ポケットモンスター 侵食される現代世界   作:キヨ@ハーメルン

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現在ポケモンの見どころの一つ……それは近代兵器との対比と、陰謀。ありとあらゆる方向から伸びる、陰謀……! 圧倒的陰謀……!


第25話 特殊弾頭輸送任務(前編)

 対ポケモン用特殊弾頭弾。

 それは人がポケモンと戦う為に作り出した剣だ。ポケモンの“こな”系の成分を抽出凝縮する事で高い状態異常発生率を誇る、BC兵器すれすれの武器。

 まぁ、ポケモンからすれば“きのみ”や“わざ”で充分対抗可能な、傷一つ付かない鬱陶しいだけの物だが……それでも今まで全く無力だった人間が、ポケモンに対して有効な攻撃方法を手に入れた事に違いはなく、方々から注目されている特殊弾頭に変わりはない。最初の一歩としては、大きな前進だと。

 

 そしてこの日。研究所に併設された工場で少数生産された特殊弾頭の試作品が、駐屯地や警察施設へ輸送される日がやってきた━━

 

 

MISSION

「特殊弾頭輸送任務」

 

 

 集まったかね?

 落ち着いてくれ。静かにしてくれ!

 

 諸君らはシロ民実働部隊の一員として、今日までポケモンが出現した地域の平和を維持してきてくれた。……今日まで。

 

 先ほど、我がシロ民実働部隊の先行偵察班が不審な動きをする不審者集団を通報してきた。

 直後、当該偵察班からの通信が一切途絶えた。不審者集団による攻撃を受けたものと判断する。

 

 任務を伝える。

 

 この関東地域における膠着状態が約一ヶ月ぶりに破られた可能性がある。

 シロ民実働部隊特殊弾頭輸送任務班はただ今をもって第一種戦闘態勢に移行。各隊員は担当車両へ各自乗車し、不審者集団の発見、捕捉、威嚇射撃をもって敵の狙いを阻止せよ!

 もし敵から反撃を受けたその時には━━

 

「部隊長、間もなく出発時間です」

「特殊弾頭の積み込み完了。今のところ妨害はありません」

「先行偵察班より連絡! 攻撃を受けて退避中、負傷者多数。不審者集団……いえ、テロリストは見失ったとの事です」

 

 出撃だ!各員は直ちに乗車、輸送部隊へ攻撃を行うと推測されるテロリストを排除せよ。

 これは訓練ではない。

 

 ……………………

 …………

 ……

 

 まだ日が出てすらいない早朝、ポケモン研究所から暗闇に紛れて2つの車列が出発する。

 片方はオリーブドラブに塗られた装甲車やトラックで構成された自衛隊の車列、もう片方はパトカーや特型警備車で構成された警察の車列だ。

 

 そして、そのどちらにもシロ民が護衛として随伴していた。

 

 彼らはそれぞれのトラックや特型警備車の中で各々時を過ごす。モンスターボールを手のひらで転がす者。全員が正式装備しているシロ民専用大型特殊防弾盾や防弾チョッキ等の自分の装備を確認する者。そわそわと落ち着かない者、寝ているのではないかというレベルで静かな者……様々だ。

 とはいえ元ネト民だけあってか会話らしい会話はなく……それに耐え兼ねたのか、やがて特型警備車に乗っている一人のシロ民がポツリと声を出す。こんな噂を知ってるか? と。

 

「今回のコレ、色んな国がスパイを使って見てるらしいぜ?」

「あぁ、それなら聞いた事がある。中露はテロリストに武器を横流しして、米国も一枚噛んでるとか」

「うわぁ、米中露が揃い踏みかよ……あれ? 欧州諸国は?」

「お嬢曰く、ブリカス含め欧州連中は足の引っ張り合いの真っ最中らしい。こっちを見るだけ、調べるだけならともかく、極東の島国相手にマジになって動くには後一週間はかかるだろうってさ」

 

 警察車列を担当しているシロ民達の話題は、今回の任務の裏側だ。中露が武器を、米国が情報を、それぞれテロリストに引き渡した事実を噂話として知る彼らは、大国の思惑をあーでもないこーでもないと話し合う。

