全てはこの一言から始まった。
「そう言えば、彰って今何をしてるのかしら」
食事をしながらミレイが思い出したように呟く。
周りの面々もそれを受けて、それぞれの考えを漏らす。
「そりゃ、皇帝やってんじゃないすか?」
「だよね。ルルの代わりをやってるんだから皇帝をやらないわけにはいかないもんね」
「…俺のイメージは大丈夫なんだろうな?」
「イメージどころか今後、人として生きていくことができるのかどうかってレベルで心配した方が良いと思うわよ」
「ふざけるな!何とかしろ!」
「無理ね。言っとくけど、私がアイツを何とかできたことなんてほとんどないのよ!」
「何を威張っている!お前の相棒だろうが!」
「まあまあ、2人とも落ち着いて。と言うかカレンは連絡とか取れないの?」
「取ろうと思えば取れますが、緊急時以外は連絡するなって言われてるんですよね」
「まあ、そりゃそうか。ブリタニアの皇帝が黒の騎士団のエースと頻繁に連絡するわけにはいかないもんな」
「でも、そうなると気になるよね。無事にやってるのかな?」
「ちょっとググってみる?もしかしたら、情報が出てくるかもしれないわよ?」
「馬鹿なことを。仮にも皇帝の情報が簡単にネットで分かるわけないでしょう」
「あ、出たわよ」
「何でだ!?」
ミレイの発言を鼻で笑って否定していたルルーシュだが、情報が出てきたことに立ち上がってツッコミを入れる。
「何かTwitterやってるみたい。ほら、悪逆皇帝日記だって」
「自分で言っちゃうんだ!?」
「何でそんなもの作ってるんだアイツは!?」
「と言うか、そんなことやってる時点で悪逆皇帝じゃなくないか!?」
(ツッコまない…ツッコまないわよ私は…)
悪逆皇帝日記という訳の分からないTwitterに各々が感想を述べるが、ミレイは反応を返すことなくその日記を開いた。
「何かあの後、ブリタニアに帰ってからすぐに始めたみたいね…せっかくだし、見てみる?」
ミレイの質問に何をやっているか知りたかった一同は賛同の意を述べるが、カレンだけは違っていた。
「それじゃ、皆で確認して。私は別の部屋で終わるの待ってるから」
「え?カレンは見ないの?」
自身の相棒の情報を見ないというカレンに不思議な顔をするシャーリーだが、カレンに言わせると考えが甘いと言う他ない。
ふふふと笑いながら上を見上げてカレンは答える。
「ええ、見ないわ…そんなことやってるなら生きてるんだろうしそれ以上の情報は要らないわ…というより無理だから。本当、こっちでくらい休ませて。そんな二重にツッコんでたらマジで体力持たないから」
「な、何を言ってるのか半分以上分からないけど見ないことは分かったよ…」
「というより、これ見ない方が良くないか?これってカレンですら危険だと感じる代物なんだろ?」
「…カレンでさえ振り回されるのか。彰とやらのレベルはどうなってるんだ?」
「私でさえ…?ははは、分かってないわね。何も知らないのよアンタは。キャハハハハハハハ!!」
突然、狂ったように笑い始めたカレンを見て全員ドン引きした。しかし、カレンはそんなことは関係ないと言わんばかりに怖すぎる笑みを浮かべながら続けた。
「所詮私なんて元々の世界じゃあスライム以下よ。そしてアイツはオルゴデミーラ。それを見て感じると良いわ。アイツのヤバさを!そして、私が一体何と戦っているかってことをね!」
いや、ブリタニアじゃねぇの?というツッコみを一同がする前にカレンは部屋から出て行った。
一同の前に微妙な沈黙が起きる。
「な、なあ?これ見ない方が良いんじゃないか?」
「で、でも、ここまで知って見ないって言うのも…」
「止めよう。知らない方が幸せなこともある」
「さあ、見るわよー」
「「話を聞いてください会長!!」」
