【本編完結】原作に関わりたくない系オリ主(笑) IN ダンまち   作:朧月夜
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ベル「神様、僕はここにいてもいいのでしょうか……漁業でもだめ、農業でも、それにあんな酒にやられて……」
???「ベル、お前はもう誰のもんでもねえってことだ。恩を売る気もねえし、どこへ行くなり好きにしな。けどよ、残るってんなら俺が守る。でっけぇ花火打ち上げようぜ?」
ベル「か、神様っ! 僕、イツカ神の眷属になりますっ」



頑張りさえすれば出来る子って言われる奴は大概出来ない

「やばっ、リリ見てみろ。この金貨の山をよ」

「ああ……ダメですライト様……リリ、この中で泳いでみたいですっ」

「それええやん。あとでバスタブに入れて泳いでみようぜ」

「はいっ!」

「はいじゃないよリリ君。それにライト君も! 金貨の中で泳ぐって下品すぎないかなっ!?」

 

 新生ヘスティア・ホームの地下にある幹部専用の小部屋では、机の上にずっしりと積み上がる金貨のエベレストを前に酷い会話が交わされていた。

 一人諫めている風な発言の神様ですら、金色の岩肌に頬ずりをしている。

 

 これはライトが方々で展開しているポーションビジネスの売り上げだ。

 元々はミアハファミリアの弱みに付け込んで始めた物だが、ロキファミリアとのコネが出来てから商圏は一気に拡大。

 時折ポーションやエリクサーを補充に行くだけで、後は座っていれば勝手に金がやってくるスタイルとなった。

 

 最早数えるのも面倒くさい、そんな勢いだ。

 とは言えこうしてライトがわざわざ金をかき集めて神様たちに見せたのは、何も金色を前に悦に入りたいという訳ではない。

 そもそも屋上にある巨大なシャチホコが金無垢であるし。

 それを毎日磨いているのはライトとリリだ。なのでその手の欲求は満たされている。

 

 なら何故か。

 それはこれだけの金があるという現実を認識させる為である。

 普段は金にきたない外道ムーブがデフォルトのライトだが、これでも現代日本と言う、斜陽であっても経済大国で生きていた人間だ。

 その感覚で言えば、確かに稼いだとしても、一か所に大量の貨幣がとどまっているのは良くないと思っている。

 

 要はオラリオに流通しているヴァリス金貨をせき止めてしまえば、その分いくらかは割を食う人間もいるという事だ。

 金は流通して初めて意味がある。

 現在ヘスティアファミリアにある金貨だけならそこまで影響は正直無いだろう。

 だがライトとすれば、金は使ってこそ意味があると信じている。

 

「それでライト様はこれをどうされるつもりなんです?」

 

 ライトはふむ、と頷くと、金貨を掴んだ。

 

「そうだなぁ。うちに人手がいない以上、こっちがメインで動くのは無理だろう? なら最初から他人に任せてしまえば良い」

「ラ、ライト君?! またアコギな事をしようと言うんじゃ……!?」

「ちがうわい! というかまたって言わないで欲しいんだが……。まあいい。要は金になりそうなアイデアはいくつかある。なら、実行できそうな人間が余っている、そんなファミリアに投資をして上前をハネればいい。この金貨は序盤の資金に使うって事だぁ」

「「ほへー……」」

 

 ドヤ顔で言い切るライトだったが、いかんせん神と小人には通じなかった様だ。

 まあそれも仕方ない事かとライトは説明を諦めた。

 そして彼はザックザックとかなりの量の金貨を持ち物に収めると、トレードマークとも言えるニンジャスーツを脱ぎ去り、いつぞやのフォーマルウェアに着替えた。

 

「あのライト様? どこかに行くんですか? リリも行きますよ?」

「んにゃ。とりあえずはオレ一人で行くよ。多分暫く帰らないから、オレが戻るまでは神様の事頼むなリリ!」

「ちょ、ライト君? ボクたちは放置かい?! 置いてかないでくれよ~!」

「ヘスティア様、ああなってはライト様に話は通じません。なのでどこかで豪遊でもしましょう!」

「そ、そうだねっ。その位してもバチは当たらないよねっ! もう~ライト君のバカー!」

「ライト様のバカー!」

 