 とはいえそこに真剣さや深刻さは殆んどなく、大国の思惑は馬鹿話の一つとして扱われ……やがて彼らは大国が自分達とテロリストをぶつけ合わせ、ポケモンの戦闘能力をはかろうとしているのではないかという結論に達した。今回の輸送任務も、その為に用意された舞台、演目だと。

 

「ったく、俺らは見世物か何かかよ」

「見たいのは俺らというより、ポケモンだろ。どういう存在なのか、どのくらい強いのか、友好関係とかそもそも可能なのか、必要なのか、新たな奴隷に出来ないかとか……まぁ、根本的に対岸の火事って感覚だろうな。海一つは挟んでる訳だし」

「あー……そうなるとこの微妙に無駄な感じがする、芝居がかった輸送任務もしっくりくるなぁ」

「用意された戦場、か」

「身体は闘争を求める」

 

 大国の思惑をおおよそ把握し、それでも気の抜けた様子でシロ民達は車に揺られる。彼らからすれば今更、ようやくなのだ。ようやく大国がポケモンに注目しだした、動き出した。……遅い動きだと、内心嗤う者すら居る程だ。

 何より、自分達はそういう手合を含めた障害に対処する為、各々ポケモンを手に入れ、関係を深め、経験を積み、シミュレーションと訓練を重ね、今日に至る。今更慌てたり、逃げ出す様な腰抜けはここには居ない。そんな奴はエリートや親衛隊員を名乗れないのだから。

 

「ま、一つ言えるのはポケモンが最初に日本で登場したのは正解だったな。シロちゃん居るし、こんな方法で調べようとするあたり、他国だったら今頃ポケモンとドンパチ始まってるだろ」

「日本人。その辺り柔軟つか、一旦は受け入れるからなぁ……」

「そらもう、KAWAIIで全部解決よ」

「進んでるのか、馬鹿なのか……」

「まぁ、平和的ではある」

「お、そうだな」

 

 和気あいあい……とまではいかず、お互い殆んど目も合わせないが、シロ民達は比較的リラックスした様子で車に揺られる。渋滞もなく、順調に車列は進み、一団が郊外から都心部へと入ろうとした━━その時。ドゴシャァ! と、車の外から凄まじい衝突音が聞こえ、直ぐ様急ブレーキがかけられる。

 身体が浮き上がる様な慣性。その中でシロ民達は唐突に起こった幾つかの出来事を頭の中で組み合わせ、二秒と掛けずに答えにたどり着く。即ち。

 

「敵襲!?」

「奴らめ、来やがったか!」

「小型ポケモン持ってる奴は出せ! 大型はまだ出すなよ!」

「サンド、出番だぞ!」「来い、マダツボミ!」

「運転手! 状況は!?」

 

 敵襲だ。テロリストが襲って来たのだ!

 予測されていた非常事態に、シロ民達は怯むことなく立ち向かう。素早く敵襲を確信し、サンドやマダツボミ、シェルダーやクラブ等の小型ポケモンを車内で出し、運転手に状況を確認する。淀みなくそこまで動きを終わらせ、各々が自分の装備を改めて確認していると……運転席から怒鳴り声が響く。前の車がやられたと。

 

「トラックに、改造トラックに突っ込まれてる! こっちの進路を塞いで……いや、中から人が、銃を持ってるぞ!?」

「お前ら行くぞ!」

「「応!」」

 

 それだけ分かれば充分だ。そう言わんばかりに声を合わせ、ほぼ同時にシロ民の一人が扉を蹴破る様にして外への道を開き、そこからサンドを先頭に小型ポケモン達が外へと飛び出す。一拍、シロ民達も盾を構えながら隊列を組んで外へ進み、ポケモンを前に出しつつ警備車の左右に展開。

 車内のゆるゆるとした雰囲気とは打って変わって機敏な彼らを出迎えたのは、鉛弾の壁だ。

 

「構えぇ!」

 

 暗闇を引き裂く曳光弾(えいこうだん)の光を見る暇もなく、シロ民達は大型の盾へと身を隠す。

 カンッ、キンッ、と盾で弾かれる鉛弾。だがそれも長くは続かない……それを知識で知る彼らは直ぐ様次の一手を打つ。シロ民らしく、ポケモンと共に。

 

