「本当に大丈夫なの?シャーリー。急に体調悪くなったって言ってるのにあんた一人で留守番とか」
「私をいくつだと思ってるのよ。大丈夫だよ、お母さん。留守番くらいできるって」
実家に様子を見に帰ろうとする自分の母が自分を心配する様子を見てシャーリーは苦笑いする。
まあ、無理もない。
この間黒の騎士団との侵攻とそれに伴う租界での大爆発があったばかりなのだ。大切な一人娘を残して出かけることに不安を覚えない親などいないだろう。
だからこそ本当はシャーリーもついて行くはずだったのだが、諸々の事情で行くわけにはいかなくなってしまったのだ。
「ちゃんと戸締りするのよ?後、ご飯も食べること。それと」
「はいはい、分かったから!早く行きなよ!」
なかなか出ていかない自分の母の背中をグイグイと押して、強引に出発するのをシャーリーは見送った。
その後、車の音がして完全に出かけたのを確認してからシャーリーは、ほっと溜息を吐いた。
「出かけたから、もう出てきても大丈夫だよカレン」
「ほんっとゴメン、シャーリー!無理なお願いして!」
階段からヒョコッと降りてきたカレンは本当に申し訳ないという態度を全身から出しながら手を合わせて謝る。
カレンが家に来たのは一時間ほど前のこと。シャーリーが部屋へと入ると、いきなり口を塞がれて「お願い静かにして!今から顔を見せるけど…絶対に声を出さないって約束してくれる?」と言われたのだ。
突然の展開に恐怖したが、その声には聞き覚えがあった。なので、反射で頷くとその声の主はシャーリーに自身の顔を見せた。
その顔は予想通り、シャーリーの見覚えがある顔だった。
「カ、カレン!?こんな所で何やってるの!?」
「分かるのね!?私のこと知ってるのね!?」
「そりゃ、知ってるよ!」
「良かった!アイツの予想は当たってた!ありがとうシャーリー!ありがとうこっちの私!でかしたわ!」
カレンは、よっしゃーというポーズを取って喜びを表していたがシャーリーには何のことかわからない。カレンは一体何を言っているんだろう。
そんなカレンを何となく眺めていると急にカレンは真剣な顔になり、シャーリーの肩を掴む。
「って、こんな事してる場合じゃないの!シャーリーお願い!
ルルーシュの真実が知りたいの!協力してくれない?」
カレンのその言葉はシャーリーの胸に響いた。
その後、カレンに言われてシャーリーは体調が悪くなったと母親に告げて一緒に行くはずだった母親の実家への帰省を断り今に至る。
ようやくじっくり話せそうになったので、カレンにルルの真相を聞こうとするがカレンはその前に私の話を聞きたいと言う。それもここ二年くらいの話を。
何でそんなことを書きたいのかとも思ったが、必要だと言うので延々と四時間ほど休憩を挟みながら話し続けた。話終わった後、カレンは難しい顔をして唸っている。
「やっぱり流れは大分違うかぁ…そりゃあ、彰が居ないんじゃしょうがないかもしれないけど…これじゃあ、何があったか全く予想できないわね…」
流れ?彰?予測?何の話だ?