 そんな風に、事は動きだしたのである。

 

 

 ☆

 

 

(……ライト様、あれから2週間も経つのに帰ってきませんね。リリ達の事、嫌いになっちゃったのでしょうか……)

 

 リリルカは夕暮れのオラリオを一人歩いていた。

 それはライトが手を拡げたポーションビジネスの集金があるからだ。

 色々とまわり、後はミアハファミリアの店で終了だ。

 

 彼女の現在の立場は、ヘスティアファミリアの副団長である。

 そして商業系ファミリアという顔を持つ今、彼女はライトの秘書役とも言えるだろう。

 既にヘファイストスからの試練はクリアしたと認定され、じゃが丸くんの屋台はお役御免だ。

 ただし主神は除く。

 

 しかし団長であるライトが不在だ。

 その事がリリルカの心に影を落としていた。

 最初は何だろうこの変な人は、そう思っていた。

 けれどいつしか、無意識に視線の中に収める様になっていた。

 

 なんでこの人はリリを助けてくれたのでしょうか……?

 

 ずっとそう思っていた。

 それ程にリリルカは、ヒトの汚い部分を見過ぎてしまった。

 誰かに期待をする、けれど期待した結果になった事は一度も無かった。

 

 君は可愛いね。

 

 容姿を褒めた人もいた。

 褒められて嬉しくない者はそういない。

 けれどリリルカは学んでしまった。

 口に出したセリフの後には、声になっていない続きがあるのだと。

 

 小人族は存在自体が蔑みの対象となる事が多い。

 特にこの冒険者の街では。

 一般的な職業で生計を立てている者も多くいる。

 けれど冒険者と言う人外の存在は、力によるヒエラルキーを街の者にも強いている。

 必然、非力な種族は差別的に扱われる事も多くなるのだ。

 

 彼女はソーマ・ファミリアに所属する両親の間に生まれた。

 両親は神酒に狂い、その購入資金欲しさに己の力量に見合わない冒険をして無様に死んだ。

 両親の死を無様と吐き捨てるのは、彼女の境遇をなじる矛先である両親がいないからだ。

 せめて寝たきりでもいい、いてくれさえすれば、文句を言ったり……泣いたりできるのに。

 

 その後、彼女は生きる為にソーマの眷属となった。

 しかしスキルがいくつか発現したがおよそ戦闘に役に立つ物は無かった。

 どうにか一人でも生きてやる。

 両親の様に死んでたまるか。

 その想いから冒険者として生きる決意をしたが、結局自分には何も無い事だけが分かってしまった。

 

 結局リリルカはサポーターという道を選んだ。

 選ばざるを得ないというだけだが。

 最初はファミリアのメンバーのサポートをするが、稼ぎの殆どは彼らが取り、自分への分け前は皆無に等しい。

 

 ソーマファミリアの冒険者にとって、サポーターとはポーションと同様の便利な道具と一緒なのだろう。

 戦闘に役立つ訳も無く、ただやる事は解体とドロップ拾い。

 確かにダンジョンでの効率は良くなるが、逆に言えばいなければ駄目と言う訳でも無い。

 所詮はその程度なのだ。

 

 故に役立たずのチビに何故大金を渡す必要があるのか?

 彼らの論法はそこである。

 単純に、小人族への差別意識。

 そして己も神酒に憑りつかれているから産まれる焦燥感、そのストレスの捌け口としての相手が彼女。

 

 そこで絶望したリリルカはホームを出て、フリーのサポーターとなる。

 野良の冒険者に交渉し、稼ぎを得る。

 下宿先もソーマファミリアから距離を置き、移動もフードを被り、スキルで姿かたちを変化させ、とにかく見つかるまいと努力をした。

 

 それでも見つかれば捕まり、暴行され金を巻き上げられる。

 ダンジョンに出入りする以上、完全に距離を置くのは無理なのだ。

 彼女が深層に潜れるならいい。

 だが実際は行けてもせいぜい中層である以上、行くエリアが被るのだ。

 

 そうしてどうにか生きながらえるが、何故生きているのかが分からなくなった。

 稼いでも巻き上げられ、宿で寝てもいつもビクビクと周囲に神経をとがらせる。

 気の休まる時間なんかいくらも無い。

 何が楽しくて生きているのか迷うのみだ。

 

 ダンジョンを出て清算し、場末の貸金庫に金を隠す。

 小銭を手に屋台で食事をし、日の沈む空を眺めて芝生に座る。

 見れば子供を連れた家族がリリルカの目の前を通り過ぎる。

 今日は何を食べようか。君は今日何をしていたんだ?

