カルデアの回廊は、時折内装ががらりと変わる。
季節やイベント、そして拘りの強い英霊たちの気分により、時にはその地形まで変わることがあるのだから、方向音痴のものや、カルデアに召喚されて間もないものたちには堪らないだろう。
どうやら今回は王宮をモチーフにしているらしい。
英霊たちに宛がわれた部屋に続く廊下が変化し、金ぴかの手摺と大理石のような石で造られた階段が伸びていた。惜し気もなく飾れた豪奢な骨董品を見るに、どの英霊たちが関わっているのかは想像に容易いだろう。
赤い絨毯の敷かれた階段に片足を掛ける。
すると同時に、セフィロスは顔を上げた。
――かんっ!
金色のブーツが床に激しく叩きつけられ、その音は打ち鳴らされた。
目の前に広がるは、苛烈ともいえる赤。
赤を基調とした豊満なドレスを身に纏ったそれは、突然姿を現した。
「我が才を見よ、万雷の喝采を聞け!インぺリウムの誉れをここに!咲き誇る花の如く!
そして聞け!我が名を!うつくしき大輪の薔薇の如き、至高のうつくしさを持った余の名を!
――余はネロ・クラウディウス!誇るべき勇者の誇るべき英霊よ!」
しなやかな腕が腰に当てられ、高々とその名は謳われた。
誇るように胸を張り、あどけなさの残る少女の顔をした英霊は登場したのである。
階段の上で高々と名乗りをあげるその姿は、舞台の上で燃え上がる炎の如きもの。
威風堂々としたその態度に、セフィロスは脳裏に
階段上から見下ろした少女は、びしっと音が付きそうなほど勢い良くセフィロスを指差した。
「貴様が余のマスターを苦しめる元凶か!
うむうむっ……!中々に、余の好む顔をしておる……!
だ、だが!よき勇者の星を落とすわけにはいかぬ!観念して、余に跪いて許しを請うが良い!
って貴様!!待て!何処へ行く!余を無視するとは、とんだ無礼だぞ!」
自分の頬に手を当てて、ネロはじろじろとセフィロスの顔を見つめる。
そんな彼女は、いつの間にか階段を上がったセフィロスが、直ぐ横を通り過ぎていくのにやっと気づくと、慌ててコートを掴んだ。その身長差およそ50センチはある為、必然的にセフィロスはネロを見下ろす形となるが仕方ないだろう。
頬を膨らませて、セフィロスに詰め寄ったネロは、再びその指先を突き付ける。
その口がまた騒々しく動くことを予感し、何やら面倒なことになりそうだとセフィロスは溜息を一つ吐く。だが、その予感は意外なものたちによって、打ち払われることになる。
「待って」
「待ってちょうだい」
セフィロスを庇うように背を向けた、小さな二つの影がネロを睨み上げた。
驚いたように目を見開いたネロは、まるで自分が悪者になったようだと不満げに顔を歪める。
「き、貴様ら……!何故、そやつを庇う……!?」
「おにいちゃんは、悪くないもん」
「そうですわ、赤いお姫様。あなたは勘違いをなさっているようね。
いけないわ、いけないわ。おにいさまはそんなことするような方ではないというのに」
「む!余を姫と呼ぶな!
だが確かに、あの男はセフィロスという英霊がマスターに呪いを施したと言っておったぞ!」
「……人違いだ。今は引いてくれ、時間がない」
「人違い、だと!!」
碧眼の瞳に怒りがチラついた。
彼女の言葉から、どうやら誤解を招くような話をしている輩がいるようだ。
ネロという英霊から感じるのは『王』の気質。しかし、どう見ても彼女が大人しく血をくれるとは思えない。そう判断したセフィロスは、再び踵を返そうとするも、再び裾を掴まれて引き止められてしまう。
「――待て!!
