【本編完結】原作に関わりたくない系オリ主(笑) IN ダンまち   作:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次)

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読者「か、書き貯めをするって言ったじゃないか! どうして投稿など」
作者「残念だったな、トリックだよ」


劇場版だと思ったらただの総集編でしたはギルティ

◇◆劇場版原作に関わりたくない系オリ主(笑) IN ダンまち◆◇

 

「この槍を引き抜ける英雄はいるかぁ~!!」

「ここにいるぞー!」

「(^p^)ソコニヤツガミエル」

「(^p^)ワー」

「(^p^)モウコレイジョウココヲオサエラレナイ」

「(^q^)バンザーイ!」

「(^p^)アナタハオリオンワタシノキボウ」

「(^p^)アンチンサマ…モウノガシマセン…」

「(^q^)バンザーイ!」

 

 ある日の午後。

 広場では祭りかと思えるほどの喧騒が。

 その横を通りかかったライトとリリルカだったが、

 

「あれ、なんですかねえ」

「ヘルメスがマーリン気取りとか草。どうせロクな事じゃないし帰ろうぜ」

「あっ! だったら最近出来たカフェに行きませんか? ナァーザさんが絶賛してましたよ」

「お、いいね。一服したいし行くべ行くベ」

 

 なお、英雄候補が集まらず、ペルセウス(笑)ことアンドロメダ女史が泣きながらアンタなんとかを倒したそうです。

 

 劇場版原作に関わりたくない系オリ主(笑) IN ダンまち

 

 ~ F i n ~

 

 

 

 ◇◆デメテルの野望◆◇

 

「デメテル、キミがここに来るなんて珍しいね。どうしたんだい?」

「御機嫌ようヘスティア。えっと……貴方の所の団長はいるかしら?」

「ライト君かい? 何だか一日かけて彼の故郷の料理を作るとか言って厨房に籠っているよ」

「お邪魔するわねっ!」

「え、ちょ、デメテル!?」

 

 ライトが提唱した”人間は週に2日休んでこそ幸せになれる説”を取り入れているヘスティアファミリアは、今日と明日が休日だった。

 朝食を終えたヘスティア一味だったが、件の料理を作るとかでライトがリリルカと春姫を厨房に引きずり込んだ。

 

 なので暇になったヘスティアはリビングでぼんやりしつつ「ヘファイストスのとこでも行こうかな?」なんて考えていると、ドアをノックする音が。

 やれやれと彼女がドアを開ければそこにいたのは麦の館の主人、デメテルであった。

 天界の時から何かと仲がいい二人だが、伴も連れずにやってきた神友に驚いていると、ライトが厨房にいると聞くやいないや、凄い勢いで突進していった。

 

「デメテルってあんなにアグレッシブだったっけ……」

 

 ポツリと零すヘスティアだったが、まあいいかとソファで昼寝を決め込んだのである。

 

 さて、ところ変わって竃の館の厨房では、ライトを筆頭としたメンバーが集っている。

 リリルカと春姫は何故かメイド服で、ライトに至ってはシェフ姿である。

 そう、ライトは何事も形から入るタイプなのだ。

 

「それでライト様、今日は何を作るんですか?」

「とても気になりますっ。ライト様はお好み焼きと言う素晴らしき料理を作ってくれたお方……次はどんな料理なのでしょう……」

「んー、つってもただのカレーなんだけどな。あとハル、顔がそこはかとなくエロい。お好み焼きに欲情する女とか地雷臭しかしないぞ」

「ち、違いますっ! 私はそんなふしだらな事はっ」

「リリ知ってます。このエロ狐は、この前の洗濯当番の時にライト様のパ────」

「わー! わー! 何でもないですっ!」

「草。まあいい。カレーとはオレの国での国民食でな。庶民の料理だが、こだわればいくらだって豪華にも出来る。そんな高度の柔軟性を維持した素敵な料理であるっ!!!!」

「「ほへー」」

 

 そう、カレーである。

 日本人ならば時折、妙にカレーが食べたくなる時がある。

 ライトはこんな異世界くんだりまで来てしまったが、お好み焼きが再現できたなら、カレーなら余裕だろう、そう考えた。

 もしこれが成功したならば、カレーの店を誰かにやらせる。

 そうすればいつでもカレーが食べられる! そう言う目論見であった。

 

