アムロ再び戦場に立つ。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告いつもありがとうございます。
助かりました。

今迄、読んで頂きまして、ありがとうございました。
完結です。
生きてるアムロが書きたい。のびのびしてるアムロが書きたいと始めたこのシリーズ。
短編のつもりが、15話も続きました。
皆さんのお陰です。

では……





アムロ伝説となる。

西暦2059年3月

西暦2041年に地球を発ち、銀河系の中心へと向かった第25次新マクロス級超長距離移民船団 通称マクロス・フロンティア船団は射手座スパイラルアーム内ビオス星系を航行中に謎の宇宙生物バジュラに襲撃される。

奇しくも、銀河の妖精と呼ばれるトップシンガー、シェリル・ノームの来訪コンサートの当日だった。

マクロス・フロンティアの民間軍事会社S・M・Sの活躍もあり、バジュラの襲撃を何とか退ける事ができた。

 

西暦2059年4月下旬

今、S・M・Sの旗艦であるマクロス・クォーターでは、入社したてのアルトと同世代のバルキリーパイロット達はシミュレーターで合同訓練を行っていた。

参加者は早乙女アルトと高校の同級生でS・M・Sでは先輩にあたるミハエル・ブラン少尉とルカ・アンジェローニ准尉のスカル小隊の3人。

ミシェル(ミハエル・ブラン)の幼馴染で大学生パイロットのクラン・クラン大尉率いるゼントラーディ人の女性で構成されているピクシー小隊。同隊員はネネ・ローラ、ララミア・レレニアの3人、計6人で行っていた。

 

シミュレーター訓練はスカル小隊とピクシー小隊との小隊同士の対戦形式で実施。

「ミシェル。私の勝ちだな。明日のランチは奢ってもらうぞ」

マイクロン化したクラン・クラン大尉は見た目、小学生高学年ぐらいにしか見えないが、これでも19歳だ。巨人族の形態だとダイナマイトボディの持ち主だが、何故かマイクロン化するとこうなってしまうらしい。

 

対戦成績はピクシー小隊が圧倒的に勝ち星を挙げている。

戦闘経験未熟なアルトにチームプレイの熟練度の差が如実に出た結果だった。

 

「はぁ、仕方がない。……それにしてもアルトはまだまだだな」

ミシェルはため息を吐いた後、アルトにダメ出しをする。

 

「仕方がないですよ。アルト先輩はまだ隊に入って間もないんですから、でもかなりいい線行ってますよ。入って1か月でこんなにも出来るんですから。かなりのセンスがあると思いますよ」

ルカがアルトを擁護する発言をする。

実際アルトのバルキリー操縦技術は現段階でも並みのパイロットよりも上だった。

但し、相手が悪かった。マクロスフロンティア船団の中でも指折りのパイロット、クラン・クラン大尉率いるピクシー小隊が相手だったのだから。

このシミュレーター対決にスカル小隊隊長のオズマ・リー少佐が加われば、結果は違っていただろうが。

 

「くそ、もう一回だ!」

アルトは悔しそうに再戦を要求する。

アルトは見た目美少女に見間違う位の顔立ちを持つ美形男子だったが、中身は負けず嫌いの捻くれ屋だった。

 

「何度やっても一緒だぞ。新人」

クランはその小学生のような容姿でアルトにそう言い放つ。

 

「くっ、やってみなきゃ分からない」

 

「まあ、クランの言う通りだな」

ミシェルもクランと同意見だった。

 

「くそ」

悔しそうにするアルト。

 

「そうだ。皆さんお揃いなんですから、過去実戦のシミュレーターミッションをやってみませんか?」

ルカがそんなアルトを見かねて、皆にこんな提案をする。

 

「第一次星間戦争の再現シミュレーションか。マクロス側で前やったが二人だと散々だった。あの難易度は尋常じゃない。当時のパイロットの腕はすさまじいな。特にロイ・フォッカー閣下とか、マクシミリアン・ジーナス閣下は別格だな」

