時の流れを越えてやってきた17歳のハマーン様UC   作:ざんじばる

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マーサ「ハマーンって呼ばれてるNT少女…そんなんおらへんやん普通、そんなんおる? 言っといてや、おるんやったら…」
アルベルト「いや、なんも聞かれてへんし…」
Z+「マスターNTR回避、やったぜ!」
黒獅子「ぐぬぬ…こ、こっちにはプル⑫がおるし(震え声)」
Z+「あ、お前の真の搭乗者、キチ入った横恋慕フラレ男やから」
黒獅子「ウッソだろお前wwwww」
Z+「本当なんだよなぁ…」


踏み出した一歩

「嫌ですよッ!」

 

 ネェル・アーガマ艦長室にバナージの怒声が響く。それに対してダグザはあくまで冷静だった。

 

「頼んでいるつもりはない。ラプラスプログラムが指定する座標宙域でユニコーンを稼働させれば新たな封印が解ける可能性が高い。私が同乗する。君には当該座標まで機体を運んでもらいたい。これは命令だ」

「見たでしょ。あれがパラオでどうなったか……」

 

 パラオで自分の意思に反してクシャトリヤごとマリーダを痛めつけたこと。それがバナージにとってはトラウマになっているらしかった。ダグザの言に頑として応じない。同席するコンロイは処置無しといった顔をし、この部屋の主であるオットーは会話に口を挟まず、似合わない趣味でもある紅茶を振る舞う準備をしていた。

 

 そしてもう一人、ハマーンはバナージの隣に座り、彼ら全員を興味なさげに眺めていた。

 

「俺は軍人じゃないんだから命令を聞く必要はないはずです」

「確かに義務はない。だが責任はある」

 

 ———義務ではなく責任……。

 

 この時ハマーンは初めて興味を示した。いったいダグザは何を伝えようとしているのかと。そうして視線を彼に向けた。

 

「君はもう三度の戦闘状況に介入した。強力な武器を持ってだ。それで救われた人間もいれば、命を絶たれた者もいる。敵味方に関わりなく、君はすでに大勢の運命に介在しているんだ。その責任は取る必要がある」

 

 ———戦闘で敵の命を奪ったのは私もだ。私もこの時代の誰かの運命に介在している? 私もこの世界で何らかの責任を負ったのだろうか?

 

 それはハマーンにとって意外な言葉だった。ただ状況に流されているだけだったつもりの自分もこの時代に確かな足跡を残しているのだろうかと。

 

「……どうやって?」

「やり遂げることだ」

 

 ダグザの言葉に迷いながら、それでも挑むように尋ねるバナージ。それに返ってきた答えは力強く、そして明快だった。

 

 ———やり遂げる……それがこの時代に対して責任を果たす……生きるということ?

 

「死ぬまで戦えって事ですか? それともこの訳も分からない宝探しに最後まで———」

「それは自分で考えろ。今の君は目の前の困難から逃げようとしているだけだ」

 

 伝えるべきことは伝えたと思ったのかダグザは今度はハマーンへと向き直った。そして彼女に依頼する。

 

「指定座標では何が起こるか分からない。それこそ袖付きの襲撃があるかもしれん。残念だが戦力は不足している状況だ。君にも周辺警戒要員として参加してもらいたい」

 

 自分にとってのやり遂げるとは何なのかを考えているハマーン。この時代で彼女が戦闘を繰り返したのは何のためか。ガンダムを護ること。あるいはそれこそが———

 

「……了解」

 

 ハマーンがあっさりと了解を返すと、ダグザは頷いて席を立った。コンロイがその後に続く。その背中にバナージはまたも噛みついて。けれど取り合うことなくそのまま艦長室を出ていった。

 

 そこで張り詰めていた糸が切れたのかバナージは力を落とし、その身をソファへと沈めた。そして俯いた状態から横目でハマーンを見上げて問うてくる。

 

「君はいいのか? 戦闘に参加することに迷いはないの?」

「……ガンダムを護ること、それがミネバ様の命令だから」

 

 それに対してハマーンはすげなく答えた。

 

