難しい設定とか考えると書いてる側は楽しいけど読者側がは?ってなるのがこの世の定めだと思います。(技量の問題もある)
今回はそんな感じ。 小難しいのはちゃっちゃと終わらせたいから一話にまとめちゃったかんじですので、見にくいかも。
後方支援その11
「––––お話って言うのは、例の傷害事件のことですよね?」
Stヒルデ魔法学院の始業式から数日が経ち、週末特有のなんとも言えぬ柔らかい空気に包まれている聖王教会本部であったが、カリムが異様な空気を打ち消そうと正面に座る人物に優しく尋ねたが、やはりこの一室だけが異様に固いナニカが漂っていた。
教会内のカリム・グラシア執務室に充満する異様な空気は、室外に待機している護衛騎士にも感じることが出来た。闘気や殺気の類では無い、ただの"緊張感"だけが、この空気を生み出す原因となっている。
室内にいるのは五人。部屋の主たるカリム・グラシア、その秘書シャッハ・ヌエラ、この執務室の人物達に比較的重要な要件を話に来たシンプルな黒い眼帯をした少女チンク・ナカジマと、"管理局の切り札"が二人。
「ええ、我ながら要らぬ心配だと思ったのですが....件の格闘戦技の実力者を狙う連続傷害事件についてです」
緊張で動きが鈍い手でホロパネルを操作し、チンクは一枚の記録画像をウィンドウに映し出す。
画像には黒いバイザーを被った髪の長い女性と、地面倒れているスキンヘッドの男性が一人。明らかに平和的な行為行われていたとは考えにくい光景だ。
「うふふっ。心配性のあなたなら、お話してくれると思ってました」
「ははは....。それで、事件の容疑者である画像に映っている彼女が自称している『覇王』イングヴァルトと言えば––––」
「ベルカ戦乱期..諸王時代の王の名だな。特に名を轟かせたのは今から三〇〇年ほど前....覇王クラウスだったか?」
チンクの言葉を遮るように喋ったのは、全身を黒い服、八席議会の正装に身を包んだ教会騎士団騎士団長、アリス卿。
「..........覇王クラウスは聖王家のオリヴィエ・ゼーゲブレヒト聖王女と深い関係があったと書物には記されている」
続けて言葉を発したのはアリス卿と同じ黒の正装を身に纏い、同色のベルカの意匠が施されているデザインのフルフェイスを被ったいかにも怪しげな男性。何も知らない一般人が見かければ即通報してもおかしくないかもしれないが、このフルフェイスの人物が如何なる者か知っていたとすれば、そんな事は出来ない。
時空管理局八席議会所属、セツナ卿。 世界最強と称される召喚獣達を使役する召喚士で唯一のSランクオーバー魔導師。ある意味ではエース・オブ・エースよりも有名人である。
「せ、説明の必要はあまり無いようですね。時代は異なりますがこちらで保護されているイクスヴェリア陛下や....ヴィヴィオの母体(オリジナル)である『最後のゆりかごの聖王』オリヴィエ聖王女殿下とも無縁ではありません」
「ヴィヴィオやイクスに危険が及ぶ可能性が?」
「....卿の重要関係者第一類のヴィヴィオに危害を加えるということは、其れ相応の報復を受ける覚悟が必要です。 巨大な組織ほど卿との"戦争"は避けたがるでしょう。 しかし、個人レベルとなればヴィヴィオが重要関係者第一類であるのを知る者は殆どいません。 卿の抑止力が働かないので、無くはないかと」
チンク、カリム、シャッハは三人揃って渋い顔をする。『聖王の鎧』がないとはいえ、ヴィヴィオは聖王教会にとって生きる信仰対象。イクスヴェリアに至っては、封印処置が施されているとはいえマリアージュの生成能力が顕在する。どちらも様々な狙われてもおかしくはない。
だがそれと同等以上に三人が危惧しているものがある。
卿による報復。
卿が所属する八席議会とは本来、最高評議会に次ぐ管理局の決定権を持ち、第三者的な目線から最高評議会の決定に賛同、異論を唱え決定に待ったをかける組織である。
最終的な決定権は最高評議会側にあるので、あくまで決定の延期などしか行えないが、彼らの本質は政治的なものではない。
