金カム主人公の近所のお兄さんポジだが俺は杉元佐一の支えにはなれない   作:MM*K

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感想・評価ありがとうございます!誤字修正もめちゃくちゃありがたいです!
今回の話は主人公が帰郷してからの一悶着です。短くできてホッとしています。
前回の話を大幅に修正して短くして、さらに今回も短くなってるのでちょっと読み応えはないかもしれません。自分で読み返しても面白くないなぁと思いながら描きました。でも一応予定していた流れに向かうために挟んだ話、っていう感じです。


転換点2

東京・浅草の花街

 

芸者と聞けば、誰しも決まった女性の姿を思い浮かべるだろう。あの髪型で、白粉を塗り、色っぽく着物を着崩したりして…。まさに、立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花という言葉通り。

 

そんな女性たちに世の男たちは魅了され、散財するものも少なくない。そのせいで借金に追われているやつは掃いて捨てるほどいる。

 

しかし、そんな花街の世界もシビアなものだ。しっかり売れているトップは政治家の正妻になる事もあったが、花街で働く女性の多くが年季奉公。かなり極端な言い方をすると、借金のカタに売られた、というのも多かったりする。

 

そんな彼女たちの成れの果ては酷いものだ。この時代は、ろくな避妊道具もない。一度性病が出れば、もうわんさかわんさかと死ぬ。本当に死ぬくらいだったらやらなければいいのに。

 

「あら、箱屋さん。まだお仕事ですか?終わったらうちの店に寄ってってくださいよ。」

「それは無理だよ。なんてったって箱屋さんだからね。」

 

俺は今箱屋という職についている。箱屋というのは、言ってしまえば芸者のマネージャーだ。

 

いくら花街の芸者であろうと、乱暴な男に襲われる可能性はある。だからこそ、元芸者の老女や、腕に自信のある男が雇われる。客の元へ芸者を無事送り届け、時間が経てば迎えに行く。ボディーガードも兼ねている。

 

けれど当然、花街で働いているということは、まともな職ではない。箱屋についている男は、訳ありであったり、浪人だったりすることが多い。そうで無かったらもっと普通の仕事が沢山あるからな。

 

女の仕事の側に控える男な訳だから、色恋沙汰もゼロではない。芸者と箱屋の恋愛はご法度だ。いくら俺の職場と別の店だからといって、厄介になるわけにはいかない。

 

「そういえば箱屋さん、アンタは箱屋になる前は兵隊さんだっていってたな。なんだってこんなとこ来たんだい。」

 

酒を飲んでるおやっさんが聞いてきた。

 

「……訳ありなのさ。故郷に帰れなくなっちまったの。」

「ええ?じゃあずっとこれからここで働く気なのかい?」

「いや、そろそろ新潟の友人を訪ねるんだ。また行くあてがなくなったら戻ってくるけどな。」

「ええー!唯之さん辞めちゃうの?ならやっぱりせめて辞める前に私の店に一度くらい寄ってってよ!」

「姉さんのとこ行ったら、俺のなけなしの金が吹っ飛んじまうよ。」

 

ケチだねぇ、と小言をぶつけてくる知り合いをあしらって、俺は自分の仕事をするために、行き慣れた料亭まで足を運んだ。

 

 

戦争が終わり、俺は任期を終え除隊となった。

おやっさんがいう通り、兵隊上がりな俺がどうして一人東京の浅草で、箱屋なんかやってるのか。これには深い事情があるのだ。

 

それは俺が帰郷して数週間と経たないうちに起きてしまった。

 

 

俺が村に帰ってくるなり出迎えてくれたのはやっぱり佐一だった。唯之にい、と大声で叫びながら、小石の多い砂利道を全速力で駆けてきた。俺はそんな佐一を抱きしめて、ただいまと一言言った。

 

村の人たちに見守られながら家に帰れば、珍しくそこには家族全員が揃っていた。

 

昔から俺が年の割に落ち着いていたせいもあるが、兄が病院に入ってからは、両親は兄につきっきりだった。大抵の日は家には俺一人で、両親のどちらかは仕事に、もう片方は病院にといった感じだった。

 

だから俺が入営したあの日といい、今日といい、家族四人ともが家に揃うのは、本当に珍しいことなのだ。

 

 

戦争が終わったからといって、みんなの生活が劇的に変わるわけじゃない。変わったのは、多少稼ぎは良くなったので兄の薬代を払うのが楽になったというくらいだ。

 

兄は今は入院しておらず、半年に二、三度の通院で十分らしい。戦争に行く前は、月に一度通院すると聞いていたから、随分と体の調子が良くなったようだ。

 

