【本編完結】原作に関わりたくない系オリ主(笑) IN ダンまち   作:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次)

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例えば超高層ビルの屋上から、大型トレーラーを落としたならどんな音がするだろうか?
それがいま、周囲の人間が聞いた音の規模だ。
そしてそれはおよそ人間が出せる物ではなかった。

────勿論それは、図らずもこの光景を目撃した有象無象の人間の主観に過ぎない。

夜の新宿の街は不夜城と称される様に、いつまで経っても明るい。
老若男女の隔てなく、欲望が渦巻く場所だ。

最初に異変に気が付いたのは、新歓コンパの二次会へ向かう学生の集団だった。
彼らのうちの一人が突如足を止めた。
そして何故か身体がガタガタと瘧のように震える。
それは周囲のいた学生たちにもこの不思議な反応が伝播した。

彼の視線の中に見えたのは、二つの空間の歪みだった。

このテクノロジーの飽和した時代に、オカルトは過去の遺物か人々の娯楽でしかない。
現実にオカルトが介在できる余地はとうに消え失せた。
だが彼は、そうとしか表現出来なかった。

勇次郎「ほぉ……これはこれは、思いがけず歩いてみるもんだな」
ベル「こっちはそんな気は無いんですがね……良い夜です、このまま大人しく……は返してくれないんでしょうねぇ……」
勇次郎「…………邪ッッッ!!」
ベル「ファイヤァ……ボルトォッッッ!!」

黒と白が激突した。


それでは恒例の、ライトさーんチェック!

「ではっ! ここからの時間はフリーーーーータイムッ!! 紳士淑女の皆さん、しばしご歓談をっ!」

 

 妙にテカテカしたジャケットに、どこで売ってるのか逆に知りたくなる程にデカい蝶ネクタイをしたライトが、ひな壇の上でそう叫ぶと、左右に分かれた男女が思い思いのテーブルに散っていく。

 

 ライトは早速淑女に突撃していく男性陣を微笑まし気に眺めると、少し離れた場所にある本部席に戻ってきた。

 

「いや~ライト君、大盛況じゃないかっ! 見なよヘファイストスのあの顔をさ。あんな乙女な彼女の顔なんか見た事無いよ」

 

 本部席には山盛りの料理と勝負する残念な美少女がいた。

 というかヘスティアだった。

 

 なにせこのイベントの協賛には豊穣の女主人の名前がある。

 厨房ではミアを筆頭に、大量の料理が生産されているのだ。

 ゆえにここで提供されている料理は素晴らしく美味い。

 

 この会場は実はバベルの上層階にある。

 つまり神々の領域である。

 だが今回の催しにテンションをあげた神々が、特例として許可を出したのだ。

 

 ここは相当に広い大広間であり、神々が会議をしたりする際に利用される部屋のうちの一つだ。

 勿論さすがに神会が行われるフロアよりも下にはなるが。

 それでもこの盛り上がりを見れば、いかに神々が今回のイベントを楽しみにしているかが容易に知れるという物。

 

 さてこのイベントであるが、ファミリアの主神に恋する男性冒険者、その逆も然りだが、要は神様に恋しちゃった系男子にきっかけを与えるという物である。

 そのタイトルは────ジャーニン竃団(かまどだん)────である。

 

 ジャーニンことニンジャ、いやライト・ニンジャが主催した。

 実はライト・ニンジャは神々に注目されている。

 と言ってもアイズの様な冒険者としてという意味では無い。

 単純に「コイツ何するんだろスゲー面白そうなんですけどー」的なノリである。

 

 そもそも神々の殆どは退屈を持て余している。

 故に神聖なはずの神会では、レベルアップした子供たちに二つ名をつける際に悪ふざけ全振りに傾くのだ。

 それで泣きを見ている子供も実際大勢いる。

 

 それを先に察知し、勇者と言う二つ名をゴリおしたロキファミリア団長は流石だろう。

 もし彼がそれをしなければ、腹グロショタ等と呼ばれていたかもしれないのだ。

 

