ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第百四十八話です。

難しいね、物語のバランスを取る事は(白目)




第百四十八話

 

 

「っ! (仕留める事は叶わなかったか……ガリィ、私はお前の期待に答えられたのだろうか?)」

 

 切り札(イグニッション )を使用し、足場(ミサイル )から一足飛びに飛び立った翼は、アダムの首めがけ剣を勢い良く振り抜いた。

 

「僕の、腕が……」

 

 そしてその結末は……僅かに反応したアダムの首を狩る事こそ叶わなかったものの、彼が前方に突き出していた右腕を、切断する事に成功していた。

 そう、翼は仲間の期待に応え、見事にアダムへと下剋上の刃を届かせたのである。

 

「っ……!(それよりも、この後はどうする……仲間と一旦合流するか、それとも――)」

 

 その後は怪我一つ無く、地上へと両の足を着けることができた翼。そんな彼女はイグニッションを一旦解除し、次の行動に移る事を考えていた。

 イグニッションはシンフォギアの出力を過剰に引き上げる翼の切り札だが、使用時間に応じて身体に多大な負荷が掛かる、というリスクを孕んでいる。

 しかし今回は僅かな時間のみの使用であるため、身体中に僅かな痛みを感じるものの翼は戦闘継続が可能だと感じていた。故に――

 

 ――この程度の負荷ならば、戦闘継続に支障は無い……ならばこのまま攻勢を強め、本丸(儀式場 )を攻め落とす!

 

 

 

 翼は僅かな時間を思考する事に消費し、やがて選択した。そう……儀式場を制圧し自動人形ティキを破壊する、つまり自らの手でこの戦いに終止符を打つことを選んだのである。

 

「キャロル、立花! お前達に手負いの 敵将(アダム )は任せ、私は儀式場を制圧する!!」

 

 例え片腕を失っていても、自分自身の力でアダムと互角に戦えるとは思えない……ならばそちらは実力者に任せ、自分は儀式場の周囲に展開されているアルカノイズ、そして錬金術師達を相手取るのが最善であると翼は考えたのだろう。

 すると彼女は少し離れた場所で、何故か響に食って掛かっているキャロルに対し、後を任せる言葉を伝えると再び前を向いた。

 

 

「分かった、任せ――駄目!早くそこから離れて!!」

 

 

 しかし、そんな翼の背に投げかけられた言葉は、彼女を後押しするものではなく……キャロルからの、「逃げろ」というもの。

 

 

「っ!? 逃げろ、だと……!」

 

 

 その言葉に反応し、即座に臨戦態勢を取り周囲を警戒する翼。しかし周囲に敵影は無く、敵襲されるとは考えにくい……ならば、キャロルが脅威に感じた「ナニカ」の居場所は――

 

 

「――上かっ!!」

 

 

 上空に立つ、手負いの錬金術師……アダム・ヴァイスハウプトに違いない。

 しかし片腕を失った人間が、この短時間で即座に行動を再開できるのだろうか。例えキャロルやサンジェルマン達のように身体の耐久力を強化していたとしても、現在アダムは耐えがたい激痛に襲われているはず……何故なら、痛覚というものは人間にとって非常に重要な器官であり、これを過剰に遮断する事は多大なリスクを孕んでしまうのだから。

 

 例えば戦闘において、奇襲を受けた事に気付くのが遅れれば、その分だけ死に近付く事になるだろう。

 というかそもそも、都合良く痛覚だけを遮断する事は不可能なのではないだろうか? もしも本当に痛覚を遮断してしまえば、重要な器官である触覚や温度覚なども同時に失ってしまうのでは……?

 

 翼はそのような事を思考しながら、やがて上空へと視線を送った。

 片腕を失ったアダムが、痛みを忘れる程に激昂し怨敵――風鳴翼に迫っている光景を想像しながら、彼女は襲撃に備えたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やってくれるじゃないか、脆弱な人間風情が……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――なっ、なんだ、この……化け物はっ!?」

 

 

 

 

 

 しかし翼が見た光景は、彼女が想像するものとは全く違っていた。

 なんと空から降下し、翼の目の前に現れたのはアダムでは無いどころか……彼女の身長の三倍以上はあろうかという、異形の怪物だったのである。

 

「翼さんっ!!」

 

「翼っ!!」

 

「「翼さんっ!!」」

 

「何やってんだ先輩早く逃げろ!!」

 

「速い……っ! 早く下がれ、風鳴翼っ!」

 

「翼ちゃんっ!!」

 

「あんの馬鹿たれぇ……!頭フリーズしてんじゃねーぞリーダーっ!!」

 

