成り代わりリンクのGrandOrder   作:文月葉月

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嵐の夜

 

「撃てっ!!」

 

 

 雷鳴の如く轟いた女王の号令が、戦闘開始の合図よりも先に放たれた。

 揃いも揃って酒と宴に酔い痴れ、ドレイクの殺気交じりの一喝に腰を抜かしていた海賊達が、その状態のまま未だ動けずにいる者達と瞬時に立ち上がって銃を抜いた者達に二分されている。

 状況がまだよく分かっていない者は多いし、いくらコケにされたとは言えあんな少年一人に対して過剰な反応なのではないかと思う気持ちもあるけれど、そんな疑問や躊躇いは船長の決断だという事実を前にすればたやすく吹っ飛ぶ程度の些細なもの。

 反応しきれずにいる新参者達を尻目に瞬時に戦闘態勢を取った動きは、流石はかのドレイクと共に数多の困難を乗り越えてきた者達だと感心するに十分なものだったのだけれど。

 今回に関しては、残念ながら相手が悪かった。

 

 

「な、何だこりゃ!?」

 

「銃が、剣まで!!」

 

 

 数多の銃口から火が吹こうとしたその瞬間、少年が掲げた石板から放たれた光へと海賊達の武器が一斉に吸い寄せられ、一同が呆然と見上げる先で瞬く間に物騒な球体を作り上げた。

 普通の人間にはまず対処できない方法でもって一瞬で武装解除してしまった容赦の無さを目にした立香は、第一・第二の特異点において効率最優先で大暴れしているものとばかり思っていたリンクが、自分達の場所を自分達の力で守らんとする現地の人達のことを考えてあれでもかなり自重していたのだということを苦笑いと共に思い知る。

 無数の武器が集まって出来た塊を腕の一振りで木々の向こう側へと投げ捨てたリンクの、「次はどうする?」と言わんばかりの余裕の笑みを前に、ドレイクは血が滴るのではないかと案じさせるほどの力で握りしめた拳を震わせた。

 

 まともに戦おうとすらしないのは侮られているから……などとは思わない。

 自分達の本領は操船技術やそれを生かした海戦で、向こうもそれを期待して取り込もうとしているのだから、貴重な人員をむやみに傷つけてしまうような行為はなるべく避けたいと思うのは自然だろう。

 陸上で力の差を思い知らされたとしても、海の戦いでは決して負けないという自負と事実がありさえすれば、自分達の誇りは決して折れやしない。

 ひとかけらのパンにも、一口の酒にもならない意地を張って死ぬよりも、良いように使われる不便と屈辱をほんの一時楽しみすらして、後で何倍にも増やして取り返してやろうと企てる遊び心だって、海賊の嗜みとして持ち合わせている。

 化け物じみた金髪の少年が、先ほど自分に対して面白い交渉を行なおうとしていたあの黒髪の少年の仲間であるなら、例え傘下に下ったとしても悪いようにはされない筈……むしろ彼らと共に行けば、この謎の海域でかつてないような大冒険が出来るのだという確信だってある。

 いつもの自分ならばそろそろ両手を上げて、カラカラと笑いながら「降参だ」と嘯いて、自分達がより多くを得てより多く楽しむための算段を飄々とした態度の下で練り始める頃合いなのに。

 

 

(そうした方が得だって分かってるのに……なぜだ、なぜアタシはこんなにもムキになって)

 

 

 『海賊女王』なんて周りが勝手につけた呼び名に特に執着は無い、どころか持て囃しだとしても行き過ぎだと背中が痒くなるような思いをしていた筈なのに。

 海の荒くれを統べるに値すると認められた女の力は断じてこんなものなどでは無いと、声を上げたい自分が確かにいる。

 それこそ負け犬の遠吠えじみたみっともない真似だと、今にも吐き出しそうな激情を懸命に飲み込む胸元の熱さが、それを考慮したとしても異様なほどのものだと。

 少し離れたところから優男の素っ頓狂な声が聞こえてきたことで、ドレイクはようやく気が付いた。

 

 

《急激な魔力反応の増加……ば、馬鹿な、これは聖杯だ!!》

 

(せいはい……聖杯、まさかこいつか?)

 

 

 この謎の海域に迷い込んでからしばらく経った頃に、巨大な船のようにも思える怪物を沈めた際に手に入れた戦利品。

 食料や酒をどこからともなく出してくれる便利な代物として、主に宴を開く際に重宝していた、普段は光の塊となって自身の胸のあたりに隠れていたそれを徐に取り出す。

 手の中で形を得た杯を見るや否や、目を見開いて言葉を失った少年と少女の姿を視界の端に捉えたドレイクは、最近のお気に入りだったこれが思った以上の代物だったことを確信した。

 持ち主の心を察したかのように力強く輝くそれを握り締める、使い方は既に分かっていた。

 

 

「聖杯とやら、アタシによこしな!!

 酒や食料なんかじゃない、アタシが最もアタシらしく戦える場所を!!」

 

 

 覚えのある感覚を経て、世界は瞬きの間に塗り替わる。

 体は波音と共に上下左右に激しく揺すられ、痛さすら感じるほどの横殴りの雨と暴風によって五感の大部分が妨げられる。

 普通の船乗りならば間違いなく絶望を覚えるような嵐の甲板を雄々しく踏みしめる、大海賊ドレイクの雄姿がそこにあった。

 

 




 本当に久々の更新ですみません、量としては少なめですが少しでも調子を取り戻したかったので一旦上げることにしました。
 本調子にはまだまだですが、書きたい気持ちが失せたわけではないので頑張ります。
 ティアキンの発売まで一か月切って本当に楽しみです、そっちばかりに夢中になるのではなく受けた刺激を是非とも創作意欲に繋げたい。
 世界樹の迷宮の発売も迫っていてちょっと怖いところではありますが、頑張って続けていきますので宜しくお願いします。

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