ぼくの かんがえた さいきょうの ひきがやはちまん   作:納豆坂

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「ちょ、ちょっとまってよヒッキー。なんで協力してあげないんさー!」

 

「そーそーヒキタニくんまじオナシャーッスって」

 

「そんなこといわれてもだな……。つーかさ、そもそもこの依頼って意味あんのか? 正直、結衣だけで事足りると思うんだが」

 

 正直言って、効果的なアプローチの仕方なぞ俺と雪乃に教えられるはずがない。

 理由は言わずもがな。

 しいて言うなら「腐海に飲まれよ」略してふかのま、その一言に尽きる。

 

「まあなんだ。仮に依頼を受けたとしても俺と雪乃にはお前らと一緒に行動したりとかっていう実質的なサポートは無理だぞ」

 

 戸部が奉仕部に求めているのは、行動を後押しするような実働部隊としての役割だろう。

 だが別の世界線ならまだしも、この世界線においてはそれは不可能と言っても過言ではない。

 

「だって、F組に俺の席ねーから」

 

 頭にハテナマークを浮かべぽかんとする戸部その他。

 どうでもいい話なのだが、俺は未だ骨折中という扱いだったりする。日常生活にはまったく支障がない部位なのだが、骨折は骨折。体育をサボりたいときなどの理由として有効活用させてもらっていた。

 まあ、今回の場合はそれが裏目にでたわけだ。

 どういった経緯でそうなったかは知らないが、就学旅行という非日常に対し俺の骨折を不安視する声があがったそうだ。

 それを補助する役割として奉仕部部長である雪乃に白羽の矢が立ち、はれて学校公認で俺は修学旅行に限りJ組に組み込まれることとなった。

 げせぬ。

 保険委員でいいじゃねーのと思わなくもないが、見ず知らずの他人に世話をかけるのも気が引けてしまうのも事実。提案ではなく、ほぼ決定事項として俺にそれを告げた雪乃はそれはそれはいい笑顔だったと付け加えておこう。

 

「ま、そんなわけだから。じゃあ出口はあっちだから」

 

「いやいや。理由はわかったけど、せめて、せめてなんか一言アドバイス的なもの頼むって」

 

 極々自然に退室を促すも、戸部はなおも食い下がる。

 

「アドバイスって言われてもな……」

 

 ふかのま!で納得しておとなしく帰ってくれるとも思えない。

 一縷の望みをかけて雪乃をみても、任せるわと言わんばかりににっこりと微笑むばかりである。

 ちくしょう、かわいいじゃねえか。本来ならお前が部長なんだからな。勘違いしないでよね。そんなんで黙ってやるの、俺だけなんだから。

 

「見る限り結衣を含めてグループ内のほとんどが戸部を後押ししている訳で、海老名に対する外堀埋めもほぼ完璧。修学旅行というイベントを普段仲のいいグループですごすという状況も、断って全員の修学旅行を台無しにするなよという空気に持ってくにはむしろプラスだ。発想、根回しはほぼ完璧。だが、」

 

 ふと、部室を見渡す。

 海老名がいないのは当然として、依頼人一行と結衣。仲良しグループ全員が一堂に会して……。

 

「三浦ってこのこと知ってんのか?」

 

 会していない。

 

「それは……、言ってないけど……」

 

「じゃあ無理だ。外堀から埋めてくのも、断れない空気をつくるのも間違ってない。むしろその姿勢は全力で正しい。でもな、三浦の許可がないならアドバイスとかそんな次元じゃねーわ。おとなしくあきらメロン」

 

 女王様に許可とってから出直してこい。いやほんとマジで。

 

「理由、聞いてもいいかな? なぜ由美子が知ってるか関係あるんだい?」

 

「なんでってお前。三浦だぞ? おかんだぞ? かわいい娘に男ができるなんてそんな、許すはずねーだろ。つーか俺の認識だとお前らって三浦がノーって言ったらノーなんじゃねーの?」

 

「いやそれは……」

 

 気まずげに視線をそらす葉山。

 

「んじゃ結論な。おかんの許可がないから今は無理。告白するならおかんが娘離れした時を狙え。以上だ」

 

 

 

 

 明けて翌日。

 修学旅行当日である今日、いつもより早く目を覚ましリビングに向かうとなぜか雪乃がいた。

 制服にエプロンという姿で。

 

「おはよう、比企谷くん。ごはんもうすぐできるから、まずは顔を洗ってらっしゃい」

 

「おぅ、おはよ」

 

 あー、あのエプロンは結衣のプレゼント買いにいったときの新妻かわいいやつだな。なぞと未だ覚醒しきらない頭で考えながら洗面所へと向かう。

 

「つーか、なんで雪乃がここにいるんだ?」

 

「比企谷くんが遅刻しないよう迎えにきてあげたのよ。修学旅行中の比企谷くんの介護を学校から任されているのですもの、奉仕部部長としても一瞬だって気を抜くつもりはないわ」

 

 やれやれ、みたいなその出来野悪い子を見るような表情やめてもらえませんかね。

 

「ホント、おにいちゃんのことは雪乃さんに任せておけば安心だね!」

 

「あら、小町さん。もう姉とはよんでくれないのかしら?」

 

「雪乃お義姉ちゃん。不束な兄ですが、どうぞ末永くよろしくお願いします」

 

 きゃっきゃする小町と雪乃におもわずギリィとしてしまう。

 おのれ雪乃め。お前に小町は渡さんぞ!

 

「そういえば比企谷くん。ちょっとお願いがあるのだけどいいかしら?」

 

「んぁ? なんだ? 小町ならやらんぞ」

 

「相変わらずシスコンなのね……。そうではなくて、修学旅行から帰ってきたら実家にお土産を届けようと思うのだけれど付き合ってもらってもいいかしら?」

 

「そんぐらい別にいいけど、宅配便じゃだめなのか?」

 

「生ものもあるし、できるだけ早く届けたいのよ」

 

「ああ、そりゃそーか。でもあんまり大荷物にならないようにな。一応骨折中ってことになってんだから」

 

「大丈夫よ。車をだしてもらうよう手配してあるから」

 

「そっか。まありょーかい」

 

 あれ、車だしてもらうなら俺が雪乃の家に行く必要ないんじゃないのか?

 まあ、どうでもいいか。

 

 

 

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