 そんなものが突然目の前に現れてしまえば、翼のように固まってしまうのは仕方の無い事だろう……しかし、今回に関してその隙は致命的であり、彼女は化け物に対し完全に無防備な姿を晒してしまっていたのである。

 

『化け物だと……お仕置きをしなくてはね、君には。腕の分も合わせてっ!!』

 

 筋肉質な人間を巨大化したような逞しい身体に、紫色に近い肌色……そして頭部には巨大な二本の角が生え、横長の眼球の中に更に無数の眼球がギョロギョロと蠢いている上に尻尾まで生えている……そんな化け物が今、翼に襲い掛かろうとし、その剛腕を振り被り彼女にぶつけようとしていた。

 

「――しまっ……!」

 

 硬直していた翼が回避するのは既にタイミング的に不可能……キャロルは響を抱えているため、響と同じく間に合わない。そしてマリア、切歌、ガリィ、調も距離的に不可能であり、翼を助けられる可能性がある者は……そう、唯一人――いや、一体のみ。

 

『だからもらうとしようか、君の命をっ!!』

 

「っ!」

 

 迫る脅威に対し、翼が唯一反応できたのは剣を横に構え、盾の代わりにする事、それだけだった。

 勿論それが気休めにもならない事を誰よりも分かっていたのは翼自身だったのは間違いない。しかし、致命的な隙を晒してしまった彼女にできる事は、最早それくらいしか残っていなかったのである。

 

 

 故にこのままであれば一瞬の後に、翼の身体は致命的なダメージを受ける事になるだろう……そうそれこそ、命すら失うかもしれない程の……。

 

 

 

 

 

「させませんっ!!!」

 

 

 

 

 

 ――だが、そんな事を彼女が……ファラ・スユーフが許すだろうか? いや、絶対に許すはずが無い(反語)

 

 ……実は響と翼の姿を確認した時点で、ファラはキャロルから翼のサポートを命じられ動き始めていたのだ。(キャロルは響のサポートに回っていたため、落下する響の救助に間に合った)

 そのため彼女は間一髪、怪物と翼の間に入る事に成功したのである。

 

 

『邪魔をするなガラクタ如きがっ!!』

 

 

「な、なんてちか――きゃああああああっ!!!」

 

 

 とはいえ、そこまでがファラの限界だった。

 ソードブレイカーを構えた彼女が間に飛び込んだ次の瞬間、ファラは後ろにいた翼ごと怪物に殴り飛ばされ、宙を舞う事になったのだった。

 

 

「翼さん、ファラさん!! 大丈夫で――!?」

 

 その結果、二人はなんと十メートル以上吹き飛ばされ、やがて地面に落下した。

 そこでようやく響が二人の下に駆け付けたのだが……そこで響が見た光景は、彼女が思う以上に悲惨なものだったのである。

 

「本当に、よかった……つばさちゃんが、無事で……」

 

「人の心配をしている場合か馬鹿者! いくら人形とはいえ、そんな状態で無事なわけが無いだろう!」

 

「安心して、致命傷じゃない、わ……人工知能とコアさえ無事ならこのくらい、かすり傷と変わらない、もの……」

 

 

「そん、な……」

 

 まず翼に関してだが、派手に吹き飛ばされた割に彼女は、幸いにもほぼ無傷と言っていい状態だった。恐らくだが間にファラが飛び込んだ事により、衝撃が大幅に軽減されたのだろう……地面を転がった事により身体中は汚れているものの、打撲や骨折などの心配は無さそうだ。

 

 だが問題はもう一人、ファラの状態である。そう、響が絶句してしまっていたのはファラの姿を見たからだったのである。

 ……それも無理はないだろう。そう、両腕が千切れる寸前な上、足が不自然な方向に曲がり倒れ伏す彼女を見てしまったのなら……。

 

「すまない……私の失策の所為で、お前がこんな目に……」

 

「翼さん……と、とにかくファラさんを安全な所へ運ばないと!!」

 

 最早誰が見ても、ファラが戦闘を継続する事は不可能だろう。つまり翼と響は早急に、彼女を安全な場所に移動させる必要があるのだが……。

 

 

 

 

 

『考えが甘いぞ、人間……僕が逃すとでも思っているのかい、このチャンスを』

 

 

 

 

 

 果たして、ファラの救助が完了するまで怪物が待っていてくれるのだろうか……当然だがその答えは「NO」である。

 それどころか怪物にとって一番の脅威である立花響が合流した事により、彼は一層殺意を剥き出しにし、彼女達に止めを刺さんと足を進め――。

 

 

『……ん?』

 

 

 ――ようとした瞬間、怪物は察知した。自身へと向け、極大の脅威が近付いて来ている事を。

 

 

『……そう甘くはないようだね、君だけは』

 

 