「ねぇ、何の話?」
「ん?いや、その話はまた後で。ところで、これで全部?言ってないことない?」
「え?い、いや、ないけど」
カレンの言葉にシャーリーは動揺しつつも否定する。カレンはその言葉を疑いもしなかったようだが、本当はシャーリーには隠していることがあった。
とは言え、これは言うわけにはいかないのだ。言えば自分の頭がおかしくなったのかと思われそうだし、何より物凄く怖いことのような気がするからだ。
そんなことをシャーリーが考えていると玄関のチャイムが鳴った。誰だろうと思い、玄関を開けたシャーリーは固まった。何故なら
「こんばんは、シャーリー。久し振り。こっちでも元気そうで良かったわ」
今までリビングで喋っていたはずのカレンがいたからだ。
驚きすぎると言葉が出なくなるのかシャーリーは無言で固まるが、そのカレンはシャーリーの脇をすっと通り過ぎてリビングへと向かった。
慌てて追いかけると、当然だが二人のカレンがリビングで鉢合わせしていた。
何がどうなっているのか分からないシャーリーの頭は疑問符で埋め尽くされるが、先に来ていたカレンは嫌な顔をして話し出す。
「相変わらず似過ぎて気持ち悪いわね…早く変装脱ぎなさいよ」
「いやあ、彰のことを知らないシャーリーの前で彰として現れるわけにもいかんだろ?」
そう言って後から現れたカレンが顔を手で覆うと全く知らない男の人になっていた。
「あ…あなた…誰?」
「彰ってもんだ。まあ、カレンの戦友だな」
「兼腐れ縁ね。心配しなくて良いわよ、シャーリー。コイツは人間性と性格と常識以外は信用も信頼もできる奴だから」
「ねぇ、それ俺の大部分を信頼も信用もしてないってことじゃないの?」
どうかしらねーと言いながらニシシという言葉が似合いそうに笑うカレンを見ると仲が良いのだということは言われずともシャーリーには感じられた。
「ま、そんなことはどうでも良いか。んで?何かシャーリーから聞いて分かったか?」
「大筋の流れはね。あんたの方は?」
「とりあえず何でルルーシュが騎士団から追い出されたのかは分かったよ」
カレンが一人でシャーリーの所に向かっている時に彰は彰でカレンの顔を借りて騎士団の人から情報収集をしていた。
だったら私が行くとカレンは言ったが、「お前、言いたくないことを誰かに上手く話させることができるほど口が上手いの?」とか「お前が自分の感情を抑えて当たり前の顔をして座ってることができるとは思えん」とか言われると黙るしかなかった。
「本当に!?ねえ、一体何があったの!?」
彰の言葉にガタンと席を立って彰の顔を掴むカレンに彰は落ち着くように言ってから話し始める。
「俺の話は全員が揃ってからだ。一応、今後の作戦を考えたんだがどう考えても人手が足りないんでな。二人ほど信頼できる奴に声をかけた」
「え?それって」
そして再びシャーリーの玄関のチャイムが鳴る。するとそこには、久しぶりの顔があった。
「か、会長!?どうしてここに!?」
「おひさー。リヴァルもいるわよ。カレンに二人とも呼ばれてね」
「よう、シャーリー。上がって良いか?」
予想外の二人の登場にシャーリーは目を白黒させたが、側に来ていた彰は当たり前のように告げる。
「悪いな、シャーリー。俺が呼んだんだ。悪いが上がってもらって良いか?」
「う、うん、この二人なら構わないけど」
いや、あの人誰!?と二人には聞かれるが誰なのか私の方が知りたい。カレンの知り合いとしか聞いてないし。
すると今度はリビングからカレンも顔を出して彰に怒鳴りつける。
「あんた私の声を勝手に使うのやめなさいよ!」
「この方が話が早いんだよ。我慢してくれ」
カレンと彰は普通のように対応しているが、私も含めた三人は何がどうなっているのか分からずに立ち尽くすしかなかった。
しかし、そんな中でも流石は会長と言うべきかカオスの空間をまとめて話を進めようとする。
「はいはい!とりあえず全員静かに!で?カレン?何の話があって私たちを呼んだの?ルルーシュのことについて話したいって言ってたけど」
呼ばれたカレンは無言で彰を見る。おい、お前の何を言ったんだ?とでも言いたげに。
その視線を受けた彰は肩をすくめて答える。
「わりーな、会長。呼んだのは俺なんだ。そうだな…シャーリーが良いって言ってるし、とりあえずリビングで話さないか?」
原作の流れなのでもう一個の話とは違って基本シリアスです