哭きの京(とりあえず鳴いとこう)   作:YSHS

8 / 12
 どうも、お久しぶりです! 令和元年おめでとうございます! GWに時間が空いたので書いてみました。が、結局GW中に書きあがらなかったので、途中からスマホで書いています。スマホだと書きづらいので、変な感じになってしまいますでしょうが、悪しからず。


白糸台でこれはひどい麻雀:前編

【0】

 東一局。

 

「ツモ……」

 

 宣言して京太郎は、自模った紅中を叩き付け、裸単騎にしていた牌を倒した。その牌も同じく紅中。そうして出来上がった京太郎の手は……。

 

{中} {東東横東東} {横西西西西} {南南南横南} {北北横北北} ツモ{中}

 

 大四喜、字一色、四槓子。

 

 和了するや否や、彼はしばらくの間を置いて席を立ち、そのまま卓から離れ去った。

 

 先ほどまで京太郎と卓を囲んでいた三人、宮永照、大星淡、弘世菫は各々、冷や冷やと汗を流したり、顔を青ざめさせたり、信じられないとばかりに目を見開いたりしていた。

 

 大会のルールであれば、本来はダブル以上の役満は無しである。だがこれは公式の試合ではなく非公式の対局、謂わば練習試合のようなものであり、ルールが変更されている場合があった。で、その変更ルールが、よりにもよってダブル役満有り、四暗刻単騎や十三面国士無双、純正九蓮宝燈、及び大四喜がダブル扱いとするものであった。

 

 よって、この京太郎の手は……。

 

四倍役満(クアドラプル)……」

 

 菫が呟くと、淡がビクリと身体を震わせた。

 

 そう、これが裸単騎の状態でツモ和了りされたということは、つまり誰かが大四喜を確定させ、それによる責任払いが発生していることとなる。

 

 無論、その確定させた者というのが、今動揺した淡だった。大明槓で四槓子の責任払いこそなかったものの、しかし大四喜は丸々と支払わねばならないのである。加えてこの局での親は須賀京太郎。ということは、

 

 大四喜(ダブル)、九六〇〇〇(淡の支払)。四槓子と字一色、三二〇〇〇オール。

 

【結果】

 トップ、京太郎……二一七〇〇〇点

 

 二着、照……△七〇〇〇点

 

 二着、菫……△七〇〇〇点

 

 ラス、淡……△一〇三〇〇〇点

 

 以上。

 

 この結果が告げられると、部室内は瞬く間にざわめき出し、次いで全員の視線が淡に向けられた。それらの眼には、淡が弱いだのと軽蔑するようなものはなく、むしろ同情をしているくらいで、而して京太郎の規格外な力に戦慄することさえある。

 

 考えてもみればいい。この局で京太郎と卓を囲んでいたのは、全国三年連続チャンピオンの宮永照、白糸台麻雀部部長の弘世菫、そして白糸台のエース、宮永照の後継者、大星淡なのだ。ダブル役満有りの特殊ルールだとしても、その三人を纏めて箱下まで沈めたのなら、それは敗者らへの侮蔑ではなく、勝者への畏敬を抱くのが自然というものであろう。

 

 さて、一体全体どのようにしてこんな状況になったのか。

 

【1】

「京ちゃんは、麻雀楽しい?」

 

 俺の前を歩く照さんが、そう尋ねてきた。

 

「まあ……、楽しいかな?」

 

 俺は答えた。すると後ろのほうで弘世先輩が、嘆息するみたいに息を吐いたのが聞こえた。歩きながら俺は、白糸台校舎の連なった窓ガラスを眺める。白く曇った窓ガラス。薄っすらと外の景色が見える。それを見つつ、どうして麻雀が楽しいと思えるのかを考えた。

 

「役作り、とかは楽しいかな。面子を作ってたら、たまたまそれが高い手で、よく分かんないけど倍満とか和了れて点数ガッポガッポもらえたら、それはそれで楽しいし。危険牌とか安全牌とかは……、考えるのが面倒くさいから勘で捨ててるけど」

 

 捨牌読みが出来ない、とは明言出来なかった。だから言葉を濁した。

 

(だって恥ずかしいんだもん)

 

 俺が麻雀を始めて一年が経とうとしている年度末になって、未だに麻雀がよく解らないなんてとてもじゃないが言えない。

 

「そうなんだ……、それは良かった。私は……楽しいって言えば楽しいけど、こうして全国で勝ちたいっていうほど情熱があるのかって言われれば、微妙な気がする」

 

 顔を半分だけ後ろに向けて、ささやかな微笑を照さんは浮かべた。

 

「咲を麻雀に戻してくれてありがとう。京ちゃんが戻してくれたんでしょう」

 

「別にお礼を言われることじゃないな……。だって俺、咲が麻雀強いってことはおろか、麻雀打てることも知らなかったし」

 

