年内にどっちも投稿したいです。
後方支援!その6
今日も今日とてミッドチルダの平和を守る時空管理局地上本部。ミッドチルダの要となる武装隊と治安維持隊は有事の際はいつでもスクランブルが出来るよう、訓練に励んでいる。
本日は月に一度の時空管理局本局から戦技教導官が派遣される重要な日。地上本部陸空武装隊はこの日までに自分の持てる技術を磨き、教導官に評価してもらう。
派遣された教導官は午後からの教導の内容を午前中に最終確認する必要がある。武装隊一つの隊員は約二○人前後で隊の数は軽く一○を超え、教導内容の量が尋常じゃないことになる。そのせいで本局教導官達は午前四時から自主的に地上本部へ出勤し、自分の捌く武装隊の教導内容を纏めることになった。
航空戦技教導隊教導官、八神ヴィータ二等空尉も地上本部から用意された個室にて、その最終確認を行っていた。
そこへ。
「ヴィータちゃん!ヴィータちゃん!ヴィィィィィィタッちゃんッ!!!」
空気圧縮機で開くドアを腕力で無理矢理こじ開ける同僚、高町なのははそのままヴィータの目の前まで歩き、バンッ!と机を破壊する勢いで叩く。コップの中身のコーヒーが勢いよく机の上にぶちまけられ、書類が元気よく中に散らばった。
一秒にも満たない間に机の上は大惨事となる。
「......なのは。あたしはお前が聖王教会に教導にも代えられないほど大事な用があるっつーから、ただでさえふざけた量の今日の書類を自分のだけじゃなく、お前の分までやってやってたわけだ。まぁ、この際その話は後だ。とりあえず------この惨状を納得させるだけの理由は、あるんだよな?」
「もちのろんだよ!見てこの写真っ!」
取り出したる端末のホロウィンドウに映し出されているのは、一人の少年と一人の少女。少年が抱き寄せる形で少女を引っ張ったようで、少女の顔からは驚きの様子が見て取れる。
ヴィータはウィンドウに写る仲睦まじい二人を知っている。『どうしようもないお馬鹿な少年とそのどうしようもないお馬鹿に恋する少女』。二人の組み合わせに疑問を抱く必要はなく、ましてやこの写真になにか問題があるとも思えない。
だからこそ、悩む。高町なのはという人間を知っているのであれば、この焦りようは異常とも言えるだろう。
制服を乱し、滝のように流れる汗が、聖王教会から快速のレールウェイに乗って全力疾走して帰ってきたのを物語っている。
歴戦の魔導師エースオブエースをここまで焦らせる事件。ヴィータの頬に一筋の汗が流れ、
「零君ったら、またヴィヴィオを独り占めしてるんだよっ!!滅多に見せてくれない普通ポニテまでさせて!」
次の瞬間にはプロ顔負けのボディーブローが炸裂した。「ほぐぅ!?」と痛々しい声を吐き出し、なのはは床に膝を着く。
「まっっったそんなくだらない理由か!!こんっの親バカが!ヴィヴィオも年頃だって前にはやてに言われたばっかだろ!?娘の友達にそんなに嫉妬してんじゃねーよっ!」
「くだらなくない!考えてもみてよヴィータちゃん!つい一年前くらいはなのはママ〜」ってくっついてきた子が、最近じゃ一緒に寝てもくれないんだよ!?帰って来ても零くん零くんーって!いや、自然とにやけてるヴィヴィオもとってもキュートでエクセレントでワンダフルなのは眼福だけど、だけどっ!」
涙目で腹部をさすりながらヴィヴィオの可愛さと自身の寂しさを熱弁するなのはの真剣な目。ヴィータは娘ラブすぎて仕事を疎かにしかける親バカに怒鳴ったはいいものの、本人にとっては大問題らしく、一向に立ち直る気配がない。
「....ヴィヴィオはストライクアーツを頑張ってるみたいに、色恋沙汰も頑張ってんだ。しかも好きになったのは何処の馬の骨かも知らねぇ奴じゃなくって、あたしらもよく知ってるヴィヴィオの幼馴染ときた。間違った道を進もうとしてんなら止めるのが親の仕事かもしれねーけど、正しい道を進もうとしてんなら後押しするのも親の仕事だろ?」
もしかしたら正しくないかもしれねーけど、と付けたし、床に散らばった書類を集める。彼女なりのフォローはなのはに伝わったようで、「....うん」とだけ呟き、なのはも書類をかき集め始めた。
