【本編完結】原作に関わりたくない系オリ主(笑) IN ダンまち 作:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次)
魂から欲した英雄への道のりはそれほどに厳しい。
────それはあまりに無謀で、愚かだった。
それでも変わらずに研鑽を重ねたベルは、遠き未来においてひとつの結実を見た。
あの男が背中で語った問い、辿り着くべきその場所へ、恐らくベルは至ったのだ。
ベル「答えは得た、大丈夫だよお爺ちゃん。僕もこれから頑張って行くから」
「で、これとかどうなんだろう? 見てくれよ」
「まーた貴方は面倒事を持ち込んで……いいわ、見せなさい」
ライトは久しぶりにヘファイストス・ファミリアの主神、ヘファイストスに会いにバベルへと来ていた。
バベルの中は地下はもちろんダンジョンの入り口である大穴があるが、上はギルドやヘファイストス傘下の店舗、更に上層は神々の利用スペースと、ただの塔という訳ではない。
ライトは別件でギルドのエイナに会いに来ており、その会話のなかでヘファイストスが上にいると聞き、これはラッキーとそのまま向かったのだ。
ヘファイストスの前にライトが現れると、露骨に顔を顰めたが、それは普段の素行から考えれば仕方のない事だろう。
というのもヘスティアのホームの地主は元々は彼女であるし、神友であるヘスティアがオラリオで独り立ちできるまでの間、彼女はかなり胃を痛めたのだから。
その原因は主に目の前のこのヒューマンであるのだが。
そんなライトは彼女の心労をよそに、次々とテーブルに武器を並べていく。
もちろんこれらは彼が”増やした”武器であった。
基本的にFF3の装備類はジョブの縛りがある。
ライトの忍者にしても、殆どの装備が利用できるが、一部使えない物も存在している。
なのでライトは金儲けの手段として消耗品のみとしていたが、最近の彼はホームに引きこもっている事も多い為、料理に勤しむ事も多い。
そうなるとカルガモの親子の様についてくるリリルカや、最近料理に目覚めたと言うティオナなども一緒にやりたがる。
ライトは自分が使うための包丁しかなかったので、じゃー使えるか分からんが出してみるか~と増やした短剣を包丁代わりに彼女たちに渡した。
それはオリハルコンという名のオリハルコンで出来ているナイフだ。
こやつは名前の通り、劣化にも強い硬さを持つが、付加効果でHP吸収が付いている。
なのでモンスターを攻撃すると割合回復するという、オラリオならばかなりエグいナイフだ。
二人ともライトから貰ったとはしゃぎながら包丁として使ってみたが、切れ味が良すぎてティオナがまな板ごと割るという結果となり、料理にはNGという事になったが。
その時ライトはティオナに「おお、同族を割ってしまったなァ」等とデリカシーの欠片も無いギャグをかまして無言の腹パンを受けたのは余談である。
結局料理には使えなかったが、シーフと忍者しか装備できないオリハルコンを、オラリオ住人の彼女たちが問題なく使えた事で、もしかするとここの連中にはジョブ縛りは関係ないのかもしれないと分かったのである。
因みに料理にはNGだったが、ライトがくれたという理由で、彼女たちは返却を拒否し、それぞれ嬉しそうにしまい込んだという。
さてそうなるとだ。
新たなメシの種が出来たじゃあないかとライトはほくそ笑んだ。
何故ならポーションビジネスの売り上げが頭打ちになり、とある理由で市場に放出する量も抑えたからだ。
本日エイナの所に来たのもそれが理由だ。
要はライト産のポーションのせいで割を食う薬師がいる様で、そちら側からギルドにクレームというか、陳情があったらしい。
ミアハやディアンケヒトという、ポーションの小売りをしている組織はそれほど問題は起きていない。
それはファミリア単位の大口取引等もあるため、一時的に大量のポーションが必要になる事もあるからだ。
だが問題は、細々と生産している個人レベルの薬師であった。
彼らは個人で素材を集めてポーションを作り、それを大手に買い取って貰う事で稼いでいる。