貴様の話、余が直々に聞いてやる!」
光栄だろう?だから話すが良い!と詰め寄ってくる少女に、セフィロスは目を伏せた。
自分とは真逆の、過激なその存在は面倒でしかない。
だがどうやらこの場は自分で突破するしかなさそうだと、見上げて来るジャックとナーサリーライムの視線を受けて、静かに腕を組んだ。
ネロ・クラウディウス。正式にはネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス。
帝政ローマ第5代皇帝で『暴君』と名高い彼女の、そのド派手な存在感、そして生き様は、赤々と燃え上がる炎そのものであった。人々はそのうつくしき熱に魅了されつつも魘され、彼女はその熱を振り撒き続けた。それが彼女の愛する人間たちに向けた、愛のカタチであったのだ。それが人々の求めるものではないと知っていても。このカルデアに、マスターリツカの英霊として召喚された少女は、その時に得られなかった『相互の想い』を噛み締めていた。そしてそれを与えたリツカを、己に相応しいマスターと認めた。だからこそ、彼の身を苦しめるものに怒り狂い、こうして自らセフィロスの前に立ったのだ。
赤い舞踏服を纏う、金髪の少女にセフィロスは真実を告げた。
猪突猛進さが目立つ彼女だが、齢僅か16にして即位した皇帝である。
その手腕は歴史に残された通りであるし、誰しもが認めた有能さを自らも誇る彼女は、予想以上にその話に真摯に耳を傾けた。
異なる世界より呼び出されたセフィロス自身は、彼女の名も背負う歴史も知りはしない。
しかしセフィロスもまた、剣士であり武人である。彼女のその瞳を、佇まいを、そして纏う気を見れば、天真爛漫な振る舞いの裏側に隠された自信の意味を、理解した。
だが逆を言うとセフィロスが読み取れたのはそれだけである。
一つ一つの仕草や、素振りを見つめるその瞳の、輝きの意味を、セフィロスはわかっていなかったのだ。
「うむ、あいわかった。
セフィロスよ――貴様は、」
話し終えたセフィロスが口を閉ざすと引き換えに、きらきらと星の散る瞳がじいと見上げた。
「貴様は……」
―― 一歩、ネロが踏み出す。
「実に」
―― セフィロスは、彼女の様子を伺う。
「うつくしい……!」
ぴょん、とネロの動きに合わせて、垂らされた彼女の金髪が揺れた。
セフィロスとは真逆の色をしたそれは、まるで持ち主の感情を表しているようだ。
突然のその言葉に、セフィロスは怪訝そうな顔を見せる。それに気付くことはなく、ネロは自らの手を胸に当てて誇らしげに口を開いた。
「うむうむ、良いぞ。余は芸術に目がなくてな!
美しいものが何よりも好きだ!貴様は余と真逆の、氷の彫刻のようだ!
氷は脆い、余の炎で容易く消え失せる。しかしその儚き美しさは余の好むものである!」
うつくしいものに性差はなく、うつくしいなら老若男女関係ない。
ネロの持つ独特の美意識というセンサーに引っ掛かったものは皆、彼女のお気に入りに登録される。
彼女の特別なお気に入りはあのマスターだろうが、それとはまた違った意味でセフィロスも引っ掛かってしまったらしい。
いよいよ立ち去ろうと片足を動かしかけたセフィロスを横目に、ネロは言葉を続けた。
「ふむう……しかし、マスターの薬の素材集めとは……。ふむ。
良いだろう!余が手を貸すことを許そう!光栄に思うが良い!」
非常に尊大な言い方だが彼女の言葉は、セフィロスが此処で時間を浪費した意味を成した。
素材の一つである『王の血』が手に入れば、態々あの話の長い王のもとに行かなくとも良くなる。
「なら、王の血……。即ちお前の血をくれ」
「ほう?余のこの体を流れるうつくしく高貴な血が欲しいとは……。