「さて、カレーだが、こいつは簡単に言うとスパイスを食べる料理だ」

 

 リリルカ達が首を傾げる。

 ピンと来ない様だ。

 

「ほら、デメテルソースを舐めると後味がピリッとするだろ?」

「はい、鼻に抜けるといい匂いもします」

「だからお好み焼きも美味しくなりますっ!」

「お好み焼き厨は座ってろ」

「ポッチャマ……(小声)」

「まあいい。そのピリってやつが香辛料、まあスパイスだな。つまりカレーとは、無数にある香辛料をいい感じにブレンドして、料理にした物の事なのだ」

「「ほへ~」」

 

 まあピンと来ないらしい。

 ライトはやれやれと首を振りつつ準備にかかる。

 

 キッチンの作業台にズンズンと並べたのは、ライトがこの前用事がありディアンケヒトファミリアに行った際に購入してきたポーション制作セット・初級である。

 まあ、ただの巨大な乳鉢であるが。

 

 さらにライトは持ち物に入れてあった各種スパイスを取り出す。

 かなりの種類があるが、どれも大きな瓶に入っており、結構な量だ。

 これは例のおじいちゃんこと三日月宗近を買った時の市で、外国の商人がおり、彼が売っていたスパイスを買い占めんばかりの勢いでライトが買ったの物だ。

 そう、全てはこのスパイスを見た事が始まりだったのである。

 

「んじゃ早速始めっか」

「リリ達はどうすればいいですか?」

「うーん。スパイスの配合はオレがやるからそうだな、別に用意した鳥の骨があるから、リリと春姫はそれを煮込んでスープを取ってくれ。香味野菜と一緒にな。注意点は一度沸騰させたら、後はコポコポと表面が泡立つ程度まで火力を下げてじっくりと煮込む事」

「「はーい!」」

「ライト、私は?」

「デメテル様は小麦をねってナンの生地をって……ナズェイルンディスカ!?」

「新しい料理が産まれようとしている……そこに私がいるのは当然よねッ」

 

 デメテルがいた。憎たらしい程のドヤ顔である。

 彼女によるとデメテルソースが軌道にのったが、次なる一手が欲しいとやってきたという。

 

 因みに彼女、ゼウスの姉である。

 そう言う意味ではヘスティアとの関係が深いのも頷ける。

 彼女は整った容姿にたおやかな胸を持つ、美しい女神だ。

 それに豊穣と穀物の神である彼女であるが、原典では悲惨である。

 

 ゼウスに無理やり迫られ孕まされた結果、後にゼウスの兄弟であるハーデスの妃になるペルセポネが産まれ、さらにゼウスのもう一人の兄弟であるポセイドンにも同じような目に遭わされた結果、女神一人とまさかの馬を”産ま”されている(激うまギャグ)

 さらに最愛の恋人は嫉妬したゼウスが稲妻を落とした。意味が分からない。

 しかしゼウスの兄弟の鬼畜っぷりには苦笑いを禁じ得ない。

 

「まあいい。とりあえず作るから」

 

 神々とまともに付き合うと面倒臭い────ライトはフレイヤで学んだのだ。

 そして何事も無かったかのように大きなボウルにスパイスを放り込んでいく。

 コリアンダー、クミン、そして辛みを足すためにカイエンペッパー。

 配合は黄金配合と呼ばれる定番の組み合わせ。

 

 それらを乳鉢でゴリゴリとすり潰していく。

 それと共に立ち昇る何とも言えない香り。

 鍋でスープのベースを煮込んでいる二人も気になるようで、しきりにこちらを見ている。

 特に嗅覚がヒューマンよりも鋭い狐人である春姫はかなりヤバい顔をしている。

 

 ────あの顔はフレーメン反応ッ!!

 ────知っているのかライト?