 幸せな家族のカタチだ。

 

 ふとリリルカは口の中の違和感に気がつく。

 吐き出してみれば奥歯だった。

 無意識に噛みしめ折れてしまったらしい。

 唇を拭えば血で汚れている。

 

 憎い。幸せな奴がとにかく憎い。

 彼女の頭の中にあるのはその想いだけだ。

 幸い、これまで身体を売らずに済んだのは、いくらでも物を持てるスキルのお蔭だ。

 だからなんだって言うのだ。

 

 いっそ男に身を委ね、金でも巻き上げれば胸も空くだろうか。

 ふと見れば、いかにも駆け出しという体の大男がいる。

 ぼーっと空を見上げて座っていた。

 

「あのー冒険者様? サポーターはいりませんか?」

 

 そう声をかけた。

 見慣れぬ赤い装束に、男が立てばリリルカがかなり見上げないと顔が見えないだろう。

 なのに男はそんなリリルカの言葉にしどろもどろになった。

 

 彼女は久しぶりに楽しいと感じた。

 そんな大きななりをして、リリに驚くなんて。

 

 ────馬鹿みたい。そうだ、こいつに抱かれて根こそぎ金を奪ってやろう。どうせこいつも下種な冒険者なんだから。

 

 けれど、ここで彼女の人生は大きく転換した。

 男はとにかく常識外れだった。

 セオリーである上層での様子見などせず、面倒だとリリルカを小脇に抱えて一気に中層まで走る。

 

 吐きそうな位に揺れ、死ぬほど怖かった。

 でも序の口だった。

 気が付けば彼女はモンスターのエサにされていた。

 多分死んだかもしれない、そう思った。

 

 実際彼女は蛇のバケモノに殺されかけた。

 けれど不思議と大丈夫だと思えた。

 男の強さがという意味じゃない。

 だが男は笑っていた。

 

 リリルカの顔が面白いと笑い、死にかけているのに何だよその動きはとさらに笑う。

 けれど男は常に彼女に見える位置にいて、稼いだら何を食おうか? お前は美味い店知っている? と能天気に言い放つ。

 何とも緊張感の欠片も無い。

 

 そして男は目的のレアを手にし、巨万の富をせしめたのだ。

 リリルカは呆気にとられた。

 ホブゴブリンの大きな魔石をいくつか隠した。

 そんな事がどうでもよくなるくらい、男はリリルカの手を取り、踊る様に叫んだ。

 やったぜ、これで金持ちだー!

 

 リリルカは久しぶりに大声で笑った。

 楽しくて、楽しくて。

 涙が全然とまらなくなった。

 男は笑い過ぎだとふて腐れた。

 存外器は小さいらしい。

 だから余計に笑えた。

 

 男は結局、リリルカを自由にした。

 あれだけ怖かったファミリアに行き、話の通じない団長を蹴り飛ばし、話しかけても一向にこちらを向かない彼女の主神が造った酒瓶を蹴り割った。

 彼女は思った。この人、もしかして頭のネジが飛んでいるのかと。

 

 そして、結局お前らは金が欲しいんだろう?

 ならいくらだとソーマが怒り狂う目の前に金貨の山を出してみせた。

 こいつが欲しいんだけどやめさせてくれよ。

 そう言い放ちながら。

 

 ソーマは言った。

 この者は誰だ、と。

 リリルカは乾いた笑いが出た。

 眷属とも認識されていないのに、自分は苦しみ続けている。

 この男なら、泣いて頼めばこの神を縊り殺してくれないだろうか?

 

 男は嗤うと、ならやめても問題ないだろうと結局は押し通した。

 お前は余計な口を挟むなとリリルカの手を握りながら。

 虚無と怒りの波が行き交う度に、潰れんばかりに握り返したというのに。

 男はただ手を握っていた。

 

 そして変な男、ライトに連れられ、彼女はホームを得た。

 汚いけどさー好きなとこで寝ろよなー

 ライト君、それは失礼すぎないかいっ!?