 それに俺は、宮永家の家族麻雀のことも、宮永姉妹の確執も知らなかった。

 

 さては照さんがいつ東京へ行ったのかも知らなかった。俺からすれば、いつの間にか見かけなくなったという程度のものだった。

 

 きっと照さんとしても同じだ。彼女は俺のことを『京ちゃん』と呼ぶが、少なくとも俺をそう呼び始めた当初、彼女は俺の名前を知り得なかったはずだ。俺は照さんに名前を訊かれたことも、ましてや自ら名乗ったこともない。咲がそう呼んでいるから、照さんも倣っただけなのだろう。

 

「でも言わせて。昔、咲には酷いことをしたから……。麻雀から逃げた咲にとって、京ちゃんは拠り所だったんだと思う。ちょっと咲が羨ましい、かも……」

 

 俺から顔を隠すかのように、彼女は再び前を向いて歩き続けた。

 

 俺がここ、白糸台高校に来ることになったのは、成り行きというものであった。

 

 今年度の夏、全国へ行く我が清澄麻雀部にーー雑用としてーー付いて東京に来てからというもの、東京という都市を気に入った俺は、高校生にしては高い頻度で訪れていた。

 

 幸いにも俺は、ちょっと……臨時収入に恵まれていて、新幹線を利用して行って、適当なホテルに泊まれるくらいには金銭には困っていなかった。地元でサイケデリックなシャツを着たお兄さんたちと仲良くなって、案内されたマンションで引き続き麻雀をやったら何故かお小遣いを貰い、その後日今度は、中年太りをした、髪の毛が白髪で灰色になっているおっさんたちと打ったのである。『二の二 - 六、ビンタは二十万』なんていう訳の分からない用語で始まり、『倍プッシュ』とかいうインターバルを挟み、『オケラ』という締めの言葉で札束を出されたのであった。

 

 まあそういうことだ。

 

 で、その金で東京に、今日は新宿(ジュク)などといった活気ある東側ではなく、西側へ赴いてみたところ、迷子になっていた照さんと遭遇し、結果、彼女の白糸台麻雀部での引退試合に何故か招待された次第であった。

 

(全国チャンピオンの権力って凄え……)

 

 浮足立ちながら俺は、初めて入る女子高――秘密の花園とも――という場所を、まるで罠でも警戒するかのような足取りで歩く。

 

「ところで――」

 

 どうにか間を持たせようと焦るように俺は早口に紡いだ。

 

「照さん、プロにスカウトされてたそうだけど、でも大学へ進学することにしたよな。どうしてなんです?」

 

 やおら照さんは、考え込むように顔を若干上に向けてから、

 

「んー……、菫と一緒に大学に行きたかったから?」

 

 顎に人差し指を当てて答えた。

 

「ああ、ああ、なるほどね……」

 

 とりあえず俺は納得した顔で小さく数度頷いて、

 

「弘世先輩」

 

 首をほとんど振らずに目だけで後ろのほうへ視線を流して俺は弘世先輩を呼んだ。

 

「何だ」

 

「苦労されてるんですね」

 

 という、主語を端折った俺のこのたった一言に、

 

「解ってくれるか……」

 

 と返してくる弘世先輩の声は、ようやく見つけた理解者を前に感激に溢れ、ひり出すようなものになっていた。

 

 相当大変なんだな、と思った。照さんのほうはまだいい、彼女は基本的にポンコツだが、時たま変なところでバカに生真面目で常識的になるからだ。問題は、その隙を埋めるかのように、もう一人のバカが馬鹿なことをやらかすものだから、弘世先輩の気が休まる時間は少ないのである。おまけに『白糸台のシャープシューター(SSS)』というめっちゃくちゃ恥ずかしい異名まで付けられ、時にはからかわれる三重苦。俺も陰でネタにしてるけど。

 

 ところで、照さんの他にもう一人、バカが居ると今述べた。そのバカとは一体誰のことなのかというと、それは、これから入る白糸台麻雀部の部室に行けば分かる。

 

 行き着いた教室の扉を、俺の前を歩いていた照さんは開いて入り、こわごわと俺も後に続いて入ったところで、

 

「あっ、来たっ?」

 

 と、中に居た何人もの女子部員の内の一人が立ち上がって、パッと花が咲いたような笑顔で俺のほうに顔を向けた。で、須臾にしてその嬉しそうな顔は失意のものへと変わり、

 

「何だ、キョータローか……。清澄の麻雀部員が来るって聞いたから、てっきりサキーって思ったのに。あーあ、ガッカリぃ……。あとその服カッコイイ、似合ってる」

 

 彼女、大星淡は俺への無礼も気にせず、憮然とした態度を明け透けにしてまた座り込んだ。

 

