5日間が長いと感じたのはこれが初めてだとウィリアムは心底思った。
早く決着をつけたいと感情を抑えきれずに癇癪に奔っては、海を走り、そこらに漂っていたゴーストや幽霊船に乗車していたゾンビらを手当たり次第に倒していった。
それでも抑えきれなかった場合は、メディア・リリィで発散させたので、仲間たちに危害を加えてはいない。
情緒不安定になりかけたものの、エドワード・ティーチの決着――それがようやく果たすことが出来ると考えると自分を制することが出来た。
だがそれもそろそろ限界だ――今日で五日目なのだから。
「野郎どもぉおおおおおおお! 今日で五日目だぁああああ、ウィリアム海賊団の宿敵である黒ひげを討つぞぉおおおおおお!」
『おおおおおおおおおおおおおっ!』
「だが、てめぇらは雑魚どもを倒して海賊団の戦力を落とせえええええええええ! 黒ひげは、奴だけは俺がうちはたぁああああああああああああああああす!』
『おおおおおおおおおおおおおっ!』
黒ひげを討つといいながらも手を出すなという。どこか矛盾している叫びのように感じるものの、ウィリアムの部下たちは特に取り合わずに叫んでいた。
「てめぇら、黒ひげとは正々堂々の船での勝負を仕掛ける! リリィの力は殆ど使わねぇ、使うつもりもねぇ! 前回のように空中に浮かんでの襲撃はないと思えっ! こいつの役割はもう肉壁だっ、戦うためだけにしか使わねぇ、攻撃あるのみで、サポートされるとは思うんじゃねぇぞ!」
ウィリアムの黒ひげに対する執念は知っている。だからこそ部下たちは邪魔にならないよう、させないようにすることに専念するのだ。
船長の望みを叶えることこそが、部下たちの仕事なのだから――。
* * * * *
ウィリアム・フライにとって黒ひげことエドワード・ティーチとは、思想の違い故に対立していた海賊だった。
同じ時代に生きていたにもかかわらずその思想は正反対。『自由』を愛する海賊王である黒ひげに対し、ウィリアムは『支配』を目論む海賊王で、合うはずもなかった。
だが、誰よりもエドワード・ティーチのことを認めており、だからこそ自分の仲間に入れたかった。
それ故に。
『大ニュースだっぁあぁぁああ! 海賊王エドワード・ティーチ、死亡! 部下たちも半数以上亡くなって、壊滅状態――――!』
そのニュースを耳に入れた瞬間、激情した。
――誰だそんなくだらないニュースを流した奴は――俺様が認めたあの野郎が死ぬはずがないだろう――あの野郎の強さを知っている癖にふざけたことを――いい加減なことを言うんじゃねぇ――嘘だろ、ティーチ――嘘に決まっているよな?――今からてめぇに会いに行ってやる――そんな嘘を見抜けるのは俺様だけだからな――
しかし、それが現実であることを知ったのは、偶然出会った彼の部下たちとアンとメアリーたちとの再会であった。
『てめぇら、ティーチを出しやがれっ! そんなもんで、俺様を誤魔化せると思ってんのか!? 冗談は性別だけにしろっ、そんなもんを作っても俺は信じねぇぞ!』
『……今、だけは、見逃してあげるよっ。 さっさと帰れ、僕の剣がお前の首を刈る前に』
『うるせぇ、男女! さっさとティーチを出せっ、出しやが――』
『この光景を見ても、あなたは信じないのかしら……? いえ、認めなさい! 私たちのッ、最高のっ、船長はっ、あなたの、望んでいた船長はッッ、死んだのよ――!』
涙をこらえて震えながらカトラスの柄を掴むメアリー、涙をこぼしながら答えるアン、そして残された若い衆たちは涙をこぼしながら、『海賊王・エドワード・ティーチ、海に眠る』という墓を作っていたことによって思い知らされたのだ。
エドワード・ティーチが死んだということに――。
『ぬっぐっ、ぬぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!』
ウィリアム・フライは叫んだ。認めてしまったのだ、二度と決着がつかないことに、己が認めた唯一の相手が死んだことに――。
あの時は、エドワード・ティーチが残したアンとメアリーたちの残党を手にかけなかった、黒ひげのいない残党を手にかけた所で空しかったからだ。
その後のウィリアム・フライは失意に駆られながらも海を流れた……。しかし、彼の中には失意と同時にティーチを殺した海軍への怒りの炎が生まれていた。目に映った海軍の船を容赦なく襲い、船を墜としていった。
やがて、海軍の罠にかかり、戦況の悪化によって海軍に捕まった彼は首吊りの刑によって死亡した――。
海賊王エドワード・ティーチに並んだ男であり、もう一人の海賊王として名を馳せたウィリアム・フライの死。
二人の海賊王の死によって、海賊の黄金時代は終焉の道をたどった。
* * * * *
その後、ウィリアム・フライは英雄として座に迎え入れられ、召喚された。
更に、この特異点でエドワード・ティーチと再会しただけでなく、望んでいたあの男との決着をつけることが出来る。
――そして、いま。
「せんちょおおおおおおおおおお! 黒ひげ海賊団と黄金の鹿号を発見しやしたあああああああああ!」
「おっしゃあああああああ! 派手に行くぜぇええ、約束された勝利の剣――――!?』
開幕早々に、奪った宝具で攻撃を仕掛けようとするも、何故かエクスカリバーと同時に放たれかけた奔流も淡い光となって消え去った。
何が起こっているか分からなかった。視線をエクスカリバーを持っていた掌から二隻の船に目を向ける……サーヴァント故に見えた光景、エドワード・ティーチがしてやったりといわんばかりの笑みを浮かべていた。
何をしたのかは分からない、ただ腹ただしいこと間違いないあの笑みはあの男が何かしたのだろう。苛立って舌打ちをするも、ウィリアムの口元は笑っていた。
今ようやく叶いそうなのだ――あの男と決着をつけられるという望みが。
「決着をつけようじゃねぇか、ティーチぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」