例によって続きの予定はありませんが、気分転換に投稿します!
良ければ見てやってください。
周りには死の匂いしか感じない戦場の跡地。
空腹や疲労で動く元気もない。
そもそも、両親も友達も居なくなった自分には生きる目的がない。
このまま死んでもいいんじゃないかと思っていたその時のことは今でも覚えている。
「あの…大丈夫ですか?」
それが出会いだったのだ。
「私が貴方と居たいんです。ですから嫌でも何でも居てもらいますよ」
会いたかったような気もするし、それから苦労する事を考えれば会わない方が良かったのではないかとも思うがこれだけは言える。
「あ、明日から私と一緒の学校に行ってもらいますからね!これは決定事項です」
その出会いは始まりの合図だった。
「私、思うんです。彰と一緒なら何でもできるんじゃないかって」
世界を愛する頭の中身も外側もピンク色の大馬鹿野郎の夢物語に付き合わされる男の物語の。
「ね、彰。お願いがあるんですけど」
「何でしょうか、ユーフェミア殿下」
「二人っきりの時はユフィと呼んでくれる約束です。それと敬語も無しです」
ユーフェミアの自室で彰に笑顔で話しかけていたユーフェミアは不満そうに頬を膨らませる。
それを見て彰は肩をすくめる。敬語が嫌いな主人の性質は知っているので今更驚くことはない。
「はいはい、で?何?」
「実は最近、私の騎士になりたいという方々からの連絡が多数来ているんですよ」
「へー」
「もう少し興味を持ってくださいよう…」
「敬語止めろって言ったじゃん」
「何で敬語と一緒に興味も無くなっちゃうんですか!」
「お前の話長いんだもん」
「酷い!?」
悲しんでいるが彰としては紛れもない本心だ。何をそんなに話す内容があるのか意味不明だが、一度二人きりでユーフェミアが話し始めると軽くニ、三時間は止まらない。最初から真剣に聞いていては彰の集中力がもたない。
「もう、彰は何時も意地悪を言うんですから!とにかく!今、多数の人からの連絡を受けて困っているんですよ」
「何で?そろそろ良い年なんだし騎士がいたって悪くないだろ」
選ぶのは面倒臭いかもしれないが、身を狙われる可能性が高い家柄だ。専属のボディーガードはいるが騎士も居た方が好ましいのは言うまでもない。
「そんな良く知らない人を騎士にしたくないんです」
「別にとりあえず候補絞っといて後はそいつの人となりを見て決めれば良いだろ」
「そんな面接みたいなことしたくありません!」
「じゃあ、断れば?」
「中々諦めてくれないんです…」
「だろうなぁ」
断る理由が無さすぎるのだ。特に候補がいるわけでもないのだからとりあえず会うだけでもと言う話になるのは理解できる。何かお見合いみたいだな。
「ですから彰にお願いがあるんです!」
「…どんな?」
この展開からすると嫌な予感しかしない。
「彰が私の騎士になってください!」
「嫌だ」
「…もう少し考えてくださいよう」
「時間の無駄だろ。このやり取り何度目だ」
もう数えるのも面倒くさかった。二、三日に一回は行われてる気がする。
「彰が受けてくれないからですよ!」
「だって命令は嫌なんだろ?」
「彰に命令はしたくないんです」
「じゃあ、断る」
「だから何でですか!私のこと嫌いなんですか!?」
「いや、別に。普通かな」
「10年以上、一緒に居るのに普通って…」
ズーンと音がするかのように目に見えてユーフェミアが落ち込むのを見て彰はずずっとコーヒーを啜る。この娘は落ち込むのは早いが復活するのも早いのだ。それを知っているからこそ、彰は何も言わず放置する。
「あ、じゃあ、こうしましょう!私が彰の頼みを何でも聞きます!ですから彰も私のお願いのこともう少し真剣に考えてください」
では、お願いは聞いてもらった上で真剣に考えて断ろうと彰は思った。
「じゃあ、お手」
彰は手を出してそう言うとユーフェミアは「え!?」と言いながらおずおずと彰の手の上に自身の手を置く。
それを見て満足そうに笑みを浮かべる彰。ドS精神が滲み出ている。
「3回回ってワンと言え」