「いきなり随分なご挨拶だな、男子生徒って聞かなかったのか。ちなみにこの服は俺の一張羅だ、方々の女子から助言を貰ってコーディネートしたやつな」

 

 淡はこの白糸台麻雀部のホープであり、全国女子麻雀チャンピオン宮永照の後継者であり、而して麻雀の腕は折り紙付きだ。ただし見ての通り傲慢な奴で、俺みたいなボンクラ雀士はこのように当たり前のように見下される。今年の夏で清澄にしてやられたことでちょっとは懲りたと思っていたが、ロバが旅に出たところで馬になって帰ってくるわけじゃないのと同じように、たった一回の負けでしおらしくなる奴ではなかったらしい。

 

 ハギヨシさんに『御無礼』されちまえばいいのに。

 

「テルー先輩さー、どーしてこんなん呼んできちゃったんですかー。折角の引退試合なのに」

 

 気だるげな、取ってつけたような敬語で、だらだらと椅子の背もたれにもたれ掛かりながら淡は歯に衣着せぬ不平を吐いた。

 

「ほっとけよ。俺だって咲連れてくりゃ良かったって思ってんだから。ったく相変わらず感じ悪い奴だな、可愛いからまだそのワガママも愛嬌とは言えるんだろうけどよ」

 

 という具合に、負けじと俺も毒づき返した。

 

「仲良いね……。連れてきたの私なのに……」

 

 どういうわけか照さんが、ムスッと面白くなさそうな顔で、俺と淡を交互に見やって言ってきた。

 

「どこがだよ」

 

 全く意味不明だ。弘世先輩や、他の人たちも、照さんと同じようなことを言いたげな眼で俺と淡を見てくるし。俺より淡と一緒に居る時間の長い彼女らがどうしてそう思えるのか不思議でならない。

 

 俺も淡も、お互い怪訝な様子で顔を見合わせるばかりだ。

 

「うーん?……。何なの、みんな。変なの……。ま、それはそうと、キョータローだって折角来たんだし、半荘一回くらい打っとけば?」

 

 と、淡はすぐに疑問を投げて、俺を誘った。

 

「フッツーのだとオモシロクないし、ここは、箱下有り(ハコテンでもゲーム続行)のダブル役満有りでどう。あと、四暗刻単騎(スッタン)、純正九蓮、十三面国士、大四喜はダブル扱い。ほら、これなら、いくらキョータローが弱っちくてもちょっとは公平でしょ」

 

 で、このドヤ顔。

 

(くそうぜえ! でもグウの音も出ねえ!……)

 

 額に青筋が立つのを感じた。同時に、淡のその提案はむしろ温情ですらあると認めざるを得ない俺自身の才覚にげんなりした。また、このウザさがこいつの愛嬌であるだけに、怒る気が失せてしまった。

 

「で、こんなサンデイあげたんだから、負けたら何かしてもらおっかな」

 

「何じゃそら、勝手なことだ……。あとサンデイじゃなくてハンデな。――ふうむ、そうだな……、それじゃあ……、“おじさんのきんのたまをあげよう”か」

 

 と、ついそんな冗談を言った瞬間俺は、しまったッ、と自分のしでかした過ちに気付くも、時既に遅しで周囲の空気がピシリという音を立てて凍り付いた音を聞いた気がした。

 

 ここ白糸台高校は女子高である。そんな神聖な場所で、有名なギャグとは言え下ネタを披露するのはセクハラに他ならない。即ち、現在俺はピンチというわけだ。

 

 流石に訴えられるとまでは行かずとも、女子のえげつないネットワークによってその情報は伝言ゲーム式に尾ひれが付いてゆき、ついには清澄女子の耳に入ることだろう……。おお、こわいこわい。

 

 ところが、そんな俺の危機を破ったのは淡であった。

 

「えー、きんのたまってあれじゃん、五千円で売れるやつでしょ。それだったら五千円くれたほうが手っ取り早いんじゃない?」

 

 このように、突如淡から助け舟が出されたので、

 

「ん、お、おお。おう、おう、そうだな。じゃあお前への景品は五千円ということで――」

 

 との調子で乗っかってみたところ、

 

「バカ! それで本当に五千円渡す男がどこに居んの、五千円分の物買ってあげるぐらいしたらどうなのさ!」

 

 どうやらこいつは俺を助けようという意思があるわけでなかったようだ。

 

(あ、こいつただのアホだったか)

 

 いずれにしろ、渡りに船というものだから、有難いことには変わりないが。

 

「あん? 仕様がねえなぁ……、じゃあ服とかでどうだ」

 

「分かってないなあ、服が五千円で買えるわけないじゃん、ユニクロで上着買ってオシマイじゃん」

 

「じゃあ、ネックレスとか、イヤリングとかのアクセサリとか?」

 

「そうそうそう! それそれ! 何だ分かってんじゃん。じゃ、負けたらそれお願いね!」

 