ヴィヴィオは決してなのはを嫌ったわけではなく、ただそれ以上に夢中になれることを見つけたに過ぎない。一○前、管理局に入ることを告げたとき、母はこんな気持ちだったのだろうかとなのはは想像をを膨らませる。今更ながら謝罪したくなった。
「お、そうだなのは。結局なんの用事があって聖王教会に行ったんだ?ヴィヴィオのこと以外なら直接的にはあんまり縁が無いだろ?」
「カリムさんがいいお酒が手に入ったって----」
「よしアル中、ちょっとそこに座れ」
「ヴィータちゃん、ここ床なんだけど」
「座らなきゃお前が先週一升瓶一気飲みしたのをヴィヴィオに報告する」
金色の閃光も驚く速さでなのはは青い床に正座する。
「あのねヴィータちゃん。これには深い深い理由があってね....あ、痛い痛い、グラーフアイゼン押し付けないで。え?お酒とヴィヴィオどっちが大事か?そんなのヴィヴィオに決まってるよ。お酒はいくらでも買えてもヴィヴィオはたった一人なんだから。....お酒と仕事?..........し、仕事に決まってるじゃんっ!な、なにその目!?信用してない!?」
「仕事の合間にウィスキーボンボン食ってるやつが言っても信用はできねーよ」
「ウィスキーボンボンはセーフ!セーフ!」
「そうだな。市販のだったらセーフなんだけどな」
酒の味しかしないなのは作のウィスキーボンボン、通称『酒玉』。キャンプするときに牧に火を付ける火種にもなる優れものである。
なのはのスカートのポケットから『酒玉』の入れ物を奪い、一粒口に含んで顔をしかめる。市販の数倍以上のアルコール分がヴィータの口内を酒一色に染めたのだ。酒の分量と度数が気にならずにはいられない。
「うへぇ....やっぱ酒は無理だ」
「ふっふっふ....子供だなぁ。そんなヴィータちゃんには今日カリムさんから貰った果実酒がお勧めだよ!程よく甘くて、その気になれば子供でもゴクゴクいけちゃうんだって。いっしょにスコーンもあるから休憩がてら食べよう!」
親指をぐっと立ててウィンクをするなのはをアイゼンで静まらせ、仕事の書類を頭に乗せる。二○センチはある分厚い紙の束の下から呻き声が聞こえるが、ヴィータは気に留める様子を見せず机と向き合い、自分の仕事に移る。
教導が始まる二時間前のことだった。
◆
「あらあら、こんなにくっついちゃって。羨ましいですね」
聖王教会本部の一室。豪華な装飾が施されている部屋は、高い地位の人間が主であることを感じさせる。
部屋の主----ウィンドウに映る写真を見て微笑む女性、騎士カリム・グラシアは、まさにその地位の高い人間だ。
ゆっくりとした動作で紅茶の入ったカップを口まで運び、一口。
「......貴女も、そう思いませんか?」
その言葉は独り言のように呟かれ、視線がカップから客人を招く際に使用される椅子に座った『貴女』と呼ばれる女性へと変わる。
「........ああ。うらやましい限りだ」
一七○センチはある体、光を通さない黒いロングコート、相対する雪のように白い髪を背中まで伸ばし、コバルトブルーの瞳を持つ女性。
聖王教会騎士団総騎士団長にして、時空管理局内の第三者機関『八席議会』の議長を務める魔導騎士。
人は彼女を『アリス』と呼ぶ。
「さてと、そろそろお暇させてもらうよ」
「そうですか?もう少しゆっくりしてくださってもいいのに....」
「多忙でな。そのようなわけにもいかない」
音もなく椅子から立ち上がり一直線にドアまで歩くと、ふと立ち止まり、カリムの方へ振り向く。
アリスの右手が瞬間的に白い冷気に覆われ、冷気が晴れると、その手には二つの赤と緑のラッピングされた小箱。二つの小箱をカリムへ投げ、再びドアへ向き直る。
「『セツナ』と聖王女に渡してくれ。進級記念だとな」
投げ渡された小箱を目を丸くして見つめていると、いつのまにかアリスの姿が消えているのと、カップの紅茶に訪れた変化に気付き、カリムは一言。
「....アリス卿、加減してください」
カップの中の紅茶は、琥珀色の結晶と化していた。
重要になるキャラの登場。そしてオリジナル用語、『八席議会』。お酒成分も有り。
話を重ねるごとに謎がわかっていく....はず。
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