ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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125 おまけ2 仙水忍になりたくて

 皆殺しだ……。

 ガキも……女も……。神父も……妊婦も……。

 墓でこの世を埋めてやる。

 掘っても 掘っても足りないくらい……。

 掘っても 掘っても 掘っても 掘っても 掘っても 掘っても

 掘っても 掘っても 掘っても 掘っても 掘っても 掘ってもーー。

 

「うあっ!?」 

 

 冷や汗をかき、息を荒げて飛び起きた。

 

 喉がカラカラだ。頭も痛い。夢の中の“掘る”衝動が、まだ指先に残っている。

 自分の手が、自分の意志じゃないみたいだった。

 

 ――なんだよ、あの夢……。

 

 ぞわりと、背筋を冷たいものが撫でた。

 汗ばんだシャツを脱ぎ捨て、窓を開ける。夜風は冷たく、そして妙に静かだった。

 

 職場へ向かう足取りは重い。

 破邪の洞窟の点検、瓦礫や土砂の運搬、書類仕事。しかも、たまにロン・ベルクが新作武器の試し切りで襲ってくる。

 

 はぁ……夢も現実も世知辛い。

 今日は何事もなければいいが……。

 

 そのときだった。

 

 職場の建物に入ろうとした瞬間、ぞくりとした気配を背中に感じた。

 ――視線。

 

 振り向く。

 ……誰もいない。

 

 いや、いる。ビルの向こう、薄暗い木立の影に、ひとりの男が立っている。

 長身痩躯。上下黒の服装。静かな眼差し。まるで――。

 

「……仙水......忍……!?」

 

 思わず叫びそうになったが、かろうじてこらえた。

 いくらなんでも、それはない。ここは『ダイの大冒険』の世界だ。『幽遊白書』の住人が出てくるなんて、ありえない――。

 

《それが、そうでもないのさ》

 

 頭の中に、突如として声が響いた。

 

「うわあぁぁぁぁッ!?」

 

 驚愕のあまり、膝から崩れ落ちる。

 まるでヤンキー漫画に出てくる、最初に倒されるモブキャラのようなへたり方だった。

 

《そう驚くな。君を転生させた神様だよ。転生先の体は私が用意したものだからね。今、その肉体を通して君の心に直接話しかけている。他の人間には聞こえないから安心してくれ》

「えっ……神様……ですか?」

 

 呆然としながらも、視線をそっと横に流す。“仙水風の男”は――もういなかった。

 いや、やっぱりあれはただの見間違いか、夢の残滓……そう思いかけた、そのとき。

 

《実は今日は、君に伝えておきたい“大事なこと”があってね。君に――ある男が興味を持ったんだ》

「……はぁ? ちょっと待ってください、まさかさっきの……あの仙水みたいなやつのこと!?」

 

《察しがいい。そうだ、今し方君を見ていた男。彼のことだ》

「やっぱりか……! じゃあ、さっきのはこの世界の住人じゃないってことですか!?」

 

《その通り。彼は君と同じように“こちら側”に来た存在だ。その目的は――魔界へ通じる穴を開くこと。地上と魔界を繋ぐ、恐ろしいゲートをね》

 

 ――そうか。界境トンネルッ!?

 確か、幽遊白書で仙水忍は人間界と魔界に通じる穴を開こうとしていた。この世界でも同じことをしようとしているってことか。

 

 ふざけやがって……!

 

《そして君は――その計画の最大の障害となる存在らしい》

「……俺が? なんで?」

《簡単さ。君はこの世界の大魔王を倒したんだ。だからこのままにしておくと、自分の計画に必ず支障が出ると踏んだのだろう》

 

 背筋に冷たいものが走る。現実味が、一気に増す。

 

《だから君には、仲間を集めて、彼を止めに行ってもらう》

「ちょ、待ってください。俺はただ――この世界で、そこそこ生きるだけで……」

《それは無理な話だ。君はもう、ただの傍観者ではいられない。彼に狙われる存在になった以上、生きるか死ぬかだ》

 

 神の声は、どこか楽しげで、どこか突き放すようだった。

 

 その瞬間、トーヤの手のひらが熱を帯びる。

 ――“念”が、うずいた。

 

「……ったく。とんでもないヤツを転生させてくれたもんだ」

 

 ボソリと呟きながら、トーヤはゆっくりと立ち上がる。

 そして、空を見上げた。

 

「あ、そうだ。あいつも転生者ってことは、オレが念を貰ったみたいに、なにか能力を貰ったってことですか?」

《ああ、与えたよ》

 

 オレは歯噛みした。

 ただでさえ厄介なのに、転生特典まであるなんて。

 オレに勝ち目はあるのか……?

 

「……やつは、あの男は、なにを願ったんですか?」

《ほぉ、知りたいか。彼の願いは――》

 

 神様は、もったいぶるように間をあけた。

 オレはごくりと生唾を呑み込み、続く言葉を待つ。

 

《仙水忍に、なりたい》

「本人じゃねえのかよ!!」




なりたいだけ。
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