 やけに上機嫌に言ってくる淡に俺は、

 

「はいよ」

 

 と渋々承諾する振りをしてはいるが、内心では淡に対していつになく激しい感謝をしていた。普段は空気読めないしうざったい奴だが、今回ばかりはその空気の読めなさに助けられた。

 

 淡からの賭けの提案をポケモンネタで誤魔化そうとしたら、いつの間にか五千円のアクセサリをプレゼントする約束を取り付けられてしまったが、まあいいだろう、これくらいの礼はしなきゃな。

 

 額にかいた冷や汗を手首で拭って、俺は淡が指した雀卓に足を向ける。

 

 何だか周囲の人がひそひそ言っているが、気にしない気にしない。女子はそういう話が好きなもんだ。言わせとこう。

 

「早く、早く!」

 

 と淡から急かされつつ俺は適当な席に座った。

 

 俺が席に座ると、淡は手のひらを額辺りにかざしてキョロキョロと麻雀部に居る人たちを眺め、

 

「うーん、折角だし、テルーとスミレも入れとこっと!」

 

(おいコラ何てことしやがる。やめろコラ)

 

 あり得ないだろ。だって俺、今年度の県大会予選では終始満貫以上に振り込みまくって敗退したんだぞ。そのか弱い雀士を全国トップクラスの雀鬼三人で囲うってどういうことよ。

 

 しかも照さんも弘世先輩も何当然の如く座りに来てんだ。俺にどうしろっていうんだ! ていうか俺をどうしようというんだ! 

 

 そこで俺は、ある黒歴史を想起した。かつて参加した脱衣麻雀。あの逆セクハラ脱衣麻雀のことだ。たしかあの時も、参加していた女子らは始まる前から様子がおかしかった。何か妙に行動がキビキビしていたし、変な違和感があった。

 

 思い過ごしだと良いが……。

 

 で、まず仮東決め。東南西北の風牌一枚ずつを出し、それらを裏返してシャッフルしてから、一人一枚取っていく。俺が引いたのは南だった。東を引いたのは弘世先輩で、彼女はちょうど俺の座っていたところの上家に座ったので、俺が移動する必要はなかった。席順は彼女(東)から反時計回りに、俺(南)、照さん(西)、淡(北)となった。

 

 ふと、俺は彼女らいずれの後ろに、人が立っているのに気付いた。それで目を向けると、その後ろに立っている女子生徒らは、クリップファイルと鉛筆を持って佇んでいた。もしやと思い、自分の後ろを振り向くと、案の定そこには同じようにクリップファイルと鉛筆を持った女子生徒が立っていた。

 

「牌譜取るんですか?」

 

「当然だろう」

 

 俺の上家に座っている弘世先輩が言った。

 

「白糸台では、特に一軍の者の牌譜は常に取らなければならないんだよ」

 

 そして彼女は教えることは教えたといった風に、口を閉じ、それっきり何かを解説しようというそぶりも見せなかった。

 

(麻雀名門校って凄え)

 

 他人事のように俺は納得した。適当に話を流したとも言う。

 

 もう一度俺は後ろの牌譜を取る人に向き直り、それから会釈でもしようかとしたところで、

 

「あなたの牌譜を取ることになりました者です、よろしくお願いします」

 

 と、先に牌譜係さんのほうが、口角を僅かに上げた柔らかい表情で丁寧に会釈をしてきたのである。

 

「ああ、こちらこそよろしくお願いします。あの、俺、始めてまだ一年も経ってないので、変な打ち方してしまったらすみません」

 

 相手があまりに物腰柔らかで折り目正しいもので、かつ今現在女子高の中で女子生徒に囲まれているという状況の緊張から、ついつい俺もへりくだって、自分を卑下して予防線を張ってしまった。これはちょっと良くないかな、と少し反省した矢先、

 

「いえ、お気になさらず。たとえあなたがどんなヌルい牌を打っても気になりませんから。誰だって最初はボンクラ雀士ですし、馬鹿みたいな打ち方をしたところで軽蔑をしたりなんてしませんので」

 

 彼女は微笑みながらそう答えた。

 

(口悪っ! 愛想は良いのにひどく口が悪いぞ、この娘!)