色々と酷い目に遭ってるルルーシュとリヴァルは何とか止めようとするが、この二人でミレイを止められるはずもなくミレイの作業は着々と進められ『悪逆皇帝日記』はスクリーンに映された。
暫くは会話のみお楽しみください。
1日目
『これはポンコツシスコンの僕が最高の悪逆皇帝になるまでの物語だ』
「まずはこの日記のコンセプトの説明ね」
「…どっかで聞いたセリフだな」
「というか最高の悪逆皇帝って何?」
「その前に誰がポンコツシスコンだ!」
2日目
『ブリタニアに着いたのにまだ天子様が泣き止まない。色々お菓子をあげてもダメなようだ。何か子供が喜ぶ食べ物書き込んでくれ』
「知らない場所に着いて不安なのね」
「と言うか、やってること悪逆皇帝か?これ?」
「ただの子供の扱いに困ってる人だよね」
「何をやっているんだアイツは…」
3日目
『良く考えたら俺は悪逆皇帝を目指していることに気付いた。泣いているならば更に泣かせてやろう。飯にピーマンを混ぜてやろう。ふはははは』
「あら、ピーマンが嫌いなのね」
「というかやってることしょぼくね!?」
「小さすぎる!」
「最悪だ…」
4日目
『しょうもないことをするなと周りに怒られた。しょうがないので別の方法で泣き止ませよう。トトロとか見るかな』
「あらら。怒られちゃった」
「まあ、そりゃそーだろ」
「やってることショボすぎるもんね」
「…アイツを見てるとスザクとかがまともに感じるな」
5日目
『トトロを見たら泣き止んだ。どうやら、お気に召したようだ。トトロはやっぱり偉大だ』
「万国共通ね」
「そりゃ、子供は好きだよ」
「まあ、否定はしないな」
6日目
『きゅうりを食べたくなったので天子様と畑を耕した。土に触れるのはやはり良いものだ』
「分かるわぁ…食べたくなるのよねあの味」
「漬物って美味いよな。日本に来て知ったよ」
「癖になるよね、あの味」
「あの味を出すには時間がかかったな」
7日目
『バス停で天子様とバスを待っていた。何時になると来るんだろう。来るといいな』
「どっか行くのかしら?」
「いや…あれじゃね?あれ待ってるんじゃね?」
「幾ら待っても来ないよねあれ」
「世界線を間違えている…」
8日目
『暗い場所で天子様とアレを探してみたが、現れない。何処に隠れているんだろうか』
「今度は何か探してるみたい」
「いや、あれっきゃないでしょ!?間違いなくあれ探してるでしょ!?」
「完全にトトロの影響受けまくってるよねこの人!!だってこの3日間トトロのことしかやってないもん!」
「何処が悪逆皇帝日記だ!?」
9日目
『また天子様が泣き始めたのでラピュタを見せたら泣き止んだ。今度から泣いたらこれを見せよう』
「面白いものねラピュタ」
「そういう問題ですか!?」
「もう、ただのジブリ日記だよねこれ!?」
「仕事しろ!」
10日目
『龍の巣って何処にあるんだろう』
「一度は探すわね」
「遂に隠す気なくなったぞこいつ!?」
「思いっきり宣言しだしたよこの人!?」
「だから、仕事しろ!」
11日目
『竜の巣…何処だ』
「諦めないのね」
「2日続けたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!間違いなく徹夜で探してたよこいつ!!」
「凄いけど凄くない!!頑張る場所は他にあるよ絶対!!」
「おい、誰かこいつを止めろ!悪逆皇帝どころか皇帝すらやる気ないぞこいつ!」
12日目
『流石にそろそろ仕事をしようと思う。その前にカントリーロード聴きながら悪逆開始だ』
「あ、仕事始めた」
「曲のチョイスはジブリなんだな」
「ま、まあ、そのくらいは良いんじゃない?」
「欠片も悪逆っぽくないだろ…」
13日目
『今やるのは悪逆じゃないことに気付いた。そうだ、私は小説を書きたいんだ。見せたい人がいるんだ』
