金カム主人公の近所のお兄さんポジだが俺は杉元佐一の支えにはなれない   作:MM*K

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感想や評価などありがとうございます!
随分と間が空きましたが、今回は日露直前の話です。
今回しか出番がないようなちょい役のオリキャラが出張りますので、苦手な方はご注意ください。

あと勇作さんに関してちょっっっと捏造しましたごめんなさい。

※原作キャラのイリヤと混じってややこしいので、イリヤ神父→マカール神父に変更しました。


開戦前

教会というものがこれほど居心地の悪い場所とは、前世の俺は露ほども思わなかっただろう。今世では何度も通っているくせに、こんな時にならないとそれに気付けないなんて、感覚が鈍いのだろうか。

 

荘厳な音楽を奏でるオルガンが、空気の濃度を上げているようだ。音色を聴き黙って静かにしている俺は、その響きがじわじわと体の芯まで伝わって、知らぬ間に自身を震わせている事に気がついて、少し恐ろしいと思った。

 

やがて音が鳴り止み、神父と新郎新婦による誓いが交わされる。それを見守る大勢の参列者の中。一番後ろの隅で、俺は無感動に立ち尽くす。

 

ふと、何気無く顔を上げれば高く伸びた教会の白い壁が見える。間には陽光に煌めく鮮やかなステンドグラスが、差し込む光を優しく着色していた。己の足から腿にかけて、その神々しいまでの虹に似た光が降りかかっていることに気づき、俺は一歩、また一歩と後ずさりした。

 

教会はただ、そのあり方が美しかった。

俺は自分の中に居座っている罪悪感に、お前はここに居るべき存在ではないと囁かれる様な。烏滸がましいと思えとなじられる様な。そんな気がした。

 

「アーメン」

「アーメン」

 

神父、マカールの後に続き、全ての人がそう繰り返す。目出度く結ばれた二人を歓声と拍手が祝福した。形だけでもと叩いた手の平からは、乾いた音しか出なかった。

 

 

式が終わり、皆が談笑を楽しんでいる。俺は花嫁と花婿を囲む人集りから離れ、壁にもたれてその光景を眺めていた。ふと視界に葉巻を吸う西洋人が映り、なんとなしに懐の煙草を取り出して咥えてみるが、花嫁の膨らんだお腹を思い出して箱にそっと戻した。

 

「吸わないのですか、ミスター。」

「ええ、煙草の煙は妊婦の体に触りますから。そんなことよりここにいて良いのですか、マカール神父。」

「チョット疲れました。こういうのは久々ですカラ、休憩デス。」

 

柔らかなヒゲを撫でつけながら、彼は俺の隣で壁にもたれた。彼のいう通り、日本の明治期では国際婚は稀なため、色々と大変だった事だろう。俺の無茶なお願いのせいで無理をさせてしまって、本当に申し訳なくなる。

 

ちなみに彼、マカール神父は欧州人とロシア人のハーフで、マカールというのはロシア語で神聖な、とかそういう意味だそうだ。

 

産まれが欧州なのもあり、ロシア正教ではなくカトリックの神父だ。俺にはキリスト教のそういう違いはよく分からないが、同じキリスト教内でも戦争が起きてしまうくらいデリケートかつ大事な事らしい。

 

「それにしてもミスターが式の手配をお願いしてきた時は驚きました。ワタシ、てっきりミスターに良い人ができたのだと思ってマシタヨ。」

「それは無いですよ。俺は前線で死ぬ身ですから。これまでだって見合い話を散々蹴ってきたんです。」

 

とっくに婚期を逃した俺を哀れんでか、店の客が俺に見合い写真を持ってくることがあった。一度や二度ではない。酒を飲んでると更にしつこいので、本当に困った。何度も「その娘を未亡人にしたいのですか」と説得しても聞かないから、種無しだと嘘をつく羽目になった。

 

「勿体無いですネ…ミスターのお店は軍人さんもよく来るでショウ?縁談を結べば、前線カラ離れる事も出来たハズデス。」

「それは…俺が、望んでないです。結婚することも、前線を離れることも。」

 