「サンド! 前へ進んで、“スピードスター”! 応射しつつ照らせ!」

「行け、ポニータ! “ひのこ”だ! 撃ち返せ! 照らしてやれ!」

「シェルダー、“みずでっぽう”。撃ち据えろ」

「クラブ“バブルこうせん”。武器を狙え!」

「マダツボミ“しびれこな”。撃ってくる奴らを動けなくしてやるんだ!」

「行ってこい、タマタマ! “タネマシンガン”! 片っ端から、吹っ飛ばしてやれ!」

 

 盾に身を隠しつつ、暗闇の中自分のポケモンに指示を飛ばして応射を開始するシロ民達。追加でポニータとタマタマが場に出され、星が、火が、水が、泡が、粉が、種が、次々とポケモン達から放たれ、テロリスト達を撃ち据えていく。

 勿論テロリスト達も黙ってはいない。車や街頭、ときには暗闇まで遮蔽物とする事でポケモンの攻撃を遮り、アサルトライフルで射撃。ポケモンの撃破を狙うが━━

 

「サンド! “まるくなる”! 前に出て攻撃を引き受けるんだ!」

「シェルダー、サンドの横に付いて“からにこもる”だ。奴だけにいい格好させるなよ」

「クラブ! “かたくなる”。そしてお前もサンドの横に付くんだ! 前進しろ!」

「ポニータ。“なきごえ”そして“ひのこ”だ。飛んでくるのは出来るだけ避けろ、お前出番はまだ先だからな!」

「あれは……? ちっ、ガスマスクとは小癪な……大丈夫だ、マダツボミ。その場から“ねむりごな”。手間を増やしてやれ」

「タマタマ。お前は引き続き“タネマシンガン”だ。顔を出した奴を吹っ飛ばしてやれ!」

 

 小銃ではポケモンを殺傷出来ない。流石に小石が当たった程度にはダメージがある様だが、それでは十発当てようと百発当てようと殺す事は出来ないのだ。現にテロリスト達は一方的に撃たれ、吹き飛び、ジリジリとその数を減らしていく。

 そうこうしているうちに警察官達もポケモンを出し、ライトを照らし、あるいは拳銃片手に車の影に隠れ、こちらもテロリスト達に圧力をかける。相手はシロ民だけではないと。

 

「運転手の人は早く後ろに、この警備車は盾として使います!」

「了解した、健闘を祈る!」

「っ、ロケラン注意!」

「言ってる側から……運転手の人は退避を! サンド━━」

 

 このままやられるつもりはないといったところか、テロリスト達はRPG7を複数持ち出し……シロ民が止める暇もなく、斉射。

 それに対するシロ民の動きは早い。防御力の低い個体には回避を、耐えれる個体には迎撃を指示。“スピードスター”、“みずでっぽう”、“バブルこうせん”。星、水、泡の“わざ”が放たれ、その幾つかがロケット弾に命中、爆発、迎撃に成功した。

 

「良しっ!」

「まだだ! まだ来るぞ! クラブ! 撃ち続けろ!」

「ポニータ! “ひのこ”! 撃ち落とせぇぇぇ!」

 

 だが全てを落としきれず、数発の弾頭がシロ民達へ迫る。今更逃げれはしない。今までのものに加えて“ひのこ”や“タネマシンガン”等々、焦りを含んだ声で更なる“わざ”が指示され、即座に弾幕が形成される。

 複数の爆発。しかし僅かだがすり抜けられ……そして。

 

「駄目だ、伏せろぉぉぉ━━!」

 

 その声に反応出来るか否か━━そんなタイミングで凄まじい爆発音と共にシロ民達が乗っていた警備車が爆発炎上。パーツを撒き散らして吹き飛ぶ。対戦車弾頭が突き刺さったのだ。警察の車両ではひとたまりもない。

 更に前へ出たポケモン達が居る付近にも着弾し、サンド、シェルダー、クラブが至近弾を受ける。が、こちらはそれほどのダメージではなさそうだ。しかし、生身のトレーナー達、シロ民は違う。

 

