ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 皆さん、お久しぶりです。

 オリジナル作品、未だ投稿できる所までできていないです。で、先にこちらの方ができたので息抜きとして投稿しますね。


第102話 熱のない人生

 「………うん、もう大丈夫だよ、みんな」

 

 泣きじゃくる香織をユエ達で慰めることしばらく。香織がポンポンとユエの背中を叩きながら言うと、ユエは香織を開放する。

 

 「落ち着いた?」

 「うん。ありがとう皆。あはは……ちょっとみっともない所見せちゃったね」

 

 苦笑とと共にそう言う香織に雫はなんて声をかければいいのか分からず、顔を歪める。

 ユエは下から見上げるように香織の顔を覗き込み、

 

 「ん、まだだね」

 「え?」

 「よし、今夜は羽目を外そう。お酒でも飲んで全部全部吐き出すと言い。大丈夫、朝まで付き合うから」

 「あ、いいですねそれ。では私は何かつまめるものでも……」

 「では妾の方で飲み物の準備でも使用かのう」

 

 ユエの提案に香織と雫が目を丸くしている間にシアとティオはそいそと準備を始めるべく動き出そうとする。

 

 「ちょ、ちょっと待ってユエさん!酒でも飲んでって……」

 「こういう時はお酒って相場は決まってる。溜まってるもの全部吐き出さないと、どこかでガタが来る」

 「で、でも、私達は未成年でお酒は……」

 「それは地球の話でしょ?トータスなら15歳からお酒を飲める。それに、こういう時位悪い子になってもいいでしょ」

 

 そう言われても真面目な雫はやはり納得できないようで、思わず香織に顔を向ける。香織はう~~ん、と悩むように顎に手を当てること少し、

 

 「…・……じゃあ、一杯だけ、付き合ってくれるかな」

 

 雫が目を丸くする中ユエは了解、と小さく笑みを浮かべてシアとティオと共にサロンへと歩いていく。

 

 「いこ、雫ちゃん」

 

 固まっている雫の手を香織がとると、雫は、小さく体を震わせたのち香織と共にサロンへと戻っていく。

 雫はちらりと顔を上げて前を行く香織の背中を見る。今度こそ失恋して、とても傷ついているだろうに香織の背中はピンと伸びていて、足取りもしっかりとしている。一見すると立ち直っているように見える。

 だが、実際はまだまだなのだろう。そしてその事を察したからユエ達は宴会でもしようと言ったのだ。香織の為に。

 なら、香織の心が癒えるのなら、宴会ぐらいならいいのかな、と雫が考えている間にサロンに辿り着くと、

 

 「あ………戻ってきたか」

 

 香織たちに気づいたハジメが歩み寄ってくる。そして、香織の顔を見て何かを悟ったように神妙な表情を浮かべる。

 

 「そうか………やっぱりそうなったか……」

 「やっぱりって………ハジメ君も分かってたんだ」

 「まぁな……地球にいた時はもしかしたらくっつけられるかも、と思っていたがこっちでモスラさんに惚れてるって分かってからは……な」

 「そっか……ごめんね。なんか、色々と迷惑かけちゃったみたいだね」

 「迷惑なんて思ってないさ。俺が勝手に悶々としてただけだよ」

 

 苦笑を浮かべながらハジメは小さく肩をすくめていると、

 

 「!香織、大丈夫だったか!?」

 

 始めの後ろから光輝が勢いよく駆け寄ってくる。

 

 「大丈夫って……何が?」

 「何を言ってるんだ!あの化け物に無理やり連れて行かれたんだろう!心配するに決まってるだろう!」

 「ちょ、ちょっと待ちなさい光輝!無理やりって何よ!?香織が神羅君を呼び出したってユエさん達が言ってたでしょう!?」

 「いいや、きっとあの化け物が無理やり香織を連れ出したに決まっている!そうじゃなきゃ二人きりになるはずがない!」

 

