イエイヌは、愛するヒト達が帰ってくるまでずっと待ち続けました。

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もう勢いで書いてしまった。
設定もグダグダな部分がありますが、それでも良いのであればどうぞ。



交わした約束

人間達と一匹のイエイヌがいました。

そのイヌはみんなから頼りにされ、とても愛されていました。

しかし、ある日のこと。住んでいた人間は突然いなくなり、残っていたのはイヌだけになりました。用事が出来たからお留守番をお願いねと飼い主に言われ、イエイヌはそれを理解して待ちました。ですが、留守番を頼まれた飼い主も全然帰ってきません。

それどころかおうちだけではなく、他のおうちにいたヒトまで居なくなりました。それでもイエイヌは晴れの日も、雨の日も、嵐の日も、冬の日も来ることをずっと待ち続けました。

 

この場所が、ヒトと一緒にいた場所から離れないまま自分のご主人様が来るまでイエイヌはずっと【お留守番】をしていると、ある動物がこの場所にやって来ました。

 

その動物は、オオアルマジロとオオセンザンゴという探偵でした。

 

*****

 

それから数日が経ち、彼らはヒトを連れて帰ってきました。イエイヌは、やっとヒトに会うことができて喜びました。

 

頼み通りにヒトを連れて来てくれたアルマジロとセンザンゴに感謝した。二人が連れて来たヒト、キュルルの特徴はオッドアイの目、頭には帽子を被っている。イエイヌの期待とは裏腹に、抱きしめられたキュルルの顔は複雑そうな顔をしているが、おうちに帰りたいということから、早速イエイヌは案内することとなった。

 

おうちにたどり着くと、イエイヌは待っていたことをキュルルに話した。が、キュルルにとってイエイヌに案内されたこのお家が初めてで、遠くからではなく建物内のサファリパークにいた。

 

それでもイエイヌは、住む場所は違ってもヒトと会えたことに嬉しく思っている。まず連れて帰ったヒトに、あれをしろこれをしろと命令されることを頼みました。急に頼まれたキュルルには、よく分からなかったが落ち着いて座ろうといえばイエイヌは【お座り】し、手を差し出そうとすれば【お手】をしている。

 

キュルルはよく分からない顔をしてたが、イエイヌはあまりにもヒトと遊ぶことが久しぶりで楽しくなっていました。イエイヌは近くにあったフリスビーを指差し、外で楽しく遊びながら二人との距離が縮まっていく。

その時、キュルルのお供だったサーバルとサーバルキャットことカラカルがおうちにやってくる。前に頼んだ探偵が、今度はサーバル達に道案内したのだ。

 

着いた時に、サーバルの二人組から見るとキュルルだけではなく知らないフレンズと遊んでいた。サーバルは無事で安心するが、カラカルは心配していたのに呑気に遊んでいるキュルルに少し怒っていた。

 

イエイヌとキュルルは二人を誘うが、カラカルは冷たい態度をとった。キュルルもサーバル二人に心配かけさせて謝ったものの、こうなってしまったのは無理矢理連れてきた探偵がやった事だ。カラカルは関係ないというが、離れるつもりもなければ嫌がっていたのにキュルルの意思を無視して連れて行こうとした探偵二人のせいだと怒っている。

 

話も有耶無耶になった挙句、おうちに帰るという目的も既に果たされている。カラカルとキュルルはギスギスなまま別れることとなった。

 

イエイヌも、連れてきて欲しいと言った張本人なため、ちゃんと頭を下げて謝った。探偵に頼んだことも、サーバルの二人がキュルルをねここまで守ってくれたことも。

イエイヌはサーバル達に謝罪と感謝する。

 

「後は私にお任せください!じゃ、私はこれで」

 

キュルルの目的を果たした以上、カラカルはサーバルと一緒にサバンナへと帰えることとなった。

 

*****

 

遊び疲れて家に戻ると、イエイヌはキュルルの為にお茶を注ぐ。イエイヌは、こんな形で別れたとはいえあのサーバルのように心を通わせていた。

 

キュルルはお茶を飲まずに、喧嘩別れしたカラカルの事も心配している。

 

そんな話の最中に、ビーストの叫び声が聞こえる。ヒトだろうと動物だろうと構わず襲いかかってくる凶暴な動物が、すぐ近くに潜んでいる。

イエイヌはビーストがおうちに近い場所にいるから、この家から出るのは危険だと忠告する。しかし、

「サーバルとカラカルに知らせないとっ!」

キュルルはサーバルの二人を優先し、イエイヌの忠告を無視して家から出ていく。まだ二人が帰ることなく近くにいるなら、襲われてるかもしれないと考え無しにおうちから出て、森へと走っていく。