 

 そしてリリルカはまた笑った。

 この能天気でお人好しな男と、お人よしだがただただ優しい神様に囲まれて。

 

 自分は確かに救われたのだろう。

 けれど、と────ある時リリルカはライトに聞いてみた。

 どうしてリリを助けたのですか?

 貴方にとってそれは意味があるのですか?

 

 ライトはしばらくの間、口をむぐむぐとキナ臭い顔をし、そして言った。

 そんな難しい事オレに聞くなよと。

 困ったような、そんな表情で。

  

 リリは気まぐれで救われたんですか!

 そう怒って見せると、ライトはごめんごめんと苦笑いしながら、あ、そうだミア母さんのとこ行こうぜ! と話を露骨に逸らした。

 

 ────本当にダメで、見栄っ張りで、カッコつけで……本当に格好いい人だ。

 

 リリルカ・アーデは、確かに救われたらしい。

 彼の為になら、何を捧げてもいいとすら思える程に。

 

 リリルカは夕暮れの街を歩く。

 もうすぐミアハの店が見えてきた。

 

(どうせ、面白い事でも見つけて他の事を忘れてしまったんでしょうねっ! 本当に仕方のない人ですねライト様は。だから、リリがお傍にいないとダメなんです。リリも……)

 

 

 ☆

 

 

「あらいらっしゃいリリ。売り上げは纏めてある」

「こんばんはナァーザさん。はぁいつもながら凄い量ですね」

「まあ売れ筋だからね、今は。何だか複雑だけど薬師としては」

 

 リリルカが青の薬舗に入ると、薬師であり売り子であるナァーザが物憂げな表情でカウンターに頬杖をついていた。

 彼女はごそごそとカウンターの中から金袋を取り出すとリリルカに手渡す。

 

「しかしいつにもまして暗いですねえ? そう言えばミアハ様はいませんね」

「……………………」

 

 露骨にナァーザの顔が曇る。

 リリルカは思わず何かまずい事を言ったかと慌てた。

 

「ど、どうしたのです?」

「…………の」

「えっ? なんですって?」

「帰ってこないの! 一週間も!!!」

「ヒャア!?」

 

 普段のナァーザからは想像できない程の大音量が飛んで来た。

 微妙な雰囲気を取り繕うようにリリルカが事情を聞くと、一週間前にライトがやってきてミアハを連れだしたという。

 その際、一気に借金が減るなどと持ち掛けたという。

 その後一切の音沙汰が無いというではないか。

 

「あ、貴方のとこの団長のせいよっ!」

「ぐぎぎ……絞まってます絞まってますぅ!? アガートラムが痛い痛いっ!」

「あっ、ごめんなさい……」

「情緒不安定すぎますねぇ……リリも人の事は言えないけれど……」

「あ、そうね、貴方も同じだものね」

「ええ……一体どこにいったんでしょうね……」

 

 二人の溜息が重なった。

 その時青の薬舗の中にいた冷やかしの客が出ていくところだった。

 割りと派手な服装の女冒険者で、確かイシュタルファミリアの戦闘娼婦だったはずとナァーザは小声で言う。

 そんな二人の会話が彼女たちに聞こえた。

 

『ねぇ今日も行く? 行っちゃう?』

『そりゃ行くっしょ。最近その為に稼いでるまであるわ』

『だよねー? で、で? 今日はライ様? それともミア様?』

『どっちも超イケてるんだけどさー競争率ヤバくね?』

『それもステイタスってか?』

『ウケルー早くいこっ』

 

 そんな事が聞こえた。

 

「リリ、何か嫌な予感がします……」

「奇遇ね、私もそう思う」

「追いましょうっ!」

「待って、直ぐに店を閉めるから。見失わないように先行してちょうだい」

「はいっ!」

 

 

 ☆

 

 

 その店は繁盛していた。

 場所はオラリオの東地区の外れ。

 

 かつては辛気臭い雰囲気の漂うとあるファミリアのホームであった。

 そこはただ『酒蔵』と呼ばれた、ソーマ・ファミリアの本拠地である。

 