それを知って驚く俺を見て、兄は苦笑いし、両親は佐一とは必ず連絡とってたくせに、家には葉書一つ入れないんだから、アンタが知らないのも当たり前だよ、と素っ気なく言った。素直に俺はごめんなさいと謝った。

 

佐一はというと、しばらく見ない間に随分と背が伸びていた。手紙には俺も唯之にいに届くくらい大きくなったと書いてあって、嘘だと思っていたが、この調子なら俺の身長に届く日も遠くないかもしれない。

 

入営前の一年は約束があったため、随分と佐一が家に入り浸っていたが、それも今は鳴りを潜めているようだ。最近じゃ俺が佐一を誘っても、大丈夫と言って元気に走り回ってる。それでも時たまに家に訪れるのは変わりない。

 

客人のいない家になった我が家は当然俺と兄。たまに両親が在宅する状態になった。両親は仕事の関係もあって、やはり家を開ける日は多いが、それも昔よりは減ったものだ。

 

除隊金で家計は随分と良くなったし、兄が健康になってきているのもいい影響になっている。両親も心配事が減って、以前に増して仕事に熱を入れている。

 

そんな中俺がやることと言ったら家のことをしたり、村の人の手伝いをしたり、たまに頼まれる子守りを引き受けたり、ほとんど戦争に行く前と同じことをしている。

 

しかし確実に違うのは俺の気持ちだ。

 

『高橋唯之』に成ろうとするために汗水垂らして働いた俺はもういない。未だ答えは出せないものの、取り敢えず俺は俺であると、一区切りつけることができたのだ。ふとした時に悶々と考え込む癖は治らないが、それもまた受け入れれば楽なものだ。

 

一度だけ、兄が余りの様子に慌てたことがある。魘される俺を見てよっぽど驚いたんだろう。夜中なのに、どうした唯之!どこが痛いのか!今医者を呼ぶぞ!と大声で。あれは止めるのが本当に大変だった。

 

兄はこれまでまともに一緒に生活したことがなかったから、お前のようにすごい奴も魘されることがあるのだな、としみじみとした様子で呟いていた。

 

俺はその言葉に、俺も人の子だよ兄さん。と言い、それに兄はちょっとびっくりした様子をしてから、それもそうだと返した。和やかな、兄弟の時間だった。記憶の中でも、あそこまで慌てた様子の兄は初めて見たと思う。俺を心配してくれたのだと、柄にもなく少し嬉しかったような気がした。

 

ここまでは、何もかもうまくいっていたのだと言い切れる。俺の人生の中でも、本当に少ない平穏というか、家族という安らぎのあった時間だろう。

 

その数日後、兄は殺された。

 

 

俺は幼い頃から体があまり丈夫でなく、それがコンプレックスでもあった。俺には弟がいたが、弟ができることが俺にはほとんどできなかった。手先も器用で運動もできて。俺にとって弟は可愛いものだったが、同時に妬ましいものだった。

 

子供の時分は、とにかくお兄ちゃんぶりたいものであった。弟にかっこいいところを見せたいというのは、今思えば気恥ずかしいが、あの年頃の子供ならば当然思うことだろう。

 

それでもうまくいっていたのだと思う。ある日を境に、弟。『高橋唯之』は人が変わってしまったのだ。

 

まず笑い方が違うなと思った。にっと歯を惜しげもなく晒して笑顔を浮かべていた彼は、口角を上げて優しく目尻を落とす穏やかな笑いをするようになった。

 

次に習ってもいない英語を話し始めたことだろう。耳に馴染まない異国の言葉が聞こえてきた時は、びっくりしたものだった。

 

一番衝撃的だったのは、世話を焼かれることが増えたという事だ。くだらないと言われるかもしれないが、兄が弟に面倒見てもらうなんて、当時の俺にとっては衝撃以外の何者でもなかった。同時に屈辱感も感じていた。

 

子供だった俺はその感情の処理をどう行えばいいかわからず、あははと、作り笑いを浮かべるしかなかった。そして案の定、体の調子を崩し、その流れで病に罹った。そのくらい、変わってしまった弟というのは、俺に強く影響を与えたのだ。

 

けれど、弟のせいにする気は無い。それはちょっと言い訳がましい。大人になるにつれて、弟と離れている期間が、段々と胸の内の重りを軽くしてくれた。共に病状も回復して、ついに生家に帰ることができた。

 

けれど、それはもう一つの悪夢の始まりといっても過言ではなかった。

 