 怪物の視線の先には、自身へと迫る巨大なエネルギーを凝縮させた破壊の奔流を放つキャロルの姿。

 その正体はかつて、世界を破壊しようとした錬金術師(キャロル )が使用した『世界を壊す歌』と呼ばれるもの……その脅威が再び今、今度は怪物をこの世から消し去らんと牙を剥いていたのである。

 

「その者達から……離れろっ!!」

 

『……いいだろう。答えてあげようじゃないか、君の要望に』

 

 ただし、その威力は凄まじいと言えるものだったが、ファウストローブが健在だった頃に比べると出力は十分の一にも満たないものだった。

 故に怪物はキャロルを絶望させるため、正面から受け止める事も考えたが……結局、これ以上力を消費する事は避けるべきだと判断し、怪物は空中へと逃れる事を選択したのである。

 

「キャロルちゃん!」

 

「今の内にファラを輸送ヘリへ……それまでアダム――あの怪物は、私が引き受ける!」

 

「あれが、アダムだと……っ、マリア達を運んで来た輸送ヘリだな、分かった……!」

 

 その間にキャロルはファラを安全圏へと避難させる事を指示し、翼がそれに従いファラを抱き上げ移動を始める。

 それに響も護衛として付き添い、二人と一体はキャロルを残し後方へと下がるのだった。

 

『……丁度いいね、良く考えると。彼女が動けない状況は……』

 

「っ……この局面で、後退だと……? 何を考えている、アダム・ヴァイスハウプト!!」

 

 そして一人で怪物――いや、アダム・ヴァイスハウプトと対峙するキャロルだったが……アダムが次に取った行動は彼女の想像したものとは違い、戦場から離脱するというものだった。

 この奇妙な行動に嫌な予感が駆け巡るキャロル……しかし後方で翼と響が撤退行動を完了させるまでは、キャロルがこの場所を動くわけにはいかないため彼女が取れる選択肢は唯一つ、アダムの動きに警戒しながら彼を見送る事だけであった。

 

『すぐに分かるさ、焦らなくとも……だからその場所で見ているといい、大人しく……キャロル・マールス・ディーンハイム』

 

 異形と化したアダム。彼が取ったその行動の真意は、果たして……。

 

 

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「どうなってんのモンスターよモンスター、そっちでも見えてるんでしょというかぶった斬ったはずの腕まで再生してやがるんですけど!? あーもう!化け物に変身できるなんてこれっぽっちも聞いてないわよクソがっ……お陰で翼の頑張りが全部パア!全部ぜーんぶ水の泡なんですけどその辺分かってんの、ねぇ聞いてる!?」

 

『……サンジェルマン君達の様子を見るに、彼女達も把握してはいなかったようだ。その証拠に、今は三人揃って目を見開いたまま固まっているしな』

 

「はぁ!?こんな時にくっだらない冗談言ってる暇があるならさっさとファラちゃんを回収しなさいよバァーカ!!」

 

(ピンチになると第二形態に変身するタイプのラスボスじゃったか……だ、第三形態は流石に無いよね?⦅白目⦆)

(そんな事より結局なんなのさ、あのアダムって人?……えっと、流石に人間じゃないよね?)

【ええ。切断された箇所から出血が無い時点ではサイボーグって可能性もあったけど、それもすぐに潰えたわね】

(つまりあれって、ネフィリムと同系統の親戚かなんかなのか……?)

 

 その頃、我らが主人公であるガリィ・トゥーマーンはどうしていたかと言うと……度重なる急展開に思考が追い付かず、何故か司令室へ抗議の通信を行っていた。

 

『ああ、分かっている。それでガリィ君……あの怪物は本当に、アダム・ヴァイスハウプトで間違い無いんだな?』

 

「チッ……ええ、この目でしっかりと見たんだから。全裸の気持ち悪い変態が、気持ち悪い怪物に変貌する瞬間をね」

 

『そうか……パヴァリア光明結社を牛耳る男が、まさか人ですら無かったとはな……』

 

(……で、どうするよあれ? さっきの超速移動を見る限り、アレと戦えるのってキャロルちゃんしかいなくない?)

【あと、可能性があるとすれば響ちゃんと……】

(マリアさん、だね)

(よし、追加でミカちゃんも呼んでこよう! 十分間限定だけど、バーニング状態なら怪物とも戦えるはずだし!)

 

 その抗議の内容を要約すると「怪物に変身するなんて知らなかった。そのお陰で作戦が全部おしゃかになってしまいました、死ね」というものなのだが……そんな事を言われても、サンジェルマン達三人も知らなかったのだから彼女達を責めるのはお門違いである。

 

「……で、どうするの? あの化け物、マスターが動けないのをいいことに一網打尽にするチャンスを捨てて下がって行ったわよ?」

 

『ああ、敵が何かを企んでいるのは間違いない。だが――』

 

(……何が起こると思う?)