「退避! 退避ぃ! サンド、一旦下がれ!」

「訓練通りやれば生き残れる。落ち着いてフォーメーションを組むんだ! シェルダー、サンドの後ろに付け!」

「クラブ! お前も下がるんだ!」

「マダツボミ! こっちは大丈夫だから、火から離れろ!」

「タマタマ、お前もだ! 離れておけ!」

「ポニータ、一度戻ってくるんだ!」

 

 シロ民達は指示を出しつつ、盾で自分と仲間を庇いながらゆるりと撃破された車両から距離を取る。しかしその隙を逃しはしないとばかりに放たれる鉛弾。普通なら死者を出さずにはいられないタイミング……だが。

 

「サンド!」「シェルダー」「クラブ!」

「「「“まもる”!」」」

 

 空いた穴は即座に三匹が連携した“まもる”の壁によって塞がれ、直ぐに戦線が立て直される。そして直ぐ様飛び交う鉛弾と無数の“わざ”。キルレートはシロ民優勢ではあるが……

 

「サンド、“スピードスター”! 牽制射! ……どうする? このままじゃ決め手に欠けるぞ?」

「クラブ! “マッドショット”! 連中の足元を薙ぎ払え!……なら突っ込むか? 先頭はお前とお前のポケモンな」

「ポニータ! “ほのおのうず”! 閉じ込めろ! ……これで準備は出来たぞ。まぁ、俺らは無理だな、盾がイカれだした」

「わーお、えっぐい。まぁ、死者無しを目指すと、どうにもな」

「それがいいんならガスマスク焼いて“どくのこな”で片付くだろ。……で、実際どうする? 危険承知で突っ込んでケリ付けるか?」

 

 難しいところだ。そうため息を吐くシロ民。何せお互い死者無しで終わらせたいシロ民は、決め手に欠けているのだ。かといって王手を指そうとすればどちらかに、あるいは両方に死人が出かねない。

 それは、人とポケモンの共存の流れにヒビを入れてしまう事になる。だがこのままではどっちみち……そんな考えが全員の脳裏に浮かんで暫く、一人のシロ民が声を上げる。ここは俺の、俺達の出番だと。

 

「イワークニキ……運転手さんは?」

「他の警官にパスしてきた。で、ついでに許可も取ってきた。イワークで暴れる許可をな」

 

 イワークニキ。それは最初に出現したイワークを両足粉砕しながらもゲットした男の通称名だ。そのクソ根性を根底に積み上げられた実力は確かな物で、今回の特殊弾頭輸送任務では切り札の一人として随伴していた。

 とはいえ、何せイワークは巨大だ。空き地が広がっているならまだしも、建造物が密集する都心部ではモンスターボールから出しただけで被害が出かねない。その為イワークニキは自分の手持ちと共に後ろに控え、警備車の運転手や、その他警官隊の支援やアドバイスに回っていたのだ。……上から許可が下りる、この瞬間まで。

 

「……よく出たな。許可」

「これ以上町中でロケランブッパだのポケモンバトルだのはヤバいって判断らしい。多少なら壊しても構わないから、SATの出動より早くテロリストを取り押さえてくれとよ。……妙な指示だが、まぁ、悪くない」

「うん? ……あぁ。なるほど、これも演目か。鬱陶しい」

 

 同胞の言葉にそういう事だな、と。そう苦笑しつつイワークニキは腰のベルトからモンスターボールを取り外し、宙へと放り投げる。高く、高く。そして。

 

「来い、イワーク!」

 

 ポンッ、と。独特の音と共に光が溢れ、巨大な蛇を形作り、やがて巨大なポケモンが姿を現す。いわへびポケモン、イワークだ。

 たかさ8.8メートル、おもさ210.0キロ。その怪獣さながらの巨大さは見る者を圧倒し、敵対する者の心をへし折る。━━仮にポケモンに詳しい人間、例えばシロちゃんがこの場に居たならば、このイワークが意外と脆い事を指摘してくれたかも知れないが……生憎彼女はまだ夢の中だ。

 

「さぁ、チェックメイトだ」

 

 鮮やかな朝焼けがビルとイワークを照らす中、戦いは次の段階へ進もうとしていた。

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