彼らの本質は『戦闘』。 広大な次元世界から選び抜かれた魔導師・騎士の八人は各々が個人が持つには強大過ぎる力を有し、情勢の不安定な世界各国に睨みをきかている。
通常では一部能力を制限される卿だが、管理局法では、重要関係者第一類に社会的・身体的に危害が加われば、その脅威を排除するために能力を最大行使することが可能になっている。
問題は脅威の"排除の範囲"が明確に定められていないことだ。 全員が最低限の能力行使で事を済ませるのなら問題はないが、全力で能力を発揮しようものなら、その被害は計り知れない。 万が一対象の『脅威』を故意に殺害しても、『脅威の排除の範囲内』で法的には済ませれてしまう可能性がある。 これは過去に例があり、局内外で大問題となった。
卿といえど一局員や騎士には変わりない。下手に死人を出せば管理局、聖王教会の信頼に関わる問題へと発展しかねない。 ただでさえJS事件、マリアージュ事件と不信が積もる中で更なる追い打ちを貰うのは非常に不味い。
八席議会を危険な機関として解散を求める声も少数ながらあるが、何せ管理局創設当初から存在し、艦隊派遣が困難な世界へ艦隊の代用として任務を負うなど、多大な貢献をしてきた経歴、次元世界のバランスへの影響があるので現行それは難しいと言われている。
「セツナよ。 心配は要らぬと思うが 聖王女が襲撃された場合、間違っても感情に任せて襲撃犯を殺めるような真似はするな。 お前は管理局員だ、犯罪者は––」
「法で裁く、そのための時空管理局」
「......だそうだ。 安心しろ、セツナもある程度自分の立場に自覚はある。 普段はどうか知らぬが、"こっちの"姿なら私が保証する」
セツナの『自覚』の保証をしたアリスは自分の中で何か納得がいったらしく、三人が何かを言う前に「ありがとう。 美味しい紅茶だった」と言って、椅子から立ち上がり、ツカツカと扉まで歩いて行く。
「え、あ、アリス卿? どちらへ行かれるのですか?」
割と重要な話しを勝手に完結さでて何処かへ行こうとするアリスを慌て気味に引き止めるシャッハ。
「本局に戻る。 仕事がまだ山積みでな....いつの時代も公僕は書類との戦いでならん。 セツナ、お前はどうする? 冥王に挨拶でもしに行くのか」
「ああ、まずはそうするよ。 イクスヴェリアには近状報告をしなくてはならない。 話したいことが山ほどある」
「あの冥府の炎王イクスヴェリアに見舞い....聖王女共々、実に変わり者だな。 では」
颯爽と去って行ったアリスに続き、セツナも腰を上げて後を追うように部屋を出ようとすると、「セツナ卿!」と、シャッハがアリスを呼び止めたように声をかける。 その声色はアリスにかけた『疑問』ではなく、明確な目的のある言葉が発せられるのを分からせた。
「シスター・シャッハ。 なにか?」
「セツナ卿、余計なお言葉かもしれませんが––––公務を執行する際のそのお心構えや態度......ほんの少しでいいので私生活にも反映させては如何でしょう....か?」
しばしの沈黙。 シャッハはセツナの顔をじっと見る。 フルフェイスの仮面からは表情は読みとれないが、おそらく仮面の下で、彼は笑っていた。 そして。
「むりっ!!」
そう言って朱い召喚陣とともに姿を消した。
「あ、あの子という子は......っ!」
「いつものこと....とはいえ、苦労してますね。 ご苦労様」
ぐぬぬという音が聞こえてきそうなシャッハにカリムは「今日は飲みに行きましょうか」と飲みの誘いをしておく。 生真面目なシャッハは何かと心の内側に溜め込む傾向にある。 長年の付き合いで大概のことは理解出来るカリムなりの心遣いであった。 頭を抱えて頷くシャッハは相変わらず問題児な『あの子』の将来を本気で考えているのだろう。
「お願いしますよ、セツナ卿」
◆
【中央第四区公民館 ストライクアーツ練習場】
