディハウザーも逸る気持ちを抑えて防衛部隊を屠っている。

 

「くっ転移が出来ない以上こうなる事は想定していたが、消耗が酷いな」

「ディハウザー様、防衛部隊の主力はほぼ殲滅できました。

 あとはにっくきバアル家の老害をこの手で———ぐぁっ!?」

「カンチェルっ!!」

 

 ディハウザーにカンチェルと呼ばれた悪魔が墜落していく。

 

 救出に向かおうとするも、放たれた赤い光線が複数迫り回避行動をとった彼らはカンチェルにとどめが刺されるのを見せつけられる。

 

「この圧倒的な魔力……魔王クラスだな。

 知っている……知っているぞ、この力を!!」

 

 ディハウザーたちを取り囲むように魔法陣が突如現れ、色取り取りであるが殺傷性の高い魔力を帯びた光線が放たれる。

 

「無駄ぁっ!!」

 

 ベリアル家が持つ『無意味』の魔力を駆使し魔法を無効化すると、何もない空間にも放って見せたディハウザーは手応えを感じていた。

 

「透明化を見破るか……厄介な力だな、さすがは皇帝といったところか」

 

 痛みをこらえるような声が何もない空間から響いた。

 

 ディハウザーは警戒を怠らず、周囲を見回す。

 

 臣下は先程の魔法に耐え切れず墜落したようで姿がない。

 

 都市部外周では戦闘音が徐々に収束してきている、当初は優勢であったが、ディハウザーが思っている通りの魔王が目の前にいるならば、数の有利に意味はないだろう。

 

「出てこい、アジュカ・ベルゼブブ!! 

 悪魔に滅びを齎した元凶にして我が最愛の従妹を死へ追いやった要因を作った貴様をこの手で八つ裂きにしてくれる!!」

 

 気配が複数あることを感知するが、どれもが同等の圧力を感じたディハウザーは周囲へ無意味の魔力を弾幕の様に散らした。

 

 違和感を覚えた箇所があればそれが本物だ、ディハウザーは焦っていた。

 

 この場にいるのは超越者と呼ばれる魔王の1柱だ。

 

 どれだけ憎悪に駆られようと、実力は憎悪で歪めるには相手が大き過ぎた。

 

 実力差、相性ともに不利で勝ちの目は低いだろうというのも理解している。

 

 魔王の操る術理をディハウザーはその攻略法を見つけられずにいた。

 

 だが、アジュカも仇の1人であるが、それ以上にこの手で縊らねばならない相手がいる。

 

 バアル家初代、当主ゼクラム・バアル。

 

 旧魔王勢力のトップにして最愛の従妹を殺すように命じた老害だ。

 

「ゼクラムを出せ!! 

 火焔魔人の手で殺されるくらいなら俺が殺す!!」

 

 旧魔王勢力がディハウザーの従妹であるクレーリアの死に関係していることをアジュカは知っていた。

 

 それがどういう訳か、この緊急事態の最中に発覚してしまったというのは明らかにおかしいとアジュカは不信感を覚える。

 

 魔王でいる以上にレーティングゲームの開発者であるアジュカだからこそクレーリアの死に旧魔王勢力が関わっていたのは知っていた情報だ。

 

 だが、いったいいつディハウザーはその真実に辿り着いたのか? 

 

 告げ口をした者がいたはずだ、旧魔王勢力ではなく、混乱に乗じて一番得をする勢力が、この状況下で最も可能性が高いことに気付かないほどアジュカは世情に疎くない。

 

 誘導されていると知って尚、復讐に走ったディハウザーにアジュカは冷静になるように促した。

 

「……私怨か、その前に冥界を焼却せんとしている火焔魔人の方が脅威だろうに。

 彼を止める為に力を貸してくれるなら、君が求めている真実に……」

「———真実ならとうに知っているとも!! 

