「で、では気を取り直しまして…」
コホンと咳をしてから神楽耶は今までのやり取りをなかったことにして話を進めようとする。色々と手遅れな気もするが気にしてはいけない。
「ルルーシュ皇帝。貴方は合衆国に参加するという考えでよろしいですか?」
「そうです皇帝」
「…本当にそのつもりなのですか?」
「もちろんです皇帝」
「…こちらとしては貴方の魂胆は分かっています」
「何の話です?皇帝」
やり取りを通して神楽耶の頬がピクピクと痙攣する。正直、良く頑張ってると思う。
「あの…ルルーシュ皇帝。一つよろしいですか?」
「何でしょう?皇帝」
「先程から何で語尾に皇帝をつけて喋っているのですか?」
「ふっ。そんなことですか皇帝」
ルルーシュ皇帝は当たり前のことを答えるかのように堂々と告げる。
「私の満ち溢れてる皇帝力が漏れ出しているだけですよ皇帝。私ほどの皇帝力になると、これぐらい朝飯前ですよ皇帝」
何故かドヤ顔で告げるルルーシュ皇帝に何と言ったら良いか神楽耶は頭を働かせる。考えたら負けな気もするが、こちらの世界の神楽耶にそれを求めるのは難しい。
こんな時に頼りになるカレンはと言えば、先程の騒ぎでルルーシュ皇帝に許されたとはいえ流石に無礼すぎるということで神楽耶に追い出されている。居れば自身の助けになったのだが、そんなことを神楽耶は知る由もない。
そんなカレンは外で「皇帝力って何よ!?どんな所で皇帝らしさを表現してんのよ!」と的確なツッコミをしているのだが会場には聞こえない。
「そ、そうなんですか皇帝力ですか…そんなものがあったんですね。知りませんでした」
「勉強不足ですね神楽耶様皇帝。これからの時代に皇帝力は必須ですよ皇帝。AIに代替できない能力こそ皇帝力ですよ皇帝」
「へ…へえー、そうなんですか」
「知らなかったです皇帝」
さらに顔を引攣らせる神楽耶とは対照的に天子はそういうものなのかと納得し、使いこなそうとしている。
戻ってきなさい、天子様!戻ってこれなくなるよ!
「早めに使うべきですよ神楽耶様皇帝。見なさい天子様はもう使い方をマスターしていらっしゃる皇帝。今なら私に先程から刺さりっぱなしの木の棒とセットで教えてあげましょう皇帝」
「セットでいくらなのですか?皇帝」
「通常なら一万円の所が今なら何と!五千円でお売りしましょう皇帝!」
「わぁー、お得ですねぇ皇帝」
「電話番号はフリーダイヤルブリタニアバンザイでご応募お待ちしております皇帝」
「お、お得かどうかは分かりませんが、分かりました。と、ところでそろそろ本題の方に入らせていただいても?」
ボケの嵐の中で必死に話を軌道修正しようとしている神楽耶は賞賛されて良いと思う。
そんな神楽耶の頑張りが伝わったのかルルーシュ皇帝も申し訳なさそうな顔をする。
「すいません神楽耶様皇帝。本題に入るのが遅れてしまいました皇帝」
「い、いえ、お気になさらないで結構です」
「では本筋に話を戻しましょう…皇帝力とは何か…という話でしたね」
いや、違うだろぉぉぉぉぉ!!??というツッコミがカレン、シャーリー、リヴァル、本物ルルーシュから炸裂する。誰一人として会場にいないのがもどかしい。
神楽耶も向こうの神楽耶であれば、『あら、それではこちらも嫁力を見せなければいけませんね妻。扇。布団を敷きなさい妻』と盛大なボケ返しをしたのだが、こちらの神楽耶にその返しは無理である。
よって神楽耶の能面のように貼り付けられた笑顔にピシッと亀裂が入ったが、特に何の反応も返せない。普通であるが故の悲劇だ。本当に哀れである。
「その皇帝力のおかげで貴方はブリタニア皇帝になれたのですか?皇帝」
(何か伝染してませんか!?)