 

 もしかして嫌われてんのかな、俺。だって、周りを見てみれば、俺ってやけにじろじろ見られてるし。中には、俺のほうを見ながら何やらヒソヒソ話してる女子も居る。女子高に男子が入り込むとか、女子側としても良い気持ちはしないだろうし、仕方がないのであろうが。

 

 戸惑って俺は、助けを求めるように目の前の弘世先輩らに視線を向けたのだが、しかし三人は取り立てて何も反応した様子はなく、さもいつも通りの日常しかないみたいに振る舞っている。その中で、弘世先輩は俺に目を向け、それから苦笑いした。

 

 ああ、なるほど、この牌譜係さんはそういう人なのね……。

 

 何だか釈然としないけど、とりあえず対局を始めようと、俺は自動卓の中央のパネルにあるスイッチを押した。ピッという機械音が鳴って、そのパネルが浮き上がって、そこに牌を放る穴が現れた。ここに牌を入れるのである。

 

「んふふ、今日は何だか調子が良いし、飛ばしていこっかな。これくらいなら、玄人(バイニン)だってチョチョイのチョイってとこだね」

 

 自動卓の上に散らばっていた牌を、中央に開いた穴の中へ押し入れながら、歌う調子で淡はそんなことを言った。

 

「何だ、そのバイニンってのは」

 

 淡から発された聞きなれない単語に、思わず聞き返した。

 

「何、キョータロー、バイニンも知らないわけ? 何か月麻雀やってんのさ。まさかだけど、上野(ノガミ)のドサ健も知らないってことはないでしょ、それで知らなかったらモグリだよ、モ・グ・リ」

 

「うるせえ、大きなお世話だよ。俺はバイニンも、そのドサ健とやらも知んねえ。小島武夫とかの麻雀新選組くらいだよ、知ってるのなんて、せいぜい」

 

「フッフッフ……、それじゃあその無知のキョータローに、この淡ちゃんが特別に教えてしんぜよう!」

 

 別に頼んでもいないのに、淡は勝手に語り出す。

 

 加えて淡はやたらと寄り道をして話を引き延ばすし、だらだらと長引かせたものでので、かいつまんで説明する。

 

 玄人(バイニン)というのは、麻雀などの博打で飯を食っていく手合いのこと。現代では、専ら裏プロや雀ゴロの総称として使われている模様だ。淡たちは都市伝説みたいに語るが、実際にそれっぽい人物らと同卓したことのある俺としてはゾッとする話だ。

 

 ドサ健というのは、阿佐田哲也こと色川武大や、小島武夫らと同じように元バイニンであり、そして麻雀を世に知らしめた立役者なのだそうだ。阿佐田哲也のほうが著書『麻雀放浪記』で麻雀を宣伝し、その宣伝に集まってきた人たちに麻雀を教えるビジネスを、東京の上野を中心に展開していたのがドサ健だったらしい。また、そのせいで麻雀でお金を失う人が沢山出てきたのも彼の功罪だとも。

 

(こいつ、最近知った知識を自慢したかっただけだろ……)

 

 語り終えて鼻高々になっている淡を見て、俺はそう悟った。何がモグリだよ。ハギヨシさんあたりに喧嘩売って『御無礼』されろ。

 

 俺は呆れたが、淡相手に指摘するのは面倒臭いので、そのまま何も言わずに、もう一度中央パネルのスイッチを押して穴を閉じた。卓上に色違いの牌による山が上がってくる。各人その山の位置を調整し、その後弘世先輩がサイコロを振るスイッチを押した。カラカラコロコロと音を立ててサイコロは転がり、一と一の面が上を向いて止まった。

 

「二だな」

 

 親は俺で、配牌は俺の山の右から二トン以降から取り出す。サイコロの出目に従い俺は山の二番目辺りに切れ目を入れ、まず第一配牌を取る。その次に照さん、淡、弘世先輩の順に取っていくと、三回目の配牌が終わる頃には、弘世先輩の山の八トンが残った。

 

 で、最後のチョンチョンと取った二枚の牌を込め、出来上がった配牌が――

 

{一赤五九①赤⑤2赤59東南西西西北}

 

(これはひどい)

 

 無感動ながら俺はそう思わずにはいられなかった。何これ、何向聴? 西が揃ってるのと、赤ドラがそれぞれ一枚ずつあるのが哀しいんだけど。何かこう……、お情けで貰ったみたい……。手作りくらいは楽しもうとは思ったけど、こりゃあ駄目だ。

 

(もういいよ、どうせ和了れねえよ。お手上げ! いや、そもそもこの面子で打つ時点で色々と諦めなきゃいけないけど、少なくともこの局はぶん投げるわ。手作りすら無理だもん。何目指せってんだよ)

 

 この時の俺はもうヤケクソもいいとこな状態になっていて、その勢いに任せて切ったのが赤五筒であった。

 

 次は赤五萬を切ってやろうか。その次に赤五索。最後に西の暗刻落としをするのだ。何という暴挙。これには麻雀の神様もきっとお怒りになること請け合いだろう。だが知るか。

 

(俺が嫌いなんだろ? 俺だってお前のこと大嫌いだよ、バーカ!)