弟は俺よりも出来がいいのはよく分かっていた。けれど俺の予想をはるかに上回る働きを、彼は村で10年もこなしていたのだ。

 

いくら病に勝ったとはいえ、体は本調子では無い。この体では農作業の一つも手伝うことはできない。聞けば弟は60kgに及ぶ米俵を軽々と持ち上げていたという。これを聞いた時は弟は人では無いと疑った。

 

両親の仕事を手伝おうにも、俺には勝手がわからない。乾物の作り方や、家事道具の扱いまで、これまでやっていなかった分の遅れが波のように押してきたのだ。両親はしょうがないと言いつつ、苦笑いだった。あんなに申し訳ないと思ったことはない。

 

けれど俺は頑張らねばと思い、ひたすらに努力した。今死地に赴こうとしている弟がいるのに、こんな有様では情けないと。

 

それでも、やはり10年という月日は長かったのだ。

 

外へ出れば聞こえてくる。あれが高橋のところの長男かい?随分と細いのね。出征した弟さんとは大違いで…。愛想も悪くて声も小さい。本当に兄弟だったのかしら。

あんなに弟さんは出来が良いのに。

 

気にしないようにしていた。だって、全部わかっていることだからだ。自分でも思っていた。自分でも口にそうだした。「弟の方が出来がいい」と。そんな事は随分昔から分かっていたんだ。

 

けれど、他人に言われるのだけは耐えられなかった。自分で言うのならともかく、他人にそれを言われるのは、恥ずかしいやら情けないやら、いろんな気持ちがごちゃごちゃとして、どうしよもなくなってしまった。

 

だから忘れるくらい懸命に努力しようと、慣れない手伝いもやるようになって、弟の真似をするように、弟と懇意だった村の少年に干し柿の作り方を教えてもらったりして、俺は頑張ったんだ。

 

そして、病院へ一人で通い始めた頃。無理が祟ったのか、病気だと診断された。医者はご家族にも伝えた方がいい。と言ったが、俺は黙っていてくれと金を掴ませて、それ以来は余命を多少伸ばす薬と、余命の確認をするために病院へ通った。

 

頭が、どうかしそうだった。

なんでこんなに報われないのだと。やり場のない怒りに暴れ回りたくなるような気分がして。魘される夜も少なくなかった。

 

しばらくして、そうか。と思った。

人間である限り、俺の弟には、及ばないのだと。そう思うより他に納得するすべがなかった。

 

だから、帰ってきた弟が、まるで自分のように魘される、俺も人の子だよと言った時、生きた心地がしなかったのだ。

 

本当のところ、その言葉を聞いた時から、俺は自殺しようという決心を固めてしまったのだから、生きた心地がしないのも当然だっただろう。

 

同じ人の子で、どうしてこうも違うのか。ずっとそのことで悩む生活に、嫌気がさしていたのだ。

 

数日後に、俺は隠れて遺書をしたため、そして小刀で首を掻っ切って自殺した。

 

 

俺は正直に言うと、男が死んだ時驚きはしたがほんの少しだけ喜んでいたのだと思う。

 

俺は久し振りに唯之にいの家を訪ねた。最近じゃずっとあのいけ好かない兄がいるから、俺はイライラしてしまって出来る限り唯之にいの家を避けていたのだ。

 

家に訪れた時、唯之にいはまだ外の田んぼで作業でもしているのか、呼んでも返事は返ってこなかった。引き返そうかとも思ったが、家の中にいるであろう男にどうせ聞こえてしまっているのだからと思い、俺は家に入った。

 

そして、戸を開けてまず目に入ったのは男の死体だった。男の片手にはまだ血が滴っている状態の小刀が握られていた。部屋の中に血しぶきの雫がまだ付いたままだ。唯之にいが前に板間には油を塗って長持ちするようにしていると言っていたが、そのおかげなのか、床の上には血溜まりが木に染み込むことなく存在していた。

 

俺は冷静さを取り戻して、わかりやすい位置に置いてある遺書を遠慮なく開くと、そこには余命も短く弟よりも出来が悪い自分は、迷惑をかけてばかりでとても生きてはいけない。という内容の文が綴られていた。

 

いつも穏やかな笑顔を浮かべていたが、その下で確かな葛藤があったのだろうということに、少し驚いた。俺は唯之にいの事があって、どうしても兄である男のことを好きになれなかったから、偏見の目が常に入っていた。

 

だからこそ、この男にも唯之にいのような、たとえ家族だとしても打ち明けない心の闇というものがあるのだと、少しだけ安心したのだ。

 

