彰とカレンの原作放浪記   作:はないちもんめ

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こっちは久し振りの投稿です。


10 どんなにふざけてるように見えたって本人は至って真剣な時ってある

「カレン。一つ聞こう。私を信じているか?」

 

「信じてないわよ。決まってるじゃない」

 

ニコリと笑って言うカレンにルルーシュの心は折れそうになるが、何とか踏み止まって話を続ける。

 

「そうか…だが、安心して欲しい。本当に少しだけだ。少しだけ…俺に自由な時間をくれないか?」

 

「絶対に嫌よ。諦めて」

 

「お願いだカレン…今度こそ、本当なんだ…」

 

人生で初めてと言うほどに真摯な目と正直な心でルルーシュは自身を引きずって歩くカレンに必死に懇願する。

 

「俺は…俺はただ…トイレに行きたいだけなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「大丈夫よ。そのためのビニール袋だから。行くわよ、イヌーシュ」

 

 

 

 

 

 

 

ゼロレクイエム。

 

ルルーシュとスザクが二人で立てたものであり、ルルーシュの罪を償い、世界を平和にするための計画だ。

 

これのために二人は行動してきた。人々を裏切り、悲しませ、多くの人々の憎悪を駆り立ててきたのも全てこのためだ。

 

ルルーシュの全てはこのためにあったのだと言っても過言ではない。

 

だから…だからこそ

 

「ぐぅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!こんな…こんなことぐらいでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

便意に負けてゼロレクイエムのネタバレをするなんてことはあってはならないのである。

 

(くそ!何故俺はカレンにギアスを使ってしまったんだ!)

 

過去の自身の選択をルルーシュは悔やむ。あそこでカレンにギアスを使いさえしなければ簡単にトイレに行くことができた。しかし、今となってはルルーシュにとって、トイレに行くというミッションはゼロレクイエムを実現するのと同じくらい難しいことに感じた。大袈裟である。

 

(考えろ!まともにやってカレンに勝てるはずがない!何とかして導き出せ!俺がトイレに行くためのルートを!)

 

ルルーシュは自身の世界一と言っても言い過ぎではない頭脳をトイレに行くためにフル回転させた。アホみたいに聞こえるかもしれないが、ルルーシュは至って真剣である。完全にガチである。

 

そこでふとルルーシュの目に屈強な3人組の男が映った。

 

その姿を見てルルーシュはニヤリと笑う。確かにパンツは被っているが、目の部分は隠れていない。今なら自身の超常の力であるギアスを使用することが可能だったからだ。

 

「ククク…悪いな、カレン。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。カレンを取り押さえろ!」

 

ギアスの力は素晴らしく、ギアスにかかった男たちはすぐさまカレンへ飛びかかった。しかし、相手が化け物なのであっという間に意識が刈り取られていく。だが、流石にその隙に多少の隙が生まれたらしくイヌーシュもとい、ルルーシュは何とかカレンから脱出を図り全速力でトイレへと進んでいく。

 

店へと入り、トイレの入り口が見えたルルーシュは思わず泣きそうになった。そう。まだゼロレクイエムは終わっていなかったのだ。

 

だが、ルルーシュが油断をした隙にルルーシュの脇を通り抜けトイレへと向かう人影があった。ルルーシュはその人影の肩を掴み、必死の形相で叫んだ。

 

「リヴァル!何をするつもりだ!」

 

「トイレに決まってるだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!俺も限界が近いんだよ!」

 

「良いか、リヴァル!キャラというものがある。お前が漏らしても問題はないが俺はあるんだ!」

 

「俺だってあるに決まってんだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!うんこ漏らして良いキャラってどんなキャラだ!?」

 

何やら喚いているが、ルルーシュには本当に余裕がない。背に腹は変えられないと言わんばかりにルルーシュの目は輝き始める。

 

「悪いなリヴァル。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる!『今すぐ外で漏らしてこい!』」

 

そんな文字通りクソみたいなギアスの使い方でも、ギアスはギアスなのできちんと効果は発動したようでリヴァルは迷いもなく外に飛び出していく。すると同時に、外で大きな騒ぎが起こるがそんなことには関心も寄せずにルルーシュはトイレへと向かう。クズである。

 

しかし、ルルーシュが入ろうとすると誰かが入っていたようで鍵がかかっていた。思わず舌打ちをして、中にいた人物に呼びかける。

 

「おい!次が控えているんだ!早くしてくれ!」

 

「いきなり何だよ!俺だって入ったばっかりなんだ!無理に決まってんだろうが!」

 

その品性のない声にルルーシュは思わず膝をつく。何故なら、思いっきりルルーシュの知人の声だったからだ。

 

(何でお前がここにいるんだ玉城ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!)