 そもそも悪魔勢力が滅亡の危機に瀕しているのも、元はといえばお前の作ったガラクタで数多の神話の怒りを買ったのが原因だろうが、何を他人事のように語っているのだ!?」

 

 努めて冷静に言葉を掛けた筈だが、冷静さを失っているディハウザーには他人事のように聞こえたのだろう。

 

 これまでのアジュカの姿勢を知っていたディハウザーはその態度が気に喰わなかったのだ。

 

 長命種たる悪魔が悪魔の駒などという代物を作って数多の神話勢力圏で了解も取らずに略奪、誘拐を繰り返し、それがどうして好意的に見られるのか。

 

 無理だとしか言いようがない、不可能だ。

 

 許したところで最初から神話勢力に配慮など頭にない悪魔を筆頭に三大勢力が気にかける筈もない。

 

 気にかけることなく、三大勢力は悪魔の駒を筆頭に、神器所有者の殺害、洗脳を繰り返した。

 

 逆に神話勢力がこれまでよく我慢してきたものだといえよう。

 

 長命であるが故に、時間を掛ければよかった。

 

 どの三大勢力も戦争後甚大な被害を受けて継戦等できなかったのだから。

 

 それを安易にも悪魔の駒という代物に頼ってしまった。

 

 手軽に出来てしまうが故に乱用され、挙句の果てには三大勢力の全てに種の存亡の危機となった。

 

 日本神話は神々の特性故に表立って三大勢力と事を起こすことを避けていたが、遂に堪忍袋の緒が切れたのだ。

 

 表側への影響をも考慮した戦争を引き起こしてしまう程に。

 

 冥界へとやってきているマクバーンは時期にこのルシファードへ到着し、その焔を振るう事だろう。

 

 ディハウザーはマクバーンを倒そうなど思っていない。

 

 彼が来るまでに、己の命が残っているとは思っていないからだ。

 

 大王派、そして四大魔王をこの手で葬るまで、止まる訳にはいかない。

 

 ディハウザーは魔力を込めた、余力はある。

 

 アジュカの真骨頂たる覇軍の方程式を使われようと、己の全力、全生命を以て挑むしかないのだ。

 

 全身に魔力を纏い、アジュカがいると思われる場所へと突貫した。

 

 依然として姿は見えない、先の一撃から移動している可能性もある。

 

 ディハウザーの想定よりも早く周囲から強力な魔法の一撃が放たれる。

 

 一撃一撃が最上級悪魔の放つ最大火力でどれもムラがない、やはりどこに本体がいるのか分からなくさせる為のフェイクも兼ねた攻撃だ。

 

 索敵も妨害され先程まで感じていたアジュカも移動したのではないかと疑念に駆られるが、アジュカはその疾走を止めようとはしない。

 

 いつの間にか包囲されてしまった弾幕をかわす為そのまま突き抜けてしまう戦法も兼ねており、その先にアジュカがいると考えたディハウザーは多少の怪我も覚悟で突貫した。

 

「無駄だ、君では私の覇軍の方程式は突破でき———っ!?」

 

 ディハウザーの視界の端の空間に揺らぎが見える。

 

 そこに本物のアジュカがいると確信したディハウザーは弾幕を突破し上昇した。

 

 空間の揺らぎはやはり見えている、他に気配は感じられず、ディハウザーは最大火力を拳に込める。

 

「見えたぞ、アジュカああああああああっ!!」

 

 抜き手の構え、魔王の心臓へ手刀を繰り出さんと被弾を覚悟したディハウザーの一撃がアジュカに迫った。

 

 アジュカはディハウザーの一撃が己に届き得ると気付くと新たな方程式を組んだ。

 

 絶対防御———ファルビウムの魔力を参考に生み出した障壁を展開させる。

 

 展開と同時に衝撃がアジュカを襲った。

 

 その衝撃の余波が地上に届くと至る所で爆発が起きた。

 

 接近を許した以上透明化に意味はないと魔法を解除し障壁へとリソースを回す。

 

 超越者と呼ばれているとはいえ、胡坐を掻いて相手を出来るほどディハウザーは甘くはない。

 

 障壁に亀裂が走る、改良に改良を重ねた方程式に綻びが起きるという想定外はこの状況では悪夢と言えよう。

 

 アジュカは突破されることを理解した上で、障壁を一点に集めた。

 

 障壁のバランスに変化が起きたことにより、ディハウザーの抜き手がアジュカの心臓へと迫ろうとするが、これまでとは硬度の違う障壁に舌打ちしたディハウザーは、次の瞬間その場から離脱した。

 

 己が先程までいた空間に、『滅びの魔力』が放たれたのである。

 

 片足に魔力が触れる。

 