まあ本来であれば、ただでは渡さぬが。良い。セフィロス、貴様のうつくしさに免じて我が血を与えることを許そう」
セフィロスは持っていた小瓶をネロへと差し出した。
そしてジャックへと視線を向けると、一つ頷いたジャックは、武器として持ち歩いているメスを一本、ネロへと差し出す。だが彼女はそれを受取ろうとはしなかった。
「……余は、自らの体に刃を突き立てることなど……二度は御免だ。
セフィロス。貴様がやるが良い」
「……。強制ではない。嫌なら断れば良いだろう」
「我がマスターの危機を救うことに繋がるのならば、これ程の誉れはあるまい。
それに、そうだな余は……。いや、いい。さあ、一思いにやってくれ!余が許そう!」
ちなみに、セフィロスが求める『王の血』は、小さじ一杯あれば充分である。
しかし肝心な必要量を伝え忘れていた為、この時セフィロスとネロの間に誤解が生じていた。
身を差し出すように身を正したネロの瞳は、普段のそれとは異なる静かな覚悟を宿していた。
真摯なその眼差し。それには憶えがあった。
かつて友と呼んだ男が傷を負い“輸血”を必要とした時。セフィロスともう一人は、きっと同じ顔をしていたであろう。そんな懐かしい記憶が、ふと蘇る。
「……」
「……余は、優しいものが好きなだけ。それだけだ」
セフィロスの沈黙をどう捉えたのだろう。
小さく浮かべた彼女の、その落ち着きを払った笑みは、薔薇というよりは、百合のようであった。
***
「ジャック、きっとこっちよ」
「うーん?」
「あった。これよ、これだわ!」
「待って、ナーサリーライム。こっちだよ」
「あら?そうかしら。でもこっちの方が良い色をしているわ」
「えー?こっちの方がきれいだよ」
「いいえ、いいえ!こっちだわ!」
「違うよ!絶対こっち!」
ごそごそ、ごそごそと何かを探る音がする。
昼と夜の狭間の時間に、この部屋を訪れる者は少ない。なので、きっちりと整理された棚を覗き込み、中にあるものを物色する二つの影を止めるものは、いなかったのである。
同じようで違う色味をした銀髪の小さな英霊二人は、目当てのものが見つかったのか顔を輝かせると、同時に引っ張り出した瓶を見せ合った。ガラスの瓶の中には金色の液体が入っており、重々しく波打っていた。
「おにいちゃんもこっちが良いって言うもん」
「いいえ、おにいさまはこっちの方が良いって言うわ!」
きらきらと光る金色、それは……蜂蜜であった。
ラベルが違う二種類の蜂蜜。それはこの部屋の管理人が、おやつを作る時に使用しているものである。
そう、此処は食堂で、二人は『良質な蜂蜜』を探しにやって来たのだ。
また違う素材を探しに向かったセフィロスに頼まれたお遣いであるが、もちろん無許可である。
見つけ出した蜂蜜は二つ。どちらが良いかについて口論を始めたジャックとナーサリーライムは、ついつい白熱してしまい、後ろから伸びる一つの影が一歩一歩近付いていることに気付かなかった。
ふと、視界に影が差した。
ぴたりと、二人の声が止まる。
顔を見合わせた二人は、ゆっくりと顔を見合わせると恐る恐る後ろを振り返った。
「――何をしているのかね」
ひ、と喉が引き攣るのを感じながら、ジャックとナーサリーライムは手にした瓶を後ろへと隠す。
二人の周りに散乱した調味料や、目の前の英霊お手製の保存食品たちはもう隠しようがないので諦めた。
先ほどの暴君に続いて、また鮮明な赤色が二人の前に立ちはだかる。
腕を組んで仁王立ちとなった英霊は、ふと柔らかな笑みを浮かべた。
「ああ別に、君たちを叱るつもりはないよ。
だから安心してくれたまえ……。何を、探していた?」
「……蜂蜜」
「蜂蜜、だと?」
「マスターのお薬をつくる為に、必要なの!