ミシェルは感慨深そうに言う。

実はミシェルとルカはこの過去戦争で起きた戦闘のシミュレーターを何度か挑戦していた。マクロス側のフォッカーやマックスが所属する部隊の一員という設定でブリタイ艦隊との戦闘だった。

どの戦場も難易度が高すぎて、クリアに至っていない。

 

「ふっふっふっ、エースのミリアを忘れてはいまいか?ミシェルよ。我々ゼントラーディの血を引く者として、それは外せん」

クランはエースのミリアを忘れて貰っては困ると、胸を張る。

 

「ロイ・フォッカーか…、どうせなら過去の英雄と対決してみたいな」

アルトがこんな事をいう。

 

「ルカ、出来るのかそんな事?」

 

「はい、一応そういうシミュレーションモードがありますよ。勝てる人なんてほとんどいませんけど」

 

「ものは試しだ。ミシェル、私もエースのミリアと戦ってみたいぞ」

クランは意気揚々と発言する。

 

こうして、過去の英雄たちとのシミュレーター勝負が始まる。

過去の英傑との対戦シミュレーター、レジェンドモードには第一次星間戦争時の歴戦のエースパイロットの名がずらりと並んでいた。

始めは皆一対一で勝負を挑みはじめる。

一条輝やエストラントやミレイやレイラの何れかとは、何とかクランとミシェルが一勝をもぎ取る事ができたが、流石に第一次星間戦争時のフォッカー、マックス、ミリアに、シミュレーターとはいえ、勝てる者はいなかった。

 

その後、各小隊3人と過去の英雄一人との対決でようやく1勝をもぎ取る事が出来たが、偶然に近い勝ち方だった。

 

「当時の英雄か……凄まじいな」

「くっ、まだまだということか」

「流石はエースのミリアだ」

ミシェル、アルト、クランは口々に反応する。

 

「全然勝てないって程じゃないですよ。僕らも成長して、過去の英雄に近づいているんですよ」

ルカは相変わらずのポジティブな言動だった。

 

 

「ん?なんだ……シミュレーターの人物項目の一番下に赤字で点滅が?アムロ・レイ?」

アルトがシミュレーターにとある人物の名を見つけたのだ。

 

「ああ、確かに有るが……ルカ知ってるか?」

 

「いいえ、僕も知らないです。第一次星間戦争のエース級パイロットはすべて把握してるはずなんですが……ええっと、乗機はVF-1S改とそのアーマードパック改、スーパーパック、ダブルストライクパック……え?VF-X3改…VF-X3Z改……えええ?YF-X5【RAY】……YF-5【シューティングスター】……YF-5なんて初めて聞きましたし、この機体のスペックは……」

ルカはそのシミュレーターに載ってる人物が乗機としていた機体を見て、驚愕の表情を

上げていた。

 

「俺がやる」

アルトが名乗り、アムロを選択し、シミュレーターを起動させたのだが……

始まった瞬間に瞬殺される。

 

「新人……それはないだろ?」

「アルトお前……」

クランとミシェルは開始して3秒、一発も弾丸を撃たずしてコクピットを貫かれるアルトに呆れた顔をしていた。

 

「じゃあ、お前らがやってみろよ!」

 

「ふふん。新人のデコ助に格の違いを見せてやる」

クランはアルトにそう言って、シミュレーターに入るが……

「わーーーっ、なぜだーーーー!!」

開始4秒で、敵の姿も見る事が出来ず爆散。

 

「そらみろ」

 

今度はミシェルがシミュレーターを起動。

「ははっ、どんな凄腕だろうと、射程外からは攻撃出来な……なっ!?バカな!!」

ミシェルは開始早々、射程外だろう場所に移動しようと動いたのだが……コクピットを貫かれ爆散。

 

「お前らも人の事言えないな」

 

「使い慣れていない機体だったからだ!私のクァドラン・レアだったら負けん」

「そうだ。狙撃ライフルさえ有れば」

クランとミシェルは負け惜しみじみた事を言う。

 

「………だったら、やってみます?自分の乗機で、しかもチームで出撃もできますよ」

ルカは何か考え込みながら、こんな提案をする。

 