もしも唯之にいが、兄に自分自身の悩みを打ち明けていたとしたら。こんなことにはなっていないはずだと思い至った。そうでなければ、この兄が、いかに弟に対して思うところがあったとしても、自殺志願者じみたところのある弟より出来が悪いから死ぬなどと書けるだろうか。

 

虫も殺せぬような男だった。自分の死んだ後に、他人に後を追わせるような悪辣さなど、この男には皆無だった。

 

ずっとこの男のように、血の繋がりがあるのならば、俺には打ち明けてくれない心の内を吐露してくれるのだろうと思っていたが、そうではなかったのだ。

 

けれど、この遺書をもしも、唯之にいが見てしまったら。その時こそ唯之にいは命を投げ出すんじゃないかと、そう俺は考えた。だから急いで遺書を乱雑に懐にしまってから、死体の握っていた小刀を奪って、それを右手に握りしめたのだ。

 

丁度俺が小刀を持ち、立ち上がったところで、部屋の戸が開いて唯之にいが入ってきた。

 

「佐一お前、何があった!」

 

部屋に入るなり、異常な光景を目の当たりにし、唯之にいは抱えていたザルを放り出して、男の死体に駆け寄った。俺はその間。絶対に持っている遺書は隠さなきゃいけないと、遺書をさらに深くしまい込んだ。

 

俺は何も話さなかった。暫くしてから、唯之にいは突然俺に謝り出した。俺はどうして謝るのか分からなくて、やっぱり何も話さず黙っていると。今夜埋めに行こうと、唯之にいは言った。俺はその言葉に一つ頷くことで応えた。

 

 

いくら満月の夜とはいえ、唯之にいの家は山の麓の、いつも薄暗い林にあるから、多分誰にも見つかることなく死体を山へ運ぶことができただろう。夜の山道を、死体と鍬を抱えて二人で歩いた。

 

その間も、ずっと唯之にいは深刻そうな顔をしていたが、俺がどうしようと一言呟くと、大丈夫だと言って、少しだけ笑ってみせた。

 

その反応を見て俺は唯之にいの考えが少し分かった。実際に男が自殺した原因の一つは唯之にいにあるのだが、今俺はその真実を隠蔽し、俺が殺したというふうにしてある。唯之にいは俺に人殺しをさせてしまったことに申し訳なさを感じているように見えた。

 

俺は良くないことを考えているとは思っても、歯止めが効かずに色んな事を道中で口に出した。

 

ずっと男のように血の繋がりがない事を、羨ましく感じていただとか。本当は入営前に唯之にいが行くくらいなら、もっと早くに殺そうと思っていたとか。嘘と本音を混ぜて話した。

 

唯之にいはそれを聴きながら、ずっとごめん、ごめんと謝って、俺がなんとかするからなと言うばかりだった。

 

辿り着いた先は、山桜の良く見える温泉だった。唯之にいは、山桜の側に男の死体を寝かせると、持ってきた鍬で木の根元を指しながら、ここに埋めよう。そう言った。

 

「桜の下から死体が出てきても、みんな不思議ではないと思うはずだ。ここの温泉は俺以外に来ると言ったら、猿かイノシシくらいだろう。きっと見つかることはない。」

 

そこからは淡々と穴を掘って、十分な深さになったら、唯之にいはそこに死体を埋めた。

 

唯之にいは埋めたのが分からないように何度も被せた土の上を歩いたり、鍬の平たい部分で押し固めたりして、すっかりそこは元どおりになった。

 

そこに向かって合掌し、暫く黙祷した後、唯之にいは俺に話しかけた。

 

「佐一。」

「……。」

「お前は今日はうちに泊まった。」

「うん。」

「その時に俺も兄さんも元気だった。」

「……うん。」

「翌朝、お前が眼を覚ますと、何故か二人ともどこにもいなかった。お前宛に手紙を書こう。お前が俺と兄さんがいないのに気付き、自分宛の手紙を読んでみると、そこには旅に出ると書いてある。お前はその事実を急いでお前んとこの家のものに知らせる。何を聞かれても、どうすればいいか分からないで、シラを通せ。」

「唯之にい、どっか行っちゃうの…?」

 

なら俺も連れてってよ。

 

その言葉に唯之にいは辛そうな顔をして、俺を思いっきり抱きしめて、ごめんなさいと謝り続けた。俺のせいで佐一を人殺しにしてしまったのに、佐一と一緒にいるわけにはいかないんだ、と。そうたどたどしく語る。

 

俺はそうではないとは言えなかった。そもそも俺が殺したのではなく、自殺だったなんて、今更言えることでもなく、遺書は見せる気は無かったので真実を伝えることはなかった。

