時の流れを越えてやってきた17歳のハマーン様UC   作:ざんじばる

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動く戦争博物館でハマーン様の涙が見たいというゲスな意見もありましたが…
すまない。ハマーン様は瞬間移動できないんだ。
ということで蟹退治となります。
そしてユニコーンの空気化が加速する。




少女の戦い

 ハマーンはガランシェールに別れを告げ、ゼータプラスをモビルスーツ形態へ移行させた。翼をしまった灰色の巨人は両手足で、そしてウイングバインダーで宙を掻き大気中を泳ぎながら降下していく。

 

 戦場を眼下に収めた。問題のモビルアーマーシャンブロ。その巨大な蟹のような異形がまず目についた。そしてその大蟹と対峙するユニコーン。さらに周囲を連邦の可変機が飛び回っている。

 

 ———どういう状況なの?

 

 どういうわけか砲火は収まっていた。状況を把握するためウェイブライダー形態に変形して一時上空で待機、事態を観察する。そして。

 

『私の居場所はもう……ここだけだぁッ!!』

 

 女の絶叫が、その思念が戦場を吹き抜けていった。それに籠もる怒りと絶望にハマーンは顔を顰めた。同時にその感覚の持ち主に覚えがあった。

 

「この感じ……あの女か。ロニとか言った」

 

 ハマーンの脳裏に浮かぶイメージ。その姿は青黒い髪と褐色の肌を持つ若い女だった。ガランシェールが不時着したあの砂漠に来た女、ロニ・ガーベイのものだった。今の絶叫が戦闘再開の合図だったのか、可変機——デルタプラスと表示されている——がシャンブロへと攻撃を仕掛けた。

 

 次の瞬間、不可思議なことが起こった。デルタプラスが放ったビームライフルの火線がシャンブロの周囲で複雑に折れ曲がり、そして跳ね返されたのだ。跳ね返ったビームはユニコーンのすぐ脇を灼いていく。間一髪のところだった。

 

「ビームが跳ね返された!? ……あの小さなプロペラが反射しているのね」

 

 その手品の種はすぐに割れた。シャンブロの周囲を小型のドローンが浮遊している。その数10機。どうやらそのドローンがIフィールドを発生。ビームを偏向しているらしかった。ハマーンはその名を知らないがリフレクタービットというオールレンジ攻撃用兵器である。

 

「攻防一体の結界という訳か……んッ!?」

 

 不可解な事象が発生した。ユニコーンがガンダムに姿を変え、シャンブロとの間に不可視の力場のようなものが発生した。その力場は物理的な力を持っているのか、双方の中間で小規模な破壊が起きる。そしてビームをも弾いた。

 

 その力場から意思を感じた。やりきれぬ攻撃衝動に身を焦がすロニとそして。

 

「そう。その女を止めたいのね」

 

 バナージの意思を。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「呑まれてはダメだ。ロニさん!」

『子供が親の願いに呑まれるのは世の習いなんだよ、バナージ。私は間違っていない!』

「それは願いなんかじゃない。呪いだ!」

『同じだ! 託されたことを為す。それが親に血肉を与えられた子の血の役目なんだよ!!』

 

 交感による説得は物別れに終わった。シャンブロからの砲撃が激しさを増す。どうにかシャンブロに取り付きたいが大口径メガ粒子砲とリフレクタービットに阻まれ、一進一退を繰り返していた。リディのデルタプラスがそれを援護してくれる。ウェイブライダーに飛び乗った。そこにリディから通信が入る。

 

『あの反射板の反応速度を超える必要がある。ビームマグナムは?』

「残弾1です」

『一発勝負だな』

 

 それはシャンブロを撃てということ。けれどビームマグナムでは威力が大きすぎる。シャンブロに当てたが最後、パイロットはひとたまりも無く焼き尽くされるだろう。抗議の意味も込めて彼の名を呼ぶ。

 

「リディさん!」

『やるんだ!』

 

 けれどリディは頑なだった。バナージを押し切ろうとする。そして。

 

『その必要は無い』

 

 そんな二人の会話を断ち切るように涼やかな声が響いた。少女の声だ。センサーの反応に目をやれば上空から灰色の巨人が降ってきていた。その手にビームライフルを構えている。

 

『貴様らは下がっていろ。蟹を食べるときにはコツがあるんだ。まずは殻を剥かないとな』

 

 ———撃っちゃダメだ。跳ね返される!

