「…何処よここ」
カレンは気が付くと何時もとは違う場所で寝ていた。自分の記憶では、確か昨日はルルーシュの家に泊まったはずなのだが、ここは一体何処なのだろうか。
誘拐されたのかとも考えたが全く拘束されていないし、何より自身に全く気付かれずに自分を誘拐するのは不可能だと判断した。
しかし、だとすればここは一体何処なのだろうか。周りを見渡すと船の中のようだが、こんな場所を私は知らない。
自分だけでは解決するのは難しいと判断したカレンは、こういう時に頼りになる二人に電話をしようとする。なお、その中の一人はこういう時にしか頼りにならないのは余談である。
しかし、その中の一人であるルルーシュには電話が繋がらない。そして、残りの一人の彰はそれ以前に
(電話帳に登録がない…?履歴もないし…どういうこと?)
自身のスマホに全く痕跡がない。カレンはスマホにだけ何か細工でもされたのだろうかと考えたが、そんなことをする意味がわからない。
謎が深まるばかりだが、彰の番号は既に暗記していたので疑問には思いながらも電話をかけるが『この番号は使われておりません』というメッセージが響いた。どういうことだ?
疑問しか湧かない状況だが、頭を使うのは自分の領分ではないと頭を切り替えて行動を開始することにする。
部屋の外に出ると、当然のように知らない設備。ここまでよく分からない状況が続くと頭が麻痺してしまうのか、こういうものなのかと割り切り、迷子になりながらも知っている人はいないかと足を進める。
すると、目の前に知っている人を見つけてカレンは顔を明るくする。
「扇さん!これどういうことなんですか?」
「ああ、カレンか。おはよう。どういうことってどういうことだ?」
「この状況ですよ!何ですか、この船?一体何でこんな船の中にいるんですか?」
「…カレン何を言ってるんだ?」
「そっちこそ、何言ってるんですか!あー、もう良いです!なら、ル、じゃなかったゼロは何処ですか?聞きたいことがあるんですけど」
「…カレン、疲れてるんだな。もう少し休め。もう過去は戻ってこないんだ」
「は?何の話です?」
「いいから休め。これから先はもっと忙しくなる。休めるのは今だけだ」
「いや、だから一体何の話なんですかって、あー、行っちゃった…」
カレンに強制的に休むように言って扇は何処かに去ってしまった。カレンとしては意味がわからない。一体全体自分は何を言ったのだろうか。
しかし休めと言われたってこんな意味がわからない状況でゆっくり休めるわけがない。こうなったら、手当たり次第に聞いてやると決めたカレンは船の中を爆走して、情報収集にひた走った。
〜二時間後〜
「…何?私以外頭がおかしくなったの?それとも私の頭がおかしいの?」
アレから手当たり次第に、この状況のことを聞いて回ったカレンだが誰もまともに自分の話を聞いてくれない。
全員が『ゼロは裏切り者だったんだ』とか『彰って誰だ』とか『あんな俺たちを利用してた奴の話なんてするな』とかばかり言う。本当に意味が分からない。トドメとばかりに、ルルーシュがブリタニア皇帝になったと聞いた時は思わず飲んでいたジュースを吹き出してしまった。
何がどうなると、あんなブリタニアへの憎しみの塊のような男がブリタニア皇帝になるのだ?しかも、スザクが騎士ってどういうことだ?ルルーシュを守るのは私しかいないだろうに何故私じゃなくてスザクを騎士にしてるのだあのシスコンは。
カレンの頭には若干というか、かなりの怒りが湧いたが今は考えるべきことではないと頭を振った。とりあえず会ったら一発ぶん殴ってやろう。それでそのまま私がルルーシュの騎士になればそれで許してやるかと考えた。
とにかく、あのまま船にいたら頭がおかしくなりそうだったので、扇さんに今日は休みたいと告げて船から降りたカレンは近くの公園でボーっと座っていた。
どうすべきか。彰に連絡を取る方法もないし。こうなったら、ブリタニアに行ってルルーシュに直接会うしかないかなと考えたカレンはどうやって密航しようかと手段を模索していた。しかし、そんな時に
「ねぇ、お姉さん。このまま俺とワンナイトラブしない?奢るからさ」
「えー、どうしよっかなー」
とある男と女の声が聞こえる。聞き覚えがある、というかしょっちゅう聞いてるようなと思いながらカレンはそちらに目を向ける。
「今ならさー、俺何やっても問題ないんだよね。スーパータイムって感じ?」
「ちょーウケる!何、それ?」
「俺のこと知ってる奴が誰もいないってことよ。だから、俺が何しても誰かに咎められることなんて「この異常事態に何をやってんのよ、あんたはー!!!」ランナウェイ!」
男は突然蹴飛ばされたことに文句を言おうとするが、殴った人物の般若のような顔を見て青ざめ、カタコトで話し始める。
「…オヒサシブリデスネ、カレンサン」
「昨日会ってるわよ!ゴメン、迷惑かけたわね。この馬鹿私の知り合いなの!後で私から説教しとくから!」
彰と喋っていた女の人にそう言ったカレンは彰の首根っこを掴みながら歩き出す。
「いや、ちょ、待て!!後もう少し!一晩待って!そうすれば、俺の昂ぶりも静まるから!」
「待てるかあ!その昂ぶりを抱えながら生きていきなさい!」
彰の必死の抗議も完全に無視され、悲しくも彰は連れ去られるのであった。
「で?この状況をあんたはどう思う?」
「どうってお前・・・そうだな」
場所を移動し、周りに人がいないことを確認したカレンは彰にこの状況について確認をする。
「少し派手だが・・・まあ、お前の場合は派手な服の方が似合うからそのままで良いと思うぜ?個人的な好みから言えば、もう少し控えめな色彩の方が俺は好きだが」
「誰が私の服の採点をしろって言ったのよ!私は昨日と全く違うこの状況について聞いてんのよ!」
「ああ、その話か」
なるほどねと彰は一人で納得するが、なぜこいつは頭は良いのにそんなことが分からないのだろうか。
「俺も色々考えたが・・・普通に考えたらあり得ない一つの可能性にたどり着いた。というか、消去法でそれしかねえ」
「え?どういうこと?」
「言ったって信じないだろうから、自分で確認しろ。カレン、今日が何日か覚えてるか?」
「そりゃあ、覚えてるわよ」
「んじゃ、スマホで確認してみ」
そう言われたカレンは自分のスマホで日付を確認する。日付は自分の記憶と同じだったが、年が変わっていることに気付いたカレンは首をかしげる。
「あれ?彰。スマホが壊れてるんだけど」
「俺も最初はそう思ったが、どうも違うみたいだ。ほかの人に聞いてもスマホの年を言ってたぜ。当たり前みたいにな」
「はあ?何よそれ?」
「つまりだ。間違ってるのは世界じゃなくて俺たち二人ってことだ」
カレンは彰の言葉を反駁して考える。その結果、出した結論は
「・・・え?嘘でしょ?私たち二人ともタイムスリップしちゃった?」
自分達二人は未来に来てしまったということだった。しかし、カレンの言葉に彰は首を振る。
「違うな。正確に言えばこれはタイムスリップじゃない」
「いや私だってあり得ないと思うけど、現に未来に来てるじゃない!」
「確かに未来ではあるが、この世界は俺たちの未来じゃない・・・恐らく、この世界は
可能性の世界。所謂並行世界だ」
さて、この二人の乱入でどうなるのやら