けれどもどんな無茶なオーダーでも直ぐに対応できるライトのポーションと言う存在は、小口の取引は必要無いという流れに傾けた。
なので魔石やヴァリスという通貨すら管理しているギルドが間に入り、ライトに交渉をしてきた。
結果、商売自体禁止になると色々アレだという理由で、ライトは納入先の規模に合わせた売却上限を月単位で設ける事にした。
それでも相当な金額であるし、小口の薬師も職を失わないで済む。
妥協点としてはどちら側にも納得できると言ったところか。
ライトの悪辣な所は、そう言った個人の薬師たちに情報交換と称し、ライトの財布で定期的に宴会を催すところだ。
その場で高い酒を飲ませ、愚痴なんかを聞き、オレはお前らの事をちゃ~んと考えているんやでというポーズを見せるのだ。
個人的には色々アレだが、心情的にこの人は味方……? みたいな錯覚を起こす為、それほど強くギルドに訴え出たりはしていないのだろう。
それはそれとして、だ。
減った利益は他で出さねばと考えたライトが、次なる飯の種として武器に手を付けてみたという訳だ。
これも自分で店舗を構えたりすれば、当然武器ブランドとしても名高いヘファイストスファミリア、或いはゴブニュと言った老舗とも利益の対立を起こす。
故に、だ。
ヘファイストスの店においてもらえばいいじゃない^^
そう考えた訳だ。
投資・企業コンサルタントという胡散臭いにも程がある名刺を持つライト。
完全に行動が寄生虫のソレである。
「貴方ね、鍛冶屋に喧嘩を売りに来たのかしら? こんな物ホイホイ出されたら、見習いたちがやる気を無くすわ……」
「え、そんなに?」
「当たり前じゃないっ! 特にそうね、コレとコレは大人の事情で絶対にウチでは売らないし、他で売ろうとしたら全力で阻止するわ……」
ヘファイストスがキャラ崩壊させながら指を刺したのは、ルーンの杖とエクスカリバーである。
どっちも見栄えがいいからと言う理由でライトが出した。
エクスカリバーは素の攻撃力が160もある立派な剣だが、密かに力のステータスに補正がかかる効果がある。
ルーンの杖に至ってはブリザガが使える様になる。
ダメが出された理由は、エクスカリバーがそもそもなんの金属を加工しているか、神であるヘファイストスでも分らなかった事。
そしてルーンの杖は当然、エルフを敵に回す様な効果があるからだ。
ただヘファイストスは散々怒鳴った後、目を逸らしながら小声で「……け、研究用に私が買うわ」と言い、かなりの大枚をはたいて購入した。
やっぱ好きなんですね~と煽ったライトは拳骨を落とされた。
どうしてこの男は一言多いのだろうか。
結局この商談は、ナイフに属するいくつかの武器を定期的にヘファイストスが購入する事になった。
オリハルコンとマインゴーシュだ。
マインゴーシュは中級くらいまでの冒険者のサブウェポンとしての需要が見込めるという理由で。
そしてオリハルコンは打ち直して別の武器を作る為の素材としてだ。
オリハルコン自体、ここにも存在はしているが、希少性は当然高い。
故にインゴット扱いでヘファイストスは買うと言う。
そうして商談は纏まり、二人は顔を見合わせてゲヘヘ……とゲス笑いを交した。
そんな時だった。
「神様、ちょっといいか。って客がいたか」
「あら、別にいいわよ。今終わったから」
「そうか、ちょっとこの武器を見て欲しくてな。悪いなお客人、ちょっと邪魔するぜ。って……アンタかよ」
入ってきたのは勝ち気な顔をした赤毛のヒューマンだ。
ヴェルフ・クロッゾ。ヘファイストス・ファミリアに所属するレベル2の冒険者兼鍛冶師である。
ライトはヘファイストスに入れて貰った茶を飲みながら、どうぞどうぞと場所を開けた。
ライトは以前、ヴェルフと顔を合わせた事がある。
と言ってもソーマ・ファミリアの店を開店する時に、ホストが足りずに街に出てスカウトをしていた際に、たまたま通りかかったヴェルフに声をかけたと言うきっかけだが。
俺は鍛冶で生きてんだ、すまねえなと爽やかに断られた後に、あ、あいつがヴェルフかとライトは気が付いた。
(……うーん。原作のキャラだってのは覚えてる。ベルのパーティだったというのも。だがっ……!)