 

 そう叫ぶ間もなくゼータプラスはビームを放っていた。案の定リフレクタービットが射線に割り込んでビームを偏向させる。その瞬間、ゼータプラスは若干角度を変えてもう一射。ビームを受け止めて動きを止めたリフレクタービットを直上から射貫いた。

 

 小さな花火が咲く。そして更にもう一射。ビームが反射した先にいるリフレクタービットを堕とした。跳ね返そうとしていたビームは反射板を失い明後日の方向へ消えていった。そのままゼータプラスは大胆不敵にもシャンブロの胴体へと着地する。着地の衝撃がロニを襲う。

 

 そしてゼータプラスはすぐさま飛び立つ。抜き放ったビームサーベルがビットを溶かし、さらに機体を捻っての回し蹴りでもう一つビットを砕いた。そのまま機体をウェイブライダーへ変えてシャンブロ直上を離れる。直後、拡散メガ粒子砲が放たれ、リフレクタービットによってビームの鳥かごが張られたが、既にそこに灰色の機体はいない。

 

『これで四つ。どうしたノロマ。サイコミュの制御が甘いぞ?』

『この声……あの時の女かッ!』

 

 シャンブロが首を回し、大口径メガ粒子砲でたたき落とそうとする。が、ゼータプラスはモビルスーツへ変形。失速しながら急降下するという変則機動で火線をかいくぐった。そのままビームライフルを抜き放ち、お返しとばかりにリフレクタービットを射貫く。

 

『そら。これでその反射板も残り半分だ。だいぶ苦しいのではないか?』

 

 言ってる端からAMBAC機動で落下コースを不規則に変化させつつ、ついでとばかりにリフレクタービットをもう一つ踏みつぶした。

 

「すごい……」

『なんなんだあのパイロット……この声……あの時のミネバの護衛か? だがこんな圧倒的な……』

 

 規格外の戦闘能力を発揮するゼータプラスに。そのパイロットに戦慄するバナージとリディ。そしてそんな相手と相対しているロニはそれどころではなかった。もはや恐慌状態だ。

 

『なんだ!? なんなんだ! お前ぇ!!』

『質問に質問で返すな。俗物め』

 

 数を減じたリフレクタービットでは複雑かつ的確な反射はできない。それより遅いアイアンネイルなど話にもならなかった。もはやゼータプラスのパイロットにとっては距離を取る必要すら無く、その場で淡々と撃ち落とし、切り裂いていく。残りのリフレクタービットが0になるまでもう何十秒もかからなかった。

 

『クソッ。こんな……このハマーンの遺産が、シャンブロがたった一機のちっぽけなモビルスーツにッ』

『……なんだと? この鈍重なモビルアーマーが——の? チッ。こんなもの残しておいては後々審美眼を疑われかねんな』

 

 リフレクタービットという最硬の殻を剥いだゼータプラスは、必死に振り落とそうとするシャンブロの上でバランスを取り、今度はビームサーベルをその本体に突き立てていく。その様はまさに蟹の解体に似ていた。

 

 足をもぎ、殻を抉って身をほじくり出していく。そして蟹にはないその(大口径メガ粒子砲)を備えた長い首も易々と刎ねた。そうしてシャンブロは完全に抵抗する力を失ったのだった。後には食い荒らされた蟹のように無残な姿を晒している。

 

『バナージ・リンクス。モビルアーマーは沈黙した。馬鹿女を引きずり出せ』

「あ、ああ。ありがとう」

 