 ────ああ。フレーメン反応とは主に猫の様な動物が、フェロモンの様な匂いを認識した際に起こる現象で、口を半開きにして目はよく分からない場所をじっと見つめるという、いわばクソ間抜けな表情の事だ。

 

 そう、春姫は今、女の子がお外でやっちゃいけない表情をしている。

 恐るべしカレー。恐るべし狐人女子。

 

 それはそれとして、ライトはカレーベースのスパイスの配合を終えると、香りが飛ばない様に密閉瓶に移し、今度は仕上げの為のガラムマサラを調合していく。

 これにはクミン、コリアンダー、カルダモン、ナツメグ、シナモン、ブラックペッパーなどをいれる。

 配合はそこそこで違うが、役割としてはカレーの香り付けがメインになる。

 

「なるほど、見た目以上に複雑な芳醇さがあるわねッ」

 

 椅子に腰かけながらゴリゴリとスパイスを潰していくライトの肩にデメテルが顎を載せて覗き込んだ。

 そうなると必然的に、

 

「思いっきり胸が当たってるんだが?」

「当ててるのよ? 貴方は無類のおっぱい好きだとリサーチ済みよっ! ならばこの私のおっぱいは好物の筈っ! こう見えてオイルによる手入れは完璧なの。ふふっ、つまりライトは私の神っぱいにメロメロ! さあ、キリキリとデメテルブランドの次なる料理を完成させるのよっ!」

「もうやだ。オレの周りにロクな神様いねえ……」

「ふふふ、†外道乱舞†のライト、破れたりって所ね!」

 

 ライトはポカンとした。

 聞き捨てならないワードが聞こえたからだ。

 残念な女神はこの際どうでもいい。

 当ててるのよネタを何故知っているかもこの際置いておく。

 だが、

 

「なあデメテル様よ。外道のナントカってなんだね」

「え? †外道乱舞†、貴方の二つ名よ?」

「んっ? オレはレベルアップしてないんだが?」

「ええっ、この前の神会で決まったわよ? これだけ騒動を起こしているんだもの、例外枠として満場一致で決まったわ? 因みに一番ノリノリだったのはウラノスとフレイヤね」

「あー……因みにだが、うちの神様は?」

「あーうん……いたわね」

 

 ヘスティア、ライトによる折檻が決定した瞬間である。

 なお、この日の深夜にそれは決行された。

 彼女が寝静まった後、部屋に忍び込んだライトニンジャが彼女を簀巻きにし、アヘ顔で気絶するまで擽り続けたという。インガオホー。

 因みにその際のヘスティアは”素直に言ったら結局こうなると思っていた”と反省の色を感じない供述をしている。

 

 さて横道にそれつつも手は止めないライトは粛々と作業を進めていく。

 スパイス調合を終えたライトは無数にある竃の一つでフライパンを熱して油を引くと、すりおろしたニンニクとショウガを炒めて香りを立たせ、青とうがらしを刻んだ物や湯剥きしたトマトを角切りにしたものを投入し、スパイスのベースを入れるとグツグツと煮立たせながら水分を飛ばしていく。

 仕上げにヨーグルトや塩で味を調え、ガラムマサラを加えると漸くカレーベースが完成した。

 

 目をキラキラさせ指を伸ばしてくるデメテルをぐいーっと押しやりながら、今度はナンの生地を練っていく。

 粉にパン屋で分けて貰った酵母と油を入れて練り練り。

 卵に水、砂糖と塩、牛乳。さらにはヨーグルトを足して練り練り。

 それを丸めてボウルにいれると布をかぶせて常温発酵。

 

 それで暫く放置しながら、スープベースも安定期に入ったので、二人とヘスティアも呼んで厨房でお茶会と洒落こんだ。

 せっかくカレーを作っているからな、と牛乳の原液に茶葉を入れて煮込み、香り付けにシナモンを入れた物にたっぷりと砂糖を入れたチャイ風のミルクティーを楽しむ。

 なお、デメテルがいじけたので仲間にいれてやるライトであった。

 そして、

 

「さあ仕上げだ。神様、胃の空き具合は十分か?」

「もうペコペコだよライト君……昼寝してたら凄い良い匂いがするからランチは食べずにいたんだよ!」

「グーッド。リリもデメテル様も同じだな。…………春姫は通常運行と」

「くぅ~ん……」

「最低限狐のアイデンティティーは守ってくれ。では仕上げに移る。目をかっぽじって見てるんだなァ!」

 

 竃の一つに火をいれ、その横にあるタンドールにも火をいれる。

 タンドールは街の職人にワンオフでオーダーした素焼きの筒だ。

 そしてヘスティアは竃の神。再現は余裕でしたとはライトの言。

 

 火口で熱した鍋にスープベースをいれ、カレーベースを足して伸ばしていく。

 そうすると赤茶けた何とも言えない色合いのスープが出来上がる。

 そこに各種野菜を素揚げした物を深い皿に入れ、煮立つ鍋にはスープベースを煮込んだ際に一緒に煮ておいた骨付きの鳥もも肉を加える。

 