「人の妹に何をさせてるんだお前はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
主人を人として扱わない人でなしが突然部屋に乱入してきたシスコンに吹き飛ばされる。結構、衝撃的な映像のような気がするが、ユーフェミアは入ってきた人の顔を見て笑顔で迎える。
「あ、お姉さま!お久しぶりです!」
「ああ、ただいまだユフィ。少し待ってくれ今から地球のゴミをこの世から消し去るから」
そう言うとシスコンもといコーネリアはユフィに笑顔を向けたまま彰に銃口を向ける。酷い気もするが、やっていることを考えれば完全に自業自得である。
「お、お久しぶりじゃないですか。や、やだなぁ、お姉さま。帰ってきてるなら帰ってきてると言ってくださいよ」
「帰ってきてなかったらお前はどこまでやるつもりだったんだ?ああん?」
「姫様、気持ちはわかりますが冷静に。言葉遣いが乱れております」
コーネリアに吹き飛ばされた影響で顔中を血だらけにしながら彰は引き攣った笑顔で答えるが、その笑顔に向けてコーネリアは人前でしてはいけないレベルのキレ顔を向ける。後ろから着いてきていたギルフォードが思わず引き留めてしまうレベルだ。
「大丈夫だ我が騎士ギルフォードよ。このクズがこの世から消え去れば、私の言葉遣いも通常に戻るだろう」
「落ち着いてください。ここで手を下せばユーフェミア様の部屋の床が汚れます」
「おい、ドM騎士。お前俺の心配してなくね?俺が殺されることより汚れた床の心配してね?」
「何故私がお前の心配などしなくてはいけないんだ?」
「はっ倒すぞテメェ!」
色々収拾がつかなくなった現場を更に後ろから着いてきていたダールトンが何とか宥める。なお、その間も仲が良いいなぁと思いながらユーフェミアはニコニコ笑いながら見ている。割と本気で戦いが始まりそうだったことなど知る由もない。
「いやあ、ダールトンのおっさんのお陰で命拾いしましたよ。どうも、どうも」
「礼を言うくらいなら少しは自重して欲しいのだがな」
全くと言いながらダールトンは彰を見て苦笑する。幼い頃から面倒をかけられているので手慣れた感がある。
「流石にダールトンさんは人間ができてますねぇ。俺みたいな日本人に対しても優しくしてくれるなんて…何時も日本人だから色んな人から差別を受けて…」
悲しげに泣いているかのようにハンカチを目に当てて自分の苦難をアピールするがコーネリア達はその様子を白けた目で見つめる。
「いや、貴様の場合は完全に自業自得だろ」
「お前みたいなのが日本人のデフォルトなら今頃世界は滅びている」
「この間、彰のこと見ただけで泣いてる貴族の方がいましたよ」
「お前は一体何をやってるんだ…」
「人種差別はいけないということを実例を交えながら教えただけですよ」
人間は自分が相手の立場になることで相手のことを理解できる可能性が高まる。それを知っているからこそ、彰は未来あるブリタニアの若い貴族に差別される側の気持ちを理解していただこうとした。誰にでも誇れる正当な理由だった。ただ、内容が誰にも言えない酷いものだっただけだ。
ユーフェミア以外の三人は頭を抱え、ユーフェミアは流石は彰だと目を輝かせていた。
「流石は彰です。偏った価値観を持つ人にも丁寧に教えてあげるなんて」
「人として当然のことをしただけですよ」
一体何をしたのかとコーネリアは未知への恐怖を抱いたが、追及すると胃が痛くなりそうなので考えることを放棄した。彰と付き合う上で身につけたコーネリアなりの処世術だった。
「まあ良い。ところで何の話をしていたのだ?」
「私の騎士になりたいと仰っている方への断り方を彰と考えていたところです」
「私に勝てない奴は諦めろと言え」
「頭おかしいんですか?」
余りのイかれた返答に彰は思わず素で返答してしまった。この姉上に勝つとなると最低でもナイトオブラウンズクラスの実力が必要となる。つまり、殆どの者は不可能だった。
「ユフィの騎士になりたいのなら私の壁くらい超えて行け」
「壁が高すぎませんかねぇ…じゃあ、ジノとか?」