どうかお願い、エミヤおじさま!」
「……ふむ。何やら理由がありそうだな。
別に蜂蜜を持っていくのは結構だが、その話……。
詳しく教えてくれないだろうか」
二人に視線を合わせるために膝を付いた英霊エミヤは、勝手に台所を物色した二人に怒ってはいなかった。夜な夜な食品庫を漁り、冷蔵庫を荒らすとある英霊たちに比べれば可愛いものである。鼠にしては大きなあの腹ペコたちは本当に困ったものだと、エミヤは内心で頭を抱えた。
「いいよ、おにいちゃんに内緒にしろって言われていないから」
ぱちりと瞬きをしたジャックは、エミヤの言葉に一つ頷く。
そしてジャックとナーサリーライムは、エミヤにセフィロスが成そうとしていることを話した。
「マスターの薬作り、か。
それだったらドクターや、ナイチンゲール、そして最近召喚されたあの英霊……アスクレピオスが専門だろうが……。だがあの星痕症候群は、“あの男しか知り得ない病”らしいから妥当か……?」
「その人たちなら、管制室で難しい話をしていたよ」
「ええ、会議かしら。何かをつくっているようでしたわね。
そういえば、調合室でクーフーリンのおじさまが何やらごりごりしてらしたわ」
「それは、おにいちゃんが頼んだんだ。
調合は手間が掛かるからって」
「……要するに、面倒なところは押し付けたというわけだな。全くあの男は……。
まあ良い。先ほどから至る所で騒ぎが起きている理由がわかったよ。
だが一つ気になることがある」
先ほどカルデアを揺るがした『地震』が、
エミヤは深い溜息を吐く。
あのセフィロスが動く時は『よっぽど』の事がある時だ。
いまいち何を考えているのか良くわからない男が、積極的に動くのには重要な理由がある筈だと、エミヤは確信していた。マスターの病状が悪化したのだろうか。それならば、自分もじっとしてはいられない。そう思って腰を上げかけたエミヤであったが、ジャックとナーサリーライムの顔を見て、ふと思ったことがあった。
「おじさま、何かしら」
「……それだ」
「え?」
首を傾げたナーサリーライムは、真剣な顔をしたエミヤを不思議そうに見上げる。
「何で私が『おじ様』で、セフィロスが『お兄様』なんだ……!
奴の年齢は知らんが、見た目は同じぐらいだろう!」
「……ええと、そういえば何故かしら」
「おにいちゃんはおにいちゃんだよ」
「ふふ、そうねジャック。おにいさまはおにいさまね。
エミヤおじさま。そういうことですわ」
「……どういうことなんだ……!」
がくり、と床に両手を付いたエミヤは、無邪気に笑う二人を前にして項垂れたのであった。
***
「ああ、えらい目にあったわ。
ほーんと、あいつと一緒にいるとロクなことがないわね」
きょろきょろと周辺を確認し降り立ったその女神は、ほっと胸を撫で下ろした。
エレキシュガルと話していたイシュタルは、突然現れたあのバーサーカーに追い掛け回され、命かながら逃亡に成功したのである。その代わり彼女の相反が犠牲となったが、そっと記憶から消しておくとする。
また何かの
取り合えずマスターの様子でも見に行こうと思い、リツカの自室がある方へと歩いていると、イシュタルの視界に
それはリツカの部屋を通り過ぎて行き、更に奥へと向かっていく。
イシュタルは怪訝そうな顔をするも、何かを考えるような素振りを見せる。
そして、にっと企みを含んだ笑みを浮かべたかと思うと、目的としていたリツカの部屋の前を通り過ぎた。
「あの男が出歩くなんて、絶対何かあるに決まってるわ……」
彼女のその言葉を聞くと、まるでその男が引き籠りのようにも思えるが、そうであってそうではない。
ただどちらかというと夜行性なだけであり、基本的に彼女とは行動範囲が異なるだけである。