 つまり神々は退屈しのぎに地上に降りた癖に、まだ退屈だとのたまうのだ。

 故にライトが巻き起こす騒動の類いは彼らの刺激になるという。

 ソーマファミリアの一件などはまさにそれだ。

 

 ────ほう、荒れそうな流れを斜め上の方策で回避するか……

 

 と、ほくそ笑みながら眺めているダンディ系神様なんか1%くらいで。

 ほとんどは、

 

 ────ウケル。あいつ頭おかしいwwwww

 

 くらいのノリで腹を抱えて笑っていたという。

 それ以前に、傲慢不遜にも神であるソーマのケツを蹴り上げ、店の客寄せパンダにする為に、フレイヤを呼ばせた一連の流れは伝説扱いである。

 

「頼むフレイヤ、一時間ほどでいいから、えっ、面倒臭い? なんでそんな事に私が行かなきゃ? う、煩いッ! 私の命と尊厳がかかってんだっ! 来てくれりゃいいだろうがっ! は? 失礼だと? てめえオッタル今神と神の話中だ、すっこんでろ。うるせえ! 酒狂いで悪かったなこの垂れ乳がっ! お前魅了なかったらただのBB……すまん取り乱した。あーもうわかりましたっ! 何でもするんで来てくれませんかねえ!?」

 

 鬼気迫るソーマの見事なキャラ崩壊っぷりにフレイヤが折れたのだ。

 そうさせたライトの評判はグングン上がった。

 

 ────何あの男鬼畜過ぎワロタwwwwwwwww

 ────汚いな、流石忍者きたない

 

 等の称賛の嵐である。

 要は神々はあいつが何かすると必ず面白い物が見れそうと考えたのだ。

 そんなライトがヘスティアを介してギルド上層部、つまりウラノスや神々に今回のイベント企画を持ち込んだ結果、翌日には許可が下り、かなりの大掛かりな準備も協力的であった。

 

 さて会場を見てみよう。

 ただ無駄に広いだけの広間はいくつかのブロックに分けられている。

 中央の一番広い区画は、ギリシアの神殿を彷彿とさせる様式の豪華なパーティ会場。

 壁を挟んで右側は特別に設えられた巨大厨房。

 左側は関係者席というか神々が飲み食いしながら会場の様子を眺める為の第二パーティ会場か。

 そして会場の一番奥の裏側にはライト達ヘスティアファミリアがいる主催者本部席である。

 因みに本部にはギルドからの関係者としてエイナ職員がいる。

 

 神々のこの催しに対する本気度が分るのが、リアルタイム映像とその映像を記録するマジックアイテム及び、一部の神々の権能を解放している所だ。

 神々が歓談する第二会場には、大型モニターの様な水鏡が空中に浮いており、会場の様子を余すことなく映し出している。

 勿論これは本部席にもだ。

 

 そして現在、10対10の男女に分かれての攻防戦が行われている。

 その模様は全てモニターに映っているが、後ほどこれらが編集されて神々に配られるため、ライト達主催者は、特別なマイクを通して解説などを行うように神々より命令されていた。

 

『さあそれではフリータイムの様子を窺っていきましょうかリリルカさん』

『はいです。まず注目すべきは当然、大手ファミリア主神であるヘファイストス様とその眷属であるヴェルフ様でしょうね。見てくださいよあの神様。普段は男装の様な姿なのに、今はAラインの見事なドレスで着飾っています。その上あの胸元、バッカー開いてます。完全に狙っています。そうですヴェルフさんをッ。あれは完全にメスの顔です。リリには分かります』

【なにあの小人、辛辣すぎひん?】

【いや逆にアリ、だな。是非我が眷属に改宗して、日々罵ってほしい物だ……】

『外野はさておき、あそこだけ別世界になってますね。他の男子が近寄れません。おーっとここでヴェルフ、鍛冶についての思いを語りだした! 熱い熱い自分語りは大概ウザがられますが、見てくださいヘファイストス様の頬を。真っ赤です。これはもう告白タイムは必要ないのでは? どうですかヘスティア様、ご友神としては?』