だがじゃないが。
ソファーに座り何となく神と子の微笑ましい交流を眺めていたライトだが、ふとヴェルフの横顔を見て感ずるものがあった。
それは、
(やっぱうん、こっちの生活が楽しすぎて、肝心の原作の細かい内容忘れちまったゾ)
それである。
例えば暗記出来る程に読みこんだ本ならばそんな事は無いだろう。
ただ仕事に埋没する忙しない社会人だったらどうだろうか?
そう、少ない休みで気に入ったラノベを読んだ所で、その後時間が開けば当然うろ覚えレベルになるに決まっているのだ。
(よっしゃ……気にしない事にしようっ)
ライトは考えるのをやめた。
いくら身体が十代レベルまで若返ろうと、オツムは残念な物である。
ただ────と、ライトは整理する。
ヴェルフは魔剣を打つ鍛冶師だか貴族だかの末裔で、現役で魔剣が打てる珍獣。
故にゲスが寄ってきて色々面倒臭い事になってたはず。
でもたしか、ダンまち基準の魔剣って基本は消耗品寄りのアイテムだったはず。
んで、ヴェルフはその中でもスゲーのを現地で完成させて云々……。
ああ、もう無理。
整理した所でその程度だった。
これじゃあ特に意味はない。
そう諦めたライトだが、
「あら、結構いいじゃない。後はそうね、近道としてはレベルをあげる事かしら。まあ貴方自身もそれは理解しているようだけど?」
「いや、まあ、そうだな。早く強くなって、神様、アンタにすげえ武器をみ、見せてやるよ」
(あっ、ふーん(察し) そうだ、そんな感じのアレがあったな。これは……面白いな)
そしてライトは密かにほくそ笑んだ。
新たなる飯の種、いや、この場合はいい娯楽が思いついたのだ。
「んじゃヘファイストス様よ、また来月持ってくるから、今回の代金は後でリリに取りに来させるから準備しといてくれ」
「あ、ごめんなさいね。受付に話を通しておくわ。リリルカさんにもそう伝えておいて」
そしてライトはそそくさと店を出ていった。
ニヤニヤと笑いながら。
☆
「あいや待たれいっ!」
「ファッ!?」
神との用事を終えたヴェルフがバベルを出た瞬間、いきなり大声で制止された。
見ればさっきまで同じ部屋にいた、赤い人ことライトであった。
いつもの様に赤いニンジャスーツにメンポ。
そんなライトが”そこまでよっ!”という感じのポーズで立っていた。
「な、なんだよ驚かせるなって。一体どうしたんだ? 何か俺に用か?」
「お前、この後時間あるか?」
「まあ特に用事は無いが……」
「だったらちょっと付き合え。飯いこう飯」
「別にいいけどよ、あんまり持ち合わせはねえぞ?」
「このライト、貧乏人に財布を出させる狭い器量ではないのだ!」
大概シツレイな話だが、結局ヴェルフはライトについていった。
それ程どころか一瞥程度の関係だが、ライトの武勇伝は街に知れ渡っている。
故に面白そうだ、と思ったのだ。
実際料理屋へ向かう道すがら、ヴェルフの方から話しかけてみると存外面白い奴だと分かった。
ところどころ意味の分からない固有名詞を連発されると困ってしまうにしても。
そして着いたのが冒険者の間では定番の”豊穣の女主人”である。
「お前、酒はいけるクチか?」
「まあな。そんなに量は行けないが」
「んじゃ適当でいいな。おーいシル店員、オレとこいつにいつもの酒を。後は予算がこの位でお任せで頼むぜ」
「はーいっ! ねえねえライトさん、お酌はいるっ?」
「お前はあざと可愛いけど今日は遠慮してくれ。男同士(意味深)の集いだからな」
「むーっ、でも後で絶対呼んでね?」
「はいはい」
店の奥の角にある席。
そこがライトのいつも座る場所だった。
ひそひそ話をしやすいし、店内を見渡せるから都合がいい。
お前はゴルゴ13か。
「随分慣れてんだな?」