(か、神の力……⦅小声⦆)

(だよねぇ……⦅遠い目⦆)

 

 それを理解したのだろうか、ガリィは少しだけ落ち着きを取り戻し、これからの指示を仰ぐことにしたようだ。

 現状はファラが戦闘不能で撤退中であり、翼と響はその支援で離脱中。そしてガリィは片腕を失っているものの戦闘継続に支障は無く、残りの戦闘員に関しては負傷無しというのが現在のS.O.N.G.陣営の状態である。

 

 

 

「ガリィっ! ファラさんは大丈夫なんデスか!?」

 

「私達、遠くにいたから全然分からなくて……」

 

「翼達と合流する事も考えたんだけど、一人でいるガリィの方が危険だと思ってこっちに来たのよ」

 

 

 そしてこのタイミングで、通信中のガリィの元に増援の三人(マリア、切歌、調 )が駆け付けたようだ。

 しかしその姿を確認した途端、ガリィの表情は無表情へと変わり、その目は何処か遠くを見つめるようなものへとなっていた。

 

「……ファラちゃんは大丈夫よ。それより、ナチュラルに空飛んでんじゃないわよこのアイドルもどき。というか何よその黒いの、遅れて来た中二病かなんかなのアンタ?」

 

「違うわよ! これはアガートラームの制御能力と、ダインスレイフの力を組み合わせただけのもの!分かった!?」

 

「あ、そう……それはとってもすごいわねー⦅思考放棄⦆」

 

(つよい⦅確信⦆)

【空を飛べるなんて……もしかして響ちゃんとは別の力なのかしら?】

(いやでもダインスレイフって言ってるし、見た感じは同じっぽいけどなぁ……)

 

 その原因は……黒い翼を背に携え、両腕に切歌と調を抱えたマリアが空から降り立ったからである。そう、よりによってガリィの目と鼻の先へと見せびらかすように……⦅ガリィ視点⦆

 

『お前達、話したいことは色々とあると思うが、一旦キャロル君と合流する事を優先してくれ。今の内に一度、態勢を立て直しておきたいからな』

 

「……言われなくても分かってるわよ。で、最後にこれだけは聞いておきたいんだけど……ねえ、アンタ達はそこの中二病や響ちゃんみたいにはなれないの?」

 

(マリアさんから伝授されてたらワンチャン……!)

【あるといいわね、この後の展開を考えると】

 

 その姿を見て『ふざけんな制御能力どうこうなんて可愛いレベルじゃねぇぞ……』、そんな事を考えていたガリィだが、そもそも今はまだ戦闘中である。

 故に今はキャロルと合流する事を優先し、情報の共有を行わなければならない。そう考えた弦十郎は通信機越しに話の流れを元に戻し、ガリィ達に指示を送るのだった。

 

「……ごめんなさい」

「なれるものなら、とっくの昔に喜んでなってるのデス……」

 

「中二病じゃないってば……それで私の方は教えられるような方法じゃないし、響に聞いた方がいいんじゃないかしら?」

 

「……そっ、分かったわ。それじゃとりあえず、マスターと合流しましょうか (これじゃ翼とクリスも期待薄……つまり実質的な戦力はマスター、響ちゃん、中二病(マリア )の三人だけ、か。まあ想定外の出来事で二人増えただけヨシとすべきなんでしょうけど)」

 

 こうしてキャロルの下へと向かい始めるガリィ達。

 

 

 

「チッ……今度は何を仕出かす気なのよ」

 

 

 

 しかし目的地へ向かう途上で、ガリィ達が足を止めざるをえない事件が発生する。その事件とは――

 

 

 

 

 

『聞こえているかな、親愛なるS.O.N.G.の諸君』

 

 

 

 

 

 儀式場上空で突然、アダム・ヴァイスハウプトがこちら側へと語り掛け始めたのである。

 

 

 

 

 

『称賛しよう、君達を……よく頑張った、感動した!……と』

 

 

 

 

 

  アダム(怪物 )は儀式場上空の一点……夜空に伸びる光の柱の傍で立ち留まると、その逞しい両腕を天高く掲げた……その手にサンジェルマン達が数百年掛けて集めた、七万人以上の魂を持って。

 

 

 

 

 

『だからさ……見せてあげるとするよ、君達だけに(・・・・・ )

 

 

 

 

 そして次の瞬間、異変は起こり始める……まずはレイラインからのエネルギーが光の柱へと集まり始め、同時に七万人以上の(生贄 )が天へと飲み込まれていく。

 

 

 

 

 