種無し、は嘘だが自分の血筋を残す気は無いので、半分は本当だ。そもそもこの時代は後継の話が重要すぎる。家督だのなんだのと面倒くさい。男尊女卑がまかり通るせいで、子供が出来ても男でなければ酷い言われようだ。

 

呆れたように溜息を吐いて、それでも優しく微笑んでマカール神父はこう言った。

 

「でも昔のミスターに比べたら今はマシですね。もうスコシ口角上げるとイイデス。」

 

そんな様子を見て、自然と俺の口角はゆるく持ち上がった。マカール神父とはそれなりの付き合いだ。6年ほど前、村から飛び出して、罪の意識に苛まれ続けた俺は、衝動のままにこの教会の扉を叩き初対面の彼にすがりついた。

 

彼は驚きながらも私の様子を見かねて、懺悔室はカトリックの洗礼を受けた者しか使えないから、懺悔ではなく相談としてミスターの悩みを聞きましょうと言い、黙って俺の話を聞いてくれた。

 

思い返せば本当に苦労をかけた。すがりついたくせに、俺は全てを語ることができなかった。ただ、罪を犯したのだと。許されない罪を犯したのだと訴え続けるばかりだった。同じことを繰り返す俺にマカール神父はひたすらに相槌を打った。

 

「マカール神父には本当に頭が上がりません。今回も無理を言ってしまいました。花嫁の方はともかく、花婿の日本人はカトリックじゃないのに。」

「みんなシラナカッタ事にしてるんですよ。ソレはナイショにしておいてくだサーイ。」

 

そう言って、マカール神父は茶目っ気たっぷりにウィンクしてみせた。

 

暫く二人で世間話をしていると、新郎が声を掛けてきた。

 

「マカール神父に高橋上等兵!ここに居ましたか。そんな壁際じゃなくてこっちにも来てください!」

「上等兵はよして下さいよ。俺は除隊してますし、そもそも式の手配の約束覚えてますよね。目立ちたくないです。」

「おっと、済まない。いや、ちょっと浮かれてしまっていてね。」

「仕方ないデース。結婚式、誰だって浮かれてしまうものデスヨ。」

 

次からは気をつけて下さいね。念を押してそう言うと、新郎は困った顔で微笑んだ。

 

もともとこの結婚式、教会の手配を頼んできたのは彼の兄、大和中尉だった。日清戦争時世話になった中隊長殿で、なんの因果かあの花街で出くわしてしまったのだ。

 

学校を出ていない身でありながら読み書きもなかなかで、英語が話せる人間だったため、中隊長殿の記憶に残ってしまったらしい。英語が話せる経緯を、神父に教えてもらったのだと誤魔化せば、ならばその神父の教会で結婚式を挙げさせろと言われてしまった。

 

非常に困った話だった。断ることもできる。ただ、このまま口止めもせずに帰らせてしまっては、家出先がばれないようにとわざわざ花街で箱屋になった意味もなくなる。人間、いつ誰がどこでどんな話をするのかは分からない。

 

俺は教会に話を通す代わりに、家出中の身であるため、俺が花街で働いている事を口外しないよう約束した。中隊長殿は喜んでそれを了承した。おまけに次の戦で召集される時は実家に便りが出ないように計らってくれるそうだ。

 

「私も彼女も、こうして日本の教会で式が挙げられるなんて思っていなかったので、とても嬉しいです。西洋式の挙式は、彼女の親族の強い希望だったので。」

 

新郎の動かした目線の先を追い掛けると、椅子に座った花嫁が見えた。純白のドレスを纏い、花嫁はゆっくりとお辞儀してみせた。

 

それではと新郎は花嫁の元へと戻って行く。遠ざかるその背中を見ながら、なんとも言えない気分になる。

 

「彼は、なんで軍人になんてなったんですかね。」

 

とても幸せそうだ。けれど、果たして彼はこの地に戻ってくることはできるのだろうか。

 

日露戦争は動員された30万人のうち、8万強の死者を出している。10人中2人か3人は死ぬ計算だ。そんなに多いと遺体を持ち帰ることも叶わない。

 

帰って来たとしても、それはほんの小さな指一本だ。

 