スニーキングをするように、足音を殺し、息を潜めて、その黒い背中を追う。
廊下の角で、一度だけ振り返るような素振りを見せたが、慌てて頭を引っ込めたので問題はない……筈だ。
いくつか廊下を曲がり、階段を上がり、を繰り返した所で、漸くそれは足を止める。
そしてとある扉に手を掛けると、中へと入っていったのだ。
イシュタルはそれを見た後、同じようにその扉へと近付くと、暫く躊躇するように足をうろつかせたが、深く深呼吸をすると、ぐと胸の前で拳を握り締めた。
「そ、そうよ……!この女神である私に!遠慮なんて必要ないじゃない!」
彼女は、その白い手を伸ばす。
そうしてその指先が触れようとしたと同時に、ぱっと扉が開いたのだ。
「き、きゃっ!?」
思わずイシュタルの口から悲鳴が漏れる、がその声が上がりきる前に黒い手袋をした大きな手が、その口を塞いだ。口を塞がれた彼女は目を白黒させパニック状態に陥る。そんな彼女の様子など関係なしに、もう片方の手が、イシュタルの腕を引いた。その強い力に抗うことはできず、彼女は部屋の中へと強制的に入らされてしまったのである。
「誰かと思えば、お嬢ちゃんか。
丁度良いじゃねえか。なあセフィロス」
「ちょっと!!どういうことよ!
もしかして私、嵌められた!?っていうかアナタ、わかっているの!?女神である私をこんなに乱暴に扱うなんて!!許されないんだからね!」
「おーおー、相変わらず威勢の良い女だな。
こいつをストーカーしたのは、アンタだろう?」
「っす!?……ストーカーなんてしていません!
少し気になって後を追っただけです!」
「……。あのなあ、お嬢ちゃん。そいつをストーカーっていうんだぜ」
「なによ!失礼ね」
イシュタルを部屋に放り込んだ当の本人は、壁に凭れると目を伏せた。
まるで他人事のような、その態度を目を吊り上げて睨み付けた彼女は、セフィロスへと詰め寄った。
だがそれに対して言葉を返したのは、青髪の魔術師である。
薬草などの植物に囲まれた調合室の真ん中に置かれた、それなりに大きなガラスの器。薬草のたっぷりと入ったそれを掻き回しながらキャスターは、快活な笑い声を上げた。
そのガラスの器の下には、魔法陣が敷かれており、真ん中には炎のルーンが置かれている。膨大な魔力が含まれた炎は、キャスターと“それ以外”の魔力が含まれている。
「悪かった。だが文句はあの男に言ってくれ。
お前を捕まえるように言ったのは、あいつだ」
「……あ、謝っても、許さないんだから」
怒り心頭を隠すことはなかったイシュタルだが、セフィロスのその言葉に言葉尻を弱くした。
というのも、彼女の知り合いは、マスターリツカを除くと性格的に捻くれたものが多く、素直なタイプは中々に希少であったのだ。まあ、彼女も含めという言葉が頭につくが。
なので、あっさりと告げられた謝罪に不意を突かれてしまい、先ほどまでの勢いはあっという間に萎んでいったのである。
「……ふ、ふん。それでこの私に何か用かしら。っていうかここまでして『何も用はありませんでした』はナシだから!」
「アンタの蓄えてるモン、寄越しな」
「はあ!?」
「ちゃっかり持ち歩いてんだろ?」
「……いやよ!これは私の」
「そいつがマスターの命を救うんだ。迷うまでもねえだろ?」
「……。それ、どういうこと?」
「あ?……セフィロス、お前さん説明してねえのか?」
こぽり、と薬草を煮詰めた液が音を立てて空気を吐き出した。
甘みを含んだ濃い匂いが部屋に広がり、炎の熱が部屋の温度を上げる。
キャスターの言葉に声のトーンを落としたイシュタルは、どういうことかと視線を向ける。
刺すような鋭いそれに、肩を竦めたキャスターはセフィロスを見た。
そして、静かに首を振ったセフィロスに、キャスターは仕方ねえなと溜息を吐いたのであった。