 無意味の魔力がある以上、滅びの魔力を減衰させる筈の想定は、あっけなく吹き飛んだ。

 

「———ぐあっ!?」

 

 激痛に身を捩じらせてディハウザーは右足を犠牲に大きく距離をとる。

 

 全身に魔力を纏った筈だ、それをロクな抵抗も出来ず突破された。

 

 減衰した様子はない、あのまま通常通りの回避をしていれば、残る左足も無と化していただろう。

 

 バアル家の滅びの魔力、バアル家所縁の悪魔がアジュカの援軍に現れたのかと思うとその放った相手を見て愕然とする。

 

 この状況下で、最も相対する訳にはいかなかった悪魔。

 

「———あぁ、よもや、これまでか……」

 

 アジュカと並ぶ超越者にして、四大魔王の一角。

 

 滅びの魔王サーゼクス・ルシファーがそこにいた。

 

 愁いを帯びた彼からはディハウザーに非情にして絶望的な言葉を投げかける。

 

「ディハウザー、もはや反乱軍は君だけだ。

 投降してくれ、今ならまだ間に合う。

 共にこの状況を乗り越えよう、協力してくれ」

 

 反乱に協力してくれた家臣たち、親族、そのすべてを葬り、残すはディハウザーただ1人となった。

 

 サーゼクスに疲労した様子はない、おそらくは誰1人としてこの魔王を消耗させることも出来なかったのだろう。

 

 超越者2柱対1人、どう考えても戦力差は歴然だ。

 

「元より仇が討てるとは思っていなかったが……まぁ、仕方ない。

 あとは火焔魔人の差配に期待するとしようか」

 

 痛みを無視し、再度全身に魔力を纏う。

 

 この2柱の魔王を釘付けにして、冥界の滅びの一助と為す。

 

 嫌がらせ程度の欺瞞でしかないしこの胸に宿った憎悪は晴れる事はない。

 

 この手で果たす復讐は諦めたが、真打は別にいる。

 

「さぁ、超越者を相手に何分持つ事やら……」

「止めるんだディハウザー、私たちには争うことなど……」

「そちらにはなくとも、こちらにはあるのだ、無能な魔王よ!!」

 

 ———さぁ、その無能を曝して冥界の滅びを確定的なものにしてくれ。

 ———愛した者のいない世界になど、もう未練などないのだから。

 

「お前たちの所為だ、お前たちの所為だ!! 

 お前たちのような無能が、無計画が、無思慮が、無責任が人界や他神話を悪影響を及ぼし冥界の滅びを確定的なものとさせた!! 

 私たちの反乱なぞ、これから訪れるだろう災厄の序章にしか過ぎない!! 

 滅びよ悪魔、滅びよ冥界!! 

 かつて誇り高くあったはずの超常の種よ、災厄の焔に身を焼かれるその時まで、その生を不様に終わらせるがいい!!」

 

 そして、ディハウザーはその場から離脱する。

 

 逃走ではなく攪乱だ、超越者を相手にどこまで時間を稼げるかは不明だが、都市全域で攪乱戦を起こしあわよくばゼクラムを討ち取る。

 

 かくして、残り僅かな命を賭けディハウザーの最後の戦いが始まる。

 

 ディハウザーの目的を察知したアジュカはすぐさまディハウザーを追うが、周囲を破壊して進んだ上、

 

 虐殺まで敢行するその徹底ぶりにアジュカとサーゼクスはディハウザーの凶行から市民を守る為、討つのに時間をかけてしまった。

 

 都市の三分の一を機能不全にし、数百にも及ぶ犠牲者を出し、ディハウザーは滅びの魔力を身に纏ったサーゼクスの手によって滅び去った。

 

 時間にして二時間ほどだが、この二時間の間に冥界の滅びはいったいどれほど進行してしまったのか。

 

 サーゼクスとアジュカは精神的な疲労を感じつつも残る眷属を連れ最期のゲートへと出立する。

 

 冥界の滅びを防ぐ為、世界を守る為に。

 

 どこまでも至らない、独り善がりでしかない悪魔の、最後の戦いまであと———

 

 




読んでいただき、ありがとうございました。
また、誤字報告をされた読者の方、感想をくださった読者の方に感謝を!!
ではでは
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