 ただ圧倒され見守っているしかなかったバナージはゼータプラスのパイロットの声で我に返った。シャンブロに取り付くとユニコーンのマニピュレータでコックピットハッチをこじ開ける。そしてユニコーンから降りてシャンブロへと乗り込んだ。

 

 シャンブロのコックピットの中ではロニが呆然としていた。無理もない。圧倒的な暴力にただただ蹂躙されたのだから。さらにロニが傷一つ負っていないというこの事実。手加減されていたことを示していた。

 

「行こう。ロニさん」

 

 ロニの背中に腕を回して助け起こすバナージ。茫然自失のロニはされるがままに従った。彼女の意識は一つのことに支配されていたから。

 

「……バナージ。あの女はなんなんだ……?」

「えっと……オードリー、ミネバ・ザビの護衛でハマーンって女の子だけど」

「ハマーン?」

「そう」

「ハマーン……そうか。誰かに似ていると思ったら…………あはは。勝てないはずだ。そんなの。地球で待ち惚けていただけの私があの女帝にかなうはずなんか……」

「女帝?」

 

 不思議そうに問い返すバナージに、けれどロニは無言で灰色の巨人を見つめていた。そんな二人へ話題の人物からの声がかかる。

 

『バナージ・リンクス。早くその女を連れてユニコーンに戻れ』

「え? ああ、うん」

 

 促され、ロニを連れてユニコーンの腕を登る。そのコックピットへ向けて。だが。

 

『止まれ。バナージ』

「リディさん!?」

 

 リディのデルタプラスがユニコーンへ向けてビームライフルを構えていた。つい先ほどまで共闘していた相手の凶行に驚愕するバナージ。

 

『このガンダムには捕獲命令が出ている。このまま接収させてもらう』

「そんな……」

 

 リディの非常な言葉にバナージは絶句するしかなかった。空気が凍り付く。けれどこの場に一人だけ意に介さず、次の戦いに備えているものがいた。

 

『バナージ・リンクス、急げ。そのままだと死ぬぞ』

『お前! 余計なことを! この状況が分かっているのか!!』

 

 リディが激怒する。けれどゼータプラスは彼を無視して空を見上げていた。そして視線の先を指し示して言う。

 

『そこの連邦軍パイロット。あれは貴様のところの増援か?』

『なにを言って……!?』

 

 釣られてそちらを見上げたデルタプラス。ついで機体の警報が鳴った。モニターに映ったものを見て驚きに声を失う。それは人のように四肢を備えた黒い影だった。どんどんと大きさを増している。近づいてきているのだ。

 

『明確な敵意を振りまいている。少なくともこちらの味方ではなさそうだが』

 

 そしてシルエットが明確に判別できるところまで降下してきた。特徴的な一本角。リディもバナージも目を剥く。

 

『黒い……』

「ユニコーン……!?』

 

 黒い一本角の装甲が展開していく。装甲の下からは金色の光が漏れ出ていた。角が二つに割れV字アンテナとなる。そしてフェイスマスクも展開し、下からガンダムフェイスが現れた。バナージたちの呟きの通り、その姿はまさに黒いユニコーンガンダムだった。

 

 想定外過ぎる事態に完全にリディの注意がそちらに向く。非常事態を悟ったバナージはその隙にロニを連れてユニコーンのコックピットに飛び込んだ。即座にハッチを閉めるが戦闘態勢を整えるにはもう数秒。その隙を埋めるためか、真っ先にゼータプラスが地を蹴って飛び立った。




コウ「巨大MAを倒す唯一の方法……それは俺自身が巨大MAになることだ!」

シーブック「え? 巨大MAなんてただの的じぇね?」
アムロ「せやな」
カミーユ「ちょっと苦戦するけどMSで十分いける」
バナージ「拳で倒しましたわ」
ウッソ「370m級もヤってやったす」

コウ「……これだからNTは」

シロー「やったぜ。(ついでに嫁さんもGET)」

コウ「ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン」

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