「あんな頭のネジどころか頭そのものが飛んでるような奴がユフィの騎士になど絶対にさせん!」
「ナイトオブラウンズの合格条件って変人であることじゃありませんでしたっけ?」
「そんな訳がない…はずだ」
「私の顔を見てそう答えてください」
ナイトオブヘンジンズと改名しても何ら問題はない一同の姿を脳裏に思い浮かべた彰はコーネリアを見つめるが、コーネリアは全く目を合わそうとしない。コーネリアがどう考えているか明白の瞬間だった。
「まあ、そう急いで決める問題でもないでしょう。とりあえず、それらしい理由をつけてコーネリア様からお断りしては?」
コーネリアから言われれば向こうも諦めざるを得ないだろうという意を込めてのダールトンの発言だったが、コーネリアも同じ考えだったらしく即座に肯定した。
「うむ。それがベストだろうな。では、ダールトンにギルフォード。この馬鹿を連れて席を外してくれ。私はユフィと二人で話がある」
話っていうか、アンタがデレる姿を見せたくないだけでしょ?と彰は思ったが口に出す前にダールトンとギルフォードによって強制的に部屋の外へと連れ出された。揉めることを事前に措置した素晴らしい行動である。
「全く…お前は何故そうなのだ?」
「俺が何をした?」
「何故、姫様の機嫌を損ねるような発言をするのかと聞いているのだ」
「別に好かれたくないですし」
彰の返答にギルフォードは微妙な顔を浮かべる。騎士としては許せない発言ではあるのだがコーネリアとの付き合いの長さで言えばギルフォードよりも彰の方が数倍長い。公式の場では勿論丁寧な態度で接していることに加えて、コーネリアもそれを許している節があるのでギルフォードが口を挟むのはギリギリで躊躇われる問題だった。
そんなギルフォードの心中を察しているのかダールトンは苦笑いしながら彰の頭をくしゃっと掴む。
「悪ガキもほどほどにしておけよ?姫様の気持ちが分からないお前ではあるまい」
「何のことですかねぇ」
「姫様は決してお認めにならないだろうが、心中ではお前をユーフェミア様の騎士へと考えておいでだ。お前であればどんな状況でもユーフェミア様をお守りできると思っている。私も含めてな」
「買い被りですよ」
頭を掴むダールトンの腕を乱暴に振り払うと彰は鼻を鳴らす。
「俺が騎士なんて柄に見えますか?俺の職業は「遊び人」に決まってんですよ。そんな称号は俺には重すぎます」
「称号が人を作ることもある。お前が自分の可能性を信じずにどうする?少なくとも私はお前の可能性を信じているぞ」
圧倒的な信頼を滲ませたダールトンの言葉に彰は何も答えず、ヒラヒラと腕を振ったかと思うとその場を去っていった。
残されたダールトンは深く息を吐くと首を回した。
「やはり無理だな。脈は無さそうだ」
「何故、あそこまで騎士になることを拒むのでしょう…?奴がユーフェミア様のことを守りたくないはずがないのですが」
「私も知らんがどうやら『約束』らしい。ユーフェミア様とのな」
「約束?」
ギルフォードも初耳の話だった。どうやら、その『約束』の中身はダールトンも知らないらしい。
「恐らくその『約束』を守るにはユーフェミア様を守るだけでは足りないのだろう。騎士になると色々制約も増える。それを嫌ったのだ。飽くまでも想像だがな」
想像とは言いながらもそれは恐らく限りなく真実に近いのだろう。幼い頃から彰を見てきたダールトンの言葉だ。見当違いのはずがない。
そうは考える。そうは考えるのだが…
「単純に面倒だからって可能性はないでしょうか?業務が増えることを嫌ったという可能性もありそうな…」
ギルフォードのぶっちゃけた疑問にダールトンは返答できなかったらしい。
この後の展開としては世にも珍しいシャーリーヒロインルートで進む予定でした。
中学時代のルルーシュと出会い、ブリタニア打倒という共通の目的もなくお互い幼いことから「ちょい変わ」以上に仲の悪い二人を中心にクロヴィスを虐めたり、ジノとふざけたり、コーネリアの胃を破壊したり…とまで考えていたのですが結局「ちょい変わ」の方にしました。