「命令って……君みたいな子にオードリーはいったい何を考えて…………いや、そうじゃない。命令だからって君みたいな子が戦っちゃいけないんだ。人を殺すことになるかもしれないんだぞ?」

「……関係ない。私はミネバ様の命令に従うだけ」

「そんな……」

「それに私は既に二度出撃してる。とっくに何人も殺してる」

「だからってもっと殺していいってことにはならないだろッ!」

 

 目の前の可憐な少女がモビルスーツで人の命を直接奪う。それもユニコーン=バナージを護るためにだと言う。そのことにいたたまれなさを感じたバナージは何とか翻意を引き出そうとするがハマーンは一切感心を示していなかった。目の前の少年を無視して先のダグザの言葉を考え続けていた。

 

「まあ、そう声を荒げるな」

 

 噛み合わない二人の間を取り持つかのように言葉を差し込んだのはオットーだった。湯気の立つ薫り高い紅茶が注がれたティーカップを二つ。ハマーンとバナージの前へそっと置く。そうして本人はもう一脚ティーカップを抱えて対面のソファーへと腰を下ろした。そしてバナージに諭すように話し始めた。

 

「ハマーン君に苛立ちをぶつけるのは筋違いというものだ。どうしてもいうならそれはあのプリンセスに言うべきだろう。年端もいかない少女に酷な任務を押しつけたて、無責任に消えたのは彼女なんだから」

「オードリーはそんなッ」

 

 大切な少女を貶されたように感じ、バナージは反発を示す。けれどオットーはそれをあっさりと認め話を変えた。

 

「そうだな。そうかもしれん。何かやむにやまれぬ理由があったのかも。だからこれ以上それについては言わんよ。俺が言えるとしたら……そうだな。彼らをあんまり嫌ってやるなということぐらいだな」

「……彼らって……ダグザ中佐たちのことですか?」

「そうだ。君には酷な言いようだっただろうが、ああ言うしかないのが彼らの立場だ」

 

 そう言ってからオットーは話し出した。パラオの、バナージ救出作戦が開始される前の一幕を。

 

 パラオのネェル・アーガマ一隻での攻略、ユニコーン奪還という命令が参謀本部から下されたとき、オットーを始めネェル・アーガマクルーは腐っていたらしい。これは上層部の責任逃れのために下された、無為に死んでこいという指示なのだと。けれどそんな中ダグザが言ったというのだ。

 

『これは人質救出作戦だ。我々は彼に借りがある』と。

 

 そうして最後にこうまとめた。

 

「人が人に負うべき責任をダグザ中佐はまっとうしようとしている」

 

 ———人が人に負うべき責任をまっとうする……そうすれば私も何か変わるのだろうか。変われるんだろうか?

 

 オットーのその言葉はダグザの言葉を頭の中で吟味し転がし続けていたハマーンに一定の示唆を与えた。

 

 ——— …………やり遂げる。責任をまっとうする。それはきっと同じこと。だからきっと私にとってのそれは。

 

 これはミネバから命令されたことでもあるのだから。そう自分の中で言い訳をつけて。そうして人形は歩き始めた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

『俺は連邦という巨大な装置の部品。歯車だ。与えられた役割を果たすだけだ』

『俺は何一つ確信を持てない。敵と味方の区別だって……そんな人間に武器を手にする資格なんて無いでしょう』

 

 地球低軌道上。ともすれば地球の引力に惹かれかねない場所をウェイブライダーが進む。そのコックピットシートでハマーンは聞くとも無しに聞いていた。隣を飛ぶユニコーンの中で交わされているバナージとダグザの会話を通信越しに。

 

 周囲にはリゼルやジェガンといったネェル・アーガマ所属のモビルスーツたちもいる。その他にエコーズのロトも。みなユニコーンの護衛兼調査隊としてきていた。ラプラスプログラムが示した座標。そこへ向かっているのだ。

 

 その場所は一つ特別な意味を持っている。宇宙ステーション首相官邸ラプラス。テロで砕け散って地球周辺を周回するその残骸が午前0時に通過するポイントなのだ。怪しいと言えばあからさますぎて逆に、というほどの場所だった。

