「ほう、起きたのか」
「C.C.か…すまないな、世話をかけた」
「一声でもうめき声をあげればトラウマで殺してやろうと思っていたのに…惜しいことをした」
クスクスと怪しげに笑うC.C.を見てルルーシュ(偽)は顔を顰める。そんなに余裕がある状況だとは思えなかったからだ。
「黒の騎士団は何処まで来ているんだろうな」
「近くに来ているさ。お前には聞こえまい。奴等に食い荒らされる森の泣き声がな」
近くに来ている…ということは戦いは近いということか。
「C.C.…戦いを止める術はないのだろうか…本当にもう止められないのか!?」
「此処まで来てしまっては止められないさ。なるようになるしかない」
「あの子はどうする気だ!!あの子は無関係だ!」
「黙れ小僧!お前にあの娘の傷が癒せるのか!?お前にあの娘が救えるのか!?」
C.C.の言葉にルルーシュは声を上げられない。助けられる補償などない。しかし、ひとつだけ断言できた。
「分からない…だが、共に生きることは「何やってんのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」へぶっ!?」
キメ顔で名台詞を述べようとしたルルーシュの頭にシャーリーのハリセンが突き刺さった。
「痛いだろが!はい、カット、カット。撮り直しだよ全く…何やってんの?」
「何やってんのは私のセリフ!何やってんのよ、さっきから!?」
「CM撮影第二弾だけど?」
「だけど?じゃないよ、このおバカ!何をしにブリタニアまで来たのよ!」
「ジブリの魅力を世界に広めに来たに決まってんだろ」
「絶対に違うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!ルルを止めるために此処に来たんだよ!!」
「え?何で俺がそんなことやらないといけないんだ?」
「本気で言ってるよこの人!本気でジブリを伝えるために皇帝やっちゃってるよ!」
信じられない者を見る顔でシャーリーは彰を見る。日本では少しばかり真面目に活動していたのでシャーリーは勘違いしているようだが、元々コイツはこんなもんである。
更に言ってしまえば、元々そこまでルルーシュを助ける気持ちもカレンに比べれば遥かに薄かった。基本的にテメェで何とかしろのスタンスだ。ちなみに、立場が逆の場合向こうのルルーシュも同じ反応を示していただろう。
「全く細かいことを気にしやがって。ほら、見ろ。あの娘も楽しそうだろ?」
そう言って彰が指差した方向にいた少女は帽子を被ったまま笑顔でコチラに近寄ってきた。というかこの少女はもしかして…
「トトロ!貴方、トトロって言うのね!」
「天子様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??何で天子様にこんなことやらせてんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??」
「違うよメイ。この人はカンタのお婆ちゃんだ。トトロじゃない」
「あ、ごめんなさい」
「間違えることは誰でもあるさ。気にしなくて良い」
「いや、貴方は別の所を全力で気にするべきだよね!?気にする所が山ほどあるよね!?」
「いやー、やっぱりジブリならトトロは外せないだろ?俺はもののけ派だけど」
「知らないよ!聞いてないし!」
「子供はトトロのほうが好きなんだよな。ほら、アイツもトトロの方が好きみたいだぞ」
「え?」
疑問の声をあげてシャーリーが振り返ると、確かに別の女の子も天子様の方に近づいていく。トトロの登場人物の服を着ているところからトトロが好きな女の子にしか見えないだろう。ただし
「何処にもいないですよメイ。トトロも希望も常識も…ふふふ」
目が完全に死んでいる点を除けばである。
(全力で闇堕ちしてるさつきちゃんが来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??)
完全にダークサイドに墜ちているかぐやもとい、さつきを見てシャーリーは自分がとんでもない任務を負って此処にいることを改めて悟った。
このままではマズイ。ゼロレクイエムとか言っている場合ではない。
「かぐや様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!お願い戻ってきて!私を一人にしないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
自分と同じ常識人であったはずであるかぐやの変わり果てた姿を見て戦慄を覚えたシャーリーは何とか正気を取り戻して貰おうと身体を前後に振り続ける。しかし、それでもかぐやの口から漏れるのは乾いた笑いだけだった。
「私もね…最初は争っていたんですよ。ですけど、1人、また1人とおかしくなる人達を見て思ったんです」
かぐやは漆黒の瞳でシャーリーを見つめた。
「私もおかしくなった方が楽なんだって」
「この外道ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
シャーリーは全てを彰のせいだと判断した。根拠などない。しかし、自分は絶対に間違っていないという謎の確信があった。
「何を騒いでんだよ。かぐや様って元からそんなだったろ?」
「いや、そんな訳ないよね!?こんな何もかも諦めたみたいな目をしてなかったよね!?」
「気のせいだろ。なあ、C.C.?」
「まあ、そうだな」
「絶対に貴方はおかしいことに気付いてるよねC.C.さん!ちょっとは協力してよ!本物のルルが心配じゃないの!?」
「そんな訳ないだろう。私の契約者だぞ?夜も寝られないくらいに心配している」
「その割には顔色良いですけど!?先程もたっぷりと昼寝をしていらっしゃいましたけどそのせいで夜寝られないだけじゃないですか!?」
「アイツが人質に取られているからな。やりたくないが仕方なく協力しているんだ」
「随分と楽しそうに見えましたけどね!?一番イキイキしているように感じましたけどね!!」
ギアスでルルーシュのことが分かるC.C.に彰の変装が通じるわけもなく、出会った瞬間にニセルルーシュであることは看破されていた。
しかし、そんなことは彰にも分かっていたため、即座に事情を説明。ルルーシュの安否を保証した上で、ルルーシュの命が大切ならば協力しろとC.C.が協力しやすい理由を作ったことで少なくともある程度の協力は保障された。なので、C.C.の言葉は間違いではない。ノリノリの気がしないでもないが飽くまでもルルーシュのためなのだ。多分。
(カレンが心配してた通りだ…)
この惨状を目にして、シャーリーの脳裏に1週間前の光景が蘇る。
〜1週間前の日本〜
「火急である」
「山本元柳斎重國以外でそのセリフ使ってる奴初めて見たわ…」
「何が火急なの?」
所謂、ゲンドウポーズを取りながら真剣な表情で全員を見ているカレンにシャーリーは首を傾げる。特に何も起きていないと思うが、一体何があったのだろうか?
