私の名前はトム・マールヴォロ・リドル   作:ライアン

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お辞儀をするのだ!(評価、感想、誤字報告ありがとうございます)

セブルス・スネイプ(下)はリーマス・ルーピンが終わった後に来ます。


リーマス・ルーピン(上)

 リーマス・ルーピンという少年は自身の人生を半ば諦めていた。5歳の時彼は狼人間となったからだ。

 魔法界に於いて狼人間は差別されているーーー理由は至って簡単で狼人間は満月の夜にその理性を喪失して、親しい者に噛み付こうとする獣となるからだ。しかも噛まれた側も同じく狼人間になるというおまけ付きで。

 当然そんな人間が全寮制のホグワーツを始めとした魔法魔術学校へと通うとなれば、他の保護者からの反発は必至。故に狼人間の入学というのは認められていないのが現状であった。そして魔法使いであれば必ず通うはずの学校に通うことの出来なかった者のその後の人生がどうなるかと言えば、それは推して知るべしというものである。

 故にリーマス・ルーピンは自分の人生に対してある種の諦観を抱かざるを得なかった。

 

 だが、そんな彼に手を差し伸べてくれる人物が居た。

 アルバス・ダンブルドアーーーホグワーツ魔法魔術学校の校長を務め、今世紀に於いて最も偉大なる魔法使いと称される彼が特別な図らいで入学を許可してくれたのだ。リーマスが狼人間である事を知っているのはダンブルドアだけではない、ダンブルドアから絶大なる信頼を受ける副校長のトム・マールヴォロ・リドル、そしてリーマスが所属する事となったグリフィンドールの寮監を務めるミネルバ・マクゴナガルもリーマスが狼人間である事を知り、彼が問題なく学生生活を送れるように取り計らってくれた。

 

「リディクラス・アペンド・ウェアウルフ」

 

 叫びの屋敷で狼人間と化した教え子に対してトムは呪文をかける。

 そうして狼人間への変身こそ解除されないもののたちまちの内に凶相へと染まっていた教え子の瞳に理性の色が宿りだす。それを見てトムはホッと胸を撫で下ろす。

 

 リディクラス・アペンドはトムが学生時代に本来ボガートへと用いる呪文リディクラスを魔法生物に対しても効果を発揮するように改良・開発した呪文だ。何故こんな呪文をトムが開発したかと言えば、それは死ぬほど手間をかけさせてくれた可愛い後輩ハグリッドに由来する。

 ルビウス・ハグリッドはアクロマンチュラを筆頭にとんでもない魔法生物をこっそりと飼育する常習犯だった。そんな後輩の後始末へとトムは散々に駆り出されたわけなのだが、困ったことにそれを殺処分という形で始末しようとすると大柄な後輩を瞳を潤ませながら「先輩、こいつを殺さないでくれ!俺がちゃんと言い聞かせるから!」等と懇願してくるものだから、トムとしてはできるだけ穏便な形で決着する術を身につけるしかなかった。

 そうしてトムが目をつけたのがボガートへと用いるリディクラスだ。リディクラスは術者の恐怖とは正反対の愉快でバカバカしい空想を対象に叩きつける呪文で、本来であれば非存在にしか効果がない。だがトムは持ち前の天才性によってそれを対魔法生物でも効果を発揮するように改良した。結果この呪文を用いればどれほど凶暴な魔法生物もたちまち愉快な気分となり、すっかりと大人しくなるというわけである。

 トムはそこから更に狼人間の生徒が入学するとダンブルドアより聞かされて狼人間用のリディクラス・アペンド・ウェアウルフを開発したのだ。当然相応の自信はあったものの実証するのはこれが初めてだった為トムとしても多少の不安はあったのだが*1どうやら上手くいったらしい。

 

(人生、何が幸いするか本当にわからないものだ)

 

 学生時代に後輩のために開発した呪文が今こうして教え子を救う結果に繋がるのだから。

 

(ハグリッドの奴は元気にしているかな、まあ憧れのニュート・スキャマンダーの助手になれたんだ。さぞや当人にとっては幸せ一杯の日々を送っている事だろうけど)

 

