彰とカレンの原作放浪記   作:はないちもんめ

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我ながら無茶苦茶である…


5 出かけるときは晴れでも折り畳み傘を持っていけ!

アッシュフォード学園を見てルルーシュは少し懐かしい思いを感じたが、一瞬でその思いを打ち消す。今の自分はそんなことを考える立場にいない。

 

同時に目の前にいる赤毛の彼女を見ても、心を揺るがす訳にはいかない。自分はカレンと初対面を演じなければならないからだ。だがしかし

 

「会場まで案内係を務める紅月カレンです!よろしくお願いします!ルルーシュ皇帝!」

 

カレンの態度には何か引っかかる。ルルーシュはそんなことを感じた。

 

自分は彼女を捨てたはずだ。彼女はそれで傷ついたはずだ。

 

そのはずなのに、彼女の態度からはそんなことを少しも感じない。まるで久し振りに自分に会えて嬉しいといったような感じすら覚える。

 

そんな彼女を見てルルーシュは悟った。彼女は自分を未だに大切に想ってくれているのだと。

 

その考えはルルーシュの心を蝕む。それではダメなのだ。彼女は自分を憎んでくれなくてはならない。彼女は自分の敵で居てくれなくてはならない。彼女が自分と同じ修羅の道を歩むようなことがあってはならない。だからこそ

 

「紅月隊長ですね。お願いします」

 

自分は彼女の思いを完全に断ち切らなくてはならない。ルルーシュは最大限の他人行儀の話し方をした。自分は彼女など知らないと。自分は彼女のことを何とも想っていないと伝えるために。

 

そのルルーシュの反応にカレンは少しムッとした顔をするが、すぐに切り替えてルルーシュを校内へと案内するために先導する。ルルーシュは当然後ろからついて行っている。だから気付かなかった。

 

目の前のカレンが密かに笑っていたことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私ね。貴方に感謝してる」

 

二人だけの空間。他に聞いているものはいない。だからこその言葉だと思い、ルルーシュは耳を傾ける。

 

「貴方のおかげで私は救われた。貴方のおかげで私は心の底から笑えるようになった。貴方のおかげで私の人生は…華やかになった」

 

振り返って後ろのルルーシュにニコッと笑うカレンの顔からルルーシュは目を背けた。自分はそんな風に感謝される対象ではない。

 

そんなルルーシュを無視してカレンの独白は続く。カレンは更にルルーシュに近寄った。

 

「だから正直…これからすることに若干の罪悪感はあるんだけど…これしか貴方の考えを知る方法はないみたいだから…ごめん我慢して。貴方のやってることが正しかったら後で死ぬほど謝る…だから」

 

そう言うとカレンは拳を強く握り、キッと目つきを鋭くさせる。何かマズイと感じたルルーシュは行動を起こそうとするが一歩遅かった。

 

「痛いだろうけど…我慢してね!」

 

カレンはルルーシュの腹を思いきりぶん殴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜3日前〜〜

 

「3日後にルルーシュはアッシュフォード学園で合衆国と会議をする。これは間違いない」

 

生徒会の四人を集めて彰は作戦の詳細を説明する。

 

「そこで明日カレンは何としてでも騎士団の皆に自分がルルーシュを一人で会場まで案内すると伝えろ」

 

「私が?」

 

「そうだ。ギアスがあれば人数などいたところで問題にならない。そう言えば多分案内係がお前一人でも問題ないということになるはずだ。操られたら自分を撃てとついでに言っとけ。念のため、案内する時にお前は一応ギアスを防ぐサングラスくらいはかけとけよ」

 

「そんなこと言ったってルルーシュの側から誰か来るかもしれないわよ?」

 

「確かにその可能性はある…だが、その可能性は少ない」

 

「どうして?」

 

「アイツの性格だ。敵地に堂々と一人で乗り込む方がインパクトが大きい。相手の油断も誘えるしな」

 

「そうかもしれないけど、案内に何の意味があるのよ?」

 

「焦るな。ところで、入り口から会場に行くには階段がある広いスペースを通る必要があるでしょ?会長」

 