「決まってるでしょ?彰への対応よ」
「ああ…」
この間の騒ぎがシャーリーの脳裏に蘇る。確かにこのまま放っておけばルルーシュと違う意味で取り返しのつかないことになるような気がしてはいた。
「お前が行くしかないだろう。お前以外に止められる奴などいない」
「そうしたら早いんだけどね。生憎と私はアンタを見張らなきゃいけないから無理よ」
「だとしたら放っておくしかないぜ?」
リヴァルの答えが総意だった。カレン以外に彰を止められるとは誰にも想像できない。
「放っておいたら大変なことになるわよ」
「どうなっちゃうの?」
「この世もボケに支配されるわ」
「「「「は?」」」」
意味が分からないカレンの発言だが、本人からすれば至って大真面目である。
「アイツは変な所で影響力があってね…関わると必然的に頭がおかしくなるわ」
「悪影響あり過ぎじゃない!?」
「だから、誰かが行かなきゃいけないのよ…まあ、この中で私以外に止められる可能性があるとしたら…」
真剣な表情で暫く悩んだカレンはくるりと振り返ると、シャーリーの肩に手を置いた。
「頑張ってね、シャーリー。アンタだけが頼りよ」
「無理だよ!?」
急に世界の命運が自分の肩にのしかかった気がした。あんな騒ぎを引き起こす人間を止めるなど、どう考えても無理である。
「大丈夫よ、私の世界だとアンタは結構彰と一緒にいたから」
「いるだけじゃ何の意味もないよね!?止められてたの!?私は彰を止められてたの!?引き摺られてなかった!?」
「いや、逆に考えれば引き摺られてるってことは相手の速度は落ちるわよね」
「会長!?」
とんでもないところから矢が飛んで来た。味方からいきなり背中を斬りつけられた気分だった。
「そうだな…少なくとも俺が行くよりは効果あるだろ…」
「リヴァルまで!?」
「決定ね。30秒で支度しな」
「何かカレンも影響受けてない!?」
頭が痛くなるやり取りを思い出したシャーリーは頭を抱えた。
まさか、こんな形で世界の命運を背負うことになるとは思わなかった。勝ち目など全く感じない戦いの上に、謎の疲労感だけ募っていく。今すぐ日本に帰って全てを忘れた観客に戻りたかった。無理なのだが。
「それにな、シャーリー。俺が本当にふざけているだけだと思っているのか?」
「思ってるよ!そうとしか見えないよ!」
「違うな。間違っているぞシャーリー。アイツを止めたらそれで終わると思っていたら大間違いだ」
「え…どういうこと…?ルルを止めればそれで終わりなんじゃないの?」
「違うに決まっているだろう。世界はそんなに単純じゃない。本当の敵は別にいる」
「じゃあ…本当の敵って…」
「原点にして王者…ディズニーだ」
「少しくらいは真面目になってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
悲鳴のようなシャーリーの叫び声を無視して彰は続ける。
「確かにな…真面目に考えれば戦力差は埋め難い。何よりもランドとシーが強過ぎる」
「違うから!そんな所真面目に考えなくて良いから!」
「その戦力差を埋めるために始めるのさ!ジブリパークをな!」
「ねぇ、貴方良い加減にしてよね!?何なのこの話!宣伝!?」
「そうだ!一刻も早く知名度を上げねばならん!水際対策をしている場合ではない!」
「私はボケの水際対策を今すぐしたいよ!感染状況が酷いことになってるよ!」
「そのためにあるのだろう?ワクチンがな!」
「この場合のワクチンって何!?ツッコミ!?」
「陛下!シュナイゼル殿下より緊急入電です!」
シャーリーのツッコミが響く中、部下の一人から緊急を知らせる連絡が届く。
流石に多少気持ちを切り替えたルルーシュ(笑)は、素早くシャーリーを隠すと余裕たっぷりな表情で映像を繋げようとする。
しかし、そこにいたのはシュナイゼルではなかった。
「お久しぶりですね、お兄様…」
死んだはずの妹。ルルーシュにとってはかけがえのない、文字通り命よりも大切な存在である
「私はお兄様の…敵です」
ナナリーが今まで閉じられた目を開いてそこにいた。
「そうか…ナナリー…お前か…お前が!」
まあ、とは言え
「ディズニーだっだんだな!」
(何時までジブリワールドにいるのあの人!?)
シリアスになる訳でもないのだが。
微妙な空気の中、飛び出すわけにもいかないシャーリーのツッコミが脳内に響いた。
次の更新も未定です。よろしければ気長に待っててください。