 

 という感じに、胸の中で麻雀の神様への怨嗟を練っていたその時だった。

 

 突如俺の腹に、圧迫されたような、或いは締め付けられるような痛みが走った。腹の中で何かがギュルギュルと、煮え滾るマグマさながらに唸る。頭の中はその刺激の奔流で溢れていき、支配され、目下のことを考えることすら出来なくなっていく……。

 

 背筋を伸ばすこともままならない俺は、自然と背が丸まって、卓に片肘を突いてその手の甲に、噴き出る冷や汗を隠す風に額を乗せる。

 

 要するにあれだ、トイレ行きたい。

 

立直(リーチ)!」

 

 淡がダブリーを掛ける声が聞こえて、俺は無意識に彼女に目が行く。しかしそのダブリーに対して、何か想念が沸き上がることは無かった。何せ俺の腹痛はまだ続いている、抑えるだけでも必死だ。

 

 ふう、と俺は深く息を吐いた。ラマーズ法の要領だ。あ、駄目だ、ラマーズ法は出るほうのやつだ。

 

「背中が煤けてるぜ……」

 

 本当なら、ケツが煤けてるぜ、とボヤきたいところだったが、女子に囲まれているこの状況で言うのは憚られた。間違いなく公然わいせつ罪あたりで捕まる。

 

「なーにそれ。背中が煤けてるってどういう意味なのさ」

 

 自分に言われたと勘違いしたらしい淡がムッとした様子で反応してきたが、それに弁解する余裕は無かった。ただ弘世先輩の番が終わって、自分に回ってきた時に山から自模り、その牌を確認するくらいだ。

 

 自模ってきたのは北だった。ちょうど持っていた北一枚と重なって対子が出来上がった。それで俺が切ったのは一筒。赤五筒切ったことで手持ちの筒子がそれだけになったもので疎ましくなった、ただそれだけだ。赤五萬を切るのは今度にしよう、と直感的な思考をしていた。腹痛で頭が回らないし。

 

 それから次の照さんの番、淡の番と移っていく。淡が自模切りしたのは北であった。

 

「ポン」

 

 反射的に俺はそれを鳴いた。

 

 その時の俺の動作の速さと言ったらない。どこかの工場のベテラン作業員の流れ作業の如き速さで、まず俺は赤五萬を切ってから、手牌から倒した北の対子に淡から喰い取った北を繋ぎ合わせて、それを卓の右端に滑らせた。ひょっとしたら一秒にも満たなかったのではなかろうか。

 

 と、そうして自分の凄さに一人で惚れ惚れとしていると、腹の痛みが引いていっているのに気付いた。よし、と俺は安堵した。冷や汗が引いていくのが分かる。出来ればこのまま東一局くらいは持ちこたえてほしいものだ。女子高の中心で漏らすとか絶対に嫌だ。

 

 続く俺の自模、弘世先輩の山の最後の一トンから出てきたのは二筒。でも生憎と一筒はもう切ってしまっているので速攻で自模切り。

 

 すると……。

 

「え……」

 

 と淡がその打牌に反応した。何で反応するかは分からない。大方俺のあまりのアホな打ち方に呆れているのだろう。こいつは、どれほど俺が麻雀弱いことは知ってはいても、具体的にどんな打ち方をするかは知らない。

 

 次巡、南を自摸ったので、俺は赤五索を切った。それから下家の照さんを見た。彼女がいつまで経っても牌を切る様子が無かったからだ。何やら沈思する顔をしながら俺のほうを見ている。

 

(照さん、頼むから早くしてくれ! またいつ次の波が来るか分からないんだぞッ!)

 

 俺のそんな切実な心の叫びが通じたのか、彼女は小さく息を吐いて、やおら南を切り出した。

 

「ポン」

 

 すかさず俺は鳴き、打九萬。早く終わってくれという願いを込めて。普通、鳴きまくったところで早く終わるわけがないのだが、けれど遅刻している時に電車の中で走りたくなる心理と同じ。気休めにそんなことをしてしまうのが人情というやつだ。

 

 ――とは言えお陰で大分精神的に余裕が出てきた。手が進んでいると思えるだけで安心出来るものだ。

 

 その僅かな余裕で、次の照さんの切る牌を見る。彼女は、今俺が切った九萬と同じ九萬を出した。それと淡も、照さんの次に打ったのは九萬だった。場に九萬が三枚。得した気分。意味は無いけど、まあ気分の問題だ。

 

 弘世先輩が七萬を切った。

 

 で、俺の番。引いてきたのは七萬。何てこったい、九萬捨てなきゃ塔子になってたじゃねえか。九萬はあと一枚しかないし、赤五萬だってさっき捨てちゃったし。

 

(しゃーない、捨てるか……。どうせドラでも何でもないんだから)

 

 ちょっと未練を残しながら、俺はこれを切った。

 

 だがこれが俺の流れを乱したのか、それからの俺の自模は良いものではなかった。今俺に残された数牌は、一萬、二索、九索。いずれも孤立牌だ。哀しいことに俺は、それらに絡まない牌ばかり掴まされ、索子に至っては一枚も来なかった。それでもう諦めて二索を捨ててみたら、今度は一索を引いてしまったりもした。

 

(何だよこれ! 運が悪いにも程があるだろ! 麻雀の神様ごめんなさい! もう嫌いだなんて言わないから自模運戻して!)