「ええ、そうね」

 

「ククク…予想通りだ。あそこにルルーシュを連れて行ったらカレンお前は…ルルーシュを思いきりぶん殴れ。そのまま気絶させろ」

 

「は!?いやいや無理でしょ!?皆に監視されてるのよ!?」

 

「それはない。あの場所だけは構造上、外から監視はできないようになってる。だから監視カメラだけになるだろうが…俺がハッキングしてカレンが建物に入ってからの30分は同じ映像を流すようにする」

 

そこまで言ってから彰はニヤリと笑う。

 

「アイツに正攻法で挑んでも勝ち目はねぇ。だから、俺たちは奇襲でいかせてもらう。どう考えても騎士団の幹部であるカレンが国際問題になるようなことをするわけがない。だからこそやる。アイツのシナリオを途中から崩してやるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がはっ!?」

 

衝撃でルルーシュの意識が一瞬遠のいた。だが、それでもカレンの攻撃は収まらずそのまま腕でルルーシュの首を極める。

 

呼吸をすることも厳しかったが何とかルルーシュは声を絞り出す。

 

「しょ…正気か!?仮にも国のトップに…こんなことを…国際問題になるぞ」

 

「正気でこんなことができると思う?完全にイかれてると自分でも思うわよ」

 

「俺を…殺す気か…」

 

「そんな訳ないでしょ。アンタを殺すなんてあり得ない。アンタを殺すくらいなら死を選ぶわよ」

 

「このバカ…が」

 

その言葉を最後にルルーシュは意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…シャーリー!?リヴァル!?」

 

「ルル!目が覚めたんだね!」

 

「良かったぜー、ルルーシュ!目が覚めないから死んだかと思っちゃったぜ!」

 

目が覚めたルルーシュは目の前にシャーリーとリヴァルが居ることに驚く。何をやってるんだと怒鳴ろうとしたが、自らがパンツ一丁になって縛られていることに気付いた。

 

自らの友達のあり得ない行動にルルーシュは皇帝の仮面を外してただのルルーシュとして話してしまう。

 

「な…何を考えてるんだお前ら!?こんなことをして無事で済むと思ってるのか!?」

 

「思ってないわよ。久し振りねー、ルルーシュ。元気そうで何よりだわ」

 

「会長まで…!?今すぐ俺を解放してください!今ならまだ間に合います!」

 

「そうもいかないわねー。これからアンタは私たちに連行されてシャーリーの家まで連れて行かれるんだから。解放されるのはしばらく無理ね。諦めなさい」

 

「な…何を考えてるんですか!?ふざけるのも大概にしてください!会議場に俺が行かなければ俺の身に何かあったのは間違いない!そうすればブリタニア側も黒の騎士団も黙ってない!全員国際法違反で死刑ですよ!?」

 

「そうだろうな。だが逆に言えば会議場にルルーシュ皇帝が現れればお前の身に何かあったなど誰も思わない。もちろんスザク達もな。そうすれば表面上は問題なく進むだろうさ。お前の筋書き通りにな」

 

突然聞こえる声にルルーシュは後ろを振り向く。そこには俺を気絶させたカレンと知らない男が俺の服を着て座っていた。

 

「誰だお前は!?お前か!?お前がカレンや会長達を騙したのか!?コイツらを巻き込むつもりで!」

 

ルルーシュの怒声に彰はやれやれと首を振る。

 

「勝手に勘違いしてんじゃねぇよ。これは皆が自主的にした行動だ。まあ、誘ったのは確かに俺だけど」

 

そう考えればルルーシュの言葉もあながち検討外れでもないなと彰は思った。

 

「ま、そんなことはどうでも良い。じゃあな。俺は今からルルーシュ皇帝として会議場行ってくる」

 

また会おうと行ってカレンを連れて歩き出す彰を見てルルーシュは血相を変えた。

 

「馬鹿か!?俺の服を着たくらいで俺になれるはずがないだろうが!」

 

「服だけならな。んじゃ、これならどうだ?」

 