 

 やがてラプラスの残骸とランデブーし、ユニコーンが午前0時にゼロポイントへと至った。けれどしばらく経っても何も起きない。これははずれだったかと誰もが思い始めた頃、ふいに何かの音声が流れ始めた。

 

 それは宇宙世紀が始まる直前、まだ健在だったラプラスにて行われた初代連邦政府首相リカルド・マーセナスによる演説。それがなぜかユニコーンから無差別に垂れ流されていた。思いもかけぬ事態にみなが警戒態勢に入ったその時。

 

 ———なにか来た……これは敵意!

 

 ハマーンの感覚に反応するものがあった。ネェル・アーガマに悪意を持って近づくもの。そして次の瞬間、ラプラスの残骸を突き破ってユニコーンが飛び出した。そのままネェル・アーガマの方へ飛び去ろうとする。バナージも敵の接近を感知したらしかった。

 

 即座にハマーンも機首を返す。スロットルを開けて加速。ユニコーンの後を追った。

 

『モビルスーツ各機、現状の任務を放棄し母艦へ帰投せよ』

 

 ネェル・アーガマでも察知したらしい。直掩に戻れとの指示が来る。そして。

 

 突如向かう先から火線が伸びてユニコーンを襲う。避けるユニコーン。火線はハマーンの乗る機体にも迫った。ロールをかけて回避。どうやら待ち伏せの部隊が置かれていたらしい。長距離砲装備のギラ・ズールが三機編成でそこにはいた。

 

 ユニコーンがハイパー・バズーカ装備のまま突っ込む。挨拶替わりに一発撃ち込むが弾速の遅いバズーカは簡単に躱された。通信からダグザとバナージの言い争いが聞こえてくる。ビームマグナムを使えと指示するダグザに拒否するバナージ。

 

 ユニコーンは更にギラ・ズールに接近して放つことで弾速の遅さを補った。武装と片腕を失って撤退するギラ・ズール。そこまでしてバナージがバズーカにこだわる理由はその直後の通信で明らかになった。

 

『遊びのつもりか、貴様! 敵は墜とせる時に墜とせ! お前が見逃した敵が味方を、お前自身を殺すかもしれんのだぞッ!!』

『遊びなもんかッ! 自分が死ぬのも、人が死ぬのも冗談じゃないって思うからやれることやってるんでしょッ!!』

 

 どうやらバナージは不殺を貫きたいらしかった。それはそれで立派な考えなのかもしれないがハマーンには関係ない。容赦なくギラ・ズールを一機火の玉に変えた。

 

 残る一機のギラ・ズールは思い切りよく火砲を投げ捨てユニコーンに格闘戦を仕掛け、一度交錯した後はネェル・アーガマに向かって飛び去っていった。その後を追うべきかもしれない。けれど。そうさせないものがやってきた。

 

 ひときわ強力な火線がバナージを、続けてハマーンを襲う。回避して砲撃がきた方向を見ればこちらへ猛スピードで迫る赤い彗星、シナンジュ。その後を追うのはベースジャバーに乗ったギラ・ズールたち。

 

 ギラ・ズールの長大な火砲から猛烈な勢いでビームが吐き出され、ハマーンの乗る機体を追い回す。回避に次ぐ回避。一方のユニコーンはシナンジュにラプラスの残骸へと押し込まれていく。二機は分断されてしまった。

 

 ウェイブライダー形態ではビームライフルを進行方向にしか放てない。反撃の暇無く降り注ぐギラ・ズールの砲撃に追い立てられながらモビルスーツ形態へのトランスフォームのタイミングを探るハマーン。その時聞き流していたユニコーンからの通信に引っかかるものを感じた。

 

『俺が外に出たらお前は奥まで移動して合図を待て』

『何をするつもりなんです……?』

 

 ———まさかユニコーンの外に出ようとしてるの!?

