自由気ままに淡々と過ご…せればいいなぁ… 作:あかちゅきぼちゃん
地下基地の空気は、珍しく穏やかだった。
地上では精霊嵐が吹き荒れ、山が崩れ、神霊種が暴れているというのに、この小さな空間だけは妙に静かだった。
理由は簡単だ。
「うわー……相変わらず人類種の拠点って狭いにゃ。天井低いし、空も見えないし、精霊濃度もほとんどないし……よくこんな環境で生活できるよね」
そう言いながら椅子にだらしなく座っているのは
アズリール
その背後に腕を組んで立っているのが
ジブリール
そして壁にもたれて周囲を見回しているのが
ラフィール
対する人類種側は二人。
リク・ドーラ
そして
シュヴィ・ドーラ
リクは苦笑しながら言った。
「いやまあ、天翼種の天空都市と比べられても困るんだけどな。こっちは世界最弱の種族なんだよ。地下に穴掘って生きてるだけでも上出来なんだ」
シュヴィが静かに補足する。
「事実。人類種の生存環境は極めて劣悪。しかしリクは比較的快適そうに生活している」
アズリールが笑う。
「へー。人類種ってメンタル強いにゃ」
ラフィールが壁にもたれたまま言う。
「というか、適応してるだけじゃないか? 弱い種族って、だいたいそういう方向で進化するだろう?」
リクが笑った。
「まあ否定はしない」
そのときアズリールがテーブルの上に置かれていた保存食を手に取った。
「これ何?」
「乾パン」
「……固い」
「そういう食べ物だ」
アズリールが一口かじる。
「味しない」
「そういう食べ物だ」
ラフィールが肩をすくめる。
「なんか石食べてるみたいだな」
ジブリールが淡々と言った。
「栄養効率を優先した食料なのでしょう。人類種の資源状況を考えれば合理的です」
アズリールが乾パンを眺めながら言う。
「人類種って大変にゃ」
リクが即答する。
「今さら?」
地下基地に小さな笑いが起きた。
しばらくしてアズリールがふと呟いた。
「でもさー、人類種って面白いにゃ」
リクが眉を上げる。
「急にどうした」
アズリールは椅子の背にもたれながら言った。
「ちょっと思ったんだけどさ。もしこの世界が“別の未来”に進んだらどうなるんだろうって」
ラフィールが興味なさそうに言う。
「未来? この世界にそんなものあるの?」
「あるかもしれないじゃん」
リクが少し興味を持った顔をする。
「別の未来、ね。例えば?」
アズリールはニヤニヤしながら言った。
「例えばさ。この大戦が終わって、ずーっと未来の時代に……人類種の兄妹が現れるのにゃ」
シュヴィが反応する。
「兄妹」
リクが笑う。
「へえ、人類種の?」
「うん。名前は確か……“空”と“白”」
その名前を口にした瞬間、なぜか地下基地の空気が少し変わった。
アズリールは続ける。
「その兄妹がさ、ディスボードって世界でいろんな種族とゲームするのにゃ」
リクが吹き出す。
「ちょっと待て。ゲーム?」
「そう。全部ゲームで決める世界」
ラフィールが笑う。
「なんだそれ。戦争の代わりにゲーム?」
アズリールは楽しそうに頷く。
「そうそう。天翼種も森精種も全部ゲーム」
ジブリールが少し考える。
「……もし本当に全種族がルールを守るなら、理論上は成立する社会構造ですね」
(……?)
ジブリールは内心で違和感を覚えた。
(この話、妙に具体的だ)
アズリールは続ける。
「でね、その兄妹がめちゃくちゃ強いのにゃ。森精種にも勝つし、天翼種にも勝つし、最後は神様とゲームする」
リクが笑う。
「神様?」
「うん。神様」
ラフィールが吹き出す。
「人類種が神とゲームして勝つとか、さすがに盛りすぎだろ」
アズリールはケラケラ笑う。
「でしょ? 普通はそう思うにゃ。でもその兄妹、めちゃくちゃズルいのにゃ。頭いいし、イカサマもするし、心理戦もする」
ジブリールは腕を組む。
(……理屈としては成立している)
(だが――)
ちらりとアズリールを見る。
乾パンをもぐもぐ食べている。
(……この人が未来を知っているはずがない)
すぐに結論が出た。
(単なる思いつきでしょう)
ラフィールが笑う。
「でもまあ、面白い話だな。人類種が世界をひっくり返す未来か」
リクはしばらく黙っていた。
そして静かに言った。
「……いい未来だな」
アズリールがニヤッとする。
「でしょ?」
リクは天井を見上げる。
「もしそんな未来があるなら……俺たちのやってることも、少しは意味があるのかもしれない」
シュヴィが言う。
「未来は不確定」
リクは笑った。
「知ってる。でも想像するのは自由だろ」
ラフィールが言う。
「まあ夢くらい見ないとやってられない世界だしな」
ジブリールが頷く。
「その点は同意します」
アズリールが突然言う。
「そういえばさ、人類種って他にも変なのいるの?」
リクが笑う。
「いっぱいいるぞ。慎重すぎる長老とか、戦略オタクとか、楽観主義者とか」
ラフィールが笑う。
「天翼種も大概だろ」
ジブリールが即答する。
「主に先輩です」
「えー」
リクが笑う。
「でもまあ、変人が多い方が世界は面白い」
アズリールが大きく頷いた。
「それにゃ」
そして少しだけ真面目な顔になる。
「……さて」
遠くで雷鳴が響いた。
神の気配。
戦神アルトシュ。
アズリールが立ち上がる。
「そろそろ行くにゃ。神様が待ってる」
リクも立ち上がる。
「だな」
そして小さく呟いた。
「……空と白、か」
(もしそんな未来があるなら)
(この戦争にも意味があるのかもしれない)
そう思いながら、彼は戦場へ向かった。
神との戦いは、もうすぐ始まる。
AIの仕様なのか、完全に自筆していた時みたいにいかないですね・・・セリフと内心を同時に存在させて執筆したかったのですが・・・難しい・・・