 しかし今は外観は全て最先端の建築様式が取り入れられた近代的な物だ。

 建物の前面は全て色とりどりの灯りを放つマジックアイテムが照らしており、暗闇の中に浮かび上がる幻想的な光景を演出している。

 

 正面の入り口の左右には赤々と篝火が燃え、そこを出入りする美しい女性達の群れが見えた。

 ドアの上には看板があり、こう記されている。

 

 ────ソーマ's シャングリラ

 

 ドアの隙間からは旅の楽団が奏でるオリエンタルなBGMが漏れる。

 そこが丁度見える茂みの中に犬人と小人の少女が潜んでいた。

 

「い、行きますか……」

「行くしかないでしょ……」

 

 そうリリルカとナァーザである。

 先行したリリルカにナァーザが合流した頃には既に日は落ちている。

 

 リリルカは若干苦悶の表情ながらも立ち上がった。

 さもありなん。彼女にとってこの場所はトラウマしかないのだから。

 よく見ればリリルカの手が小刻みに震えている。

 彼女の生い立ちを知っているナァーザは、大きく息をつくとリリルカの手を取り、そして一気にドアを開けた。

 

「ご指名ありがとうございますっ↑ ラ・イですっ Foo↑↑」

「あら、このわたしを待たせるなんて悪い子ね」

「ごめんね? けど貴女も悪いのさ。こんなにオレを魅了してやまない美貌の女神様だからね。心の準備が必要だったのさ」

「ふふっ、嘘ばっかり。魅了なんて効いていないくせに」

 

 リリルカとナァーザの前に凄まじい光景が飛び込んできた。

 中は所狭しと高級な革製ソファーによるボックス席があり、そこを泳ぐ様に派手な服装のイケメン男子達が見える。

 

 席には着飾った女たちがおり、イケメン男子は背筋が蕩けそうな甘いセリフで接待をしている。

 女たちの目はまるでハートでも浮いているかのようだ。

 頬を紅に染めて男達にしなだれかかり、男たちの手ずから酒を飲んでいる。

 

 さらにはそのフロアから数段上にある、やたらと高級感のあるボックス席には、人外の美しさを持つ女神が鎮座し、その横にはリリルカにとって非常に見覚えのある男が座っていた。

 

 透き通る様な銀髪をポニーテールに纏め、片方の耳には黄金のイヤリング。

 派手なアニマル柄のジャケットに、蛇革の革靴。

 そう、ヘスティアファミリアが団長、ライトである。

 

 リリルカの顎が地面まで落ちた。

 だが悲劇はまだ続く。

 

「ふっ、待たせてしまったかな? レディ」

「まあ! 貴方に接待されるなんて困ってしまうわね?」

「どうせ刹那の逢引だ。気にする事は無いだろう? 君の可愛い子供たちには嫉妬されるだろうが」

「ふふっ、まあいいわ。ではライト、いやライだったわね? いつものお願いするわね」

 

 ミアハだった。

 ダークスーツに身を包み、真っ赤なシャツは胸元が大胆に開かれている。

 彼は女神ことフレイヤの横に座ると、静かにワインを注ぎ、ニヒルに笑った。

 そしてライトがフレイヤに何事か頼まれると、彼はおもむろに立ち上がり、そして綺麗なバリトンで叫んだ。

 

「美の極致、愛の象徴フレイヤ様より~神酒オーダー入りましたァ!」

 

 その瞬間、フロアの男子達が一斉に立ち上がる。

 そしてライことライトの掛け声にいちいち合いの手を飛ばす。

 女たちも盛り上がり、ここにオラリオ初の神酒コールが完成したのである。

 

 さて種明かしをしよう。

 姿をくらましたライトだが、金の投資先として選んだのがまさかのソーマファミリアである。

 あそこは主神が造る酒に人生を狂わせた屑の巣窟だが、そこに付け入る隙があるとライトは考えた。

 

 整理をしよう。

 ソーマが下界で唯一興味を持つのは、神酒と言う最高の酒を造る事のみだ。

 逆に言えばそれ以外のどんな事柄も無価値。

 

 しかし神酒の材料は物凄くコストがかかる。

 単純に言えば金がかかる。

 そこでソーマは眷属を増やし、彼らに金を集めさせた。

 と言ってもただそれだけじゃ誰も動かない。

 