「あら、新しいことに挑戦を始めたわ」
「飽きるの早くね!?」
「と言うか、耳をすませてるよねこの人!!」
「今やるのは間違いなく小説を書くことじゃない!!現実を見ろ!」
14日目
『私気付いたの!ただ書きたいだけじゃダメなんだって!思いだけじゃダメなんだって!』
「成長ね…」
「知らんがな!」
「だから耳をすませてるよね!!」
「書きたい思い以前に、お前は悪逆皇帝じゃないのか!?」
15日目
『雫!大好きだ!』
「雫って誰だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「あら、リヴァル見てないの?」
「どんだけ耳をすませてるのこの人!?どんだけ遠くの音を聞こうとしてるの!?」
「おい、こいつ確実にハマってるぞ!!気持ちが完全に誠司君だぞ!!」
16日目
『ギター作りに行ってきます。探さないでください』
「敢えてのギターね」
「と言うか探すに決まってんだろ!!」
「仮にも貴方皇帝だよ!?」
「お前は何をしにブリタニアに行ったんだ!?」
「もういい、止めろ!何だこれは!?こんなクソみたいな日記を公開して何がしたいんだアイツは!?」
スクリーンを停止させて、ルルーシュが至極真っ当な言葉を述べる。異論の余地がない言葉に、一人を除いて全員が肯定する。
「何処も悪逆皇帝らしくないしな…」
「と言うか、このまま進んだってもののけったり、ハウルったりするだけだよね…」
「私は見ても良いけど」
「貴方はそうでしょうね!だが、俺は嫌です!昨日まで投稿してるらしいので昨日の日記だけ見ましょう。どうせ、ジブリ見てるだけでしょうし。ある程度は展開が読めますよ」
そう言うとルルーシュは一気に日記を読み飛ばし、昨日の日記をスクリーンに映した。
『腐海の進行は予想以上に早い。しかし、そのためにアレを動かすべきではなかった…このままではブリタニアが滅ぼされるのは時間の問題だろう。私は悪逆皇帝である前に一人の皇帝として迫り来る脅威と戦わなくてはならない』
「「「いや、急展開過ぎるだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
あり得ない展開にルルーシュだけでなく、リヴァルとシャーリーも全力で叫ぶ。
「何故、ここまで来て始まりに戻っている!?」
「ツッコミどころはそこじゃねぇよ!?」
「そうだよ!何で突然現実にナウシカが押し寄せてるの!?おかしいよね!?原作違うよね!?」
「嘘に決まっているだろうが!何処の世界に突然腐海が現れる!?フェイクニュースにも程があるだろう!」
「いや、嘘でもないみたいよ」
「「「え?」」」
何故か普通に受け入れているミレイが指差す方向ではテレビが映っていた。ニュース番組が始まっているようだが、険しい表情でニュースキャスターが言葉を発している。
『ご覧ください。信じられない光景です。ブリタニアの首都に大量の王蟲が迫ってきています。大変危険ですので、周囲の人は慌てずに避難してください。繰り返します』
その言葉通り、ニュースキャスターの後ろでは王蟲の大群が刻一刻とブリタニアの首都に迫っているのが見えていた。
それを見た三人は暫く呆然としていたが、思い出したように再び叫んだ。
「「「だから、原作が違うだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
彰「次回から『風の谷のルルーシュ』が始まるよ」
ルル・リヴァ「「おい、馬鹿止めろ!!」」
シャリ「カレン!出てきて!お願い!止められるのはカレンだけなの!」必死で扉を叩く
カレン「私は見てないし、聞いてないし、動かないの。お願いだからこっちの私まで巻き込まないで…私にも休息を頂戴…」
ミレイ(これがカオスって言うのかしら…)