「はははっ、ルカ、相手の機体は多少改造しているとはいえ、50年前のVF-1Sのスーパーパックだぞ?」

ミシェルは笑い飛ばす。

 

「でしたら、相手の機体のレベルも上げますね。僕はVF-X3Z改と、YF-5が見てみたいんで……」

 

「いっしょだろ?所詮50年前の機体だぞ……」

ミシェルは呆れたような表情をする。

 

「なんでもいい、やろうぜ」

アルトはやりたくてうずうずしているようだ。

 

スカル小隊は最新機体のVF-25、ピクシー小隊はクァドラン・レアで出撃。

アムロ対6機で……

そして……

 

「くそ!何もできなかった」

「ルカ!これは勝てないように設定してるんじゃないか?人間が乗ってる動きじゃなかったぞ?」

「そんなことしてませんよ。……でもこれは」

アルト、ミシェル、ルカは口々に言葉を発していた。

 

真っ白なバルキリー1機対最新機体6機での戦いだったが、開始たった10秒で全員撃墜されたのだ。

 

ピクシー小隊の3人はしばし無言の後……

「……悪魔だ。……白い悪魔だ!」

「お姉さま、怖いです」

「白い……悪魔……」

何故かクランは恐怖で顔を引きつらせ、他の2人は怯えていた。

 

「クラン、白い悪魔っておとぎ話の白い悪魔の事か?」

 

「ミシェル、何を言ってる!じい様とばあ様がいつも言っていたんだ!悪い子には白い悪魔がお仕置きに来るって!あの白いバルキリーで赤のAみたいなマーク!!じい様とばあ様が言ってた!!絶対そうだ!!」

 

「ミシェル、クランが言ってる白い悪魔ってなんなんだ?」

アルトはそもそもの疑問を口にする。

 

「単なるおとぎ話だよ」

 

「アルト先輩、ゼントラーディに伝わる第一次星間戦争時のマクロス側のパイロットの事ですよ。いくつもの伝承が残ってますよ。VF-1S 1機で200機の戦闘ポッドを落としたとか、分岐艦隊をたった1機で壊滅させたとか、基幹艦隊の半分を相手取って、立ちまわったとか……、眉唾物の話ばかりですけど」

呆れるミシェルの代わりにルカが白い悪魔の伝承について語る。

 

「教科書にも載ってない。軍のエースパイロット年鑑にも載ってない。基幹艦隊の半分って200万隻の戦艦だぞ?どうやって相手するっていうんだ?常識的に考えて無理だというのは子供でも分かる事だ。大方負けた側のゼントラーディ人がそいつのせいで負けましたってという言い訳に作った仮想の人物だ」

ミシェルはルカの説明に足す。

 

「コラ!ミシェル!絶対いたんだ!じゃないとゼントランの基幹艦隊があっさりやられるわけが無い!!」

「あれは伝説のリン・ミンメイの歌のお陰だっただろ?」

「バカにするな!歌だけでやられるものか!!」

クランとミシェルが頭を突き合わせて、口喧嘩を始めてしまった。

 

そこにマクロス・クォーターの艦長ジェフリー・ワイルダー大佐とバルキリー隊隊長のオズマ・リー少佐が通りがかる。

 

「お前ら何を言い争ってる。ん?シミュレーターのレジェンドモードか。おいおい、1対6で瞬殺されてるのか?お前らもまだまだだな。俺も結構やったが、一応全員に一人で一度は勝利したぞ」

 

「じゃあ、隊長がやってみてくださいよ」

アルトはオズマに挑発するかのように言う。

 

「少佐、せっかくだ。若者たちに手本を見せてやってくれ」

ワイルダーはその様子を微笑ましそうに見やり、オズマにこう言う。

 

「艦長のご要望とあらば、お前らよく見ておけ………ん、誰だこれは、対戦した事が無いな。お前らはこんな優男に負けたのか?」

そう言ってオズマはシミュレーターに座る。

 

「んん?……アムロ…た、隊長?」

横で様子を伺っていたワイルダーは対戦相手のその人物の名を見て、驚きの声を上げていた。

 

そして……

「ガーーっ!」

 