 

『歯車には歯車の意地がある。お前はお前の役割を果たせ』

『俺の……』

『ここが知っている。自分で自分を決められるたった一つの部品だ。なくすなよ』

 

 その会話を聞いたハマーンの脳裏をあるイメージが襲う。その中では歩兵用のロケットランチャーを担いだノーマルスーツ姿の人物が敬礼をしていた。そしてその彼を赤いモビルスーツのビームソードアックスが薙ぎ払って———

 

「———ダメぇッ!!」

 

 降り注ぐビームの雨の合間を縫うように、モビルスーツ形態へと移行しようとする灰色の機体。腕が自由になった瞬間に、まだ変形途中のそのままにビームライフルを抜き撃った。ギラ・ズールたちへの牽制射撃。そして変形をキャンセルし、再びウェイブライダーに戻る。全力でスラスターを噴かせた。

 

 ハマーンはウェイブライダーをその持てる限りの加速でユニコーンとシナンジュが消えたラプラスの残骸へ突進させる。彼女の瞳には不思議と内部で行われていることが見えていた。威力を絞ったビームライフルを放ち、残骸の外壁を赤熱させる。そして強度の落ちたそこへ迷うことなく機首から突っ込んだ!

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 ビームソードアックスを振りかぶったシナンジュを見てダグザは覚悟を決めた。彼が次に選んだ行動は敬礼を送ること。彼の希望へ。全てを託すために。そして次の瞬間。

 

『なにッ!? ええいッ!』

 

 轟音とともになにか尖ったものがラプラスの外壁を突き破って出てきた。シナンジュも直前に気づいたのか、斬撃を止め背後へのけぞっていた。そうしてなければ突きだしたものにコックピットを押し潰されていたかもしれない。

 

『危うくあの男の二の舞になるところだったな』

 

 外壁を突き破ってきたもの、それはウェイブライダーだった。すぐさまモビルスーツ形態へと変わる。変身した灰色の巨人がシナンジュを睨み付け、左腕を伸ばし敵機からダグザを庇う。反対の手にはいつの間にかビームサーベルの柄を握りしめていた。ダグザはその正体を悟る。

 

「ゼータプラス……彼女に救われたか」

 

 膠着状態に陥る二機。そのうち赤い方を横合いから強力なビームが襲った。ユニコーンのビームマグナムだ。こちらもいつの間にかガンダム形態へ移行している。続けてビームマグナムを連射。シナンジュを追い立てる。

 

 シナンジュも回避しつつ応射するが火力の差はいかんともしがたく、外壁を突き破って飛び去っていった。ユニコーンも後を追う。その間、ハマーンは機体でダグザを包みこむように屈み、残骸内で荒れ狂うビーム粒子から守っていた。

 

 やがて二機が飛び去ったところでゼータプラスが身を起こす。そしてダグザへと手を差し伸べて。

 

「いや、私はいい。君はバナージの援護に向かってくれ。NT-Dが発動したとはいえ、相手は赤い彗星の再来。楽観はできん」

『でも……』

「大丈夫。こちらはこちらで何とかネェル・アーガマに戻るさ」

『…………了解』

 

 ゼータプラスが背を向ける。ユニコーンたちを追って飛び立とうとするその背中へダグザは声をかけた。

 

「君に命を救われた。君が今日ここにいたこと、その存在に感謝する」

『……うん』

 

 ゼータプラスがウェイブライダーへと姿を変え飛び去る。その姿をダグザは敬礼で見送った。それはハマーン自身は気づいていない、けれど彼女がこの時代で初めて命令じゃない、自分の意思で為したことの結果だった。

 




裸男「ヘルメットがなければ、いやジ・○に乗っていたら即死だった」
木星帰りの男「私だけが…死ぬわけじゃ無い…貴様の心も、一緒に連れて行く…」
裸男「あ、お前映画版で連れて行けなくなったから。一人で死んでどうぞ」
木星帰りの男「!?」
裸男「ワロスw」
木星帰りの男「ん゛ん゛ん゛ん゛!!!」
裸男「え、ちょ? コックピットブロック握りつぶそうとするのやめ…イヤぁぁッ」
木星帰りの男「\\デデーン♪//」

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