 同時に4、500度まで熱したタンドールの内側に、丸く小分けにしたナン生地を張り付けていく。

 ナンは2分もせずに焼き上がり、大皿にポイポイとのせられた。

 そして全員分のカレーが完成した所で、リリルカ達がダイニングに運んでいく。

 

「さて、全員座ったな。これがオレの故郷では割とポピュラーだったスープカレーだ。スプーンで掬ってそのまま飲んでも良いし、ナンをちぎって浸して喰っても良い。作法なんか気にするな。好きなように食え。では良し!」

「「「「いただきます」」」」

「うまぁい! これは凄いよライト君!」

「おいひぃですぅ。辛くって、でも嫌じゃないです。リリ、これ好きです!」

「ああ^~カレー美味いんじゃぁ^~」

「うおォン!! 私はまるで神様エトナ火山よぉ~」

 

 若干二名の反応がおかしいが、どうやら好評であった。

 それを満足げに眺めるライトの柔和な笑みは、まるでクッキングパパである。

 

 そして案の定キャラ崩壊したのは春姫とデメテル。

 これよ、私が求めていたのはコレっ! と口から変な光線を吐きながら熱弁。

 結果、カレーの店をデメテル直営で出す事が即決された。

 

 この日のライトがやった配合は羊皮紙にレシピ化され、後はデメテルとファミリア達と研究をして色々なパターンを試すという。

 近い将来、デメテル壱番屋の名でオラリオに旋風を巻き起こすだろう。

 そしてオラリオにおけるファストフードの始祖として、デメテルファミリアの名声は高まったという。

 

 そして……春姫はカレーに憑りつかれた。

 東にあるというカレーの聖地を巡礼するのだと危険な事を言いだしたのだ。

 ライトが悪乗りして、”カレーの神様のガンダーラがおわす魅惑の国インディア。そこには世界中のカレー信者が集まり、神にカレーを捧げる儀式をするという……”と適当な事を言った結果である。

 

 その後、カレー道をまずは極めると決意した春姫は、デメテルファミリアに出向と言う形でスパイス調合の研究を行うようになった。

 因みにお好み焼きの屋台であるが、ライトの勧めで”はるひめのおこのみやき”の名でフランチャイズ展開を行い、のれんにあざとくデフォルメされた春姫が描かれ、じゃが丸くんに匹敵する人気を博したという。

 

 店員は可愛い感じの女性のみで、制服はひらひらのメイド服。

 完全にイメージプレイを行うお店かな? という路線で大人気である。

 そして彼女達が焼くお好み焼きは、春姫が焼くよりも綺麗なまんまるだったという。

 

 

 ◇◆ライト、主神の疲れを癒す◆◇

 

 

「うーん……」

「どうした神様」

「いやぁ、どうも最近疲れが抜けなくてさ」

 

 ベッドに入った物の喉の渇きを感じたライトがリビングに来ると、ヘスティアが浮かない顔で座っていた。

 いつもはもっと早い時間に寝る彼女なのに。

 

 不審に思ったライトが理由を尋ねると、彼女は首をトントン叩きながら疲れていると言った。

 

「うーん、神様、後は寝るだけだよな?」

「そうだけど、全然寝付けないんだよ……」

「分かった。丁度デメテルのとこに頼んでいた奴が届いたから、使ってみるか……。んじゃ神様、ダルい所悪いが、沐浴してきてくれ。あがったら寝間着は着ないでタオルを巻いたまま部屋に行っててくれよ。オレはその間に準備をするから」

「ん? 何をするんだい?」

「あーちょっとしたマッサージだな」

「へえっ! そんな事も出来るんだ!?」

「まぁな、昔よく通ってたから覚えてんだ」

「分かった。本当に辛いからお願いするね?」

 

 そうしてヘスティアは腰を叩きながら風呂場へと向かった。

 ヘスティアはああ見えて真面目だ。

 ぽんこつではあっても、じゃが丸の屋台では愛想がいい彼女の接客は密かな人気なのである。

 ただ人々の期待には全力で応える彼女の気質から、知らず知らずのうちに疲れを溜めていた様だ。

 