 だから失敗作を彼らに呑ませた。

 失敗作と言ってもそれはあくまで完成品の神酒を基準に言えば、でしかない。

 つまり人間が口にするには劇薬レベルで美味なのだ。

 

 結果、その酒に魅了された彼らはロボットの様に金を集める。

 だがソーマにとってその後は知った事では無い。

 材料が買える財力が確保出来ればファミリアには一切干渉しない。

 それが団長を筆頭とした幹部の横暴に拍車をかけたのだ。

 

 ならば、そのねじれを解決すればいいじゃん。

 ライトはそう考える。

 つまりソーマに潤沢な資金が恒久的に供給される事。

 そして団員は狂わない程度に神酒を飲める事。

 これが両立できるなら、別に悪事に手を染める必要ねーじゃん。

 ならマンパワー使い放題やん。

 そう言う事である。

 

 そこでライトはソーマファミリアに吶喊した。

 またあのヤベー奴がやってきたと団員は震えたが、それを無視してライトは薬草畑にいたソーマを引きずってきた。あまつさえ失敗品の神酒の瓶も勝手に持ち出し。

 

 戦々恐々とする一同を見渡したライトは、街で買い集めてきた物を机に広げる。

 大手の商家で見つけた世界各地のリキュール。

 それを使って失敗神酒のカクテルを作りだしたのだ。

 

 様々なカクテルを試す中、神酒の濃度は10%程度に抑え、いくつかの完成品を並べる。

 それを全員に試飲させた。

 無表情だったソーマが最初に表情を変えた。

 初めて飲む味だが、確かに美味かった。

 様々な酒をブレンドをする事で鮮烈なアタックがある事に驚いた。

 

 実はライトの中のおっさん。

 こう見えて入社から5年ほどは先輩社員にくっついて接待三昧だった。

 対企業営業において、酒は取引を円滑にするツールだ。

 そうなれば安い居酒屋なんかは使えない。

 高級ホテルのラウンジや会員制のバーなどが使われる。

 

 そう言う場所はあまり人に聞かれたくない会話をするにも適しているが、何より高級な酒が呑める。

 高い酒は高いなりの理由があり、それに纏わる歴史がある。

 たかがカクテル一つでも、それが生まれるエピソードが美しかったりするのだ。

 

 接待の相手がその蘊蓄を気持ちよく披露する事もあるし、接待が膠着した時に、会話のブリッジとしてライト側が披露する事もある。

 そう言う引き出しを増やすために、彼はプライベートで色々な場所で呑んだ。

 その経験を生かしたという訳だ。

 

 結局のところ、中毒症状を引き起こさない程度に薄めれば、当然原液より薄い分値段も安く飲める。

 ならばソーマファミリア自体で酒を提供する店をやり、ファミリア全体で金を稼げばいい。

 そうすればソーマの懐も潤うし、団員も酒に狂わずに生きられる。

 薄めた神酒は、店の運営に貢献した団員に、ソーマが褒美として下賜すればいいだろう。

 

 これにソーマは乗った。

 団員も賛同した。

 ライトはコンサル料として売り上げの10%で手を打った。

 これでウインウインである。

 

 だがそれでも、オラリオには酒を提供する人気店は色々ある。

 イシュタルファミリアが運営する繁華街などは、別に娼館だけじゃない。

 単純に酒を飲めるだけの店もある。

 それに豊穣の女主人の様な店もあるのだ。

 なのでただバーを経営しても上手く行く訳が無い。

 ましてここのホームのある場所は商業エリアからは遠い。

 

 そこでライトが提案したのは、ハイソな女性のみをターゲットとする店。

 つまりホストクラブである。

 ライトは直ぐに動き、街の工務店に大枚はたいて突貫工事をさせ、現代日本でライトが行ったことがある、六本木の超高級キャバクラの外装および内装を再現させた。

 中にいれる家具類も全部最高級品だ。

 

 そしてテーラーを呼んで団員たちの黒服やホスト用のスーツの採寸をし、これも大枚はたいて最速で作らせた。

 ファミリアの中でもビジュアル的に使えそうなやつをホストとし、残りを厨房や黒服へと割り振った。

 そして三日程の研修を経て店はオープン。

 