「ああ、まあうちのホームからすぐだしな、ここ。場末の居酒屋で悪いが、酒も飯も美味い」
『誰の店が場末だっ! 叩きだすよっ!』
「おいヴェルフ、失礼な事言うんじゃないよ」
「言ってねえよっ!」
「まあいい。まずは乾杯だ」
ライトがここに来た時の定番とも言える、店に悪態をつきミアに突っ込まれる儀式をこなし、彼はグラスを掲げた。
つられてヴェルフも掲げ、そして首を傾げる。
「で? 何に乾杯だ? 男二人が顔を突き合わせて出会いに乾杯ってこたぁねえだろう?」
「そうだな、恋に乾杯ってどうだ?」
「はぁ?」
「まあいい、オレに任せろ。恋に乾杯っ!」
「こ、恋に、か、乾杯……恥ずかしいわ」
「ら、ライトさん、もしかしてその恋とはシルとの……?」
「お前は仕事しろ」
「はーい……」
そんな茶番をポカンと眺めつつ、ヴェルフはグラスを傾けた。
一瞬目を丸くする。存外美味かったようだ。
「まあ恋バナをしに来たのはあってるんだ」
「なんで俺となんだよ」
「おまぁ…………あの神様のこと好きだろ」
「ブハッ!?」
「きたねえな。まあ落ち着け。さっきのやり取りを横から見てて思ったんだな。ハハーン、この野郎、ヘファイストスの事好きだなってね。このメルヘン野郎が。装備にふざけた名前つけやがって」
「ね、ネーミングは関係ねえだろうが……」
結構気にしていたらしい。
ヴェルフは噴き出した酒を拭いながら誤魔化す様に目を逸らした。
そしてどうにか落ち着くと、ライトを睨む。
「ま、まあその、なんだ、俺があの人を、す、好きだとして……」
「ピュアかよ」
「うるせえ! だとしてそれがお前に何の関係があるんだよ」
「ねえよ。でも面白そうだろうが。人の恋路を横で見ながらニヤニヤするのは愉しいだろうがッ!」
「とんだクソ外道じゃねえか!」
ニヤニヤしつつライトはヴェルフにまあ待てと話を切ると、
「オレに任せろ。こう見えてオレは恋多き男なのだ。完璧なアドバイスと、神と人間という溝多き間を埋める方策を指南してやる」
「お、おう、マジか……」
立ち上がりビシィッ! とヴェルフを指さすライト。
思わずごくりと息を飲んだヴェルフだったが、その勢いに負け、ライトに洗いざらいヘファイストスへの想いを吐きだすと、気持ちよく帰っていった。
「ヒック……んじゃ師匠、マジで頼んますっ!」
「おうおう、オレに任せておけぃ! んじゃ気をつけて帰れよ。明日にでもうちのホームまでこい。作戦会議だ」
「あざーっす。俺ァやってやりますよぉ……待ってろ神様、へへっ、へへへっ……」
そうしてヴェルフは千鳥足で帰っていった。
その後ろ姿をうむうむと頷きながらライトは決意する。
その恋、成就させてみせようじゃないか、と。
ライトの次なる飯の種アイデア。
それは冒険者たちのカップリングを行う飲み屋の経営である。
ソーマファミリアのホストクラブ成功を経て、第二のスマッシュヒットを狙うやり手コンサルタントことライト・ニンジャここにありである。
しかし天の声としては勿論この後に”だがこの事がやがてあんな悲劇を産みだすとは云々”と付け加えざるを得ない事をここに記す。
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優しい世界のおまけ枠
ところ変わらず日時だけが違う豊穣の女主人。
店内の片隅では、とある神と子がくつろいでいた。
ヘルメスファミリアの主神ヘルメスと、ファミリアの団長のアスフィ・アンドロメダである。
中堅どころのファミリアだが、仕事の関係で主神がオラリオにあまり居着かない為、たまに戻ってくると眷属孝行がてら、こうして食事に来る。
特に最近のヘルメスは多忙を極めていた。
とある懇意にしている相手から受けた依頼が滞っているからだ。