 

一人になったところを襲われたら危険なのに、無茶をしようとするキュルルを止めるためにイエイヌもおうちをでて、キュルルの後を追った。

 

「キュルルさん!」

「イエイヌさん⁉︎」

 

ヒトよりも足が早く、すぐにキュルルの元にたどり着く。あの二人のことを忘れて、戻ってもらわないと、守るべきヒトがビーストに襲われてしまうと考え、焦りながらも説得を試みる。

「ここからは私がずっとキュルルさんのことを守ります。だからっ…!」

「イエイヌさん…」

 

その時、茂みからビーストが現れた。

キュルルを連れてこの場から逃げても、イエイヌよりも足が遅いヒトからまず襲われる。

だからイエイヌはヒトを守るために

 

(このヒトを…必ず守るっ‼︎)

「ヒトを守るのは…私の使命ですからっ…!」

 

前に出て、戦闘態勢をとる。

ビーストは容赦なくイエイヌをなぎ倒し、キュルルにも襲いかかってくる。イエイヌも負けじとビーストを抑えようとするが、力負けしてしまう。

「もういいよ、イエイヌさん!」

「まだ…戦わなければ…ヒトの為にっ‼︎」

 

転がされ、鋭い爪で切り裂かれ、ボロボロになっても立ち上がる。敵がどれだけ凶暴でも臆せず、牙を立てて立ち向かった。

 

その時に、帰るはずだったサーバルとカラカルが横から割ってやってくる。

 

「アンタって思ったより頼りないわね。そんなんじゃキュルルを任せるわけにはいかないわ!」

 

サーバルの活躍のおかげでビーストを追い出し、イエイヌは出会ったばかりのヒト、キュルルとの別れをする覚悟を決めた。

 

仲間と別れる気持ちを知っていたのに、キュルルを引き離すようなことをしてしまった。

 

イエイヌはあのおうちでキュルルと一緒にいるよりも、キュルルがサーバル達と一緒に旅を続けていくべきだと言った。イエイヌにとって家にいた人達を待ち続け、お留守番をすることが使命だと。

 

「最後に言ってもらえませんか、おうちにおかえりって」

ーーーおうちに、おかえり

 

イエイヌは少し泣きそうになりながらもキャルルにそう命令されたことにしょんぼりした顔をせずに笑った表情をし、走っておうちへと帰っていく。

お友達になったわけでもなく、巻き込まれたけどなんかイエイヌさんが納得してくれたからと、ギスギスしていたカラカルとキュルルの仲も元どおりになる。

 

こうしてまた三人と集まり、おうち探しのために旅をづつけていくのだろう。

 

【少なくともキュルルの為にビーストに立ち向かったイエイヌがボロボロになった姿を見て、なぜ心を痛めなかったのだろうか】

 

イエイヌは決断したとはいえ心身ともに傷つき、酷く悲しんだ。それでもキュルル達に心配かけまいと、気丈に振る舞っておうちへ帰っていく。

 

カラカルからは任せられないと言われ、キュルルはずっとサーバルのことを褒めているだけ。守られたキュルルにはイエイヌに感謝される事も、怪我の心配をされる事もない。注目はサーバルに向けられ、カッコいい、凄いと褒めてばかりだった。唯一心配したのはカラカルだけで、仮に旅に連れて行かないことになったとしても時間があるならイエイヌの治療をする事も出来たはずだった。

 

この状況に良心を持っている誰かがいるのなら、この歪な空気に耐えられず、イエイヌの為に本気で憤慨している。

 

しかし、仮にそうなったとしても言ってきたイエイヌの望んだことだから、返事を返したキュルルは何も悪くないとカラカルかキュルル本人のどちらかが反論するだろう。

イエイヌもこんな理不尽な目にあっても、ヒトの為に尽くしたことに悔いを残す事なく、イエイヌからキュルルと離別することを決めてしまった以上彼らと争う事も好まない。

 

イエイヌは汚れたまま家へと向かっていく。

悲しい気持ちを堪えたまま、やっとの思いでヒトに会えた筈なのにと。

 

一人きりなまま、イエイヌは走りながらも涙を流している。

 

こんな理不尽な目にあっても、純粋なイエイヌにとって彼らに憎しみや、怒りなどは全くない。ヒトに久し振りに出会い、遊ぶ事も触れ合う事もできた。最初の最後にヒトの言葉を受け入れ、尊重しているからこそ辛い気持ちにもなる。