「あれ、隊長。手本を見せてくれるんじゃなかったんですか?たった8秒で爆散するなんて、何処を手本にしていいのですか?」

ミシェルはオズマに思いっきり嫌味を言う。

 

「くそ!お前ら、この優男を倒すぞ!」

オズマはむきになり、全員で最新機体に乗り換え挑戦することになった。

 

だが……

まるっきり勝てなかった。

健闘をして、30秒生き残ったのが最高記録だった。

 

 

 

その後、ワイルダーとオズマはマクロス・クォーターのブリッジに向かう。

「すみません艦長、時間を随分と取らせまして」

 

「いや、私の方こそ無理を言った」

 

「いえ、全くいい所がなく、お恥ずかしい所を見せてしまいました。ところでアムロ・レイなる人物は全く知りませんでした。クラン大尉が白い悪魔だと言っていましたが、ゼントラーディ人の噂を元に誰かが作った架空の人物ですかね」

 

「あれから50年、後半年で情報が解禁されるが……オズマ君。君には言っておこう。アムロ・レイ……レイ隊長は実在の人物だ」

 

「なっ!?」

 

「私がまだ、訓練生だった頃、所属していた部隊の隊長だった」

 

「でも、あの噂は……」

 

「すべて真実だ。話を膨らませた過大ではない。私から言わせてもらうと、噂はまだ過少だと言っても良い」

 

「………そ、そんな馬鹿な、白い悪魔が実在の人物だとは……」

 

「白い悪魔とはゼントラーディ人がつけた異名だ。我々の中では白き流星とな……そのバルキリーを操る様はまさしく、白い尾を引く輝く流星の如くだった」

 

「……」

 

「レイ隊長がいなければ、マクロスはとっくに沈没し、ボドル基幹艦隊との決戦では勝利は無かった。我々人類が生きながらえたのはレイ隊長の奮戦があったからこそだ」

 

「……」

 

「当時のバルキリー乗りは、残らずアムロ・レイに憧れた。いや、怖かったのかもしれん。彼一人にその双肩に重荷と重責を負わせていた」

 

「……そんな事が」

 

「あれはまだ、序の口だ。レイ隊長が本気を出しYF-X5とYF-5のHAROシステムを起動させれば……このフロンティア船団など、ひとたまりもない。バジュラは確かに脅威だ。だがまだ戦える相手だ。アムロ隊長が真に敵になれば………考えたくもない。……当時のゼントラーディ人の心の奥底に恐怖を遺伝子レベルで刻み込んだのはあながち間違いではない。だからアムロ隊長の功績は封印された。いや、ご本人がそうしてくれと願ったそうだ。ゼントラーディ人と地球人が手を取り合うには自分は障害でしかないと……」

 

「……その人物は今どこに?」

 

「メガロード-01と共に行方知れずだ」

 

「メガロード-01……が消えたという噂も本当だったんですか」

西暦2016年 メガロード-01はフロンティア船団同様に銀河の中心を目指してる最中に行方不明となったのだ。この事実は一部の人間しか知らない情報だった。

 

「ああ、他言無用だ。だが、私はアムロ・レイが生きていると信じているのだよ。あの人がその程度の事で死ぬはずが無い」

 

「………」

オズマは全身から冷や汗が噴き出る思いだった。

 

そんなオズマとワイルダーの後ろには水色のハロが何時の間にか、転がりながらついてきていた。

このハロはアムロからワイルダーに餞別として送られたハロだった。さっきまでシミュレーターに取りついていたのだ。それで無いハズのアムロの戦闘データがシミュレーターに反映されていたのだ。

ワイルダーはこの事に大方気が付いていたようだ。

 

現在、HAROシステムという無人機を意のままに操る技術は継承されていなかった。

その技術を何度かコピーしようと技術開発者が励んだが、結局成す事ができなかった。

核となるアムロが作ったオリジナルハロとその後継機の7体のハロが無いと起動すらできないのだ。

バルキリーの無人機化も、この50年思う様に進んでいない。

一度発展を見せたが、2040年シャロン・アップルの事件以来凍結し、無人機 ゴーストX9シリーズも封印。使用を禁止される。

だから、未だに有人の可変戦闘機が今も主流となっているのだ。

 