 そう言って光輝は香織の顔を見つめ、彼女の目が涙で赤くなっている事に気付いてさらにヒートアップする。

 

 「香織……まさか、泣いているのか!?奴か!奴に泣かされたんだな!そうだろ!?」

 「待って、待ってよ光輝!お願いだから少し落ち着いて!」

 「雫は黙っていてくれ!香織、これで分かっただろう!?あいつは君の事なんて顧みない化け物なんだ!あんな奴と一緒にいたって不幸になるだけだ!」

 「あいつは人の心も分からない悍ましい化け物だ!だが安心してくれ香織。俺は君が悲しむようなことは絶対にしない!俺といる限り君は何も恐れることはないんだ!」

 

 興奮したように早口で捲し立てる光輝にサロンにいた生徒たちは怯えるような視線を向けているが、肝心の光輝はそれに気づいた様子は無い。

 もう引っ叩くしかないかと雫が拳を握った瞬間、ユエが静かに前に出て香織と光輝の前に割り込み、

 

 「そう。じゃあ、ちょっと教えてくれるかな。貴方なら、どうやって女の子を悲しませずにフるのかを」

 「………え?」

 

 ユエの言葉が予想外だったのか光輝はキョトンとした表情を浮かべる。

 

 「だから、貴方ならどうやって女の子をフるのか聞いてるの。香織は神羅に好きです、お付き合いしてくださいって一生懸命に告白して、でも神羅は応えられない、ごめんなさいってフった。だから香織は泣いてたの。好きな人と結ばれなかったんだから、泣くのは当然。でも、貴方は泣かせないんだよね。だから教えてほしいなぁって。貴方はどういう風に女の子の告白を断るのか」

 

 そう問いかけるユエの顔には柔らかな笑みが浮かんでいる。だが、それに反してその目には全く温度が宿っていない。

 対し、光輝は彫像の完全に固まってしまっていた。微動だにせず、エラーを起こしたロボットのように固まっていたが、次第に錆び付いたようにぎこちなく動き始める。

 

 「ふ、フるって………な、何を言って……」

 「何をって、さっきから聞いてるでしょ?どうやって女の子の告白を、好意を断るのかって」

 

 再三の問いに光輝は動揺するように視線を泳がせ、引きつった声を漏らす。

 

 「あ、いや、えっと………お、俺は……女の子を悲しませるような真似は……」

 「それなら告白は全て了承するの?告白してきた女の子全てをほいほい自分の彼女にする?そんなのまるで以前貴方がハジメ達に言ってたコレクション扱いみたいだね」

 「ちゃ、ちゃんと話し合うさ。ちゃんと話し合って………」

 「だから、どう言う風に話すのかって、その中身を聞いているんだけど?」

 

 小さく小首を傾げながらユエが一歩踏み出すと、光輝は思わず一歩後ずさる。

 口の中がからからに乾き、全身から冷汗が滲み出し、何かを言おうとしても喉は引きつった声しか漏らさない。

 

 「は、話し合うと言ったら話し合う!ちゃんと言葉を尽くせばみんな分かってくれる!俺は誰も悲しませない!俺は化け物とは違うんだ!」

 「…………そ」

 

 何ともまぁ、一切傷一つ無い綺麗で、空っぽな言葉だ、とユエは内心で深くため息を吐く。

 自分が関わればすべてがうまく解決する、自分の思い通りに進めば全て丸く収まると本気で信じているような姿に、ユエは呆れよりも何よりも哀れみを覚えた。

 光輝が一体どんな人生を歩んできたのか、ユエには分からない。だが少なくともその人生はきっと………なにも存在しない、熱の無い生だったのだろうとユエは思う。

 

 「とりあえず、もういい?これから香織を慰めないといけないから」

 「ま、待ってくれ!だったら俺も……」

 「場所は香織の部屋だけど、こんな夜中に、女の子だけの部屋に入ってくるの?」

 

 ユエの問いに光輝は声を引きつらせながら硬直する。

 