『うん、うん……このトマトベースのパスタは凄いね。シンプルな野菜なのに鮮烈。そしてひき肉の旨みが更に味に深みを与えている。流石はミア母さん。一品ごとの単価の高さは、なるほど、この味を支えるコスト故って事だね。うん、ボクは満足したぜライト君。次は肉料理を所望するよ』

【ロリ巨乳のやつ話聞いてねえじゃんwww】

【自由か! お前の食レポとかどうでもいいしwwww】

【ドヤ顔なんだけど口の周り真っ赤で草ww】

【お前草に草生やすなし】

 

 完全に盛り上がっている。

 というか神々のコメントが非常にウザいが、これは平常運転である。

 

 さてライトが主催するこの宴だが、実はヘファイストスとヴェルフ以外の参加者は、企画の趣旨をいまいちよく分かっていないサクラである。

 神々の興味もあの堅物ヘファイストスの恋路を出歯亀したいが為である。

 

 と言ってもただの人数合わせな訳でも無い。

 一応サクラの参加者には気に入った相手がいれば好きに動いていいとされている。

 ただ告白タイムの並び順はヘファイストスが最後になる様に決められているだけだ。

 クライマックス、そこをドラマティックに演出し、もしOKならば、袖に準備されている楽団が奏でる音楽に合わせて神々がエンダーーーー! と乱入する手はずになっているのだ。

 流石ライト、考えることが鬼畜である。

 

 ついでにこれを雛形として今後行われるカマド団イベントは、必ずヘスティアファミリアが一枚噛み、その都度利益を貰うという裏約束をライトと神々は交している。

 つまり初回のコレはただのエサに過ぎず、今後定期的に行われるであろう恒常イベントが本命なのだ。

 

 ────いやー他人の金で興行できて金も貰えるとか最高ですわぁ

 

 とはライトの談である。

 さてサクラも含めた会場は盛り上がっている。

 男は精一杯のカッコよさをアピールし、女性陣は普段のキャラは一時封印、精一杯の女を見せる。

 そしてここで、

 

「はーい注目っ! ここでとうとう告白ターーイムッ! はいはい、全員ステージの上で整列をお願いします。右が女性陣で左が男性陣。そこで男性陣に質問だっお前ら最高のアピーーールは出来たのかぁ!?」

「「「お、おーーー……」」」

「はいでは女子の皆さ~ん、お目当ての殿方は見つかりましたか~?」

「「「…………///」」」

「こっれっは、期待できそうですね、リリルカさん」

「ですね! ではライト様? 早速」

「はい、では行きましょう! じゃトップバッターはなになに……えっとソーマファミリアのカヌゥ君だっ! 自己アピールはキュートな耳だそうで、よく恥ずかしげも無く書けたなオイ……ではどうぞ!」

「あ、あの、最初から決めてましたっ、アルテミス様、結婚してくださいっ!」

「ちょっと待ったーーー!」×8人

 

 一斉に男性陣が青髪の少女、女神アルテミスの元に殺到。

 すぐ契りたガール事アルテミスはあざといまでの狼狽えっぷりである!

 ライトは「というかカヌゥよ、どうしてイケると思ったのか」と小一時間ほど問い詰めたい衝動に駆られた。

 そして結果は────

 

「ごめんなさいっ、私は年下で英雄願望のある少年が好みなのだっ」

 

 最悪である。

 なぜここに来たし。

 一同の声にならない感想がシンクロする。

 おいヘスティア、お前の神友だろ、どうにかしろ。

 神々はそう思った。

 

 しかし雰囲気が微妙な感じになった。

 何故ならアルテミスの後に8人のサクラ女性がいるのだ。

 勿論本命であるヘファイストスは抜いてであるが。

 いくら日当を貰ったサクラの女神たちとは言え、何かこう女神の存在意義が否定された気分である。

 