くるっと振り返った彰の顔を見てルルーシュは言葉を失った。その顔は先程までの彰の顔ではなかった。その顔は

 

「俺…だと?」

 

ルルーシュの顔になっていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜再び3日前〜〜〜

「てかさ、ルルーシュを気絶させて何になるんだ?」

 

リヴァルの質問に彰は答える。

 

「ん?拉致る」

 

「おま!?そんな何でもないみたいに!」

 

「それしか方法ないだろ。考えても分からないなら知ってる人に聞くしかねぇ」

 

「いや、彰。悪いけどそれは無理よ」

 

黙って聞いていた会長も彰のあり得ない提案に口を挟む。

 

「ルルーシュが会議場に来なかったら大問題よ。皆黙ってないわ。絶対に学校中を探索されて見つかるわ」

 

「そりゃそうなるでしょーね。だけど、それはルルーシュが行かなかったらの話。ルルーシュ皇帝にはちゃんと会議場に行ってもらいますよ」

 

「え?捕まえるんじゃないの?」

 

話が合ってないのではないかとシャーリーは首を傾げる。

 

「ルルーシュは捕まえる。だが、ルルーシュ皇帝にはちゃんと会議場に行ってもらう」

 

「はあ!?どういうこと!?」

 

彰を信頼しているカレンも流石に彰を問い詰める。

 

皆の言葉を聞いて彰は悪そうに笑う。

 

「人はどうやって人間を認識する?番号があるわけじゃねぇんだぜ?だから…俺がルルーシュ皇帝に化けて会議場に行って、それをルルーシュ皇帝だと全員に認識させれば…俺はルルーシュ皇帝になるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前のそんな驚いた顔を見るのは初めてだな」

 

自分の声で発せられる言葉にルルーシュは言葉を失う。

 

「そんな訳だ。お前なら説明しなくても分かるだろ?これは俺とお前の勝負だ。俺がお前を演じてスザク達も含めた全員を騙せたら俺の勝ち。バレたらお前の勝ちだ。シンプルだろ?」

 

彰の言葉に呆然としていたルルーシュも我に帰る。

 

「無茶苦茶だ!そんな賭けにカレンやシャーリー達を巻き込むな!お前がバレたら全員死ぬんだぞ!」

 

「へぇ?心配するのか?シャーリー達はともかくカレンは駒なんだろ?その駒が死ぬのが嫌なのか?」

 

ほとんど確定だったが今のでお前の言葉が嘘だったのは確実だなと笑う彰を見てルルーシュは自分の失態を悟る。

 

「ふん。どんなに取り繕ってもそれがお前の本質だ。今度こそ行くぞ、カレン。時間がねぇ」

 

うなづいて歩き出すカレンに付き添って彰も歩きだし、部屋の扉を掴む。だが、同時にシャーリーが声を発する。

 

「彰!彰は…大丈夫なんだよね?彰もちゃんと…帰ってくるんだよね?」

 

「俺はその嘘つきと違って確実じゃない約束はしねぇよ」

 

彰の言葉にシャーリーの瞳に涙が溜まる。それを見た会長とリヴァルは声を出そうとするが、その前に振り返らずに彰が続ける。

 

「だが…女を泣かせるのは趣味じゃない」

 

その言葉と同時に彰とカレンは部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この格好つけ」

 

「うるせぇ、放っとけ」

 

くすっと笑いながら言うカレンにそっぽを向いて彰は返事を返す。場所は会議場の前。彰の顔も真剣な顔に戻る。

 

「じゃあな。行ってくるわ」

 

扉に手をかける彰の背に向けて彰にしか聞こえないくらい声でカレンは話す。

 

「ルルーシュが作ったシナリオ…ぶち壊して来なさい」

 

「任せろ」

 

同時に扉は開かれる。皆の視線が彰に。ルルーシュ皇帝に集まる。彰としても一世一代の大舞台。にも関わらずこの男は不敵に笑いながら告げた。

 

「さあ、始めようか!民主主義を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろストックが尽きてきた…

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