彰とカレンの原作放浪記   作:はないちもんめ

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誰だ次で終わるなんて言ったやつ!(自爆)


IF〜もし彰が奪還のロゼの世界にいたら ②

「私に力を…戦い方を教えてください!」

 

土砂降りの雨の中、走ってきた少女はその男の服を掴んだ。

 

父を殺された。友を奪われた。

 

恨まない訳がない。狂わない訳がない。この身は復讐に捧げると誓った。

 

「そうか…過酷な道になる。何があっても逆らわず俺の修行に耐え抜くことを誓うか?」

 

コクリと頷く。少女はーサクヤはこの判断を後に振り返る。

 

「じゃあ、まずは体力を身につけないとな。今から焼きそばパン買ってこい。30分以内な」

 

「え?」

 

気軽に誓いなんてしなきゃ良かったなぁと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの二人の付き合いは意外と長くてな。だからこそ、他の人から見れば異常としか思えなくとも本人同士にしかわからないコミュニケーション手段がある」

 

突然、弁明のように話し始めた黒戸の言葉をアッシュは隣で聞いている。

 

「だからこそ、偏見を持たずにあの二人を見て欲しい。それでしか理解できないことがある」

 

偏見を持たずに人を見る。それは間違いなく理想であろう。アッシュもそれは否定しない。

 

しかし。しかしである。

 

「そうか…確認したいんだが良いか?」

 

アッシュはそう言うと、チラリと彰とサクヤの方を見る。

 

「いやー、傷ついちゃったわー。わざわざ助けに来た師匠に対してお礼を言うどころか正体隠す弟子がいるなんてさぁ。がっかりだよ俺は」

 

「誠に申し訳ありませんでした!」

 

「謝れば良いと思ってるだろ?わかるんだよな、そういうの」

 

「そんなことはありません!私が彰さんに対してそんなことするわけなど!」

 

「はいはい、良いからそういうの。繊細な俺としてはよ?そういうことされると嘘ついてると疑っちゃうわけよ。わかるだろ?」

 

「繊細な彰さんを傷つけて申し訳ございませんでした!」

 

ロゼの変装をやめて素顔に戻ったサクヤは正座をしながら、ダラーっと寝そべりながら延々と続く彰の文句を聞いている。姑だってここまで愚痴愚痴と言わないだろう。それでもサクヤの口から謝罪以外の言葉が漏れることはない。

 

その様子を確認しながらアッシュは念のためもう一度尋ねる。

 

「俺から見たらいじめにしか見えないんだが、黒戸にはどう見える?」

 

黒戸は目頭を抑えただけで何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、今回はこれくらいにしとくか。正座やめて良いぞ」

 

「え…これくらいで許してくれるんですか…?」

 

通常であればこの後、数時間は理不尽な要求と嫌味が続くのが当たり前だ。でも、今日はこれで終わりだと言う。

 

「おいおい、サクヤ。勘違いすんなよ?俺は別にお前をいじめたいわけじゃないんだ」

 

そうだったんだ。イジメ加害者の弁明みたいな言葉を聞いた黒戸とアッシュは思った。

 

「彰さん…」

 

サクヤは何か感動した顔を浮かべているが、言うまでもなくこのクズはそんな良いことは言っていない。

 

「お前が今まで頑張ってたことは知ってる。これはその祝いだ。あ、ついでにコーヒー入れといて」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

彰の言葉にサクヤは嬉しそうな顔を見せながら、コーヒーを煎れにいく。…もしかしたら、本当に嬉しいのかもしれない。酷い目に遭いすぎて感覚がバグっている。

 

「あの…サクヤさん」

 

「何ですかアッシュ」

 

「今、何でお礼を言ったんですか?」

 

「彰さんが褒めてくれたんですよ?当たり前じゃないですか」

 

「そ…そうですか…」

 

話している内容もイカれているが、最もヤバいのは目だ。

 

話しているサクヤの目を見てアッシュは引き攣った顔で後ずさった。

 

顔自体は笑っているのだ。しかし、目だけは笑っていない。

 

(深淵のような虚無…)

 

この世の絶望とか闇とかを全て煮つくしたような目だ。何があったらこんな目をするようになるのだろうか。アッシュは同じく引き攣った顔をしている黒戸に近づく。

 

「おい、どう考えても危険な心理状態だぞ。ああなるまで何で放っておいた」

 

「進行度レベル2か…久しぶりに会ったからか進行速度がえげつないな」

 

黒戸は過去を思い返しながらアッシュにサクヤの状態を説明する。

 

「サクヤ様が彰の弟子になったのは、そもそも重吾様が彰のことを気に入っていて、自分に何かあったら彰を頼るようにサクヤ様に言われていたからなんだ」

 

「重吾さんが?」

 

何故?といった疑問を浮かべているアッシュを尻目に、黒戸は話を続けていく。

 

「ああ。当然の如く、藤堂さんを筆頭にほぼ全ての人間が反対していたのだがサクヤ様の決意は固くてな…彰に弟子入りを志願した」

 

「その結果がアレか」

 

チラリと彰にコーヒーを渡して、甘いものがないことにくどくど文句を言われているサクヤを見た。何故か物凄く不憫に思えてきた。

 

「最初は理不尽な修行とめちゃくちゃな人間性にサクヤ様も文句を言っていたのだが、彰の奴がことあるごとに重吾さんは俺を信じてくれたという話を言っているのを聞き続けて現実と重吾様の言葉の板挟みにあって苦しんでいる時期があった…その結果、悟ったらしい。間違っているのは世界じゃない。自分の方だと」

 

DV男に惹かれる女みたいだなとアッシュは思ったが流石に可哀想なので口には出さなかった。

 