 

 困った時の神頼みとはこのことだ。全く虫の良いことだと自分で呆れる。

 

 しかし、俺のその情けない姿に麻雀の神様も溜飲が下がったのか、俺は次の自模で南を持ってくることが出来た。やってみるもんだ。

 

「カン」

 

 と南を加槓。嶺上から三筒を自模、全くどうでもいい牌だ。これをそのまま切ってもよかったが、気まぐれに自摸切りを止めて一萬を打つことにした。特に意味はない。

 

 だがここで、俺に、再びあの恐ろしい衝撃が走った。

 

 そう、ご存知、腹痛の波である。

 

(第二波が来るぞーッ! 衝撃に備えろーッ!)

 

 頭の中で警笛が鳴り、すっかりと乾いていた汗も、前回の波に輪を掛けて噴き出してきた。俺は文字通り腹を括り、身体に力を込めた。

 

 そうして俺は絶望の痛みを思い出す。俺はあと、どれくらい我慢出来るのだろうか。……いや、我慢出来る出来ないの問題じゃない、何としても我慢せねばならないのだ。さもなくば俺は、色々な意味で汚名を被ることになるのだから……。

 

(あああ! ヤバイ……、ヤバイ……、ヤバイ……。あとどれくらいだ……、あとどれくらいでこの局は終わるんだ!……)

 

 俺の眼は自然と、彼女らの手元に目が行った。彼女らが如何に早く牌を切り、そして早く手を仕上げるかが肝だ。クソッ、やけに牌を切るのが遅いように感じられるぜ。

 

 淡はまだ良い。既にダブリーを掛けているから、捨てるのにそんな時間は掛からない。でも問題は弘世先輩だった。彼女が淡の次に自模をしてきた時、

 

「……」

 

 弘世先輩、まさかの黙り込んでの長考。チラチラと俺のほうを見てくる。

 

(お願いだ、弘世先輩! 早く打ってください! 打ってくれるだけでいいんです! 別になんにもしないから! 絶対危害とか加えませんから!)

 

 それから数秒程――いや、俺にとっては十数秒か? 彼女が打牌したのは、それくらい経ってからだった。

 

 彼女が切り出したのは西だった。

 

「カン!」

 

 俺は即座に大明槓。急に西が飛び出してきたのもので。

 

 だって仕方がないだろ、お腹が痛くてまともな判断力が無いんだから。これは謂わば本能というやつだ。俺にとって鳴きとは本能みたいなもんだ、初心者だもの。牌効率とか全然分からないなら鳴きで手を作りたい、それが人情というものだろうに。

 

 例えば、今のカンで嶺上牌から自模ってきたのが東なら、それを対子として残してまた数牌を切るのも人情というものだ。俺が先ほど引いた三筒を切ったのはそのためだ。

 

 しかしまあ、約束というものは、たとえ己の内でしたことでも、反故にするもんじゃないなあと、この巡で思い知ることになるわけだ。

 

 何と、またしても弘世先輩が、自模ってきた牌と睨めっこして動かなくなったのだ。

 

 まず彼女は場にある河の牌を眺めたのち、続いて渋い顔をしながら淡の手牌をしげしげと見た。別に何かが見えるわけでもないだろうに、何をそんなに迷うのか。俺は、自分が嘘を――自分の中で完結していることとは言え――吐いたことを棚上げして、恨みがましく彼女を目だけで凝視していた。

 

 そして彼女は、俺を一瞥したところで、意を決したように、手の中から牌を一枚抜いて打ち出したのであった。

 

 よし来た、と俺は少しだけ気が楽になり、山から一枚牌を自模り、それを――手牌のとこまで持ってくる前に自模切りした。四萬だったし、要らなかったし。何より早くこの局を終わらせたかった。

 

 それでも世界は不条理だった。

 

 今度は淡だ。淡の奴、ダブリーしているくせに、自模ってきた牌を見て固まりやがった。ふざけんな、もうお前は立直掛けてんだから、その牌が和了牌でなけりゃどの道打たなきゃなんねえんだよ!