 「ここから先は男子禁制。分かったら大人しくしてて」

 

 そう言ってユエが固まっている光輝の横をすり抜けて歩いていくと、それに続く様にシアとティオが香織と共に続いていく。雫はオロオロと光輝とユエ達の間で視線を彷徨わせていたが、小走りでユエの元に走っていき、

 

 「ちょ、ちょっとユエさん!いくら何でもあれは……」

 「何が?私はただ疑問に思った事を聞いただけ。別におかしなことは聞いてないと思うけど」

 「で、でもあんな言い方……それに、こんな所で口論なんてしたらそれこそ香織が………」

 「始めたのはあっち。それに、ちゃんと魔法で防音しておいたから、周りには聞こえていない」

 

 ま、途中からだけど、とユエが憮然とした表情を浮かべていると、

 

 「おかえり、みんな」

 

 ぱたぱたとミレディが駆け寄ってくる。ミレディはユエ達の顔を静かに見渡し、

 

 「……うん。そっか………頑張ったね……」

 「……あはは……まぁ、はい……」 

 「察してくれて助かる。それで、これから香織を慰める宴会を開くけど、ミレディも来る?」

 「おぉ、いいね。でも、私は遠慮しておくよ。この件に関しては完全に部外者だからさ」

 

 苦笑を浮かべるミレディにユエはそう、と小さく頷くと、それじゃあ、と軽く手を振って香織を連れてサロンを後にする。シアとティオは宴会の準備のためかサロンの女中の元へと向かい、雫は慌ててユエと香織の後をつけていく。

 

 「……あの調子じゃ、出発は明後日になりそうだな」

 「まぁ、仕方ないよ。失恋した女の子にはちゃんと構ってあげないと」

 「……もしかしてお前も失恋したことあんのか?」

 「さぁ、どうだろうね」

 

 にしし、と笑うミレディの顔からはハジメでも感情を読み取る事ができない。

 まぁ、喋りたくないならそれでいいか、とハジメはそれ以上の追及をやめる。

 

 「……で、あんたから見て天之河をどう思う?そのために今までモスラさんと一緒に話していたんだろ?」

 

 ハジメが光輝が向かってきた先に目を向ければ、椅子に座ったモスラが頬杖を付きながら疲れたように息を吐いていた。

 

 「うん、なんて言うか…………可哀そうな子だよ」

 

 そう言うミレディの横顔は酷く寂しげで、哀し気にハジメには見えた。

 

 「あの子、自分の事を話すとき、ずっと神羅君とは違うって、化け物とは違うって言い続けてた。ずっとずっと、神羅君を否定し続けて、自分だったらこうする、こういう所が凄いって何も言わなかったんだ。ただ……他者を貶めるだけだった」

 「………そいつはまた………勇者に関しては何も言わなかったのか?」

 「言ってたよ。自分は勇者だって。世界を救う責任があるって。でも、あの子は……いいや、使徒のほとんどが天職って言うのを誤解している。それを何とかしないと、最悪の結末になっちゃうと思う」

 

 そうか、とハジメはちらりと光輝に視線を向ける。光輝はその場に立ちながら顔を俯かせ、拳を震わせている。ぶつぶつとどうして分かってくれない。あいつは化け物だ。人の心が分からない獣だと呟き続けている。

 

 「あいつ神代魔法を得ようと俺達についてくる気みたいだが………」

 「ああ、そうみたいだね。それに関しても言ってたよ。力があれば全てを救える。俺は奴らのように私欲のためには使わない、人のために使うって。でも、このまま連れて行っても絶対に神代魔法は取得できない。実力云々以前の話でね」

 「だろうな。寄生で手に入る物でもないし……」

 

 ふむ、とミレディは顎に手を当ててしばし考えこみ、

 

 「ハジメ君、明日、神代魔法を取得する気のある子達を訓練場に集めてくれる?」

 「?どうするんだ」

 「まぁ、そうだね……先達として、ちょっと助言をしようかなって思ってね」

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