 ライトは出勤前の夜の女が集まる店に出向き、彼女たちと何となく会話しながら、話の中でさりげなくこの店の事を言うというステマを敢行し、若い娘の集まるカフェなどでも同じような事を繰り返した。

 極めつけはソーマに重い腰を上げてもらい、客寄せパンダにフレイヤを呼ばせた。

 ここが正念場やぞ、土下座してでも連れて来い。こう脅して。

 

 そうしてオープンしたソーマズシャングリラは一気に人気店へと躍り出たのだ。

 まあそれで貴方が神か! だの、アンタは俺達のボスだ! などと祭り上げられライトは調子に乗った。

 褒められるって、なんて気持ちがいいんだ……。

 完全に有頂天である。

 

 結果、自分もフロアに立ち、接待をした。

 更に人気が出て行列が出来た。

 ヤバイ、流石に人が足りねえ。

 あ、そう言えば貧乏だけど超イケメンいたやん。

 おーいミアハ様、こっちこいよ。いいから来いって。金ガッポガッポでナァーザに楽させられるぞ。

 仕方ないな、いいだろう。

 気が付けば源氏名であるライとミアが人気のツートップになっていた。

 こんな感じで今に至る。

 

「ミアハ様、帰りますよ」

「いやナァーザ、その……なんだ」

「帰りますよ、いいですね?」

「アッハイ」

 

 無表情に青筋を浮かべたナァーザが、ミアハの襟首を掴むと引きずって帰っていった。

 全く、ミアハのやつ尻に敷かれてやがる。

 ハハハと笑ったライトであるが────

 

「ライト様」

「おうリリ、どした。すげえだろ? コレ」

「はいそうですね。では帰りますよ」

「え、いやまだ営業時間がだな」

「帰るって言ってるんですが? 聞こえませんでした?」

「帰ります、はい」

 

 後にライトは語る。

 生まれてきてからこれほどに恐怖を感じた事は無かったと。

 おいちょっとまてよアーデ、そんな風に声をかけた元団員仲間その1には、

 

「あ゛?」

 

 ひと睨みで黙らせたという。

 そしてホームに強制送還されたライトであるが、リリルカに説教をされるかと思ったが、ただじっと見つめられながら、ポロポロと泣かれ、流石に反省したという。

 

 そして翌朝────ホームにやってきたティオナに無言の腹パンを数発受けて1週間寝込んだという。

 

「もうホストなんてこりごりだー!」

 

 目覚めたライトがそう叫んだとか叫ばなかったとか。

 

 

 




ベル「なんか静かですね。街の中に冒険者もいないしダンジョンとはえらい違いだ。」
イツカ神「ああ。連中はとっくにホームに帰ってんのかもな」
ベル「まっそんなのもう関係ないですけどね!」
イツカ神「上機嫌だな」
ベル「そりゃそうですよ! 団員は僕しかいないですけど、今日レベル2になったんですから!」
イツカ神「ああ(そうだ。俺たちが今まで積み上げてきたもんは全部無駄じゃなかった。これからも俺たちが立ち止まらないかぎり道は続く)」

キキーーーーーーーッ!!(馬車君迫真のドリフト)
唐突に現れた黒い冒険者が魔法を連射!
咄嗟にベルを庇うイツカ神

ベル「神様!?何やってんだよ神様ァ!」
イツカ神「グッ、うああああああッ!!!」ダーンダーン
冒険者「死~~ん」
イツカ神「はぁはぁ……なんだよ、結構当たんじゃねぇか……」
ベル「神様っ、ああっ、ああ……」

なんやかやあって
イツカ神「俺は止まんねぇからよ、ベルが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ…………」キボウノハナー
ベル「神様ああああぁ!!!」

冒険者ベル・クラネル
元イツカ・ファミリア所属(主神は天界に強制送還)
レベル2
【鉄華魂】(フリージア)
・決して散らない鉄の華 その精神は次元をも越える
・早熟する
・止まらねえかぎり道は続く
・前髪の一部が伸びやすい

こうしてベルの恩恵は凍結した。
だが彼の旅はまだ続く。
何故なら色褪せる事の無い強い想いが魂に刻まれたからだ。
ベルの道は平坦では無く、恐らく茨の道だ。
しかし彼は絶対に足を止めない。
それが、イツカ神の背中から学んだ、英雄の心だからだ……。

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