「っ!? おい、なんだよこ――」

「こんなの聞いてな――」

「た、助け――」

「おい何やってる!?早く邪魔なノイズを退かせよ!!」

「んな事言われてもコイツが全然言う事聞かないんだよぉ!」

「それじゃ私達、逃げられないってこ――」

 

 

 そしてそのついでとでも言わんばかりに、アダムの眼下で儀式場の警備についていた錬金術師達の魂が生贄にされ、彼らは僅かの時間でその生涯を終えた。

 

 ……アダムが化け物に変貌するのを見ていたにも関わらず、彼らが未だこの場に留まっていたのには理由がある。

 その原因はアルカノイズ。そう、周囲に展開されていた数えきれない程のアルカノイズに、逃げ道を塞がれていたからである。それまではコントロールできていたはずのアルカノイズがアダムの手により、制御権を奪われてしまったのが原因であり、彼らは逃げる術を失ってしまっていたのである。

 

 

『準備はいいかい、ティキ』

 

「うんっ!! わたし、お利口さんでずっと待ってたんだよ!!」

 

『それは偉いね、とても。……やはり足りないか、地上だけでは』

 

 その結果……この場所に残る者は最早、怪物と化したアダムと自動人形のティキの二者のみ。

 ……生ける者が死滅した儀式場で、遂に最後の仕上げが始まろうとしていた。

 

『ならば切り開くとしようか、この僕の全力をもってっ!!』

 

 地上からの供給と、集めた魂を合わせても目標値に満たないと再確認したアダムは、自身の力をほぼ全て注ぎ込み空……天のレイライン( ・・・・・・・)からのエネルギーチャージを開始。

 彼によって天の星々から集められたエネルギーが、今まさに神出づる門を開放せんとしていた。

 

 

「アダム、アダムっ……!」

 

 

『怖がることはないさ、ティキ。だから全てを委ねるといい、神の求めるままに……』

 

 

 やがて門は解放され、空へと導かれた ティキ(依り代 )の中へと吸収されて行く。

 そしてこの直前にキャロル、マリア、クリスの三者により放たれていた攻撃は全て、アダムに防がれティキには届かなかった。故に、もう間に合わない……遂にこの地上へと、神の力が顕現する時が訪れてしまったのである。

 

『通らないよ、そんな非力なものでは』

 

「アダム、アダムぅ……クルシイ、シンジャウヨ……」

 

『もう敵わないのさ、君達に止める事など……』

 

 神の力に浸食され、その強大な力により苦渋の声を上げるティキを、アダムは慈しむ様な表情で見つめていた。

 そしてキャロル達やガリィ、そして装者達がその光景を見つめる中――

 

 

 

 

『アダ、ムゥ……』

 

 

『神力顕現……それじゃあ知らしめようか、完成した神の力を……地を這う蛆虫共に!』

 

 

 

 

 

 遂に『神』が、この地上へと姿を現した。

 

 

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「あんな……あんな事ができるのなら、私は何の為にこの手を血に染めて……あの男は私を、私達をどれだけ馬鹿にすればっ!!!」

 

「……気持ちは分かるが少し落ち着くワケダ、サンジェルマン」

 

「あれはレイラインの分を補填してるだけじゃないの~? だってそうじゃないなら、最初から全部一人でやってるはずよね~?」

 

 大型モニターに映る怪物( アダム)に対し、サンジェルマンが激しい怒りを露わにする中……S.O.N.G.司令室は『神』の出現に対し、早急に対処する事を強いられていた。

 

「……ここからは、神殺しの可能性を持つ響君を中心とする陣形に切り替える。キャロル君は響君の帰還後彼女のサポートを、そして残りの者は怪物……アダムの足止めを頼む」

 

『ちょっと待ちなさいな、ガキ共のザババだって通る可能性があるんでしょ?それならアタシがサポートに入るから二人にもやらせてあげなさいよ――どうせ化け物(アダム )相手じゃ、アタシ達は力不足どころか邪魔になるだけなんだから』

 

『そ、そうデス!あたし達、ここに来てまだなーんにもできてないんデスから!!』

『私も切ちゃんと同じ気持ちだから……お願いします、私達にやらせて下さい』

 

(おっきい人型の化け物に悪魔みたいなモンスター……うーん、間違えて特撮の世界に来ちゃったのかな?)