「あー……、では気を取り直して。赤髪純情ボーイことヴェルフ君、さあどうぞ!!」

 

 瞬間会場のライトが落ちて暗くなり、ヴェルフとヘファイストスがピンスポットで浮かび上がった。

 完全に贔屓丸出しの特別な演出である。

 そしてライトがバチコーン☆と袖にウインクを飛ばすと、やたらとムーディなBGMが流れた。

 因みにこれはライトがホイッ〇ニーヒューストンの例の曲を限りなーーーくそれっぽくアレンジしなおしたパチモンである。

 何というか中国製のパチモン臭がするが、オラリオの住人には新鮮な曲としか聞こえないのがミソである。

 

「あ、えっと、神様……俺を……魔剣で狂っちまったこんな俺を拾ってくれて感謝してるぜ……」

「ああ、うん、そうね。あ、当たり前よっ、救いを求めている子供を放っておけるなんて出来ないから……その」

【あまーーーーーいっ!】

【まだはえーよwwww】

 

 伏し目がちな主神の前に立ち、声は震えているが、真っ直ぐな視線のヴェルフ。

 ごくりと彼女の喉が鳴り、普段の様子は鳴りを潜めている。

 

「俺は鍛冶師としてはまだ二流以下なのは分かっている。越えなきゃいけない壁は当然目の前にいるアンタだ。けど、それ以上に俺ァ……その、アンタと一緒にいたいんだっ! 寿命とかさ、色々障害があるのは理解しているよ……けど、俺が生きている間、アンタの横にいさせて欲しいっ!!!」

 

 ライトがカメラマンに指示し、二人をパンさせる。

 第二会場はいまや興奮のるつぼである。

 

 真っ直ぐに気持ちを吐きだしたヴェルフが一歩、彼女に歩み寄る。

 だがヘファイストスはすっと視線を逸らせると、一歩下がった。

 彼女の目が悲し気に揺れる。

 

「ヴェルフの気持ちは嬉しいわ。神である前に私も女よ……けど、貴方も知っているでしょう? この眼帯の意味を」

 

 呟くような彼女のセリフ。

 一瞬その目に憎悪と諦めが浮かぶ。

 

 観覧している神々も気まずそうに目を逸らす。

 というのもヘファイストスの目は別に怪我を負っている訳でも失明している訳でも無い。

 ただ醜いのだ。

 

 彼女のその醜さを、過去に周囲が嫌悪した。

 神々とはその強大な権能をもつ人外の存在だからこそ神なのだ。

 この世の全ての理から外れた彼らは、逆に言えばルールに縛られないアンタッチャブルな存在なのである。

 

 つまり悪意なく傍若無人な事をやってのける。

 例えばヘファイストスの目が醜ければ、そのままストレートに醜いから見せるなと言ってしまう程。

 この目は神々だけではなく、眷属すら恐怖させた事もある。

 故に彼女は眼帯をする様になったのだ。

 

 余談ではあるが、神話の中の彼女のモデル、ヘーパイストス。

 彼は恐らく、オリュンポスの神々の中でもかなり悲惨な部類だろう。

 色々な説があるが、有名なのは産まれた段階で足に酷い奇形があり、母親であるヘラに嫌悪され捨てられ、海に捨てられた。

 

 その時は海の女神に拾われ事無きを得たが、その後アルケイデスの試練の最中にいらんことをしたヘラがゼウスの怒りに触れ、それを健気に庇った彼は天界から地上に投げ落とされている。

 その結果奇形の足は完全にダメになったとも言われている。

 そしてアフロディーテと結婚すれば浮気され、とにかくロクな神生じゃあない。

 

 だが、ヴェルフは前に出た。

 顔を背ける主神の肩を掴み、抱き寄せた。

 呆気にとられる彼女は思わずヴェルフの顔を見上げた。

 

「関係ねえ」

「えっ?」

「関係ねえって言ってんだっ!」

「あっ!?」

 