 そんな風に少しだけトムは手がかかって仕方がなかった、されど何だかんだで可愛い後輩について思いを馳せる。ルビウス・ハグリッドは数多くの問題行動を起こしたもののトムが卒業した2年後に無事(?)ホグワーツ魔法魔術学校を卒業した。卒業後の彼は魔法生物飼育学のパイオニアたるニュート・スキャマンダーへと弟子入りして、彼の助手として世界中を飛び回っている。

 そんな二人にダンブルドア校長はいずれ魔法生物飼育学の教諭を打診しようと考えているようだが、正直トムとしてはニュート・スキャマンダーはまだしもハグリッドを教師に据えるのは辞めたほうが良いと思っている。ルビウス・ハグリッドは研究者としてはある種の鬼才とも言うべき異才だが、それ故に致命的なまでに常識というものが欠けている。

 

(何せあいつと来たらアラゴグが一人じゃ可哀想だからという理由で番を用意しようとしていた男だからな)

 

 遠い目を浮かべながら散々に苦労をかけられた学生時代の記憶がトムの中へと駆け巡る。

 ハグリッドの中に魔法生物と人間を区別する考えは一切ない。彼にとって魔法生物とはどこまでも対等の友人なのだ。そんな男だからこそ飼育不能と考えられていたアクロマンチュラとさえ心を通わせられたのだろうが、それにしたってクレイジーな事に変わりはない。トムはヴォルデモートを愛し、可愛がっているし、ただ危険な存在として恐れられる事を残念に思うが、それでも他人が彼に怯える事も無理からぬと思う程度の分別は存在する。だがハグリッドにはそれがない。

 彼が魔法生物飼育学の教諭となった日にはそれこそ良かれと思って、XXXXX(魔法使い殺し)に分類される魔法生物を生徒達の前へと出す位はやりかねないとトムは思っておりーーーそれは偏見ではなく長年面倒を見た者としてルビウス・ハグリッドという人物の正鵠を射ていた。

 

(ダンブルドア先生は素晴らしいお方なのだがどうにも見込んだ人物に対してお甘いところがある……まあそんな人だからこそミスター・ルーピンのような生徒を自身の立場を危うくするのを承知で入学させるように取り計らったのだろうが)

 

 アルバス・ダンブルドアという人物はとても偉大で大きな器を持った方だが、それ故にどこか大きな穴が開いているのではないかと時折トムは思う。だがそれで良いのだ。望遠鏡が顕微鏡の機能を兼ね備えている必要はない。穴が開いているのならばその穴を副校長たる自分が塞げば良いだけだとトムは考える。

 ハグリッドを教師にする件については全面的に反対だが、リーマス・ルーピンという生徒を招いた件についてはトムは全面的に賛成であった。グレイバックのような外道には断固たる処置が必要だろうが、その被害者達まで差別を受ける世の中が正しいなどとトムはとても思えない。まして学ぶ機会そのものを奪うなど、教育者としてーーーホグワーツでの日々がどれほど素晴らしいかを知っている身として認められるわけがない。

 故にトムは決意する。今年中に開発に成功した対狼人間用鎮静術リディクラス・アペンド・ウェアウルフを汎用化して自分以外の者でも使えるようにして見せると。狼人間が差別されるのは彼らが満月の時に手のつけられない怪物となるのが大きな要因だ。故にこうしてその対処法が見つかったことが判明し、それが自分のような天才のみならず標準的な魔法使いでも十分使えるようになれば彼らへの風当たりは大分和らぐはずだと。

 

 教え子の為という強烈な動機を手に入れたトム・マールヴォロ・リドルは静かにその意志を燃やすのであった……

 

*1
無論歴戦の闇祓いであるトムにしてみれば理性を喪失した狼人間など可愛いチワワも同然なので幾らでも対処の手段はあるが、多少手荒なやり方になるのでリディクラス・アペンド・ウェアウルフが効くのが最も穏便に済むやり方だったのだ。




狼人間の希望の星トム・マールヴォロ・リドル

やっている事はめちゃんこチートですが妙な野望に取り憑かれずその才を建設的な方向へと使ったトム・マールヴォロ・リドルならば出来る!と思って頂けるのではないかと。
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