 

 

一方、シミュレーターで散々な目にあったアルト達は……

「あれはシミュレーターを開発した技術者がゼントラーディ人の眉唾物の噂を元に作った架空のパイロットだ」

「白い悪魔は存在するぞ!ミシェル!じい様とばあ様に謝れ!」

ミシェルとクランはまだ口喧嘩をしている。

 

「アムロ・レイ……どこかで聞いた事があると思ったら思い出しました。第一次星間戦争時からタカトク将軍の右腕と呼ばれた技術者ですよ。現在のビーム兵器や近接兵器の基礎を作った人です」

ルカは先ほどからずっと引っかかっていたアムロ・レイなる人物について、思い出したのだ。

 

「その技術者がなんで、シミュレーターのあそこに名を連ねてるんだ?」

そんなルカの言動にアルトは聞き返す。

 

「わかりません。一説によると、テストパイロットも兼ねていたとか、VF-1Sに初めて狙撃用の実弾ライフルと集束ビームライフルを搭載した機体が、バルキリー年鑑に掲載されてましたが……きっと今日対戦したVF-1S改です。それを開発したのがアムロ・レイで……」

ルカはアムロの経歴について語る。

 

「ほら見ろクラン。大方、アムロ・レイって人物に、噂の白い悪魔を重ねて作った仮想の設定人物だ」

「居るったら、居るんだ!!ミシェルのバカ!!」

口喧嘩は子供じみた感じになってきている。夫婦喧嘩は犬も食わないというが、まさにその通りであり、誰も止めに入らない。

 

「………」

アルトは歴戦の勇士たち、特にアムロに対し憧れを抱き、これを機にパイロットの腕をますます磨き一気にレベルアップしていったのであった。

 

 

 

 

 

西暦2059年9月

バジュラの襲撃はマクロス・ギャラクシー船団による陰謀だった。

ギャラクシー船団は人類を総インプラント(情報機器を人体に埋設)化させ、人類の意思を支配しようと企んでいた。

既にギャラクシーの上層部は肉体を捨て、意思の集合体と化し、ギャラクシー船団に住まう人々を全てインプラント化、さらには肉体を捨てさせ、サイボーグ化、または意思だけの存在に仕立て上げたのだった。

そして、それを成すために、フォールドを操る事が出来る社会性宇宙生物であるバジュラ独自のフォールドネットワークの利用を企み。バジュラと意思疎通が図れるランカ・リーを手に入れ、バジュラの女王バジュラクイーンを支配下に置いたのだ。

そして、宇宙に散らばる全人類に牙をむいたのだ。

 

まだ、ギャラクシー船団とバジュラの関係に気が付いていないマクロス・フロンティア船団はバジュラとの決戦を行うため、バジュラの女王が居るバジュラ本星に攻勢をかける。

バジュラの動きを封じるため、ランカと同じくバジュラを歌で動きを鈍らせることが出来る、重病を患っていた歌姫シェリル・ノームを歌わせ突撃を敢行する。

ミンメイ・アタックの再来だ。

その中、ジェフリー・ワイルダー大佐率いるマクロス・クォーターは、バジュラとギャラクシー船団、そしてフロンティア船団の中に潜む陰謀を事前に察知し、姿をくらませていた。

 

ギャラクシー船団の意思の集合体の一部で上位意思であるグレイス・オコナーは、突撃を行うマクロス・フロンティア船団を見せしめとして、バジュラを使い壊滅させようとする。

更には、地球もその見せしめの対象として基幹艦隊規模の多量のバジュラを送り込む。

 

 

バジュラとフロンティア船団との戦いの中、フォールドでマクロス・クォーターは突如戦場に現れ、バジュラ本星に潜みバジュラを操るギャラクシー船団の旗艦、マクロスギャラクシーに一気に突撃を掛ける。

 

「狙いは人類の裏切者のギャラクシー船団!我々を見縊った事を後悔するがいい!!」

ジェフリー・ワイルダー艦長がブリッジで吠える。

 