幼い天子はともかく、それ以外の自身の味方であるはずの合衆国側からも皇帝力を使用している人間が現れたことに神楽耶は戦慄が走る。
「もちろんです皇帝。皇帝力こそ国を統べるための力!しかし皇帝力にはリスクもあるのです皇帝」
リスク?と誰かが問いただす前に発言をしたルルーシュ皇帝の膝が突然崩れ落ちる。
慌てて警備が駆け寄ろうとすると、それをルルーシュ皇帝は手で制する。
「これが…皇帝力のリスクです…皇帝」
これが皇帝力のリスクだと!?と会場の人間の何人かが驚きの声を漏らす。
「一人の人間の皇帝力には上限があるのです…皇帝…それは使えば使うほどなくなっていく…そして最後には暫く使えなくなってしまうのです…皇帝…だが、ここまでは計画通りです…皇帝」
「いや、何の計画です?皇帝力の計画ですか?」
「神楽耶様。それをこれからお見せしましょう皇帝。私の殆どの皇帝力を使った結果」
ルルーシュ皇帝は神楽耶の隣の天使と皇帝力と口にした全ての合衆国側の人間を指差してから続きを語る。
「ボケのラインは整った!」
そうルルーシュ皇帝が告げると指さされた人間の体から光が漏れ出す。それだけでなく、ルルーシュ皇帝の体にも謎の光が漏れ出している。他の光っている人間とは比較にならないほどの強さだ。直面している神楽耶と天子は余りの眩しさに目を手で覆う
「な…何をするつもりなのですか!?」
「ふっ。神楽耶様。覚えておくと良い。皇帝力は使えば使うほど失われていく。それは確かだ。だが逆に!使えば使うほど高まっていく力もある!見るが良い!ギアスではない!だがこれも王になるための力だ!」
突然始まった超常現象に神楽耶はルルーシュ皇帝に意図を問う。だがルルーシュ皇帝は、それには答えずニヤリと笑うと何かを始めようとする。警備の人間もそれに気付き取り押さえようとするが、全てが遅かった。
ルルーシュ皇帝の口からあの呪文が放たれる。
「バオウ・ザケルガァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
「出てたまりますかぁぁぁぁぁ!!いい加減真面目になってください!!」
馬鹿すぎるボケに流石の神楽耶からもツッコミが放たれる。
だが、それと同時に盛大な爆発音が鳴り響く。
え?と神楽耶達だけでなくルルーシュ皇帝までも、キョトンとした顔をするが、それを成した張本人であるバオウ・ザケルガ(ランスロット)は悠然と会場のど真ん中に着陸する。
一拍遅れて今の状況に気付いた神楽耶は歯軋りする。
やられた…今までの悪ふざけは全てただの時間稼ぎだったのだ。
そう考えた神楽耶はキッとルルーシュ皇帝を睨み付ける。
「全て計算通りだったのですね…ルルーシュ皇帝」
「当たり前だろう。私を誰だと思っている?」
ドヤ顔で答えるが、当然嘘である。ルルーシュ皇帝である彰がそんなことを知っているわけがない。
それが証拠にルルーシュ皇帝の背中は冷や汗で一杯だった。
しかし、そんなことを言えるはずもなく勢いのままにルルーシュ皇帝はルルーシュだったらやりそうなことをアドリブで続けていく。
「これで貴方達合衆国側の人間の命は私の意のままだ。さて…では、これより本格的に民主主義を始めようじゃないですか。とりあえず、ここにいる皆様方には私と一緒にブリタニアへとついてきて貰いたいと思っているのですが、よろしいですか?」
ルルーシュ皇帝は笑顔で確認するが、ランスロットがいる状況で反論などできるはずもなく会議に参加していた合衆国側の人間は一人残らずブリタニアへと連行されることになった。
「…ルルーシュ」
「スザクか。良くやってくれた」
人質の収容も終わり、学園を去ろうとするルルーシュ皇帝の前に険しい顔で近寄ってくるスザクにルルーシュ皇帝はお礼を言って去ろうとするが、そんなことが認められるはずもなく肩を掴んで止められる。
しかし、ある程度予想していたのか表情も変えずにルルーシュ皇帝は言葉を発する。
「何だ?」
「どういうつもりだ?あんな悪ふざけを」
「何時も言っているだろう。結果が全てだ。結果として予定通りなら問題ないだろう」
「それはそうだが…」
「それにアレも無意味な訳でもない。計画のためには必要なことだ」
嘘だけど。と内心で彰は思う。
そもそも計画自体知らない。ルルーシュがあんなことをしたということは何らかの計画があるのだろうという予想で言っただけだ。
「ゼロレクイエムのためにか?」
「そうだ」
ゼロレクイエムって何だよと思いながら彰は肯定する。当たり前のように嘘だが。
「どういう意図があるんだ?」
「さあな。とりあえずの保険さ。今のところ意味はない」
今どころかこれから先未来永劫意味なんかないのだが、そういうことにしておく。それっぽいことを言っておく必要があるからだ。
「…そうか」
そう言ってランスロットの所に向かうスザクの後ろ姿を見ながら、馬鹿で良かったと彰はしみじみ思う。
とりあえず一段階目はクリアしたという実感を得て、彰は内心でホッとため息を吐く。
しかし、安心してはいられない。肝心のルルーシュの真意や計画が全く分かっていないのだから。
だが、キーワードは分かった。ゼロレクイエム。恐らく、これがルルーシュの計画の肝だ。これが分かればルルーシュの真意もきっと見えてくる。
クククと彰は笑う。一歩確実に前へと進めたという実感があるからだ。
(取っ掛かりは掴んだぜ…さあ、ルルーシュ。第2ラウンドを始めようか。俺とお前の嘘のどっちが上か。楽しくなってきやがった!)
次も月一投稿目指して頑張ります