 

「早く切れよ、時の刻みはお前だけのもんじゃない」

 

 もう限界が近い俺は、我慢ならず淡を急かした。

 

 ――こうしている間にも、俺の腹にはどんどん限界が近づいているんだぞ、と、出来ることならストレートに訴えたい。

 

 俺の声音が強すぎたからか、淡は怯えた顔で、俺と牌に交互に視線を泳がせていた。どうやら俺は墓穴を掘ったらしい、却って淡の動きを遅らせてしまうとは。

 

 数秒か、いや、俺にとっては十数秒にも感じられる刹那の時間を置き淡はようやっと牌を切った。

 

「ポン!」

 

 ノータイムで俺は鳴きを入れる。俺の顔に、涙なのか脂汗なのか判らない湿りを感じた。

 

 これで俺の手は裸単騎、すなわち聴牌だ。あとは何で待つかだ。俺の手には六索と九索。よく分からないので、どちらにしようかなの要領で、六索を切った。これでよし。

 

 しかし問題はまだある。それは、淡の自摸の動きが緩慢になり、場の回転が僅かに遅くなったことだ。今の俺にとっては、その僅かな時間すら惜しい。

 

 で、俺の番に回ってきたが、自摸ってきたのは何と六索!  俺が今捨てた牌だった。つまり、俺は和了し損ねたのである。そうしてますます俺の気力は枯れていくのであった。

 

 その上今度は、次に自摸った照さんが、チラと俺に視線を送って止まったのである。止まったのは一瞬くらいか。だがその一瞬の時間が、俺に限界を感じさせるのだ!

 

 それでも俺は耐え忍んだ。俺の中に残った最後のプライドが、どうにか持ちこたえさせたのだ。

 

 俺が自摸ったのは北だった。遮二無二俺はこれを、

 

「カンッ!」

 

 嶺上牌を自摸り、そうして持ってきた東をまたしても、

 

「カンッ!」

 

 追い詰められた男の、魂のカン。これが最後の嶺上牌。そうして俺が自摸ったのは、中。そう、俺のラッキィ牌ーーと勝手に思ってるーー三元牌の紅中だ。

 

 ようやく俺にもツキが回ってきたか、と、焦燥のあまり物狂いになった頭で勝手に考えて、俺は待ちをこの紅い中牌に変えたのだ。

 

「まさか……」

 

 後ろでそんな声が聞こえた。誰が言ったかは分からないし、考えている暇は無い。

 

 俺は視線だけで、照さん、淡、弘世先輩の自摸と打牌の動きを追う。ただ、早く終わってくれという切実な祈りをしながら。

 

 その後、俺にとっては長い長い一巡ののち、とうとう俺は手に入れたのだ。白い板に刻まれた、紅い中の文字を。

 

 俺はこの牌を、手を鞭みたいに振り下ろし卓に打ち付け、

 

「ツモ……」

 

 そう宣言して和了、同時にこの地獄の一局に幕を引いたのであった。

 

 俺の手に残った最後の牌、中牌を倒し、続けて卓の右端に寄せていた牌をその側に引っ張ってきて、皆に見せたのだ。

 

 そこで俺は、自分の手には、字牌しかないことを知ったのであった。俺はこの手を知っている。未だ麻雀については素人レベルにしか知らない俺でも、この手が字一色という役、

 

「役満だ」

 

 ということを知っているポン。

 

 よし、やることをやったポン、ここでちょっと休憩を入れてもいいだろうポン。そう思い、おもむろに立ち上がって俺は部室を一旦後にするのだポン。

 

(ひろポン、てるポン、あわいポン。点棒移動よろしく)

 

 そんなテレパシィ(持ってないけど)を送り、後ろ手で扉を閉めた。

 

 それから、廊下を歩いていて、俺は重大なことに気付いたポン。言うに及ばずポン、女子校では男性職員用のしか男性トイレが無いポン、俺はその場所を知らないということポン。

 

 再び俺は絶望した。ちょっと気が緩んだところで、残酷な現実を突き付けられるポン。とかく世界ポンとは不条理だった。

 

 徐々に俺の下半身から力が抜けてゆき、そして終わろうとしたその時だった。

 

「あの!」

 

 後ろから追いかけてきて声を掛けてきたのは、あの牌譜係さんだった。俺には、彼女が天使のように見えたポン。

 

「ちょうど良かった……」

 

 何かを言おうとしていた彼女を遮るようにポン、俺は静かに尋ねた。

 

「男性用トイレって……どこ……」

 

「へ?」

 

 彼女は素っ頓狂なポン声を上げたものの、すぐさま取り直して、冷静な対応で俺をトイレまで案内してくれた。口はポン悪いけど、やっぱり彼女はポン良い娘だ。

 

(こうして、俺の誇りポンは守られた。どうにか、女子ポン校の中心で粗相をしてしまうといったことは避けられたポン)

 

 狭いトイレの中、腹が締め付けられるような激痛を受けポンながら、今まで俺を苦しめていた原因を追い出すポン作業をしながら、俺はそんなことを頭の中で呟いていたんだポン。




 ロケーションに無理があるけど、やりたいネタあったので敢行。それと当初の予定では、淡は京太郎は完全に眼中にない鼻持ちならない態度で描く予定でしたが、それだとキャラとして不遇なので、小馬鹿にしつつも相性は良い方向性で行きました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。