(うん、あれ絶対ビームとか吐いてくるだろ……)

【戦力が足りていないわね……特に、アダムの方に回せる戦力が相当厳しいわ】

 

 不幸中の幸いにも事前に最悪のケースを想定していたため、神殺しの可能性を持つ響を中心とする戦力配置については、スムーズに移行する事ができそうだ。

 しかしそこで、残りの戦闘員の配置場所についてガリィから物言い――自分、切歌、調の三人をアダムではなく『神』の方へ配置しろと、文句がついたのだった。

 

「お前達……だが、これ以上アダムに対する戦力を減らす余裕は……」

 

『そんなもの、遅れて来た思春期(マリア )が頑張れば済む話でしょう? ねえマリア、その羽根使って蝿みたいに逃げ回るだけなら簡単でしょ?というか余裕でできるわよね?妹分の二人のために勿論引き受けてくれるわよね~?⦅満面の笑み⦆』

 

『っ……! (切歌、調……何故、そんな瞳で私を見つめて……こ、こんなの卑怯よ!絶対に断れるはずが無い……っ!!)』

 

(落ちろ!……落ちたな⦅確信⦆)

【……この子って実は、マリアの事を一番信頼しているわよね……本人は絶対に認めないと思うけど】

(そうだねぇ。いくらガリィちゃんでも、危ないと思ったら無茶振りしてないだろうし)

 

 ガリィの言い分は、今のマリアなら足止め程度は務められるはず。というものである。

 そしてガリィが作戦変更を具申した理由はもう一つあり、これは言ってはいない部分なのだが……コア又は頭部を破壊かれない限りは再起が可能である自分に対して、今の切歌と調は恐らくアダムから一発貰っただけで致命傷となる可能性が高いと、ガリィは考えていた。

 その根拠は殴られただけで半壊状態となったファラ、彼女の悲惨な姿からアダムの持つ驚異的な力を理解したからであり、そのため近距離から中距離での戦闘を主とする切歌と調はアダムとの戦闘を行うべきでは無い、と判断したのである。

 

『というかもう時間無いんだしそれでいいでしょ? マリアの方にはクリスと翼――はガキ共と同じで危ないか。それとあと、できればレイアちゃんとミカちゃんのどちらか片方でも回してくれたら助かるわね~』

 

「ふむ……緒川がレイア君と話し合い、既にミカ君をそちらに急行させているが……」

 

『それは重畳ちょーじょー☆さっすがレイアちゃんね♪――っと、そろそろモンスター共が痺れを切らせちゃったみたい。それじゃまあテキトーに頑張るから、おっさん達はそこでコーヒーでも飲みながら観戦してなさいな。って事でまたね~☆』

 

「っ!? 待てガリィ君!俺はまだ作戦変更を認めたわけでは――切られてしまったか……」

 

(こんな時に言うのもアレなんだけど……今私さ、原作の方がどうなってるかすっごい気になってるんだ……)

(原作の方ってキャロル陣営がいないんよな? って事は……えぇ、イグナイトだけであんなん無理やろ絶対……)

(神の力が顕現する前に変態怪物紳士を倒したのかも、っていうかそれしか考えられないかな)

(いやでもさぁ、それってアニメの展開的にどうなん? ……まさか、フラグ建てるだけ建てて五期に持ち越しするパターンか!?)

【限定解除は? 六人揃えばアダムくらいはやっつけられるんじゃない?】

(あっ、そうだね)

(うーん、でもそれってワンパターンすぎない? だってさ、一期も二期も三期も全部ラスボスはエクスドライブで倒したわけじゃん?)

(……あたしには何言ってるかさっぱりなんだけど……というかここは何処なのさ……?)

(――おっ、新人さんかな? ようこそモンスターハウスへ!我々一同、新たな被害者に歓迎するゾ!!)

(まーたすごいタイミングで来ちゃったねぇ。もしかして新人さん、運がかなり低い感じ?)

(いや、新人っていうか今起きたみたいな感じで――ってなんだあれ!? か、怪物っ!?)

(話によるとあれ、神様らしいゾ⦅後輩に優しく説明する先輩ムーブ⦆)

(か、神様ぁ!? ど、どう見てもあんなの悪魔じゃないか!)

【そっちじゃないわよ、神様】

(そっちじゃないって……た、確かに見えない事もないような、そうでもないような……)

(あ、バトル再開するみたいだから雑談はここまでっすね⦅強制終了⦆ それじゃ皆さん、今回も軍師を筆頭に敵の解析を頑張りましょー!)

(((((お-っ!)))))

(あ、えっと……お、おーっ!)