 その場にいた者は一部を除いて絶句した。

 何故ならヴェルフがヘファイストスの眼帯を取ったからだ。

 確かに彼女の目は醜かった。

 

 人の顔の構造は、必ず左右非対称になっている。

 ぱっと見た限りは同じように見えても、実は差があるのだ。

 とは言え脳が補正を掛けて視界の中を判断する関係上、普通はあまり気にならない。

 

 だが彼女の目は明らかに大きさが違い、瞳の色も淀んだ様な何とも言えない色合い。

 理由は分からずも、生理的な部分で受け入れがたいという概念的な醜さと言えるだろう。

 だが、慌てて身じろぎするヘファイストスを強引に抱きしめたヴェルフは吠えた。

 

「だから関係ねえんだって言ってるだろ? 醜い? 知らねえよ! こんな眼帯が付いててもそうじゃ無くても、アンタはアンタだ! 俺が惚れたのはアンタという存在そのものだ。だから関係ねえ。アンタは俺といたいって少しでも思ってくれてるのか? 俺はさっきからそう言ってる。なら、後はアンタの気持ちだけなんだっ!!」

「ヴェルフ、貴方…………もう、馬鹿なんだからっ。私はこう見えて嫉妬深いの。覚悟なさい?」

 

 その後の事は詳しく語るまい。

 ただ掻い摘んで言うのなら、ある一部を除いて感動の渦に包まれた会場。

 身を潜めていた神々も飛び出して来ては、次々とヘファイストスを祝福した。

 

 その後、この催しは「求愛の宴」と言う名前で定期的に行われたという。

 そうして色々ありつつも、このイベントは一応の成功として終了したのである。

 

 

 ☆

 

 

 某教会風の建物の地下にある一室。

 ランプ一つだけ灯されたそこには、怪しい大男と小柄な女がぼそぼそと会話をしている。

 

「…………やりましたねライト様」

「ああ、これぞ濡れ手に粟ってやつよな……笑いが止まらん」

「クヒッ……これは凄いです……何百万ヴァリスあるんでしょうか? でもこれからまだ増えますよね」

「ガッポガッポやな。たまりませんなぁ……」

「お金はいいですね、心が洗われるようです……」

 

 控えめに言って酷い会話である。

 怪しいというか、ヘスティアファミリアの団長および副団長である。

 最近はライトも開き直ってリリルカとの恋人ムーブを楽しんでいるが、如何せんこいつらの性根は腐っている。

 

 実際いまもゲス笑いをしながら更に増えたヴァリス金貨の山を撫でている。

 そう、例のヘファイストスとヴェルフの恋物語。

 あれを全て文字に起こしたライトは、庶民向けの廉価本として大々的に売り出したのだ。

 タイトルは「火の神と火の男」である。

 

 出てくる固有名詞はボカしてある物の、ヘファイストスファミリアの事だと誰の目にも明らかだ。

 娯楽に飢えている庶民には、こういった恋話は格好の獲物であろう。

 ましてその片割れが神だというのなら尚更。

 

 ライトは例のミニコミ誌の編集部を間に挟み流通させた。

 結果は御覧の通り、売れに売れた。

 しかも更に増刷の希望も殺到している。

 あまつさえ新作はまだかとの声も多い。

 

「いやー笑いが止まらん! どうするリリ? 今日はティオナも呼んでぱーーーっと騒ぐか? いっそ店を貸し切るか!」

「むう痴女を呼ぶのは業腹ですが、いいですね! 高級な肉いきましょうよ肉!」

「……それはさぞ楽しいでしょうねえ?」

「当たり前やん! 金もガッポガッポやぞ!」

「なるほどな、師匠。その結果俺達は街中で噂をされているんだが?」

「なーに言ってんだよリリ……リリじゃねえな。え? 止まらなそうなその声は────

 

 ライトとリリルカが恐る恐る振り返ると、そこには青筋を浮かべたヘファイストスとヴェルフが仁王立ちしていた。

 