もしも花嫁が産んだのが女の子だとしたら、花婿が戦死した時どうするんだろう。ただでさえ母国を離れて不安だろうに、後継を産めなかった事を周囲の人間から責められるのだろうか。

 

そんな不毛なたらればを考えてしまう。華やかな教会の中で、俺とマカール神父のいる壁際だけが、妙な静けさを纏っていた。

 

 

 

 

「私を軍曹に、ですか?」

 

史実の開戦まであと一年というところまで来た頃。大和中尉の計らいで上等兵ではなく、伍長として再び陸軍に舞い戻った俺に、更なる昇進が伝えられた。

 

黒い口髭を短く整えた中尉殿が手を組みながらゆっくりと頷く。

 

「ああ、能力は申し分ない。」

「有難いお言葉です。しかし、急過ぎませんか。」

「それだけ君が優秀と言う事だ。まぁ、弟の希望が大きいがな。」

 

少尉殿にはまだ発言力は無いだろう。兄である中尉殿か、父君である大佐殿。又は両者が押し通したんだろうな。つまり大和家のコネか。新婚ホヤホヤの新任少尉殿が、自分の補佐に全く知らない他人よりは俺の方が良いと考えて兄である中尉殿と大佐殿に頼んだんだろう。人事しっかりしろ。

 

「弟の補佐、よろしく頼むぞ高橋軍曹。君の働きに期待している。」

「…精進いたします。」

 

一礼をし、退室した後。中尉殿の執務室が見えなくなったところで、俺は大きく息を吐き出した。

 

まったく偉い人間の考えることは分からない。俺の様な無能を軍曹にするなんて、どうかしてる。

 

本来下士官というものは当人の能力だけでなく、軍人として尽くすだとか、兵隊としての向上心が求められる。下士官になる条件の一つに、志願する事というのがあるのだ。だからどれだけ優秀でも、当人にやる気がなかったり向上心がなければ成れないものなのだ。

 

それが将校のさじ加減でこうも簡単に昇進だなんて、大丈夫なんだろうか。というかまた制服を支給してもらわなければならないじゃないか。

 

中尉殿の口ぶりからすると、俺は弟である大和少尉の当番兵にあてられるのだろう。通常下士官は兵と違い個室を貰えるが、当番兵となると少尉殿と同室の付き合いになる。四六時中行動を共にすると言っても過言ではない。その為本来なら兵の中から一番気遣いのできる優秀な者が選ばれるというのに…ああ本当にどうかしてる。

 

けれど、その点はほんの少しだけ感謝すべきかもしれない。杉元佐一は東京第1師団の所属だった。同じ連隊になることはないと思うが、もし連隊が同じだとしたら、兵舎でちょくちょく遭遇してしまうことだろう。

 

朧げな記憶を追いながら、懐から小さな手帳を取り出した。大きさがバラバラな紙切れを自分で束ねた小汚い手帳で、乱雑なそれには表紙は存在しないそれの、丁度半ばほどのページを開く。

 

つゆ、二月、第一……一見しただけでは何を書いてあるのか分からないだろう。これは俺の覚えている限りの史実と原作の流れだ。と言っても、原作に関しては殆ど分からない為、小樽→札幌→夕張というように地名を書くだけにとどまっている。

 

「(日露戦争は一年後の二月から始まる…開戦から旅順、奉天と来て、再来年の9月まで……。)」

 

そこまで生きていられるかは定かではない。旅順攻囲戦は多くの死者を出している。師団単位で壊滅的な状態に陥った。運が悪ければ、二百三高地の攻略前に仏になっているであろう。

 

けれど、もし死ななかったとして、俺はそこからどうするのだろうか。

 

北海道に行く気は無い。村に帰る気もない。また、これまでの様に箱屋として暮らすのか、それとも南へ下ろうか。マカール神父に頼んで、教会に入るのもいいかもしれない。

 

この身体さえあれば、どこでだって変わらない。ただ、死ぬまで償うだけだ。

 

 

 

 

当番兵は寝食を主たる将校と共に過ごすため、一兵士が耳にすることが許されない様な機密も、偶然知ってしまうということが多々ある。

 