 風呂場に消えたヘスティアを見送ったライトは自室に戻ると、藤で編まれたバスケットにいくつかのガラス瓶を詰める。

 それと共に大量のタオルやお茶の準備をしてヘスティアの部屋に向かった。

 

「え、えっと、とても恥ずかしいけど、大丈夫かな?」

「もちろんでございますお客様。これは美容も兼ねたマッサージ。私はいない物と思って、とにかくリラックスしてください」

「ら、ライト君がそう言うなら、うん、任せるよ」

 

 そこには湯上りで火照ったヘスティアの見事な肢体が披露されていた。

 彼女はベッドにうつぶせに寝ており、巻かれたタオルが解かれる。

 必然、女性の美の極みとも言えるメリハリのあるボディラインは露わになる。

 適度に肉付きの良い彼女の身体は、どんな男も魅了してやまないだろう。

 

 そこに何故かマスクをしてスラックスタイプの白い施術着姿のライトが立っている。

 そして彼はおもむろにヘスティアの背中に持ってきた瓶に入っていた液体をたっぷりと垂らした。

 

「ひうっ!?」

「冷たいですか? 直ぐに暖かく感じるのでご安心を」

「う、うん……」

 

 これはデメテルに次なる金儲けの一つとしてオーダーした、様々な植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)、それをマッサージ用に調合した特別製である。

 ライトはそれを薄く延ばす様に掌で優しく揉みこんでいく。

 

「うっ、ふーっ……うわぁライト君の手、きもちいぃねぇ……」

「身体の力は抜いてくださいね。今は身体に溜まった無駄な老廃物を逃がすために、散らす様に揉みこんでいきます」

「んうっ、ふわぁ……なんだかとっても暖かいやぁ……」

 

 ライトの掌の根元の部分をヘスティアの背骨に当て、左右に押し上げるようにすると、円を描いて下に。

 それを下から上、上から下へとゆっくりと往復させる。

 そして、

 

「あんっ、ちょライト君そこはボクのおしり……」

「マッサージですから」

「あ、うん、そうだよね」

 

 臀部も余すことなく揉んでいく。

 この臀部というのは中々侮れないのだ。

 骨盤から股関節の周囲には様々な神経が密集している。

 しかし肉付きの良い臀部の肉はそれを重厚に覆っている。

 故に中々刺激し辛いのだ。

 

「少し痛いですが、我慢してくださいね」

「う、うん、お手柔らかに頼むよ? あと、その、ボクの見えちゃってないよね?」

「マッサージですから」

「う、うん、ごめん。ボクが悪かったよ……ってうっ、痛っ」

 

 ライトの手が臀部側面から大腿骨に沿いつつめり込んでいく。

 それを骨盤方向に向かって押し上げる。

 苦悶の表情のヘスティアだが、痛かろうとも嫌悪感は感じず、むしろ心地の良い痛さに感じた。

 ライト、野獣の眼光。

 

 その後、太腿の裏、膝関節の裏の筋、ふくらはぎの特に疲れが溜まりやすいヒラメ筋、そして足裏や指先、最後は肩や首へのマッサージをたっぷり時間をかけて行った。

 先ほどまでとは違う心地の良い倦怠感に、ヘスティアの表情も緩む。

 そして、

 

「では続きまして、前側の施術に入ります。仰向けになってください」

「えっ、それじゃ全部見えちゃうよっ!?」

「マッサージですから。仰向けになってください」

「う、うん、ライト君なら間違いないよね……は、恥ずかしいけどボク頑張るよ……」

 

 ヘスティアは仰向けになった。

 必然、魅惑的な乙女の山脈や、美貌のニュムペーが集う渓谷が露わになる。

 だがマッサージ師(ライト)は無表情である。

 それに安心したヘスティアは目を閉じた。

 

「あっ、そこは、おっぱ……」

「マッサージですから」

 

「ひぅっ、ら、りゃいとくん、そこはボクの……」

「マッサージですから」

 

 こうして数時間にも及ぶ、健全なマッサージの結果、ヘスティアの疲れは癒されたのである。

 そして、時折ヘスティアがライトにこそこそと耳打ちをする姿をリリルカや春姫が目撃し、首をひねる事となった。

 

「マッサージですから」

 

 

 




長編の進捗が1万字くらいでとん挫。
煮詰まった結果、しょうもない日常話に逃避。
かなしいなぁ……


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