「クォーターの無人機システムを私に委譲しろ!ハロ行くぞ!HAROシステム起動!!マクロス・クォーター突撃開始!!」

続けてワイルダーはHAROシステムを起動し、ハロを介して無人機を操る。

 

ギャラクシー船団は突然現れたマクロス・クォーターに面喰うが、それに対抗して、使用を禁止されていた無人機ゴーストV9を投入し、戦況は泥沼と化していく。

 

 

しかし、何故か、一時バジュラとゴーストV9の動きが極端に鈍くなる。

その隙を付いて、アルトが囚われの身のランカを奪還。

 

すると、ランカを奪還された事でバジュラのフォールドネットワークの支配が解け、次々と宇宙に散らばる各船団のマクロス及び戦艦がフォールドで加勢に現れる。

既にこの時、地球を襲っていたバジュラはすべて駆逐されており、こちらに全兵力を割くことが出来たのだ。

そこにはマックスやミリア、イサム・ダイソンなど歴戦の戦士、英雄が集う。

 

さらに、ランカとシェリルのデュエットが実現し、宇宙に歌を響かせる歌姫二人はバジュラの大半を味方につけたのだ。

 

後は残すはマクロス・ギャラクシー船団バトル・ギャラクシーとグレイスの支配下にあるバジュラの女王バジュラクイーンのみ。

 

ジェフリー・ワイルダーのマクロス・クォーターがサーフィンのようにトリッキーな機動で突撃を敢行、バトル・フロンティアとの直接連携攻撃でバトル・ギャラクシーを粉砕。

 

アルトとブレラの連携攻撃により、バジュラクイーンの頭部を切断し、バジュラクイーンはグレイス・オコナーの支配下を脱し、グレイス及びギャラクシー船団の意思の集合体は消滅する。

 

そして、マクロス・ギャラクシー船団の策謀から始まったバジュラ戦役は終わりを告げる。

 

 

 

勝因の鍵となったのは、マクロス・ギャラクシー船団とバジュラの動きが明らかに鈍くなり、その隙を突いてのランカ・リー奪還だった。

 

なぜ、動きが鈍くなったか……

 

 

その半時前。

地球のマクロスシティでは、次々とフォールドで現れる多量のバジュラに襲撃を受けていた。

既に第一線を退き、相談役として新統合政府に勤めていたクローディア・フォッカーはマクロス内でその襲撃を目の当たりにして、決断をする。

「ロイ……アムロさん……力を貸して」

手に持つピンクのハロを、マクロスの現在使用されていないメインブリッジに設置されたHAROシステムの台座に置き、自らは艦長席に座る。

そう、HAROシステムを起動し無人機を動かそうとしたのだ。

既にクローディアは74歳。2年前、嘗ての英雄で夫のロイ・フォッカーを享年78歳で亡くしていた。

クローディアもハロと生活していたため、ハロとの意思疎通はほぼ完ぺきだが、パイロット経験がないクローディアでは、その力を十分に発揮することが出来ない。

 

しかも地球の防衛システムでは、進化を続けるバジュラに対抗が困難であった。

 

バジュラにより被害が拡大していく地球……

宇宙に散らばる各船団に救援要請を出したが、バジュラのフォールドネットワークを支配しているグレイス・オコナー率いるギャラクシー船団により、フォールド航法を阻止され、援軍は来ることが出来ない。

それに対抗できるのはバジュラを研究し、フォールドクォーツを手にし、フォールド断層を脱することが出来るマクロス・クォーターのみ。

 

「もう、ダメなの……ロイ……」

 

しかし……

地球と月の間に突如として、ある船団が現れたのだ。

しかも見た事も無い小型の戦艦を多数擁していたのだ。

だが、クローディアはその船団の一部の艦船に見覚えがあった。

「メガロード-01?まさか……」

 

そして……

白い流星が地球に猛スピードで落ち……マクロスの目の前に……

 