「やっぱり、ヴィヴィオとコロナがストライクアーツをしてるって意外だったなぁ....あ、やっぱヴィヴィオは無し。 ヴィヴィオは元から武人だね....ふっ!」
「何それ誠に遺憾なんですけっど!」
唐突なリオの発言に文系の鏡として、ヴィヴィオは遺憾に思わざるをえない。
会話を続けながら顎めがけてとんでくる左右の拳を弾き、掌底突きで同じ動作を返す。 更に蹴りも加えて追撃を行う。
「っ!っとっと!? だってさー! わたしが初めてヴィヴィオを見たのって、ヴィヴィオがあいつをっ、追っかけてっ、階段の手摺を滑り降りてたことだぁーーーーもんッ!」
拳と蹴りのラッシュを全て受け切った瞬間にリオは半歩下がり、右足を軸に得意の回し蹴りを放つ。 回避出来ないと踏んだヴィヴィオは右腕をガードに回し左手で右腕を支える。
バチィッ! と、鋭い打撃音と衝撃がプロテクター越しにヴィヴィオの腕から耳まで伝わってくる。 防御から蹴りへの素早い切り替え、直線にとんでくるような一撃––リオ・ウェズリーの実家の格闘技『春光拳』だった。
「っ.....見えるんだけど身体が反応しないって、やっぱもどかしい」
「あっれー....? 今の防げるスピードで打ったつもりはなかったんだけどなぁ......」
「カウンターヒッターのわたしの行動としては自己評価で四十点。 これが彼なら八十点くらい....ま、そもそもスタイルが違うから評価のしようがないかな」
「ヴィヴィオー、自分の世界に入らないでー」
組手を中断して一人ブツブツと自身の行動についての評価をし、ついでに零だったらどう行動するかを考え始める。 こうなってしまえばヴィヴィオの思考を止める術は無い。 自己評価は直ぐに終えるものの、零の行動パターンを予想して、どうコンビネーションに繋げれるかまで考える。 コンビで戦う場面はあまり無いのだが。
一人とり残されてやれやれと眉間を押さえるリオの横を一人の女性が通る。 赤と黒スポーツウェア、燃えるように赤い髪、金色の瞳とかなり特徴的な容姿をしている。
女性はそのままヴィヴィオのそばに近づき、軽めのチョップ一発。
「いたっ....ん、ノーヴェ?」
「ノーヴェ? じゃねぇこのアホちん。 またコンビネーションのこと考えてたろ、ったく......自分の動きを評価するのは悪いこととは言わねぇけど、コンビネーションのことを考えるのは今じゃないっての」
赤髪の女性、ノーヴェ・ナカジマは目の前の優秀な弟子の悪い癖を指摘し、注意を促す。 今の練習はあくまで一対一の個人レベルでの試合を想定したものであって、コンビネーションの実戦を想定したものではない。 当然のことながら個人とコンビでは動きが大きく違ってくる。 お互いの弱点をカバーし合い連帯攻撃を行うコンビと、弱点のカバーを含めて一人で立ち回る個人では練習内容も異なる。
と、この手の話しをノーヴェは何度もしているのだが、不思議とこれだけは治らない。 ヴィヴィオは常に零が一緒にいるという前提で物事を進める。 友情、絆、愛情、他のどれでもない強いものが二人を繋げている気がしてならない。
(類は友を呼ぶってか。 負けず嫌いのド根性持ちなのは似てるかもしんねぇな....けどなんだ、なんか変に似てるよな、特に魔力なんかは––)
「ノーヴェノーヴェ、どうしたの?」
「....いや、なんでもねぇ。 ってもうこんな時間か。おーい、そろそろ上がるぞー。 三人とも着替えてこい!」
「「「はーいっ!!」」」
ヴィヴィオ、リオ、コロナは元気良く返事をして、走って練習場を出て行く。 時刻はそろそろ午後七時を回ろうとしていた。
「結局来なかったっスね〜、あのガキンチョ」
「....あ、居たのかウェンディ」
「ひどいっス!! ずっとここに居たじゃないっスか!?」
「冗談だよ、冗談」
「ノーヴェは顔が怖いから冗談言ってもそう聞こえないったたたたっ!? 決まってるっス!! 腕決まってるっスぅぅぅぅっ!?」
失礼極まりない発言をしたウェンディの腕をガッチリと決め、ノーヴェは無言の怒りを示す。