勘の良い読者ならもうお気づきだろうが、ベル・クラネルの監視や試練を与える云々の事である。
ある時まではベルの姿を追えたのだが、とあるファミリアの眷属となり、そこでファミリア同士の抗争に巻き込まれた後、ベルは行方をくらましている。
死んではいないのはわかるが、何せ行先の痕跡を掴ませないのだ。
こればっかりはヘルメスをもってしても中々に苦労している。
「…………はぁ、中々ままならない物だね」
「それは貴方の普段の行いの結果かと」
「辛辣だねえ相変わらず。それよりも、ククッ、聞いてくれよ」
「どうされました?」
「いやね、天界で大流行の競技があるって言っただろう? クククっ」
「ええ、確か、やきう?」
「そうそう、そのやきうなんだけど、最近シーズンが終わってさ、天界のチャンピオンを決める決定戦を俺の贔屓のチームが優勝したんだ。ちなハムだけど」
「(ちなハム?)はぁ、それが気持ちの悪い含み笑いを零してしまう程に嬉しかったと?」
「やめて。ナチュラルに俺の心をエグってこないでくれるかい? まあ聞いてくれ」
嬉しそうにヘルメスが語ったのは、7戦で4勝した方が優勝と言う決定戦で、彼が贔屓にしている天界ハムパンターズが最終戦までもつれたが、久しぶりに天界一の栄冠を勝ち取ったという話だ。
相手のチームも相当に善戦し、その結果の勝利の為、ヘルメスもご満悦だ。
しかし急に含み笑いを漏らしたのは、先日の神会で久しぶりに会った神友の一人が、天ハムと同じリーグに属するロッチオーランズのファンで、ハムの優勝に喜ぶヘルメスに「お前はいいよなぁハム強いし。うちはいつ優勝すんだよ……」とボヤいた。
確かにここ最近のロッチは微妙だった。
一気に楽し気な雰囲気が霧散する。
それを嫌ったのか、一人の神が彼を元気付ける様に「天界歴2005年の優勝があったやろ!」と震えた声で言った。
それが呼び水となって爆笑の渦に包まれたのだ。
その年の決定戦はロッチの4戦ストレート勝ちの完璧な優勝だった。
しかし笑いに包まれたのはそのスコアである。
第1戦 ロッチ 10 ー 1 番神
第2戦 ロッチ 10 ー 0 番神
第3戦 番神 1 ー 10 ロッチ
第4戦 番神 2 - 3 ロッチ
相手の番神トラザンスは、完封負けを含むとんでもないスコアで負けた。
その合計点は33-4である。
最早やきうのスコアとは思えない大差だ。
「それでその場は大爆笑さ。いやーあれはヤバかった」
「へぇ、その大差、えっと33-4でしたっけ」
「そうだよアスフィ、33-4さ」
「33-4、なるほど33-4。不思議ですね、何度も言いたくなります」
「そうだろ? 何かこう笑いを誘うのさ。33-4あそれ33-4!」
ガタッ
瞬間、ヘルメスたちの後方の席から激しい音がっ。
見れば唇を噛みしめワナワナと震えるロキであった。
「なんでやっ! 番神関係ないやろっ! ええ加減にせんかい! 事あるごとにトラの事ネタにしおってからに……おのれヘルメス、ブチ殺すっ」
怒り心頭のロキがブチ切れてヘルメスに殴りかかった。
慌てたフィンとリヴェリアがロキを羽交い絞めにしてどうにか最悪の事態は免れた。
その後、さらにブチ切れたミア母さんが両者を外に叩きだし、以降1か月間、ロキファミリアとヘルメスファミリアは出禁となり、ハウスルールとして豊穣の女主人の店内では番神ネタはご法度となったのである。
アスフィ「(33-4 33-4 ふふっ……)」
一部気に入った者もいたとかいないとか。
ベル「ああ。時間を稼ぐのはいいが────別に、アレを倒してしまっても構わないんでしょう?」
遠坂「────ええ、遠慮はいらないわ。がつんと痛い目にあわせてやって、ヒーロー」
ベル「そうか。ならば、期待に応えるとしますかっ」
当然無理でした。