 

 という訳でガリィのゴリ押しというか言い逃げに近いナニカにより、作戦が纏まったS.O.N.G.陣営。

 そして、その作戦にて勝利の鍵を握ることになるのは、この三名――

 

 

「な、ななななななななななにあれぇぇぇっ! いひゃい、ひひゃかんじゃった……」

 

 

 ――新たな力に目覚めた、『神殺し』の可能性を持つシンフォギア装者、立花響。

 

 

「来たか、ガリィ――な、何をする!? や、やめ――」

 

 

 ――国連直轄組織S.O.N.G.の最大戦力、キャロル・マールス・ディーンハイム。

 

 

 

 

 

 そして――

 

 

 

 

 

「ちゅ~っ♪ ぷはっ……ご馳走様でした♪」

 

 

 

 

 

 ――運命への反逆を成し遂げた道化、ガリィ・トゥーマーン。

 

 

 

 

 

 最後の戦いは、遂にクライマックスへと差し掛かろうとしていた。

 

 

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 ようやく叶うんだ、僕の目的……その第一歩が。

 

 

 ? 気になるのかい、僕の目的が?

 

 

 簡単だよ。証明したいのさ、僕は。

 

 

 そう、証明するんだ僕は……決して欠陥などではない事を……そう、完全であることが。

 

 

 だから管理し、導いてあげるんだよ……不完全な人類を、最良の方向へと。

 

 

 並び立てるはずなんだ、それを成せば……神々――アヌンナキへと。

 

 

 うん? 間違えているだって、この僕が?

 

 

 くっ、ははっ……可哀想なものだね、不完全であるという事は。

 

 

 お似合いだよ、這いつくばっているのが……君達のような、不出来な人間は全て……そう、あの蛆虫共のように。

 

 

 

 

 

 アダム・ヴァイスハウプト

 

 

 彼の正体は、先史文明期以前に『神々』によって製作された人間の試作体――つまり人形である。

 人間とは比べ物にならぬ程の高い性能を誇り、当初は『神々』の期待に添えた出来だと思われていたのだが……その評価はすぐに覆る事となってしまう。

 その原因を簡単に言うと、彼が自分自身を最上位に置いていたからであり、発展性が無く協調性も無いと判断されたからである。

 自分自身のみで全て完結し、他者の声に耳を傾ける事も無い……そんな彼を『神々』は失敗作と判断し、廃棄リストに彼の名を刻む。そして彼は、僅かな時間の後に存在を抹消される事になったのである。

 

 しかし存在を抹消される事になる直前、彼は突然『神々』の下から逃亡する事を選択する。

 だが、それに気付いた『神々』は彼を追跡する事はしなかった……何故なら『神々』にとって、アダムは既に終わった存在であり、彼がどうなろうと、そして何をしようとどうでもよかったからである。

 

 そしてその後、人間として地上に潜伏していたアダムは考えていた。

 

 ――『神々』の勘違いを正すには、何をすればいいのだろうか?

 

 そう、何故かは分からないが、アダムが失敗作だと勘違いしている『神々』に伝えなくてはならない。

 自身は失敗作では無いと、これ以上無い程に完成されているのだと……。

 

 ――そうだ。不完全な人類を管理し、正しく導く事ができれば彼らも気付くはずだ。

 

 そしてアダムは動き始めた。完全な自分が人類を正しい方向へと、導いてあげようじゃないか……そう意気込みながら彼は行動を開始したのである。

 

 ――なんだこれは……猿以下の存在じゃないか、この者達は。

 

 しかし人間は完全であるアダムにも制御しきれる存在では無く、その企みは早々に頓挫する事となる。

 

 ――やはり間違っていなかったんだ、僕は。だって明らかじゃないか、どちらが失敗作かなんて。

 

 だが彼は諦めないどころか、自身が正しい事を再確認し……そして長い時を経て、遂に――

 

 

 

 ――管理してあげるよ、君達を……そう、『神』の力を持つに相応しいこの僕が。

 

 

 

 新たな『神』、アダム・ヴァイスハウプトが誕生する日が、訪れた。

 

 

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 本編と全く関係の無い番外編……翼さんの部屋にお邪魔するガリィ、地の文無し

 

 

「いらっしゃい、ガリィ。 私は飲み物を入れて来るから、好きに寛いでいて構わないわよ」

 

「ちょっと待って、いや待ちなさい」

 

「? どうしたの?」

 

「寛ぐもなにも、まずどこに座ればいいのか教えてくれない?」

 

「えっと、そうね……少し散らかっているけど、あの辺とか」

 

「あの辺ってどこよ!? アタシには少しどころか全部ぐっちゃぐちゃにしか見えないんですけど!?」

 

「……急に部屋に来るなんて言うから」

 

「そういう問題じゃないでしょ!? 確かに話には聞いていたけど、ここまで酷いとは思わなかったのよ!」

 

「……明日になれば、綺麗な部屋を見せられたんだけど……」

 

「あのニンジャが掃除してくれるからでしょう!? 何で自分が掃除する予定だったみたいな空気出してんのアンタばっかじゃないの!?」

 

「……今日は二人で掃除、しましょうか?⦅満面の笑み⦆」

 

「……えっ、何このゴミ袋……も、もしかしてガリィに手伝えって事……う、うそでしょ……?⦅震え声⦆」

 