「そんな考えを抱いたまま彰と過ごす内にああなった。末期状態になると頭の中に自分と同じ境遇の友達を作って一人で会話を始める」

 

「いや、それもう精神病の類だろう」

 

「問題ない。紅月隊長と千葉さんを筆頭にして彰を半殺しにした後に行われた三日三晩の磔の刑の間に何とか現実に戻すことができたらしい」

 

問題しかないと思う。というか黒の騎士団は大丈夫なのだろうか。アッシュは一抹の不安を抱き尋ねたが黒戸は深く重いため息を吐いた。

 

「大丈夫なわけないだろう。サクヤ様の叔父にあたるルルーシュ殿は怒り狂い処刑命令を出すし、藤堂さんは責任を取って腹を切ろうとするし、紅月隊長と千葉さんは二人を必死に止めようとするしで大揉めだった…紅月隊長も千葉さんも何故、自分達があのクズの命乞いをしなきゃいけない…!?と言って泣きそうになっていたのを卜部さんが慰めていた」

 

「地獄絵図だな」

 

「正しくな。ディートハルトだけだ。あの光景を楽しんでいられたのは」

 

当時を思い出しているのか黒戸は頭が痛そうにしている。しかし、それだけでは目の前の現実は変わらない。サクヤは申し訳なさそうな顔をしながら、彰の文句を聞き続けている。

 

「甘いものがないならしょうがないけどさあ…ちょっとは工夫とかして欲しいわけよ。お前、暫く会わない間に弛んでるじゃないの?」

 

「申し訳ありません…トモヤ君とチヒロちゃんなら、もっと工夫できたんでしょうけど」

 

「…トモヤ君とチヒロちゃんって誰だ?」

 

「…サクヤ様の脳内の友達だ。ちなみに、トモヤ君の方が二つ年上でチヒロちゃんはサクヤ様の幼馴染だ。小学校時代は3人とも仲が良かったが、中学時代になると男女の違いで少しトモヤ君とは疎遠になった。しかし、高校生になるとトモヤ君から垣間見える優しさと男らしさに惹かれたチヒロちゃんがトモヤ君のことを意識し始めるが、トモヤ君はそれに気付いておらずサクヤ様はそれを微笑ましそうに見守っていて2人の仲が進展することを願っているらしい」

 

「いや、果てしなくどうでも良いんだが。というか、無駄に設定細かいな」

 

「現実味を帯させるには細かい設定が不可欠だからな。サクヤ様が楽しそうにトモヤ君とチヒロちゃんの話をしているのを聞いたルルーシュ殿とコーネリア殿下は泣き崩れていた」

 

「それはそうだろう。しかし、目の前の現実はどうするんだ?このままだと、サクヤ様の脳内友達が増殖しそうだが」

 

「分かっている。想定パターン51だな」

 

「いや、これを想定しているなら止められる者と一緒に来るべきだろ」

 

「それが望ましかったのだが、生憎と奴を止められる者は全員ある程度の役職なのでそう簡単に動かせん。千葉さんや卜部さんは情勢不安定の中華に滞在しているし、紅月隊長はトウキョウから簡単には動かせない。『最強』の名は我々が思っているより重い」

 

「黒の騎士団『最強』紅月カレンか」

 

アッシュも名前は知っている。というより、全てのナイトメアパイロットが知り、憧れる現代最強のナイトメアパイロット。ゼロの右腕にして最も信頼厚き部下。桐島彰と並ぶ三英雄の一人。彰と並ぶ段階で多少アレな人なのではないかと思ったが、黒戸から頼むから本人にはそんな風に言ってくれるなと頼まれたので考えないようにした。

 

「『最凶』の方は同時に来るのは可能ではあったが、彰を止めることは難しい…というより一緒に騒ぎを拡大させる気しかしなかったことから却下された。本人は不服のようだったが」

 

『最凶』マーヤ・ディゼル。『最強』とは異なり、尊敬の念だけでなく恐怖の念も集めている存在だ。曰く、ブリタニアの男性は絶対に近づかないように命令が出ているとのこと。意味がわからなかったが、この彰を見ていると同じくやばい奴なのだろうと想像はついた。

 

「じゃあ、どうするんだ?」

 

「かぐや様が手は打っていると言っていた。どんな手段かはわからないが」

 

そんな風にアッシュと黒戸が話している間も彰の傍若無人振りは続いている。基本、調子に乗りがちなダメ人間だ。止める人間がいなければとことんダメになる。坂道を転げ落ちるようにクズはその度合いを上げていく。

 

「あーあ、折角助けに来たのにな。迎えの準備どころかちょっとしたお菓子も無いとは呆れるよ全く。トモヤとチヒロなら、走って買いに行くだろーな。あーあ」

 

敢えて自分で買いに行けと言わずに、相手に買いに行かせることで責任を免れようとするクズの見本のような行為。しかし、色々ダメになったサクヤはそれを聞いてオロオロしてしまう。その様子も彰からすると見ものだったりする。

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、随分と楽しそうですね、ダーリン?」

 

入口に現れた金髪の美女の地獄の底のような冷え切った声が空間を支配する。

 

余りの迫力にアッシュも黒戸も息を止めたが、彰はその比ではない。全身を硬直させると冷や汗を流しながら、即座に離脱しようと足に力を入れる。

 

「まあ、そんなに慌てなくても良いじゃないですか?」

 

しかし、乱入者の金髪の美女は彰の肩を掴むと無理やり着席させる。抑えた肩はギリギリと音を立て、まるで万力のようだった。

 

「久しぶりに会えたんだからゆっくり話しましょう。これからの計画とか今までの行いとか…ね」

 

レイラ・桐島の降臨である。

 

 

 

 

 




次で終わりたいんだけど無理だろうなぁ…
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