季節は春。
時期としては桜の舞う入学式の時期…………よりも少し時間は過ぎでちょうど5月の後半から6月の頭にかけて。つまりどちらかと言うと新入生も学校に慣れ始めてちょくちょくまとまったグループができ始める頃。
とは言っても入学早々1ヶ月間の引きこもり街道まっしぐらでとある少女に連れられてようやく学校に行き始めた彼女には当然よく喋る友達や思いを寄せる先輩なんて人はいるはずもなく、ただただ周りの浮ついた空気に居心地の悪さだけを感じながら自分の机で乱れた教科書を揃えていた。
そんな元気とは程遠いような彼女の周りがバタバタと慌ただしく教室の扉を開けながら駆け込んでくるとある少女によって瞬く間に騒がしさを取り戻した。
「おはよう現美ちゃん。」
「ひゃあっ!」
騒ぎの張本人、相澤このはは学校指定の学生鞄を肩にかけながら駆け込んできた勢いのまま現美の前の席へドカッと腰を下ろした。
しかしそんなに騒々しさに未だなれることが出来ない現美はいつも通りビクッと肩を震わせながら可愛らしい声を漏らした。
「いやぁ、相変わらずいい反応してくれるよ♪」
「か、からかわないで…………。」
ついでに整えていた教科書で口元を隠しながら視線だけ左右に泳がせている現美。
思いもよらない声が出たせいで恥ずかしくなったのだろう若干頬も紅潮気味だった。
しかし、そんな彼女のことも気にする様子などなく、このはは手早く自分の鞄から教科書類を机の中な放り込むと再びくるりと後ろ……現美の方に向き直って彼女の机をバン!と叩いた。
「っ!な……なに?」
「ボクいいこと思いついちゃった!」
「……へ?」
一瞬時間が止まったのかと錯覚するほどの感覚を覚えながらこのはの突拍子もない一言に現美が頓狂な声を上げた。
「な、なに?」
「だーかーらー!いい事、思いついちゃったの!」
「え…………」
「な、なに?その顔。」
「だ、だって、このはちゃんのいい事って…………。今まで、いいこと……なかった。」
「大丈夫!今度はすごく面白いことだから♪」
「嫌な予感……。」
そんなひしひしと伝わってくるキラキラとした表情から、このはが何となく面倒なことを言い出しそうな予感が漂ってくる。
「試合、しよう!」
その一言の直後、現美の目が点になったのは言うまでもなかった。
「試合、しようよ。きっと楽しいよ♪」
「き、聞こえてるよ〜。で、でもさ…………。」
「なに?」
「部員……私とこのはちゃんしかいない。」
その一言で再びこのはと現美の間に束の間の静寂が訪れる。
「いないなら集めればいいのよ!」
「えぇ!?」
やっぱりこうなるのか、と内心ため息をつく現美であった。
※
放課後。
帰り道。
「はぁ。メンバー集めるって言ったって…………どうしよう……。」
─
──
───
「じゃあ、試合は1週間後の日曜日の午前10時。河川敷のグラウンドで。ボクと現美ちゃんがそれぞれキャプテンで、お互いが集めたメンバーで勝負。ね?面白そうでしょ?そうと決まったらこうしちゃいられない。さっそくメンバー集めなきゃ〜♪」
「え?あ、ちょっとこのはちゃん…………い、行っちゃった……。もう、いつも急……なんだから。…………?私が、キャプテン?〜〜〜っ//////」
───
──
─
「無理だよ〜私にキャプテンなんて…………ぐす……。でも、やるしか……ないんだよね……。メンバー探さなきゃ。」
そう覚悟を決めて現美は一人暮らしのマンションの前でくるりと踵を返して学校の方へ引き返した。
季節は春。
神奈川に新設された中高一貫校の弓鶴学園中等部1年生の現美とこのは。
新しく立ち上げたサッカー部の仲間とともに今走り出す。
※【次から紅白戦までのしばらくの期間はこのはと現美それぞれの視点でルートを進めます。最終的な物語には何も支障はないですが、お好きなルートでどうぞ←】※
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