勿論だが機密を口外することは決して無い。けれど人に話してはいけないこと、というのは黙っている程自分の内側で暴れまわるものだ。

 

「なぁ高橋軍曹。先程の会議の…。」

「大和少尉殿。やめてください困ります。私にはお答え出来ないことです。」

「侵攻ルートだが…。」

「大和少尉殿困ります。」

 

少尉はなぜか俺に意見を聞きたがる。信頼には出来うる限り応えるつもりだが、機密に関してはしょっ引かれるのは嫌なので勘弁してほしい。機密漏えいで軍法会議とか洒落にならない。

 

少し拗ねた様に口をすぼめる少尉は、体の大きい子供の様だ。スケジュールを伝える側で、少尉の横顔を見ながら、思わず心の中で若いな、と。そう思った。そりゃそうだ。まだ彼は二十歳なのだ。三十路に突入したおっさんの俺よりも十歳も年下ならば、そう感じて当然だろう。

 

十歳差と言えば、佐一も俺の十歳年下だったな。

 

「そうだ、軍曹。昼からの予定は覚えているな。」

「…士官学校時代の友人とお会いになるのでしたね。」

「お前も来い。」

「はぁ、それは、構いませんが邪魔ではありませんか?」

「そんなことはない。寧ろ、居なくては困る。俺たちは繋ぎ目にならなくてはならないからな。」

 

少尉が何を言っているのか俺には全くわからないが、俺たち、というワードが妙に頭に引っかかる。そんな疑問を考えない様にするために、一度帽子を被りなおしてから、ご一緒しますとだけ返事をした。

 

 

俺は心底後悔している。断ればよかった。

 

「どうした軍曹、体調でも悪いのか。」

「いえ、考え事をしておりました。」

「良かった、てっきり甘い物は好まないのかと…。」

 

そんなことはない。寧ろ甘味は好きな方だ。ただ、食べる楽しみというのは、心の余裕あってこそ味わえるものだ。どれだけ好きなものでも、美味しいものでも、気持ちの持ちよう次第では味をしっかり感じられない事はある。

 

そんな風になってしまった原因は、甘味処で落ち合った少尉殿のご友人。花沢勇作少尉である。第7師団って拠点北海道だよね、と思ったが、わざわざ休暇を取って会いに来たのだとか。頼むからうちの少尉には勇作少尉の真似をして北海道に行くなんて事はしないで欲しい。絶対に行かないからな俺は。

 

しかし彼の存在で、俺は意味の分からなかった少尉の言葉をなんとなく理解してしまった。

 

繋ぎ目とは、一体何処と何処を繋ぐのか。

東京と北海道を繋ぐのだ。厳密に言えば第1師団と第7師団を。さらに言うならば、既にある本部と第1師団の繋がりを利用して、一方的に本部と第7師団を繋ぐための接点。

 

つまり、本部の情報を第7師団に横流しするのが繋ぎ目の役目、という事である。

 

同じ陸軍なのに?と疑問を抱くかもしれない。たしかに海軍と陸軍の溝よりは浅いかもしれないが、陸軍内部だって一枚岩ではないのだ。派閥もあるし野心家も多い。誰もがのし上がりたいという欲望を根底で抱いている。

 

ただ、勇作少尉は知らないらしい。大和少尉は俺に手紙を持たせ、勇作少尉のお付きの当番兵に渡すよう命じた。これが、少尉が俺たちと言った理由だろう。勇作少尉が全て承知の上なら、当番兵と言えども俺を連れてくる事はなかったはずだ。

 

原作で彼の父親が勇作少尉に純潔を守らせていた事も考えて、知らないのは確実だ。そんな事をさせて余計な疑念を抱いてしまっては、導き手として機能しなくなるだろう。

 

みたらし団子を咀嚼しながら頭の中を整理していると、少尉が席を外したタイミングで、勇作少尉が俺に話を振ってきた。

 

「高橋軍曹、大和から貴方には兄弟がいると聞きました。兄弟仲は良かったですか?」

「……兄は体が弱かったもので、ほとんど会う事はなかったのですが、そうですね。悪くはなかったと、思っています。」

「それはいい、是非私に兄弟仲を良くする秘訣を教えて頂きたい。」

 