「ガリィ……旅は道連れ、って言葉を知ってる?」

 

「……こんなつまらない旅だって知ってたなら、絶対に来なかったんだけど」

 

「でも、暇なんでしょう?」

 

「……チッ、今日は厄日だ……」

 

 

 

 本編と全く関係の無い番外編その2……ガリィとひびみく、皆で訪れた遊園地での一コマ

 

 

「…… (なんでよりによってこの二人と観覧車に乗らなきゃいけないのよ……はぁ、クジ引きなんか提案するんじゃなかったわね……)」

 

「わーい!私が一番乗り~!」

 

「はぁ…… (響ちゃんの向かいに座って、と……ほら、アタシは空気になっててあげるから存分にイチャイチャしなさいな)」

 

「もう、響ったらはしゃいじゃって……」

 

「えーっ! だってだって、楽しいんだもん!」

 

「いいんじゃない、偶には。ガキ共やマスター、それにおばさ――年上組の翼だって、大体そんな感じなんだし  (一周するのに何分掛かるのよこれ……)」

 

 

 

 

 

「それじゃあ……ガリィちゃん、横座るね」

 

 

 

 

 

「ええ、いいわ――――よ? (…………あれ、今何か世界中を揺るがすような大事件が起きたような気がしたんだけど……)」

 

 

 

 

「あはは、見てみて二人共! ライトアップされててすっごく綺麗!」

 

「わぁ、本当……噂には聞いてたけど、実際に見るともっとすごいね……!」

 

「っ!!!??? (な、なんでアタシの隣に未来ちゃんが!? う、嘘でしょ、今までこんな事一度も無かったのに!!)」

 

 

「ガリィちゃんは観覧車、初めてなんだよね?」

 

「えっ? え、ええ、そうだけど……と、とっても素敵な景色ね、気に入ったわ (しかも何故かすっごく近い!同じ窓の景色を見てるからなんだけど、未来ちゃんが近い!)」

 

「私と響も、ここの観覧車は初めてなんだよ? だから一緒だね♪」

 

 

「そ、そう……それはとっても光栄――って未来ちゃん、あなた何やってるの……? (な、なんでアタシの手を握るの!? えっ、ナニコレ、もしかして響ちゃんに見せつけてるの?そういう駆け引きにアタシ利用されてるの!?)」

 

「えっと、なんとなく気になって……やっぱり冷たいね、ガリィちゃんの手」

 

「あ~っ!未来だけズル~い~! だから……私も握る~!!」

 

 

「……せっかくの景色なんだからちゃんと見なさいよアンタ達……全く、アタシの手なんか触って何が楽しいのかしら…… (あっ、違うわねこれ、こいつらただの天然かお馬鹿のどっちかだわ……はぁ、アタシも少し気にしすぎたわね)」

 

「ガリィちゃ~ん!いつもいつもありがとー!!」

 

「何よ突然抱き着いてきて……ふふっ、そんなにアタシが好きならチューしてあげましょうか♪ な~んて、冗――」

 

 

 

 

 

「……ふふっ♪」

 

 

 

 

 

「ひぃっ………………み、未来ちゃんにもしてあげましょう、か……?⦅震え声⦆」

 

 

 

 

 

「ホントウ? う~ん、どうしよっかなぁ~♪」

 

 

 

 

 

「あは、あはは…… (な、なんでアタシの首筋に手を……ま、まさかこのまま絞殺する気なの!?)」

 

 

 

 

 

「ここもやっぱり、冷たいんだね♪ って事は唇も、ほっぺたも……心臓だって冷たいのかなぁ、ふふっ……」

 

 

 

 

 

「あわわ、あわわわわわわ……! (目から光が消えてるんですけど!? こ、怖い……未来ちゃんに殺される……!)」

 

 

 

 

 -  それから十分後  -

 

 

 

「未来、どうかしたの?」

 

「えっと、ちょっとやりすぎちゃったかもって反省中、かな……?」

 

「???」

 

「ガリィちゃんがいつもいつもいーっつも!からかうから悪いんだよ? もうっ、私と響はまだ全然これっぽっちもそんな関係じゃないのに……」

 

「???」

 

 

 

 お・わ・り☆

 

 





ダインスレイフ覚醒後の能力上昇値(五段階)


ガングニール (立花 響)

パワー   ↑↑↑↑↑
スピード  ↑↑↑↑
テクニック ↑

EXスキル:???


アガートラーム (マリア・カデンツァヴナ・イヴ)

パワー   ↑↑
スピード  ↑↑↑
テクニック ↑↑↑↑↑

EXスキル:超級制御能力



次回も読んで頂けたら嬉しいです。


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