「おー、おおっ……これはこれは幸せなお二人さんじゃあないですか! いやーオレも骨を折った甲斐があったってもんさ、なあリリよ!」

「はわっはわわわわ……」

「ライト、ちょーーっと話を聞かせて貰いましょうか。貴方の主神も交えて」

「師匠、これは流石に庇えねえよ……まあアンタにゃ恩を感じているからこれ以上は言わねえ。だがまあ、お説教は覚悟するんだな……」

 

 ヴェルフは今や大人の余裕に溢れていた。

 慈愛の目でライトの肩を叩いた。

 盛大に目を泳がせるライト。

 リリを見れば白目を剥いて意味不明な事を呟いている。

 

 瞬間、ライトがリリを小脇に抱えてドアの向こうに飛び出した!

 かくなる上は逃亡である。控えめに言ってアホである。

 だが彼に微笑む神は今はいない。

 

「ライト君、話を聞いたよ? いくらボクでもちょーっと怒ってるんだぜ?」

 

 地上に向かう階段の先には、満面の笑みで待ち構えているヘスティアの姿。

 

 その後ライトとリリルカは神様二人による24時間説教を喰らい、ヒット作の「火の神と火の男」増刷は中止となった。

 燃え尽きたライトに下った裁定は、1か月間の謹慎である。

 当然リリルカも。

 

 因みにライトは、写本業者に既にオーダーを出していたため、本の増刷分の費用がそのまま、キャンセル料として支払いになった。

 そして初版の売れ行きに気が大きくなり、最初の5倍の量をオーダーしたため、キャンセル料は儲けた額では当然収まらず、大赤字となったのである。

 

「もう商売なんてこりごりだ~~~…………」

 

 流石に今回の事は懲りたライトであった。

 ちなみにリリルカと通い妻化しているティオナは喜んでいた。

 なにせライトがホームに一か月も居着いたのだから。

 

 

 

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 ~きょうのかみさま~

 

 

 

 今朝のかみさまはオラリオの最北端にある黄昏の館に住んでいるロキちゃんです。

 ロキちゃんは少しやんちゃなかみさま。

 家族のみんなはいつも困り顔。

 

 おやおや、ロキちゃんが目を覚ましたようです。

 

「あ゛あ゛~……アカン、完全に二日酔いや……オエッ、あ、無理、出る」

 

 青い顔をしたロキちゃんは一目散にトイレに走っていきました。

 元気ですね。

 

「オブォ……オロロロロロ……もう堪忍してぇ、酒は呑まんからぁ……助けてえ~な神様~ってウチが神やった……オロロロロ…………」

 

 でもそんなロキちゃんがみんな大好きなのです。

 

 次回は西地区の竃の家からお送りします。

 

 

 

 

 




新宿の雑居ビルに勤務する警備員 山田隆一(25)

ん~あの日の事ですか?
ま、いいですけど休憩時間が短いので食事をしながらで失礼します。

範馬勇次郎の規格外さはこの前の親子喧嘩で誰もが知る事ですが、正直ひとりの男としして……まあ憧れますよね(笑)

ああ、そっちじゃないか。

あのベルクラネルでしょ。
テレビで有名になりましたからね。異世界から来たって。

確かに僕は近くで見ていた。
丁度見回りの時間でしたからね。
まるでダンプカーが正面衝突したみたいな音でね。
誰でも気が付くでしょあんなの(笑)

え、ベルが凄かったって?

いやー……記者さんは分かってない。
ベルクラネルって青年は、なんて言うのかな? 英雄って言うんですかね?
あの細身の身体なのに、拳が、炎が、とにかく目が釘付けになるんですよ。

何というか、神話の英雄ってただただカッコいいでしょう?
彼はきっと本の中から出てきたんじゃないかなあ。
それくらいの魅力があるんです。

範馬勇次郎は男が無条件に憧れる雄々しさ。
でもね、ベルクラネルは誰もが憧れる希望、そんな気がするなあ……。

ああすみません。そろそろ時間なのでこれで勘弁してください。

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