さんがつみっかはーーー

雛祭り!!!!


平穏に雛祭りを終わらせたい雛と
雛の悲願を叶えようと奔走するにとりによる
ハートフル友情物語です。(内容に偽りあります

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流されすぎた!!

そういうわけで、私は今、大海原を漂っている。

……正直流れすぎだと私だって思うけど、これが現実なのだから仕方がない。

 

始まりは、にとりの一言から始まった。

 

「やっぱ雛も流れるんだよね?」

 

あれはもう一週間くらい前の話になるだろうか。

妖怪の森の川辺に村人が幾人もやってきて、和気あいあいとした雰囲気で手作りの小さな流し雛を流しているのを眺めていた時だ。

隣でその様子を見ていたにとりが、上記の発言をしたのだ。

 

「いえ……私は別に」

 

普段から体に着いた厄を流しているのだから、特段改まって厄を流す必要はない。

秘神流し雛という二つ名を持ってはいるけれど、私自身が流される必要なんてどこにもないのだ。

 

「あーでも、川の規模的に無理かぁ」

 

村人が使っているのは、小川と言っても差し支えない、膝くらいまでしか深さのない川だ。

流石に等身大の人形が流れていける水量はない。

 

「いや……待てよ」

 

河童が楽しそうに頭を巡らせている。

完全に余計なお世話なんだけど、楽しそうにしているにとりを止めることは、私にはできなかった。

 

「ふむふむ」

 

にとりが何かを考えながら私の手を引いて、山を登っていく。

やがて辿り着いたのは石だらけの河原であった。

川の流れは多少勢いがあるものの、水よりも石が目立つようなそこでは水量が絶対的に足りていない。

 

 

「そう思うでしょ?」

 

にやり、と心の中を見透かすようににとりが笑う。

……嫌な予感しかしないのだけれど。

 

「まぁまぁ、ここに立っててよ。雛の悲願を叶えてあげるからさ」

そう言ってにとりが川の真ん中に私を立たせる。

 

「いや、別に私は流れたいわけじゃ……」

 

「あー、もしもし。こちら河城……」

 

なにやら大きな無線機を懐から取り出して、こっちの話を聞いてくれない。

 

「あのね、にとり……」

 

ブォォォォォ、と突然周囲にサイレンが鳴り響く。

 

「な、なにごと……」

 

「じゃあ、雛。楽しんできてね!!」

 

ダッと、にとりが河原から走って離れていく姿が見える。

しまった、逃げ遅れた。急いで駆けだそうにも、濡れたドレスが駆けだすのを邪魔している。

続いて川上からはゴォォォと地鳴りのような音が響き、その正体を現す。

……鉄砲水だ。

あぁ、にとりはダムを解放したのね。河童の技術力、恐るべし。

鉄砲水が迫りくる刹那、私は「ダッと」と「脱兎」のダジャレに苦笑いしていた。

 

 

 

 * * * * * 

 

それから海まではあっという間だった。

普段であれば不幸体質の私がここまで無事でいられたのは、厄を流し続けているせいなのだろう。

そう、まさに今の私は厄を纏わぬ無敵の姿!!

……地上であれば。

 

海の上を漂うだけの私に、その幸運は果たして苦痛が長引くだけではないのか。

いっそ一思いにクジラに食べられれば楽になれるのに……。

 

一週間の漂流は私の心を着実に蝕んでいき、もはやまともな思考もできなくなっていた。

 

「なにしてるんですか?」

可愛らしい声が聞こえたのはそんな時だった。

……あぁ、ついに幻聴まで聞こえるようになってしまったのね。

 

「私のことは放っておいて」

 

「そうは言っても、もう長いこと此処にいますよね?」

 

「しょうがないじゃない。帰れないんだから……」

 

不貞腐れながらチラリと話しかけてくる彼女を見る。

青い髪の少女の頭からはヒレのようなものが見え、下半身は水に隠れてしまっているけど、人魚だということが想像できた。

 

「ふほーとーき、でしょうか? 湖が穢れるのでやめてほしいんですけど」

 

「失礼な人魚ね。……ん? みずうみ?」

 

ガッテム!! 幻想郷に海はないんだった!!

じゃあ、ここは……もしかして、霧の湖?

周囲の景色が見にくいから不思議に思ってたけど、海ってそんなものかなぁ、ぐらいに思ってた自分が情けない!

 

「あぅ……」

 

そりゃクジラに食べられることもないわね。

しかも、流され続けた厄が湖に留まり続けるのだから、結局私は厄かったわけだ。

……勘違いが恥ずかしい。

 

「とりあえず、岸に上げてくれるかしら?」

 

人魚は棒に服の裾をひっかけて、私を岸まで連れて行ってくれた。

あとでちゃんとエンガチョしておくのよ(号泣

 

 

 

 * * * * *

 

 

「やぁ、雛。流されてみてどうだった?」

 

翌朝、爽やかな顔をしてにとりがやって来た。

 

「ええ、そうね。悟りを開けたような気がするわ」

 

「そうかい。それはよかった」

 

明るい声を聞いていると、彼女が善意でしてくれたこととは理解しているけれども、

腹の奥底で意地の悪い気持ちがくすぶってくる。

 

「あと、友人は選ぶべきだと理解できたわ」

 

「え?」

 

 

それから一通りのことを説明して、申し訳なさそうにするにとりから謝罪を受けて、一緒に甘い砂糖菓子を食べるまで、私は彼女を許さなかった。

 

 

 


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