 

ここにいる理由など聞きたいことは山ほどあったが、そんなことなど今のルルーシュにはどうでも良かった。トイレの中にいてはギアスはかけられない。ならば、残された道は何とか外に引っ張り出すしかない。そうなのだが

 

「くっそー。何で俺が個々に入ってなきゃいけねぇんだよ。カレンの頼みがなきゃこんな面倒なことはしねぇのに…って…確か、とんでもなくトイレを急かす男の声がしたら電話しろって言ってたな。おい、カレン?聞こえるか?」

 

鬼が来る気配がしたので、わき目も振らずにルルーシュは全速力で店を出た。次にアイツに捕まったらルルーシュは色々終わってしまう。イヌーシュどころではなく、クソーシュになってしまう。仮にもブリタニア皇帝として、そんなことになるわけにはいかないのだ。

 

パンツ一丁で頭に女物のパンティを被って首輪に繋がれてる男がブリタニア皇帝で良いのかどうかは疑問だが、気にしちゃいけない。

 

最後の力を振り絞ってルルーシュは今度は服屋のトイレに入ろうとする。だが、そこにも人が入っていた。

 

「あ、ああ、すまない。使用中だ」

 

(今度はお前か扇ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!)

 

ルルーシュは戦慄する。この様子だとこの付近のトイレは全て封鎖されていることになる。全てが罠だったのだ。ここで自分が漏らすように仕組まれたことだったのだ。

 

(ここまでして…ここまでしてゼロレクイエムを防ぎたいと言うのかカレン!)

 

何故、それとゼロレクイエムが繋がっているのかは常人には理解不能だがルルーシュの中では繋がっているのだろう。

 

だが、まだだ。まだ終わらんと瞳を輝かせたルルーシュはゼロの声で話しかけた。

 

「扇か?私だ!話したいことがある!今すぐここを出てくれないか?」

 

「その声…もしかしてゼロか!?な、何でこんな所に?」

 

「ああ、そうだ。可及的速やかに必要なことだ!急いでくれ!」

 

「わ、分かった。しかし、すまないゼロ…あの時はあんなことになってしまったが俺たちとしてはとても不本意なことだったんだ。もう一度話す機会があったら何て思ってる内になし崩し的にここまで事態は悪化してしまって…」

 

「気にするな!終わったことだ!それよりも早くお前はそこから出てくれ!」

 

「やはり、俺には副リーダーには向いてなかったんだ。情に流されて千種のことを皆に報告もしなかったし、そのせいで千草に撃たれもした。皆はゼロが俺のことを見捨てたとか言ってたけど、違うんだよ。裏切ったのは俺の方だったんだ。大人しく教師でもやっていれば良かったのにナオトに惹かれてテロリストを始めたのが問題だったのさ。俺には皆が持ってるような信念なんか無かったんだ。だから髪の毛もワカメみたいだし、視聴者には嫌われるし。やっぱり俺が副リーダーになんてならなければ」

 

「おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!良い加減にしろ扇!!何時までぐちゃぐちゃ喋ってるつもりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!早く出ろと言ってるだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

しかしそこまでルルーシュが叫んでいるにも関わらず変な風にスイッチが入ったらしく、扇は呪詛のように何かを言い続けている。それを聞いたルルーシュは扇の説得は諦めて、別の建物のトイレへと向かおうとした。だが

 

「くっ…ここまで…か」

 

強烈な便意に襲われたルルーシュはその場に蹲る。最早、一歩も動くことができない。動けば、一瞬で堤防は崩壊してしまうだろう。

 

(ここで…終わりだと?スザクとここまで練ってきたゼロレクイエムがここで潰えると言うのか!?)

 

ルルーシュの脳裏に走馬灯のように蘇る。自分がこれまでしてきた罪が。その罪を清算するために為してきたことが。

 

そう。ルルーシュは既に後戻りできる状況ではなかった。ゼロレクイエムだけが自分の罪を清算する唯一の方法だと信じて行動してきたのだ。そのために悪を成すと決めたのだ。こんな所で立ち止まってはいられない。

 

押し寄せる便意を執念で押さえ込んだルルーシュの目に諦めの気持ちが消えた。残された限りない希望を探すことを決意したのだ。

 

「ねぇ、ママ。あの人、パンツ被って何やってるの?」

 

「しっ!見ちゃいけません!」

 

「おい。あの男、ルルーシュ皇帝に似てないか?」

 

「まさか。何で皇帝があんな変態の格好してるのよ。きっと、そういうプレイよ」

 

そんな言葉が飛び交う中、ルルーシュは再び戦略を練りはじめた。自身が漏らさないで済むルートを。

 

残された時間はほとんどない。その僅かな時間を使ってルルーシュは答えに行き着くのだろうか。はたまた、答えなどあるのだろうか。

 

ルルーシュの運命は如何に!

 

 




彰ノートの使い方

ルルーシュがシャーリーの家に着いた直後

ルルーシュ「絶対に飯など食わん!」

カレン「予想通りの反応ね…食べた方がお互い楽なんだけど、どうしても嫌?」

ルルーシュ「ふん、当たり前だ。敵の家で飯など食えるか」

カレン「そう。なら仕方ないわね」スッとノートを取り出す

シャーリー「何それ?」

カレン「ルルーシュへの対処法を色々書いて貰ったのよ。その中に飯を食べない時の対処法も…あ、あった」

リヴァル「何でそんなこと書いてんだよ…」 

カレン「アイツだからね。さあ、行くわよ」ルルーシュを掴む

ルルーシュ「お、おい!何処に行く気だ?」

カレン「さてね。行ってからのお楽しみよ」

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