「マクロス応答願う。メガロード-01所属ユニコーン部隊隊長のアムロ・レイだ。今から謎の生命体を駆逐する……」

クローディアは耳を疑う……44年前、銀河の中心に向かい消息を絶ったはずのメガロード-01…そして人類最強のパイロットアムロ・レイ…マクロスのブリッジに確かにその声が聞こえたのだ。

目の前で浮遊するバトロイド形態のバルキリーは顔には二つの目があり、全く見た事も無い形状だったが、真っ白の機体に朱色のユニコーンマーク……間違い様がなかった。

 

「アムロ…さんなの?……ロイ、ロイが連れて帰って来てくれた?」

クローディアは自然と涙する。

HAROシステムからもアムロの意思を感じる。

 

そう、44年前に行方不明になったはずのアムロが戻ってきたのだ。

 

アムロが乗る真っ白な機体はあっという間に、マクロスシティを覆っていたバジュラの大軍を駆逐して見せたのだ。

 

さらに、次々とメガロード-01擁する船団から、バルキリーが地球に降り立つ。

 

 

 

 

それをバジュラを介して見ていたギャラクシー船団の上位意思のグレイス・オコナーは……

「なに?なんなの?あの船団は?しかも何?あの機体……見た事も無い機体、どういう事?」

突如現れた見た事も無い船団に驚きを隠せない。

 

「質量を持った残像とでもいうの?バジュラが一瞬で?そんな馬鹿な!あの近接ビーム兵器とビーム砲……見た事も聞いたことも無い!?どういう事!」

白いバルキリーの動きはバジュラを圧倒していた。

本当に残像が見え、まるで夢でも見ている心地であった。

バジュラの攻撃が当たらないどころか、攻撃をする前に悉く倒されるのだ。

まるで、バジュラの攻撃意思があらかじめ分かっていたかのように。

 

「あのバルキリーは無人?どういう事?しかも見た事も無い極小のビーム兵器が空を駆け巡って、バジュラがやられてる。どういう事!!」

グレイスはますます混乱する。

 

無人機とはバイオコンピューターとサイコミュシステムの併用で動いている無人バルキリー。

極小のビーム兵器とは勿論、空中を自由に舞うファンネル(フィン・ファンネル)の事だ。

近接ビーム兵器やビーム砲はハイパービームサーベルとヴェスバー(V.S.B.R.)を指していた。

更にサイコ・フレームを介したアムロの発達したニュータイプ能力は敵の攻撃意思を明確に理解でき、近い未来をも感じ取れるレベルだったのだ。

 

 

 

 

グレイス、いや意思の集合体は地球のバジュラが次々と駆逐されて行く様を見て混乱する。

地球に送ったバジュラの量は基幹艦隊に匹敵する量だ。

それを、分岐艦隊にも満たない船団が現れ、ほぼ潰滅状態に陥ったのだ。

 

その中でも、真っ白なバルキリーが異端だった。

まるで、その場を支配しているかのような圧倒的な力でバジュラを駆逐していくのだ。

 

「なに?これは恐怖?……皆の意思が恐怖に染まっていく。え?白い悪魔?白い悪魔の恐怖が蔓延していく!!」

ギャラクシー船団の人々の意思の集合体である彼女らは……もちろん元は地球人とゼントラーディ人だ。そして、ゼントラーディ人には漏れなく白い悪魔の恐怖が心の奥底まで染みついていた。

その恐怖が目の前に敵として現れ……再び彼らを恐怖のどん底に陥れる。

 

これが、マクロス・ギャラクシー船団とバジュラの動きが一時鈍くなった原因だった。

白い悪魔の恐怖が蘇ったギャラクシー船団の意思の集合体は戦意が一気に下がり、ゴーストV9や防衛のVF-27、支配下にあるバジュラの動きが明らかに鈍くなったのだ。

 

 

 

遠く離れたバジュラ本星でも戦いが終わり……

 

 

地球では、マクロスのブリッジで未沙とクローディア、アムロだけで話し合いの場を設けていた。

久し振りに会う戦友にして親友の二人は抱きしめ合う。

しかし…

「クローディアなの……久しぶりね……でも」

「未沙、戻ってきてくれて嬉しいわ…未沙……でも、若いまま。あれから44年が経ってるのに」

「44年。そんなに……私達は3年……、地球から飛び立って7年しか経ってないわ」

そう、未沙もアムロも、クローディアが最後に通信で顔を会わせた時からさほど姿が変わっていなかったのだ。

メガロード-01が消息不明になってから、経過している時間が明らかに違っていたのだ。

3年と44年もの開きがある。

 