勇作少尉が輝く瞳を俺に向ける。眩しい、流石旗手に選ばれるだけあって整った顔立ちをしている。こんなキラキラした視線を尾形は常に受けているのかと思うと、なんだか可哀想だと思った。

 

こういう曇りない視線というのは鋭さを持っている。どうも苦手だと感じた俺は、誤魔化すように茶の入った湯飲みに目線を移して勇作少尉に話す。

 

「私には分かりませんな。勇作少尉はご兄弟とうまくいっていないのですか?」

「はい、お恥ずかしながら…。実は兄さまは私とは母親が違うのです。そのせいか兄さまは他人の様に私に接してばかりで…。」

「それは、なかなか…拗れてますね。」

 

知っているし自分も兄弟のことに関しては人の事は言えない。俺も結構拗らせて、一生戻らなくなってしまった。

 

 

「ですが、血の繋がった兄弟なのです。兄さまと仲良くなれない道理がありましょうか。」

 

 

しかし彼は結構重症なようだ。

 

にこにことしながら平然とそう告げる勇作少尉に、得体の知れぬ寒気が背中を駆け回る。

 

血の繋がった兄弟なら、本当に無条件に仲良くなれると思っているのだろうか。いや、聞くまでもなくそう思っているに違いない。この瞳がそう語っている。きらきらと、どこまでも無垢な瞳。綺麗過ぎて、気持ち悪い。

 

原作を読んでいた時は尾形に殺されたという経緯もあって、花沢勇作には同情していた。信頼していた兄に戦場のどさくさに殺されるなんて、と。けどこれは殺した尾形だけじゃなく、普通に勇作少尉自身にも問題がありそうだ。

 

「勇作少尉、貴方のご兄弟はどのような方なのですか。聞けば、何かいい案が出るかも知れません。」

 

そう俺が言うと勇作少尉は笑みをこぼしながら話し出した。

 

「兄さまは素晴らしい方ですよ。狙撃の名手なのです。銃を持たせれば兄様の右に出るものは居ません。ああ、軍人としても尊敬できる方です。私が兄さまとお呼びすると、規律が乱れますと叱ってくださいます。」

 

そこから席を外していた少尉殿が戻ってきても、勇作少尉の兄自慢は続いた。兄さまは、兄さまは、と、話し続ける様子は一見兄を慕う弟の姿だが、俺はやはり違和感を感じずにはいられなかった。

 

あまりにも一方的過ぎる。

そして、疑うのを知らないのか、どれだけ聞いても尾形の表面しか捉えられていないと感じる。俺だって尾形を理解しているかと言われたらまったくだが、それにしたって酷い。いくら聞いても尾形の能力が分かるだけで、嗜好や人間性は伝わってこない。

 

心の壁が高過ぎる尾形も尾形だが、壁に貼り付けただけの特徴しか見ていないのに満足してしまっている勇作少尉もどうかしてる。

 

「どうでしょうか、高橋軍曹殿。何か良い案は浮かばないものですか。」

「…勇作少尉、俺如きが助言などと言うのはおこがましいですが、血の繋がりにこだわらなくとも良いと私は思いますよ。私にも、兄弟ではない可愛い弟分が居たのですから。血の繋がりと仲の良さというのは、必ずしも絶対ではないと。そう思うのです。」

 

そう伝えたものの、参考にしますと微笑んだ彼が、本当に俺の思った通りの意味に解釈しているかは分からない。今はただ、二人の仲が良くなりますようにと胸の中で呟くだけだ。これ以上面倒を見る義理はない。

 

血の繋がりがあろうとなかろうと、結局は他人だ。こうして出逢いがあっても、彼と俺はどこまで行ったって他人でしかない。

 

追加で少尉が注文したみたらし団子に手をつけた俺は、お二人のたわいない会話を聞きながら、迫り来る開戦に心を向けていた。

 

 




個人的に勇作さんもやばいやつだと思ってます。
みたらし団子は鶴見中尉のおすすめで勇作さんチョイス。

マカール神父とか大和少尉とか名前付き出したのですが、今後の展開には全く影響与えないモブです。
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