 

 

唯之にいは口裏合わせで俺に言った通り、翌朝の日が上らぬうちに村を出て行った。

 

 

日も上りきらぬ畦道を振り返ると、そこには一人ポツンと立っている佐一がいた。そんな佐一をこのまま村に残していくことは、本当はしたくなかった。

 

佐一が俺の兄を良く思っていないことなど、分かっていた。本人の口から何度も苦手だと聞いたし、兄からは自分は嫌われているようだと相談されたことがあった。

 

けれど、まさか俺のせいで佐一に人殺しまでさせてしまうなんて思ってもいなかったのだ。

 

山道で懺悔するかのように佐一の口から出た話は、俺の胸を突き刺すかの如く、深く体に響いた。

 

兄が来る前までは、俺が住んでいた家に、見知らぬあの男が我が物顔で居座っているのが気にくわないだとか。

俺が戦死してしまわぬかと不安な時に、唯之は死なないよと、軽々しくのたまうのが憎たらしかったとか。

唯之にいとは長い付き合いなのに、急に現れた兄に、居場所を取られたような気になって嫌だったとか。

 

子供のわがままと一蹴できれば簡単だったかもしれない。

けれど、それで人が一人死んでしまっているのだ。

 

理由を聞いているに、全部やっぱり俺が関わりすぎたからではないかと、そう思った。俺は俺として生きると、やっと俺は吹っ切れることが出来たと思っていたが、吹っ切れるのはまだ早いと言わんばかりに、俺のせいで人が死んだ。

 

『高橋唯之』の時と一緒だ。意識の外で殺してしまった彼と同じ。俺は自分の兄を、佐一を介して殺してしまった。

 

周りに害悪しか振りまかない俺が佐一のそばにいる資格など、ある訳がないのだ。だから、あの不安で揺れる子どもを抱きしめるなんて、もう二度と来ないだろう。

 

もう俺の中で、佐一はきっといなくなる。居てはいけない。もし佐一と再会することがあっても、その時彼はもう杉元佐一だ。俺を『高橋唯之』にしてくれる子どもはもうどこにもいない。俺がそんな彼を歪めてしまった。

 

佐一がいなくなると言うことは、俺にとって『高橋唯之』である事をやめる。そう言う意味もある。だって無理だろう。流石にもう、この名前を名乗る資格は完膚なきまでに叩きのめされてしまった。『高橋唯之』の兄まで殺しておいて、まだ名乗れるほど俺は図々しくはなれない。

 

唯之という字は、もともと体が弱かった兄のこともあり、ある意味を持ってつけた当て字らしい。

 

母が言うには、「ただいきてゆきなさい、それだけでいい。」と、そう言う思いから、ただ生きて行く、唯之と、そう名付けたらしい。

 

まるで生きることでしか償えぬ俺自身を予見するような名だと、そう思った。

 




お兄ちゃんは殺す予定だったので全然問題なく過ぎましたね。本当は自殺と分かるのを延ばそうかなと思ったんですけど、ちょっとめんどくさいので早々にそれは諦めました。【俺が金カムに転生したと気付く前3】のあとがきでも書いたんですが、この3人はコンプレックストライアンゴゥなんです。しかも、それに折り合いをつけれたのは主人公だけで、残る二人がもやもやしたままで日本に残されて何も起きないはずがないという。

短い割に読みにくいですかね……内容は変えないとしても、もう少し文を整えるかもしれないです。

この後主人公が色々飛び回ってるうちに、杉元の家族が結核で、とか色々あるんでしょうね。主人公が覚えてる金カムのストーリーは要所と最新刊に近いところまでです。序盤からえどがいく〜んまでは完全に頭から吹っ飛んでます。

月島軍曹の答え合わせを入れたかったんですけど、これ答え合わせせずに次回から原作に入ろうかなってちょっと考えてます。日露戦争の話は、回想でちょこちょこ入れるスタイルでもいいかな、と。ただここから主人公が北海道のアレに巻き込まれるまでにどんな理由があると自然かなぁ〜と思うんですが、迷ってます。
でもちょっと杉元性格変わりすぎですかね、主人公にめちゃくちゃ執着させすぎました。反省
タイトルロールの回収も入れたいんですけどこの調子だといつになるか分かったもんじゃないですね!!

評価の時に一言投げてくださった方もおっしゃってたんですが、金カムの小説少なくて寂しいので皆さん書きません……?

評価バーがまた人参色でちょっと焦っています。嬉しい反面、ウェッアッ!!適当なこと書いたらッ、干さレチャウ!!って気分です。
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