あんな事を言わせるようにしても、イエイヌの心の中には

 

ーーいかないで。

 

と、またヒトと離れる事を恐れていた。

だからといって、彼らと一緒にいたいという気持ちもあったイエイヌは、頼まれた約束を必ず守り、お留守番することが役目なため、おうちから離れるわけにはいかない。

キュルルを、イエイヌの都合で無理に一緒にいさせることも好きだったヒトの約束を破るわけには行かなかった。

 

イエイヌはあぁするしかなかった。

僅かながらも心残りに思っていたことを、胸の中に留めつつ言わないまま。キュルルは、イエイヌの飼い主でもなければそこに住んでいるというわけでもない。それでもヒトと会い、尽くすことがイエイヌにとっては何よりの幸せだった。

 

別れる決意はした、それでもイエイヌは悲しかった。

 

薄暗い部屋の中の隅でイエイヌは悲しく泣いている。キュルルの為に注いだお茶は傷ついた身体のようにもう冷たくなっている。注いだお茶を片付けた後、暗い部屋の中でポツリ、夜の空にある星を見上げていた。

 

ーーいつ、帰ってくるのですか。

 

ここにいるヒトがまだ生きているのか、忘れているのか、死んでいるのかも、イエイヌには全く分からない。ただ、かつてヒトがいた頃を思い出しながらも、おうちに帰ってくることを信じて待つしか何もできなかった。

 

*****

 

深夜

イエイヌは傷がまだ残っており、動けないまま寝転んでいる。簡単な応急手当てぐらいしか出来ず、誰か手を借りないと身体中の傷を治すことが出来ない。

 

 

イエイヌは、微かに誰かの物音で起き上がった。

誰かがおうちに近づく音が聞こえる。

疲れながらも少し臭いを嗅ぐ、

 

「えっ…⁉︎」

 

イエイヌの目が見開き、驚いた。紛れもなくこの場所で今までずっと一緒にいてくれたご主人様だとすぐに理解した。犬の嗅覚と飼い主の声に身体が反応し、すぐに玄関の扉へと向かっていく。

 

「まさか…ご主人…様?」

 

家に入ってきた女の人は、悲しい顔でイエイヌのことを心配した。匂いからおうちに帰ってきたのは、イエイヌを育てた飼い主だった。

 

「良かった…無事で本当に良かったよっ…‼︎

 

こんなに、こんなにも待たせて…本当にごめんね…‼︎」

 

彼女は、泣きながらイエイヌを強く抱きしめる。イエイヌは飼い主がいない間に、話したいことが沢山あった。一体何があったか、どうしてこんなにも遅くなって帰ってきたのか。

しかし、お互いまず感情が先に動いた。

 

「う、あっ…うわぁぁぁぁぁん‼︎あ"い"だかったぁぁぁっ‼︎‼︎」

 

飼い主は部屋の明かりをつけておらず、影だけで飼い犬かと思って抱きしめた。イエイヌは子供のように、泣き叫ぶ。

 

今度こそ、もう大丈夫だと。

飼い主はイエイヌを快く受け止めていた。

「うんごめんねって…その怪我どうしたの⁉︎」

「あの、実は…」

「ちょっと待ってて!すぐに持ってくるから‼︎」

彼女は明かりをつけると、まず傷だらけの怪我に驚いた。応急手当ても中途半端なまま放置され、急いでイエイヌ用の治療道具を持ってきた。

 

治療しながらイエイヌがみんなのことを待っていた事を、キュルルと出会い、こんな姿になってまで守ったことを話した。

聞いていた飼い主はイエイヌを褒めつつ、頭を撫でている。

 

ーーー今までずっとここを守ってくれて、ありがとう

 

その感謝の言葉だけで、イエイヌの心がどれだけ安心したか。自然に瞳から涙が溢れ、頰に流れ落ちる。

ここまですっと待ちつづけて、報われた。

イエイヌは夢でも見ているかのように、涙を拭いて目を何度も擦っている。

 

「あの、ご、ごめんなさい…また迷惑を」

「いいの、置いてけぼりにした私も悪いから。

 

それじゃあ改めて…ただいま」

「うんっ…おかえりなさいっ‼︎‼︎」

 

*****

 