「……次元断層に巻き込まれた影響か」

アムロはその話を聞いてそう判断する。

 

「でも、こうやってアムロさんと未沙に会えてうれしい。もう会えないと思っていたもの、ロイも後2年我慢していれば……」

 

「ロイは……」

 

「2年前に亡くなったわ。78歳よ。結構生きた方よね。その間色々あったけど幸せだったわ」

 

「そうか…」

クローディアの言葉に、アムロは親友の死を知り、静かに目を閉じる。

 

「まるで浦島太郎ね。この事実は流石に直ぐには公表できないわ。……メガロード-01は再び、長距離船団として銀河の中心へ向かう事にするわ」

未沙はクローディアにそう告げる。

 

「未沙、アムロさん……44年、いえ3年間何があったの?」

 

「次元断層に嵌って、ちょっと別次元に飛んで、やっとの事で戻ったら、地球でさらに見た事もない生命体に地球が襲われていたってところだ」

アムロは簡単に説明する。

 

「……このタイミングで?地球はかなりピンチだったのよ」

 

「偶然だ。もしかすると天国のロイが戻って来れるように神様にでも頼んでくれたんじゃないか?」

 

「私も…そう思った」

クローディアは微笑む。

 

 

しばらくこの3人は談笑した後、メガロード-01の第一次長距離移民船団はフォールドし、地球圏から銀河の中心に向かって再び進むことになる。

 

 

この事実は、極一部の人間にしか知らされていない。

 

ジェフリー・ワイルダーはバジュラ戦役の戦後処理を終わらせた後、3カ月の休暇を取り、どこかに出かけたとか……

勿論、マックス・ミリア夫婦も同じ場所へと……

 

 

そこには、仲睦まじいアムロと未沙夫婦、さらに二人の子供が幸せに暮らす姿があった。

 

 

 

                                       完

 

 

 

 

 

 

アムロと未沙、メガロード-01が3年の間、何処の次元に飛ばされたかは皆さんのご想像にお任せしよう。

 




完結です。
皆様読んで頂き有難うございました。

マクロスプラスとΔも書こうと思ったのですが……
この方がすっきりしそうだったので、すみません。

因みにアムロのバルキリーは
型番不明
基本設計はVF-5を踏襲しつつもほぼ、一から作り直しております。
VF-1にくらべ、二回り大きいのは仕方がないですね。
バトロイド形態はその皆さんの予想通り……F91もどきですね。はい、すみません。
バイオコンピューターにサイコフレーム、HAROシステム。基本兵器にヴェスパー、マシンキャノン、ハイパービームサーベル。外部ユニットに多弾頭ミサイル群、フィンファンネル……携行兵器にビームバズーカーに狙撃用ライフル……
ビームコートにピンポイントバリアユニット……
しかも、このスペックで三段階変形可能の変態機体。

どこで、この技術を仕入れて来たんですかね?
行方不明になった3年間何をやってたんですかね?

まあ、最後はアムロには幸せになってもらいたいんで、こんな感じで。


あと一応、ミンメイちゃんと輝君も健在、きっとマックスとミリアと会っても違和感ないと思います。41年の差があるはずだけど、ご両名年取らないし。

か、柿崎君は……多分、どこかで幸せに成ってると思う。

ハロの所在ですが……
ミレーヌ (7)マックスから
ミラージュ(Δ)ミリア→ミランダから
バサラ(7)不明
ワイルダー(F)アムロから
クローディア(F)アムロから
シェリル(F)マオ・ノームから……
アムロの子供(ここ)
アムロと未沙の家にはオリジナルハロと2機ある事になってます。

質問等があれば、裏設定を(妄想)で考えてる分だけ、お知らせします。
感想欄に書いていただければ、徐々に返事いたします><
















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