「零のやつはお前と違ってちゃんと手に職付けてるから何かと忙しいんだろうよ。 最高評議会の無い今は形だけだが局のトップの一人だぞ?」
「そもそもそれがおかしいっスよ! たかだか十歳のガキンチョが管理局のトップになれるのが変っス。 まだ社会経験も一般知識も疎いのにどーしてそんな重要な職になれるんスか! 管理局の、いや次元世界の明日は暗いっス!!」
「......ウェンディ。 お前がドクターの話しを全く聞いていなかったのはよくわかった。 だから零にアホの子さんって呼ばれんだよ....」
「ほへ?」
頭の上にクエスチョンマークを浮かべて首を傾げるウェンディに「行くぞ」と声をかけ、ノーヴェは更衣室へ歩き出す。 ついでに更衣室までの道のりの間、ウェンディに管理局内部の説明を始める。
「いいか、時空管理局の中で最も特殊な立ち位置にいるのが局内第三者機関『八席議会』だ。 こいつらは管理局内で最高評議会に次ぐ二番目の決定権を持ちながら、メンバーが異常なまでに若年層で構成されている。 これはさすがに知ってるよな?」
「知ってるっスよ。 基本は二十代から四十代、さらに十代までいるおかしな機関っス。 上層部とかはジジババばっかなのに不思議でしょうがないっス!」
「おかしくないんだよ。 一応、簡単な理由はあるわけだし」
「簡単な理由ぅ?」
すれ違うスポーツウェア姿の人々を気にしながら他の人間の耳に入らないような小声でボソボソとその訳を話す。
「八席議会は局で二番目の決定権を持ってるとか最高評議会の決定に待ったをかけれるとか、んなもんはほぼ飾りみたいなもんなんだ。 最高評議会や上層部の中では八席議会は容易に動かせる『部隊』扱いなんだよ。 つまり本質は『戦闘』、最初から有事の際に戦うために設立されてんだ」
「....構成メンバーが異常に若いのは?」
「純粋に強いか特殊な能力持ってるやつを集めたからだな、それも相当ぶっ飛んだやつばかり。 あと、歳いった奴はやっぱ脆いし、負傷したら回復出来ずそれでアウトの可能性が高いから」
「局"二番目"の決定権を持ってるのは?」
「下手に若気の至りを運営方針に絡ませないため」
「部隊扱いなのに最高クラスの権力があるのは?」
「迅速に行動するにあたって、圧力をかけれる輩を存在させないため。 管理局内で万が一反乱が起きても問題無く対処出来るように、な」
更衣室の扉の前でちょうど会話が止まる。 簡単な説明ではあったが、一応ウェンディの疑問にも答えたのでこれで解決かと思い気や、あまり納得のいった表情をしていないのに気付いた。
「管理局内外の大規模な事件にも迅速な対応が取れる......それでも随分リスキーな機関っスね。 なんか別に目的がある....とか?」
「そこまではドクターは話してなかった。 詳しく聞きたきゃアリス卿にでも聞いてみるのがいいんじゃない
か」
「真実を知って氷人形になるのはお断りっス」
ウェンディはただ一度だけ対峙したことのある卿の姿を思い浮かべて身震いする。 あんな化け物と戦うのはもう二度と御免だと言わんばかりだ。
更衣室に入るとちびっこ三人組は既に着替え終わった状態で二人を迎えた。 それからぼちぼち話をしながらノーヴェ達も着替えを終え、公民館を出た。
「ん? 音声通信....零くんか。 ..........はい、なに? もう練習終わったけど、急なお仕事でも......なに、イクスと寝てたぁ? 変なことしてないでしょうね、してたらなのはママにコブラツイストしてもらうから。 今どこ? ....なんだ四区いるんだ、じゃあ待っててあげるから公民館まで..うん、わかった。 じゃっ」
「師匠から?」
「うん。 今から合流するってさ」
「遅すぎでしょいくらなんでも....」
結局、三人娘と保護者二人は合流するまで待つこととなるのであった。
難しい会話は設定はやっぱ苦手かも。
でもこれで次回から思いっきりふざけれるね(ニッコリ)。
意見、感想などあったらお願いします。
次回→夜天の方の更新後。