今度は、何故飼い主だけが帰ってこれたかという事を話すのも、適切な治療をしながら話しを始めた。

過去に、おうちから出るといっても飼い主は治める人から話があるという些細な用事だっただけで、すぐおうちに帰るつもりだった。だが、会話そのものはおうちの周辺にセルリアンが現れたことで、住んでいたヒトは外に出ていたところを為すすべもなく襲われた。

当時、セルリアンという存在がどう言ったものなのか分からず、見つけたとして抵抗しようとしても一人また一人と蹂躙されていく。

 

おうちが静かになったのは、一人になっているところを気づかないままセルリアンに襲われたことで大勢のヒトが消され、人数が僅かになったからだ。

聞かされた飼い主もあまりの内容に混乱し、頭が追いつかなかった。

だが、事態が深刻なのがわかった飼い主は家にいるイエイヌにも真相を伝えようと戻ろうとしても不用意に外に出たら止められ、無理矢理連れていかされる。避難場所としておうちの近くに用意された施設へと向かうしかなかった。

このまま未確認生命体に蹂躙され、全滅になるのとを防ぐ為に。

 

家に置いてけぼりにされたイエイヌにとって、事情を説明することが出来なかった。

地下施設にある高性能な機材を使い、冷却アレイに入っていく。

コールドスリープし、目覚めの時が来るまで眠ったままになる。

これで未来で人類が死滅することはない、と。

だが、

 

「よく聞いてね…実質ここの生き残りは、私だけになったの」

 

衝撃的な発言に、イエイヌの思考が少し止まった。

幸い、外で襲撃されたことから家にずっと居るよう言われていたイエイヌはセルリアンに襲われる事はなかった。イエイヌが家から出ても、もう襲うヒトが見当たらなかったセルリアンは他の場所へと散ってしまった。

好都合にも短い期間に目覚め、すぐに飼い主はおうちへ帰ってきた。

前まで生態も考えも目的も分からないセルリアンという存在を全く知らず、彼らは無抵抗なまま消されていく事に恐怖した。地下に行っても装置が故障し、開けられずに冬眠で死んだ者もいれば、起動させて開けても既に息を引き取っている者もいる。

 

「他に人が生きてて安心したけど…これから大変そうだなぁ…ごめんね、こんな話をして」

飼い主は苦笑いしていた。こうして生きて帰ってこれたとしても、やるべき事は山ほどある。食べ物の自給自足もそうだが、眠った間に変化したことも調べなくてはいけない。

「貴方が帰ってきただけでも、嬉しかったです。どうしてみんながいなくなったかも、納得しました」

「そっか…」

イエイヌは、ヒトが来るまでの間ずっと長い年月を待ち続け、お留守番を全うしたのだ。

そして、ようやっとご主人様はこうして帰って来てくれた、と。

 

「あのね、今後も一人じゃできない事もあるから…これからも頼りになる事もあるけど…」

 

真実を聞かされても、イエイヌは満面の笑みで返事を返す。

 

「大丈夫です!今後とも私が貴方を支えますからっ!」

「ありがと。イエイヌさん…あと、これからもよろしくね」

 

今まで悲しくて泣きそうな表情が、今ではすっかり元気になっている。何故ならイエイヌは、飼い主との感動の再会を果たし、もう一人きりではないのだから。

 

飼い主はもう一度、顔を赤めつつデレデレしているイエイヌの頭を何度も撫でてあげた。

 

fin

 




もしも、イエイヌはキュルルちゃんを諦めて今後もずっと待ち続けているのに結局誰もきませんでしたっていう鬱展開になるのは流石に嫌だったので…せめて、飼い主だけでもイエイヌの元へ無事に帰ってきて報われて欲しいという話です。

みんながいなくなった原因をfallout4の冒頭みたいにしました。


【個人的な感想】
最後の場面なんか、イエイヌが余りにも可哀想でならなかった…
キュルルもおうちへおかえりを軽々しく、躊躇いなく言い返すって…動物の気持ちが分からないのかと。
走り去ったイエイヌの心配(怪我とか)の話も無し。
喧嘩したけど、最後にはイエイヌから自分の事を遠慮してくれたおかげで仲良くなりましたとさって…血も涙もないのか。

某二次創作のようにキュルルを潰してざまぁするのはなんか違うかなって思います。
魔女狩りみたいに祟って報復しても結局ギスギスが残るだけに…キュルル達に対するアンチ・ヘイトストーリーにしようとしたら今度はただひたすらに憎悪を増し増しにしたナニかになりそうなので、ならば一人きりのイエイヌが報われてほしいという思いで投稿させていただきました。


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